M&A仲介会社の選び方 7つのチェックポイント

監修 長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役公開 2026年8月21日
M&A仲介会社の選び方 7つのチェックポイント

M&Aは一生に一度の取引です。しかも相手選びをやり直すのは難しい。専任条項を結べば、一定期間は他社に相談できなくなります。

だからこそ、契約前の確認が結果を大きく左右します。ここでは7つのチェックポイントを、重要な順に挙げます。

1. M&A支援機関に登録しているか

中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録しているかを確認してください。登録には中小M&Aガイドラインの遵守を宣言することが要件になっています。

登録の有無は同制度のサイトで検索できます。登録していない業者を選ぶ積極的な理由は、通常ありません。

なお登録は「最低限の要件を満たしている」という意味であって、実力の保証ではありません。ここは足切りの基準として使います。

2. 手数料の17項目を書面で出すか

2024年8月のガイドライン第3版により、契約締結前に手数料に関する17項目を書面で説明することが求められています。

書面が出てこない、口頭で済ませようとする、質問をはぐらかす。このいずれかがあれば、その時点で候補から外して構いません。ガイドラインからの逸脱であり、それ以外の説明も信用しにくくなります。

とくに確認すべきは次の3点です(詳細はM&A仲介の手数料の仕組み)。

  • 基準額は株価基準か、企業価値基準か、移動総資産基準か(手数料が2倍以上変わります)
  • 最低手数料はいくらか
  • 買い手側からいくら受け取るか

3. 買い手候補を何社出せるか

譲渡価格を最も押し上げるのは、買い手が複数いることです。1社としか話していない案件と、3社が競合している案件では、提示価格が明確に変わります。

確認すべきこと。

  • 具体的に何社に打診できる見込みか
  • どういう業種・地域の買い手を想定しているか
  • 同業以外の候補も想定しているか(隣接業種、その地域に進出したい会社、投資会社)
  • 過去に自社と似た規模・業種の案件を扱った実績があるか

「多数のネットワークがあります」という抽象的な答えしか返ってこない場合、実態を疑ってください。手数料が多少高くても、買い手を多く集められる会社のほうが結果的に手取りは増えます。

4. 専任条項の期間と解除条件

多くの仲介契約には専任条項が入り、その期間は他社に相談できなくなります。

  • 期間は何ヶ月か(3〜6ヶ月が一般的。1年を超えるものは慎重に)
  • 中途解約はできるか。違約金は発生するか
  • テール条項はあるか。契約終了後に、その仲介会社が紹介した相手と成約した場合、期間内なら手数料が発生する条項です。期間(通常1〜2年)と対象範囲を確認してください

長期の専任契約を結んだうえに動きが鈍い、という状態が最も避けたいパターンです。

5. 担当者が自社の業種を理解しているか

ここが実は最も差が出ます。

初回の面談で、決算書の数字以外に何を聞いてくるかを見てください。建設業なら許可の種類と経審の評点、技術者の構成。運送業なら車両とドライバーの確保状況。IT なら技術者数と受託・自社サービスの比率。

業種特有の価値を聞かずに価格を提示してくる担当者は、その価値を買い手にも説明できません。結果として、価格が伸びません。

あわせて確認すべきこと。

  • 担当者は最後まで変わらないか(営業担当と実務担当が別で、契約後に引き継がれることがあります)
  • 担当者の経験年数と、扱った案件数
  • 会社の看板ではなく、その人が何をしてくれるか

6. 「売らない」という選択肢も一緒に検討してくれるか

相談に行って、いきなり売却を前提に話が進む場合は注意してください。

誠実な担当者は、いま売るべきでない理由があればそれを言います。「業績が回復してからのほうが高い」「先に社長依存を解消したほうがよい」「社内承継の可能性も検討したか」。

仲介会社の報酬は成約しなければ発生しません。それでも「今は待ったほうがよい」と言える担当者は、信用に値します。

7. 悪い兆候がないか

次のいずれかがあれば、距離を置いてください。

判断を急がせる。 「今月中に決めないと買い手が逃げる」「他社も検討している」。時間的圧力をかけてくる相手と交渉して、条件がよくなることはありません。

高すぎる価格を提示してくる。 契約を取るために相場から乖離した価格を示し、実際の交渉では大幅に下げてくる手法があります。なぜその価格なのか、算定の内訳を必ず求めてください。説明できないなら、根拠がない可能性があります。

デメリットを説明しない。 ロックアップ(引き継ぎ期間の拘束)、決定権の喪失、従業員の反応。これらに触れずに良い面だけを話す相手は、判断材料を意図的に狭めています。

買い手が最初から1社に決まっている。 「ちょうど御社を探している買い手がいます」という入り方には注意が必要です。競争が働かないため、価格が伸びません。

契約書を持ち帰らせない、その場で押させようとする。 論外です。

これらが重なる場合は、M&Aの詐欺的な手口と見分け方も合わせて確認してください。

実際の進め方

1社目で決めないでください。最低2〜3社から話を聞き、次を同じ条件で比較します。

比較項目 確認方法
想定譲渡価格 算定の内訳とセットで書面をもらう
手数料の総額 想定価格1億円の場合、5,000万円の場合の総額を円で出させる
買い手候補の数 具体的な社数と想定業種
専任条項 期間・解除条件・テール条項
担当者 業種理解と、最後まで担当するか

同じ会社に対する評価が、社によって倍近く違うことは珍しくありません。比較しなければ、それが高いのか安いのか判断できません。

セカンドオピニオンとして、事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県にある公的機関、相談無料)を使う手もあります。営業目的がないぶん、中立的な意見が聞けます。

手数料の安さだけで選ばない

最後に、逆方向の注意です。手数料を最優先にすると、結果的に損をすることがあります。

手数料が500万円安い会社を選んだ結果、買い手候補が1社しか出ず、譲渡価格が2,000万円低くなれば、差し引き1,500万円の損です。

判断すべきは「手数料の安さ」ではなく「手取りの大きさ」です。想定譲渡価格から想定手数料を引いた数字で比較してください。

主要な仲介会社の手数料体系を並べた比較表も用意しています。

提示された条件が妥当かどうか判断したい方は、無料相談からお問い合わせください。契約前の書面を一緒に確認します。

監修

長谷川 桂介

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役

経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。

YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。

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