M&A仲介・FA・マッチングサイトの違いと使い分け

M&Aの相談先には、大きく3つの選択肢があります。M&A仲介会社、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)、マッチングサイト。名前は似ていますが、立ち位置がまったく違います。
最初に押さえるべき違いは一点だけです。その相手は、自分だけの味方なのか、それとも買い手の味方でもあるのか。
構造の違い
【仲介】 売り手 ──── 仲介会社 ──── 買い手
(双方から手数料)
【FA】 売り手 ── FA FA ── 買い手
(片方だけから手数料)
【マッチング】 売り手 ──── プラットフォーム ──── 買い手
(場を提供するだけ)
| M&A仲介 | FA | マッチングサイト | |
|---|---|---|---|
| 立場 | 売り手と買い手の両方につく | 片方だけにつく | どちらにもつかない |
| 報酬 | 双方から受け取る | 依頼者からのみ | 掲載料・成約料(低額) |
| 交渉 | まとめることを優先 | 依頼者の条件を最大化 | 当事者同士 |
| 費用感 | 数百万〜数千万円 | 同等かやや高い | 数万〜数十万円 |
| 買い手候補 | 自社ネットワーク | 幅広く探す | 登録会員 |
| 向く規模 | 中小企業の大半 | 譲渡額が大きい案件 | 小規模・スモールM&A |
仲介 ― 数は多いが、利益相反がある
日本の中小M&Aで最も多いのが仲介です。売り手と買い手の間に立ち、双方から手数料を受け取ります。
利点は、成約までが速いこと。買い手候補を自社で抱えているため、探す時間が短い。双方の事情を知っているぶん、条件のすり合わせも早い。中小企業のM&Aが半年から1年で完結するのは、この仕組みがあるからです。
問題は、構造的な利益相反です。仲介会社の報酬は成約したときに発生します。つまりまとまること自体に強い動機がある。売り手が「もう少し高く」と粘るより、双方が飲める価格でまとめたほうが、仲介にとっては確実です。
さらに、買い手側からも手数料を受け取ります。継続的に案件を持ち込める買い手は、仲介にとって重要な顧客です。一度きりの売り手と、繰り返し取引する買い手。どちらを大事にするかは、構造が答えを出しています。
これは個々の担当者の誠実さの問題ではなく、仕組みの問題です。だからこそ2024年8月の中小M&Aガイドライン第3版で、買い手側から受け取る手数料の開示が求められるようになりました。
FA ― 自分だけの味方だが、費用と時間がかかる
FAは、売り手か買い手のどちらか一方だけと契約します。依頼者の利益を最大化することが仕事なので、価格を粘り、条件を詰め、必要なら交渉を打ち切ることもできます。
利点は明快です。利益相反がなく、こちらの立場で戦ってくれる。買い手候補も自社ネットワークに限定せず広く探すため、想定外の買い手が出てくることがあります。
欠点は費用と時間です。手数料水準は仲介と同等かそれ以上で、かつ買い手側にもFAが付くと交渉が長引きます。売り手・買い手の双方に代理人が立つため、成約までの期間は仲介より長くなる傾向があります。
譲渡額が数億円を超えると、交渉で数千万円が動きます。この規模になると、FAの費用を払っても十分に見合います。逆に譲渡額が小さい案件では、費用倒れになりやすいのが実情です。
マッチングサイト ― 費用は安いが、自力で進める必要がある
バトンズ、トランビなどのプラットフォームに案件を掲載し、買い手からの連絡を待つ形です。費用は圧倒的に安く、数万円から始められます。
向いているのは、譲渡額が数千万円以下の小規模案件です。仲介の最低手数料が2,000万円だとすれば、3,000万円の案件で仲介を使うと手残りがほとんど消えます。この規模ではマッチングサイトが現実的な選択肢になります。
注意点は3つ。
第一に、交渉も書類も自分でやることになります。企業概要書の作成、価格交渉、契約書の確認。専門家を個別に雇う必要があり、その費用は別途かかります。
第二に、買い手の質を自分で見極める必要があります。資金の裏付けがない、条件を後から変えてくる、といったケースが実際にあります。
第三に、情報漏えいのリスクです。掲載情報から会社を特定されることがあります。業種と地域と規模を書けば、業界内では分かってしまう。従業員や取引先に知られると、話がまとまる前に混乱が起きます。
使い分けの目安
| 譲渡額の目安 | 現実的な選択肢 |
|---|---|
| 〜3,000万円 | マッチングサイト中心。専門家はスポットで使う |
| 3,000万円〜3億円 | 仲介が中心。ただし手数料と最低手数料を必ず比較する |
| 3億円〜 | FAを検討する価値が出てくる。交渉で動く金額が費用を上回る |
加えて、公的機関という選択肢もあります。事業承継・引継ぎ支援センターは各都道府県にあり、相談は無料です。営業目的がないぶん中立的な話が聞けます。情報は硬めですが、最初にセカンドオピニオンを取る先としては有力です。
どれを選ぶにせよ、確認すべきこと
相談先の形式より、担当者と条件を確認するほうが実務的には重要です。
- 手数料の17項目を書面で出してもらう。算定の基礎が譲渡価格か移動総資産か、最低手数料はいくらか、買い手側からいくら受け取るか
- 専任条項の期間。一定期間、他社に相談できなくなる条項が入るのが通常。期間と解除条件を確認する
- 買い手候補を何社出せるか。1社としか話さない案件と、複数が競合する案件では価格が変わります
- 担当者が自社の業種を分かっているか。業種特有の価値(許認可、有資格者、元請け関係)を説明できない担当者では、価格が伸びません
詳しくはM&A仲介会社の選び方 7つのチェックポイントとM&A仲介の手数料の仕組みを参照してください。
そして、1社目で決めないこと。最低でも2〜3社から話を聞いて、提示された価格と条件を並べてください。同じ会社に対する評価が、社によって倍近く違うことは珍しくありません。
どこに相談すべきか迷っている段階でのご相談も承っています。無料相談からお問い合わせください。
監修

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役
経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。
YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。
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