名義株・少数株主の整理 ― 売る前に片付けておくべき最優先事項

監修 長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役公開 2026年10月4日
名義株・少数株主の整理 ― 売る前に片付けておくべき最優先事項

株式譲渡は、株主が株を売る取引です。

当たり前に聞こえますが、中小企業では「誰が株主か」が曖昧なことが珍しくありません。そしてこれは、売却の話が進んだ最終段階で発覚します。

なぜ最優先なのか

買い手が欲しいのは、通常100%の株式です。一部でも取れないと、

  • 少数株主に重要な決議を止められる
  • 株主総会のたびに同意を取る必要が出る
  • 将来の売却や組織再編が面倒になる

このため、99%では条件を満たさないことがあります。1%が取れないだけで価格が下がるか、取引が成立しません。

M&Aが破談になる典型パターンの中でも、これは「事前に分かっていれば防げたもの」の筆頭です。

3つの型

型1:名義株

1990年の商法改正まで、株式会社の設立には発起人が7人以上必要でした。実際には創業者1人の会社でも、親族や知人の名前を借りて株主にしていた例が多くあります。

名簿上はその人の株ですが、出資したのは創業者。この状態を名義株といいます。

数十年経つと、

  • 名義人が亡くなり、相続人に権利が移っている
  • 相続人は事情を知らず、「父の財産だ」と主張する
  • 名義人と連絡が取れない

といった事態になります。

出資したのが誰かを立証する資料(当時の通帳、払込の記録、名義借りの覚書)が残っていれば交渉できますが、数十年前の資料は大抵ありません。

型2:相続による分散

先代が亡くなり、株が兄弟や配偶者に分かれている。現社長は過半数を持っているが100%ではない。

経営は問題なく回っていても、売却になると全員の同意が要ります。売却に反対する親族が1人いるだけで止まります。

金額が絡むため、感情的な対立に発展しやすい。ここは時間がかかる前提で動いてください。

型3:退職した役員・従業員の持株

役員や従業員に株を持たせていて、退職後も買い取っていないケース。

従業員持株会の規約で退職時の買取が定められていれば問題ありませんが、個人で持たせたまま放置していると、売却時に交渉相手になります。

実例として、GENDAが買収したエーセツは、株主が親族6名に分かれていて社長の持分は7.75%でした。それでも6名全員から買い集めて100%取得が成立しています(買い手名鑑)。散っていても売れないわけではありませんが、手間と時間は確実に増えます。

整理の進め方

1. 現状を確認する

  • 株主名簿(作っていない会社も多い)
  • 法人税申告書の別表二(同族会社等の判定に関する明細書)
  • 定款、設立時の登記、過去の株主総会議事録

別表二には株主と持株数が書かれているので、名簿がなくてもここから追えます。過去10年分を並べると、いつ誰に動いたかが見えます。

2. 連絡が取れるかを確認する

ここで時間がかかります。名義人が亡くなっていれば相続人を調べる必要があり、相続人が複数なら全員と話すことになります。

連絡が取れない株主がいる場合、解決には年単位かかることがあります。所在不明株主の株式売却制度(会社法197条)は、5年間連絡が取れないことが要件です。

3. 買い取る

会社が買う(自己株式の取得)か、社長個人が買うかの2通りです。

税務の扱いが変わります。会社が買うとみなし配当が生じ、売る側は総合課税になることがあります。社長個人が買えば、売る側は譲渡所得(20.315%)です。相手の手取りが変わるので、交渉の前に試算してください(会社売却でかかる税金)。

価格をどう決めるかも論点です。相続税評価額を使うことが多いものの、相手が納得するとは限りません。

4. 記録を残す

株式譲渡契約書、株主総会または取締役会の承認(譲渡制限会社の場合)、株主名簿の書き換え。口約束で済ませると、同じ問題が将来また起きます。

いつやるか

売却を検討し始めた最初の段階です。

理由は3つあります。

  1. 時間がかかる。相続人の調査や交渉で年単位になることがある
  2. 売却を理由にすると足元を見られる。「会社を売るから株を譲ってほしい」と言えば、相手は高く売ろうとする
  3. 買い手に先に見つかると信用の問題になる。ベンダーDDで書いたとおり、後から出るのがいちばん悪い

売却と関係ない時期に、事業承継の準備として整理するのが最も安く済みます。

まとめ

  • 買い手は通常100%を求める。99%では条件を満たさないことがある
  • 型は3つ。設立時の名義株、相続による分散、退職者の持株
  • 現状確認は株主名簿と法人税申告書の別表二から
  • 連絡が取れない株主がいると年単位かかる
  • 会社が買うか社長個人が買うかで、相手の税負担が変わる
  • 売却の話が出る前にやる。売却を理由にすると価格が上がる

株主の状況に不安がある方は、無料相談からお問い合わせください。別表二があれば、整理が必要かどうかの見当をお伝えできます。

監修

長谷川 桂介

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役

経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。

YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。

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