2026年9月11日制度

中小企業庁、登録M&A仲介業者に厳重注意を公表 ― 「営業を止めてほしい」と伝えた先に営業を再開

中小企業庁は2026年9月1日、M&A支援機関登録制度に登録している仲介業者1社に対し、厳重注意を行ったことを公表しました。営業先が「停止してほしい」と意思表示したにもかかわらず広告・営業を再開したもので、同じ業者への2度目の注意です。次に同様の事案が確認されれば社名公表や登録取消しを検討するとしています。あわせて、仲介業者の営業や対応に問題を感じた中小企業向けの情報提供窓口を改めて案内しています。

中小企業庁、登録M&A仲介業者に厳重注意を公表 ― 「営業を止めてほしい」と伝えた先に営業を再開

中小企業庁財務課とM&A支援機関登録制度事務局は2026年9月1日、登録M&A支援機関1社に対して改めて注意を発出したことを公表しました。社名は公表されず、所在地が東京都であることと注意事由のみが示されています。

何があったのか

公表資料によると、この業者は過去にも不適切な広告・営業行為で事務局から注意を受けています。その後、再び不適切な営業が疑われるという情報提供があり、事務局が事実確認を行ったところ、広告・営業先が停止の意思を示したのにそれが反映されず、営業が再開されていたことが確認されました。

中小M&Aガイドラインは、営業先から「もう連絡しないでほしい」という意思表示があった場合、その相手への広告・営業を止めることを仲介業者に求めています。今回はその趣旨に反したと判断されました。

事務局は今回の対応として、次の3点を挙げています。

  • 当該業者に改めて注意を発出し、その事実を公表する(社名は非公表、所在地のみ)
  • 同様の事案が再度確認された場合は、社名公表や登録の取消しを含めて対応を検討する
  • 停止意思が示された場合の記録基準を設け、記録と組織内での共有体制を作るよう当該業者に通知する

社長にとっての意味

会社を経営していると、仲介会社からの手紙や電話はかなりの頻度で届きます。「御社を買いたいという会社がいる」という文面のDM、代表者宛の電話、SNSでの接触。売る気がなくても来ますし、一度断っても続くことがあります。

今回の公表で確認できるのは、断ったのに営業が続くことは、登録業者であれば制度違反として扱われるということです。仲介業者の営業を受けて「もう連絡は不要」と伝えたなら、それは記録され、止まらなければならない。止まらない場合は、中小企業庁に情報提供できます。

登録制度に登録していない業者にはこの規律は及びません。しつこい営業を受けている相手が登録業者かどうかは、M&A支援機関登録制度のサイトで検索できます。未登録なら、その業者に依頼しても事業承継・M&A補助金の対象になりませんし、ガイドラインの遵守宣言もしていません。営業の段階で候補から外す判断材料になります。

情報提供窓口の使い方

公表資料の別紙2では、中小企業向けの情報提供受付窓口が案内されています。受付フォームは https://ma-shienkikan.go.jp/inappropriate-cases です。

資料には、この窓口に寄せられることが多い事例として次の4つが載っています。

  1. 仲介業者の不誠実な対応でトラブルになった。契約で定めた条件や約束が守られない
  2. 手数料の説明が不十分だった。成功報酬は5%と聞いていたのに最低報酬が適用され、想定より高い手数料を払うことになった
  3. 譲渡金額の根拠の説明がなかった。評価手法や前提条件の事前説明がなかった
  4. デューデリジェンスが適切に行われなかった。仲介業者が自らDDを実施していた、弁護士や会計士に意見を求められることを知らされなかった

2番目は、このサイトでも繰り返し取り上げている最低手数料の問題そのものです。主要仲介会社のうち最低報酬を公式サイトに明記していない会社が多いことは、手数料の比較記事で整理しています。契約前に17項目の書面を求めるのは、この事例に自分が入らないためです。

窓口について、資料は次の点を注記しています。

  • 情報提供に対して、対応の要望や質問への回答はしない。紛争解決や助言が目的の窓口ではない
  • 匿名での情報提供も受け付ける
  • 仲介契約に秘密保持条項があっても、登録業者はこの窓口に相談したことだけを理由に不利益な取扱いをしないことを登録時に誓約している

3点目は覚えておく価値があります。仲介契約を結んだ後で問題を感じても、「秘密保持に反するのではないか」と考えて黙ってしまう社長は少なくありません。登録業者に対しては、その心配は制度上不要とされています。

背景

中小企業庁は2024年5月に不適切な広告・営業行為への注意喚起を行い、それ以降、情報提供窓口を通じて登録業者の不適切事例の把握と是正を続けています。今回のような「トラブルの発生を踏まえた対応」の公表は、2024年10月、2025年1月、2025年3月に続くものです。個別業者への厳重注意を公表するのは、登録制度の運用が形式的なものではなく、実際に機能していることを示す意味があります。

紛争そのものを解決してもらう窓口ではないので、すでに契約上のトラブルになっている場合は、事業承継・引継ぎ支援センターでのセカンドオピニオンや、弁護士への相談が別途必要です。

出典:中小企業庁「不適切な営業行為に係るトラブルの発生を踏まえた対応について」(M&A支援機関登録制度)