中小M&Aガイドライン第3版で、仲介手数料の「17項目」事前説明が求められるように
中小企業庁は2024年8月30日に「中小M&Aガイドライン」を第3版へ改訂しました。仲介者・FAには契約締結前に手数料に関する17項目の説明が求められます。売り手の社長にとっては、費用の全体像を契約前に把握できるようになったことを意味します。

中小企業庁は2024年8月30日、「中小M&Aガイドライン」を第3版へ改訂しました。M&A支援機関登録制度に登録している仲介会社・FAは、このガイドラインの遵守を宣言することが登録の要件になっています。
何が変わったのか
第3版の中心は、手数料の透明化です。仲介契約・FA契約を結ぶ前に、手数料に関する項目を書面で説明することが求められるようになりました。その項目数から「17項目の開示」と呼ばれています。
対象になるのは、たとえば次のような内容です。
- 手数料の算定基準(レーマン方式なら、料率と算定の基礎になる金額の定義)
- 最低手数料の有無と金額
- 着手金・中間金・月額報酬・成功報酬それぞれの金額と支払時期
- 相手方(買い手側)から受け取る手数料の有無と水準
- 契約期間、中途解約時の取り扱い、専任条項の内容
背景には、不適切な買い手の存在、経営者保証をめぐるトラブル、一部の支援業者による過剰な営業・広告といった問題があり、市場の健全化が目的とされています。
売り手の社長にとって何が変わるか
実務上、大きい変更は2つです。
ひとつは、最低手数料が契約前にわかること。譲渡価格が小さい案件では、成功報酬率よりも最低手数料が効きます。譲渡価格3,000万円の案件で最低手数料が2,000万円なら、手残りはほとんど残りません。この構造が事前に見えるようになりました。
もうひとつは、買い手側から受け取る手数料の開示。仲介会社が売り手と買い手の双方から手数料を受け取る「両手仲介」では、どちらの利益を優先するのかという構造的な問題があります。相手方の手数料水準が見えれば、その仲介会社がどちらを向いているかを判断する材料になります。
社長が実際にすべきこと
複数の仲介会社を比較する際、同じ17項目で並べてください。「成功報酬5%」という数字だけを比べても意味がなく、算定の基礎が譲渡価格なのか、負債を含む移動総資産なのかで、実際の金額は倍近く変わります。
説明を求めても書面が出てこない、あるいは口頭で済ませようとする業者は、それ自体がガイドライン違反の兆候です。登録支援機関かどうかは、M&A支援機関登録制度のサイトで確認できます。
業者選びの材料は今後も増える
中小企業庁は2026年3月17日に「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」を公表し、同3月27日には「中小M&A資格試験」の実施事業者を選ぶ企画競争公募を開始しました。試験はM&A実務、財務・税務、バリュエーション/デューデリジェンス、法務、行動規範・倫理の5領域で、CBT方式・年3回程度の実施が想定されています。
初回試験は令和8年度(2026年度)以降の実施見込みです。担当者が有資格者かどうかが業者選びの材料に加わることになるため、今後の動きは追いかける価値があります。