【社員1名で6億円】副業で作ったシステムが、コロナで100倍に ― 唯一の後悔は「組織を作らなかったこと」 WithLIVE 大島翼氏

公開 2026年9月12日
業種
アーティストとファンの1対1オンライントーク(マーケットプレイス/システム提供)
年商
売上約6億円・営業利益約8,000万円
譲渡形態
株式譲渡(100%・社長継続)
譲渡価格
6億円
大島 翼様のインタビュー
出典:社長のM&Aチャンネル

社員1名の会社が、6億円で売れました。

売上 約6億円
営業利益 約8,000万円
譲渡価格 6億円
社員 本人1名(ほかに業務委託)

そして、本人が挙げた唯一の後悔がこれです。

せめてエンジニアも2、3人いて、仕様書もしっかりした状態で、せめてCFOとかもいたりすると、全然楽だったな

大島翼さんに伺いました。

副業で3年、コロナで100倍

大島さんは大学院在学中の2016年に株式会社WithLIVEを設立。大学内の起業家育成講座から起業した仲間の1人でした。ただし、すぐには専念していません。当時はまだ収益が立てられていなかったため、2017年に新卒でエンジニアとしてヤフーに入社し、3年間勤めています。

まさに副業ファイターで、ゴリゴリに副業させていただいておりました

事業は、アーティストとファンが1対1でオンライントークできるサービスです。ツイキャスやSHOWROOMが1対多なのに対し、その1対1特化版。1分間2,000円、高い人だと1分4,000円、5分で1万円といった具合に、アーティストが時間と金額を自由に設定し、ファンがその時間を購入する。時間売りのマーケットプレイスです。

もう一つ、CDを購入した人が抽選でアーティストと話せるシステム貸しのモデルもあります。こちらはBtoBで、現在は紅白に出るような歌手も利用しているといいます。

相手先は「紹介の紹介」で開拓した

社員1名で、どうやってアーティストを集めたのか。答えは紹介の連鎖でした。1回つないでもらえたら、その人から次の人へ。副業期間中に、そうやって事務所や経営者に声をかけ続けていました。

そして、2020年に環境が激変します。握手会などの対面イベントがコロナでできなくなった。当時、1対1のオンラインサービスはわずか2〜3社しかなく、しかもWithLIVEはすでに出来上がっていた。副業時代に声をかけていた事務所や経営者から「一度話を聞かせてほしい」と、一気に連絡が入ります。

単月の課金の総額で、1億円ぐらい……緊急事態宣言が出た4月とかのタイミングだと、今となってもあの時が最高記録だった

100倍ほどに一気に伸びたこのタイミングで、ヤフーを辞めてフルコミットしています。

伸びを取れた理由 ―― 「先に安定させていた」

急成長を取りこぼさなかった理由が、シンプルでした。2018年、2019年は副業で時間があったため、システムは安定したものを組み立てた状態で2020年を迎えていた。

そのタイミングでアクセスが集中しても、割と安定したシステムができていたので耐えられた

チャンスが来てから作ったのでは間に合いません。 副業期間は収益を生んでいませんでしたが、その3年が伸びの土台でした。

サイバー・バズと会ってから3ヶ月

譲渡先は上場企業の株式会社サイバー・バズ。2022年6月頃に話が始まり、9月には適時開示が出ています。先方の社長の熱量が高く、どんどん話が進んだといいます。

吉岡諒氏(ウィルゲート専務取締役COO)によれば、これはかなり早い。一般には6ヶ月ほどかかるもので、ウィルゲートM&Aでも4ヶ月以内に決まるのは40%、6ヶ月で70%という水準です。上場企業が相手だと、DDと最終契約だけで1ヶ月半〜2ヶ月かかります。

ただし、それ以前に相手探しの期間はありました。何社かと面談しており、全部含めると5〜6ヶ月ほど。サイバー・バズと初めて会ってからが3ヶ月でした(M&Aにかかる期間)。

6億円という価格

適時開示された金額は6億円です。本人の想定とのズレも語られています。

最初、自分と同じくらいの起業家の方ともお会いして、やっぱり10億円ぐらいを目指したんですけど……色々お話させていただくと、今ぐらいの金額が相場なのかなというのは思って

売上6億円・営業利益8,000万円で、譲渡価格6億円。 営業利益に対しては約7.5倍にあたります。ただし、成長率と事業の性質で倍率は大きく変わるため、単純な相場としては読めません(会社はいくらで売れるのか、ITサービスの売却相場)。

なお100%譲渡ですが、大島さんは今もWithLIVE社の代表取締役を続けています。

DDで一番きつかったのは「数字」

DD期間は1ヶ月半ほど。焦点は財務状況と事業計画、とくに描いた計画にどれくらいの確実性があるかでした。買い手からの質問は、どれくらいシナジーがあり、この先どれくらい伸びるのかに集中していたといいます。

そして、社員1名の会社ならではの苦労がありました。

数字を出してくださいと言われたタイミングで、何ヶ月前、そういえば結局利益いくら出てたのかな、みたいなのがやっと分かるぐらいな感じでやってたので

日々の案件に追われ、月次を締める習慣がなかった。それがDDに入るときちんと出さなければならず、しかも計画も出せと言われる。これまで全然やってこなかったことなので、そこが一番大変だった、と。

吉岡氏の補足によれば、DDではExcelで50〜100項目の質問がまとめて来ます。過去のトラブル、ユーザーの性別・年代の属性——多くの売り手が一番心が折れる局面です。だからこそ、基本合意で「大体この金額で行く」という約束を交わす前にそこまで対応すると疲弊する。まず「婚約状態」に入ることが重要だ、というのが吉岡氏の助言でした。大島さん自身も、DDに入った時点ではお互いに握手している状態なので、心理的には「とにかくExcelを埋めないと」「事業計画が大変」という実務の負荷が中心だったといいます(デューデリジェンスで何を見られるか、基本合意書で決まること・決まらないこと)。

「エンジニア社長」という強み

吉岡氏が、この事例の構造を説明しています。経営者がエンジニアでない場合、自分で作れないので資金調達してエンジニア組織を作る必要がある。

代表者の人がエンジニアリングできるというところが、今のこの世の中、凄まじいストロングポイントになる

大島さん自身も、営業面での効果を語っています。レーベルから「こういうことはできないか」と聞かれたとき、どれくらいの期間で実現できるかがその場で頭の中で弾けるので、非常にスムーズに答えられた。

逆に「売りにくい会社」とは

ここが、この記事でもっとも多くの読者に当てはまる部分です。吉岡氏の指摘です。

エンジニア社長でない場合、起業したらまず営業して納品して売上を立てる、受託やコンサルティングのモデルで始める人が多い。天才的な社長が営業をガシガシ取って自分で納品し、売上2億円・営業利益6,000万円まで来た、という会社は結構ある。問題は、その後です。売却のタイミングで「次にやりたいことがあるので抜けたい」という人が多い。

営業も自分、納品も自分で、そのご本人がいなくなってしまったら全然回らないよね、というところなので

だから、どういう組織になっていたらM&Aしやすいのか、1年後・2年後のM&Aを見据えてどういう組織・ビジネス状況になっていれば成立しやすいのか、という相談が多いといいます。

利益が出ていても、それが社長個人の稼働から出ているなら、買い手にとっては引き継げない資産になります(売却前に売り手がやるべき準備)。

本人の後悔 ―― 「組織を作っておけばよかった」

社員1名で6億円を実現した本人が、それでもこう述べています。1人で全部やってしまう性格だったので、もう少し前から組織というものに目を向けて採用しておくべきだった。せめてエンジニアが2〜3人いて、仕様書がしっかりしていて、CFOもいれば、全然楽だった。組織はもう少し作ったほうがいい。本当に苦しかったので、と。

「仕様書がしっかりしている」は、DDでも統合でも効きます。 属人的なシステムは、たとえ動いていても引き継ぎコストとして値づけに反映されます。

なお譲渡後、親会社からサポートの人が来て、この点は少しずつ改善し始めているといいます。

統合後に何が変わったか

大島さんが挙げた「M&Aをやって良かったこと」は、資金ではありませんでした。組織というものがなく、自分1人でやっていたのが、今は組織の恩恵を受けている。人を親会社から借りて、一緒に事業をやる。助けてもらっている部分が大きい、と。

一方、経営の仕方は変わっています。一番大きいのは数字周りの責任です。スタートアップ時代は予実を読んで1年後を考えるようなことはせず、目の前のことに必死だった。上場企業のグループ会社になった今は、来年の予算を考えてそれに向けて動く。それがスタートアップとの一番大きな違いだといいます。

ネガティブな点については「ほとんどない」。このサービスがある限りずっとやっていきたい、と語っています。

「売った後も自分のプロダクトを続けたい人」にとって、100%譲渡は矛盾しません。

生活は変わらなかった

6億円が動いた後の変化も、率直でした。

びっくりするぐらい、ほとんど変わってないです

元々かなり田舎に住んでいたので、仕事にコミットする意味も込めて会社の近くに引っ越したくらい。収録時点で31歳。資産運用もしておらず、賃貸のままだといいます。

吉岡氏が、他の売却経験者の傾向を補足しています。会社を抜けるケースでは、一度キャッシュがどんと入る一方で——

役員報酬がなくなって、経費も自分の会社じゃなくなるので切れなくなる……そこに恐怖・不安を感じられる方も結構いらっしゃる

だから多くの人は、資産運用で毎年手堅くこれくらい稼げれば老後も安泰だ、と考える。派手に使ってしまうと運用の元手が減る、という話でした。

なお大島さんは社長を続けているため、この問題には直面していません。


この記事のポイント

  • 社員1名でも6億円の譲渡は成立する
  • 売上約6億円・営業利益約8,000万円に対して譲渡価格6億円(適時開示)
  • 急成長を取りこぼさない鍵は、伸びる前にシステムを安定させておくこと
  • 相手先の開拓は「紹介の紹介」。副業時代の声かけがコロナ時の伸びにつながった
  • 買い手と会ってから3ヶ月で開示。相手探しを含めると5〜6ヶ月
  • 代表者が自分で作れることは、営業でもプロダクトでも強い武器になる
  • 逆に「社長が営業も納品も担っている会社」は、本人が抜けると回らず売りにくい
  • 買い手の最大の懸念は属人性。利益額より「誰がいなくても回るか」
  • DDで一番きついのは数字と事業計画。月次を締める習慣がないと苦しむ
  • 本人の後悔は「もっと早く組織を作るべきだった」。仕様書とCFOの不在
  • 統合の最大の恩恵は資金ではなく「親会社から人を借りられること」
  • 会社を抜けるケースでは、役員報酬と経費が同時に消える恐怖が語られている

話し手

大島 翼おおしま つばさ

株式会社WithLIVE 代表取締役

株式会社WithLIVE 代表取締役。早稲田大学大学院卒業後、ヤフー株式会社を経て独立。2022年9月に株式会社サイバー・バズ(東証グロース)に株式会社WithLIVEを売却。現在も同社の代表取締役として経営に従事している。

この記事のもとになった動画

社長のM&Aチャンネル(@shacho-MA)で公開しているインタビューです。 記事に書ききれなかった細かなやり取りは、動画でご覧いただけます。

  1. 第1話

    学生で起業したアイドル・アーティストと直接話せるサービスを売却!社員1名で売却まで持っていた成功の秘訣

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  2. 第2話

    たった一人で知人のつてでアーティストを集めて、短期間で売却できた成功の秘訣

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    30歳でM&A実現!M&Aで相手企業へは●●を伝えるのが超重要!売却後に社長の生活はどう変わった?

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