【売却体験談】1社目で仲介を使って型を学び、2社目は4ヶ月で決めた ― 社員ゼロで年商1億 Workstyle Evolution 池田朋弘氏
- 業種
- クラウドソーシング/UXコンサルティング
- 年商
- 1社目 年商1億円超・利益率20〜30%(社員ゼロ)
- 譲渡形態
- 株式譲渡(2社を約半年で連続譲渡)
- 譲渡価格
- 非公開
- 所要期間
- 約12ヶ月

1社目に仲介を使った理由が、他と違います。高く売るためでも、相手を探すためでもありませんでした。
自分がオーナーとして全部経験してないんで、1回M&A仲介を挟んでプロセスの流れが分かった方が、先々何かあった時にも試験的にも役に立つんじゃないかな
結果、その4ヶ月後に2社目を自力で決めています。池田朋弘さんに伺いました。
4回のM&A経験
池田さんは早稲田大学在学中に起業に参加し、CTOという役割で1回目のM&Aを経験しています。以降、計8社を創業し、4回のM&Aを経験しました。内訳は、オーナーとしてが2社、メンバーとしてが2社です。この記事では、オーナーとして経験した2社を扱います。
| 会社 | 事業 | 譲渡先 | 時期 | |
|---|---|---|---|---|
| 1社目 | 味方(在宅ワークス) | クラウドソーシング | 仲介経由 | 2016年11月 |
| 2社目 | ポップインサイト | UXコンサルティング | メンバーズ(プライム上場) | 2017年3月 |
わずか4ヶ月の間に2社です。
1社目 ―― 社員ゼロで年商1億円
味方は2014〜2015年頃の創業。ランサーズやクラウドワークスが伸びていた時期に、在宅ワーカーを集めて企業からの受注をこなすモデルでした。体制が特徴的です。
- 創業メンバー:本人のみ(株式100%)
- 社員:ゼロ
- 全員が業務委託(ディレクター寄りの人、案件を回せる人、実作業の人の階層構造)
それでも規模は出ていました。
すぐ売上は年商1億から超えました。実は月商1,000万円ぐらい
利益率は20〜30%程度だったといいます。
「俺の頑張りじゃないな」
この事業について、池田さんは冷静な自己評価をしています。当時、時間の9割はもう一方の会社(ポップインサイト)に使っていました。
クラウドソーシングの方は市場が来たので、別にあんまり営業しなくても需要がすごい高くて、受け身でも相談が来る
そこから得た教訓が明快です。
俺の頑張りじゃないなと。市場が伸びたら勝手に売上が伸びるし、ダメな時に頑張っても厳しい
同じ能力でも、市場選定を間違ったらダメなのだ、と。
伸びる市場に置いた事業と、そうでない事業では、同じ努力の効き方がまったく違う。 これを同時並行で体感したという話でした(会社を売るタイミング)。そして、だからこそ売る判断も早かったのです。
早期にM&Aもしてキャッシュにしてメインの会社に投資していこうかなって、元々思ってたんで
なぜ仲介を使ったのか
売却の経路は段階的でした。まず、知人数名に直接打診しています。しかし条件面で折り合わず、次にM&A仲介へ。上場している系の会社3社に相談し、ストライクに決めました。契約内容も語られています。
専任契約だった気がしますね……着手金もちょっと払って、決まったらミニマムがいくら、みたいな成功報酬が決まっていて、一定以上だったら5%とか4%とかっていうレーマン方式
そして、仲介を使った本当の理由が冒頭の言葉です。自分がオーナーとして全部を経験していないので、一度仲介を挟んでプロセスの流れを分かっておいたほうが、先々役に立つ。
M&Aのプロセスそのものを「学ぶ」ために仲介を使う。 この発想は、複数回の売却を想定している人にとって合理的です。1社目で型を覚えれば、2社目以降の選択肢が広がります(仲介とFAの違い、仲介会社の選び方)。
期間は、2015年12月に相談し、成約が2016年11月。約1年かかっています。
2社目 ―― 翌月に声がかかり、4ヶ月で成約
1社目が終わった直後、状況が動きます。
1社目のお金が一定入って、本格的にポップインサイトを頑張ろうと思ったら、翌月にあっちから声がかかりまして
声をかけてきたメンバーズは、もともと候補として意識していた会社でした。一緒にやってもいい、仮にグループ化したら相性がいいだろう、と思っていた会社のうちの1つ。ここで、1社目の経験が効きます。直前にストライクと一緒に売っていたので、条件の進め方や感じが分かっている。こういう条件、こういう希望があって、これが満たせるならグループ化はありえない話ではない、という進め方ができた。
結果、2016年12月に声がかかり、2017年3月にクロージング。わずか4ヶ月でした。本人の表現が的確です。
1個前はお見合い結婚したわけですよね。(今回は)恋愛結婚を同時にしてるみたいな感じで、半年ぐらいで2回連続で決まってしまい
仲介で型を覚えた直後だからこそ、直接交渉が速く進んだ。 1社目の投資が、そのまま2社目のスピードになっています。
属人性はどう扱ったのか
社員ゼロで年商1億円という体制は、一見すると属人性の塊に見えます。しかし本人の評価は違いました。モデルはめちゃくちゃシンプルで、コンテンツが欲しいという相談が来る、できたら一定の要件でオンラインベースで仕事を振って管理して納品する、というもの。
最初の仕組みとか人を当てたり流れを決めるのはそれなりに難しいと思うんですけど、流れができた後は、ある意味回すだけ
例外は、トラブル対応でした。
無茶な大量発注が期末に来るんですよ。何千件、品質チェックができないと数が足りないんで、何百人か同時に回して、アウトプットが来るけど全然品質を満たしてなくて、人もどんどん辞めていく
そういうときだけ頑張る、と。
仕組みを作る局面と、回す局面は別です。 回す局面が定型化していれば、時間の1割しか使っていなくても事業は成立し、譲渡もできる。
株主との合意
2社目のポップインサイトには、共同創業者と途中から参加した役員が少しずつ株式を持っていました。それでも揉めていません。オーナー企業っぽい感じもあり、きちんと考えてこうしたいということに対して異論が入って揉めることは一度もなかった、と。
譲渡後、池田さんはメンバーズの役員に就任しています。現在は株式会社Workstyle Evolutionを経営し、生成AIの導入支援などを手がけています。
この記事のポイント
- M&Aのプロセスを「学ぶ」ために仲介を使うという発想がある。複数回の売却を想定するなら合理的
- 1社目で型を覚えると、2社目は直接交渉で速く決まる(1年 → 4ヶ月)
- 市場が伸びていれば、努力の量と関係なく売上は伸びる。 同じ能力でも市場選定で結果が変わる
- 伸びる市場に置いた事業は、早めに現金化して本命に投じるという使い方ができる
- 仕組みを作る局面と、回す局面は別。 回す局面が定型化していれば社員ゼロでも譲渡できる
- 仲介の契約形態(専任・着手金・レーマン方式)は、最初に条件を確認しておく