着手金・中間金・月額報酬・成功報酬 ― 17項目開示で確認すべきこと

監修 黒瀧 泰介税理士法人グランサーズ 共同代表公開 2026年8月7日
着手金・中間金・月額報酬・成功報酬 ― 17項目開示で確認すべきこと

M&A仲介の費用は、成功報酬だけではありません。着手金、中間金、月額報酬が加わることがあり、これらは成約しなくても発生します。

2024年8月の中小M&Aガイドライン第3版により、これらは契約前に17項目として書面で説明されることになりました。この記事では、各費用の性質と、書面で何を確認すべきかを整理します。

4つの費用の性質

費用 支払時期 成約しなかったら 相場感
着手金 仲介契約の締結時 返らない 0〜300万円
月額報酬 毎月 返らない。期間が延びるほど増える 0〜100万円/月
中間金 基本合意時 契約次第。返らないことが多い 成功報酬の10〜20%程度
成功報酬 クロージング時 発生しない レーマン方式

上の3つは、会社が売れなくても支払うという点が共通しています。

着手金 ― 返らないことを前提に

契約時に支払う費用です。企業価値の算定、資料作成、買い手候補の選定といった初期作業の対価とされます。

成約しなくても返還されないのが通常です。買い手が見つからないまま契約期間が終われば、着手金だけが出ていくことになります。

確認すること

  • 金額はいくらか
  • どの範囲の業務に対する対価か
  • 成約した場合、成功報酬から差し引かれるか(控除されるかどうかで実質負担が変わります)
  • 返還される場合があるか

月額報酬(リテイナーフィー) ― 最も注意が必要

毎月定額で支払う費用です。期間が延びるほど積み上がります。

月100万円で1年かかれば1,200万円。しかも成約しなくても支払いは続きます。

ここには構造的な問題があります。期間が延びても仲介会社は損をしないという点です。むしろ収入が増える。買い手探しを急ぐ動機が弱まります。

確認すること

  • 月額いくらか
  • 上限はあるか(総額でいくらまで、という上限を設定できるか)
  • 成功報酬から控除されるか
  • いつでも解約できるか
  • 支払期間の定めはあるか

月額報酬がある契約では、解約条件が特に重要です。動きが鈍いと感じたときに止められるかどうか。

中間金 ― 破談リスクを負う費用

基本合意の締結時に支払う費用です。成功報酬の10〜20%程度が一般的とされます。

問題は、基本合意の後に破談する可能性があることです。デューデリジェンスで問題が見つかり、条件が折り合わずに終わる。この場合、中間金が返還されるかどうかは契約次第です。

多くの契約では返還されません。「基本合意まで進めた業務の対価」という位置づけだからです。

確認すること

  • 金額はいくらか、成功報酬の何%か
  • 破談した場合に返還されるか
  • 成功報酬から控除されるか
  • どの時点で支払義務が発生するか(基本合意の締結日か、その後か)

完全成功報酬制なら安心か

着手金も月額報酬も中間金もない、という料金体系です。売り手にとってリスクが小さいのは確かです。

ただし注意点があります。

1. 成功報酬の水準が高めに設定されていることがある。総額で比べないと分かりません。

2. 最低手数料が高いことがある。譲渡価格が小さい案件では、ここが実質的な費用になります(最低手数料の罠)。

3. 基準額が移動総資産になっていることがある。同じ料率でも、算定の基礎が違えば金額は2倍以上変わります(M&A仲介の手数料の仕組み)。

「完全成功報酬」という言葉だけで判断しないでください。

17項目で確認すべきこと

書面で説明を受ける際、社長として押さえるべき項目を挙げます。

費用の全体像

  • 着手金の有無と金額、成功報酬から控除されるか
  • 月額報酬の有無と金額、総額の上限、控除の有無
  • 中間金の有無と金額、破談時の返還、控除の有無
  • 成功報酬の料率
  • 成功報酬の基準額(株価/企業価値/移動総資産)← 最重要
  • 最低手数料の金額
  • 実費(交通費、デューデリジェンス費用など)の負担

契約条件

  • 契約期間
  • 専任条項の有無と期間
  • 中途解約の可否と違約金
  • テール条項(契約終了後に成約した場合の手数料。期間と対象範囲)
  • 買い手側から受け取る手数料の有無と水準

比較のしかた

料率表を並べても意味がありません。円で出させてください。

各社に同じ条件で依頼します。

  1. 想定どおりの価格で成約した場合の総額(例:1億円)
  2. 想定を下回った場合の総額(例:5,000万円)← 最低手数料の影響が出る
  3. 成約しなかった場合に支払う額(着手金+月額報酬×想定期間)

この3つを並べると、実際の差が見えます。とくに3番目を出してもらうと、その会社のリスク配分が分かります。

書面が出てこなければ、そこで終わり

ガイドライン第3版は、契約前の書面説明を求めています。

出てこない、口頭で済ませようとする、質問をはぐらかす。このいずれかがあれば、その時点で候補から外して構いません。ガイドラインからの逸脱であり、それ以外の説明も信用しにくくなります。

M&A支援機関登録制度への登録の有無も、あわせて確認してください。

提示された条件が妥当か判断したい方は、無料相談からお問い合わせください。契約前の書面を一緒に確認します。

監修

黒瀧 泰介

黒瀧 泰介税理士法人グランサーズ 共同代表

青森県弘前市出身。早稲田大学商学部卒業。監査法人トーマツにて会計監査に従事したのち、税理士法人山田&パートナーズで相続コンサルティングや組織再編コンサルティングなど、法人・個人を問わず幅広い税務コンサルティング業務に携わる。

2015年に税理士法人グランサーズを開設。スタートアップからIPO準備支援まで、あらゆる成長段階の企業をサポートし、税務会計顧問にとどまらない「経営を強くするコンサルティング」で中小企業経営者から信頼を得ている。

YouTube「社長の資産防衛チャンネル」に税理士として出演し、オーナー経営者向けの税務・資産防衛について解説している。

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