M&Aマッチングサイトは売り手にとって使えるか

監修 長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役公開 2026年8月6日
M&Aマッチングサイトは売り手にとって使えるか

M&Aマッチングサイトは、売り手が案件情報を掲載し、買い手が閲覧して申し込む形のプラットフォームです。バトンズ、トランビなどが知られています。

仲介会社を通さないため、費用が圧倒的に安い。一方で、交渉も書類作成も自分で進めることになります。

結論から言えば、譲渡価格が数千万円規模なら有力な選択肢、数億円規模なら仲介やFAのほうが合理的です。

費用の比較

手段 費用の目安
M&A仲介 数百万〜数千万円(最低手数料が効く)
マッチングサイト 数万円〜数十万円(掲載料+成約手数料)
事業承継・引継ぎ支援センター 相談無料(成約時に一部費用が生じる場合あり)

譲渡価格3,000万円の案件で、仲介の最低手数料が2,000万円なら手残りは1,000万円です。この規模では仲介が成立しません(最低手数料の罠)。

マッチングサイトなら、費用は数十万円で収まります。手残りの差は決定的です。

向いているケース

  • 譲渡価格が3,000万円以下
  • 1〜数店舗の飲食・小売、小規模なサービス業
  • 事業の一部だけを譲渡したい
  • 社長自身が交渉に対応できる
  • 時間に余裕がある(買い手が現れるまで待てる)

向いていないケース

  • 譲渡価格が1億円を超える
  • 従業員が多く、雇用条件の交渉が複雑
  • 許認可の承継が絡む
  • 秘密保持を厳格に守りたい
  • 社長が交渉に時間を割けない

3つの注意点

1. 掲載情報から特定される

最も現実的なリスクです。

掲載する情報は、業種、地域、売上規模、従業員数、譲渡理由など。書き方によっては業界内で簡単に特定されます。

  • ニッチな業種を細かく書く
  • 地域を市町村レベルで書く
  • 特徴的な技術や設備に触れる

これらが重なれば、同業には分かります。そして掲載は不特定多数が見られる状態です。仲介経由の打診と違い、誰が見たかを管理できません。

対策は、粒度を粗くすることです。地域は「関東」まで、売上は「1〜3億円」のレンジで。ただし粗くしすぎると買い手の関心を引けません(秘密保持はどこまで守られるか)。

従業員や取引先に見つかるリスクも考慮してください。

2. 買い手の質を自分で見極める

仲介会社が入っていれば、ある程度の選別が働きます。マッチングサイトでは、申し込んできた相手が本当に買えるのかを、自分で判断する必要があります。

確認すべきこと

  • 買収資金の裏付けはあるか(自己資金か、借入の目処は立っているか)
  • 法人か個人か。法人なら決算内容を見せてもらえるか
  • 過去に買収の実績があるか
  • 買収後の方針は明確か(従業員をどうするか、事業をどう伸ばすか)
  • 連絡のレスポンスと、話の一貫性

条件を後から変えてくる、資金の話を避ける、急がせる。こうした相手には注意してください。

なお、買い手が個人のケースも増えています。独立を目指す会社員や、複数事業を持ちたい個人事業主。悪いわけではありませんが、資金力と経営経験の確認は必須です。

3. 書類と交渉を自分でやることになる

マッチングサイトが提供するのは「場」です。以下は自分で進めます。

  • 事業の概要資料の作成
  • 秘密保持契約の締結
  • 価格の交渉
  • 基本合意書の作成
  • デューデリジェンスへの対応
  • 最終契約書の作成・確認
  • クロージングの手続き

とくに最終契約書は、必ず弁護士に見てもらってください。表明保証と補償条項の設計を誤ると、譲渡代金を超える請求を受けるリスクが残ります(最終契約(SPA)の重要条項)。

専門家をどこで使うか

「全部自分でやる」必要はありません。スポットで専門家を使うのが現実的です。

局面 誰に 費用の目安
価格の妥当性の確認 税理士・会計士 数万〜数十万円
基本合意書の確認 弁護士 数万〜十数万円
最終契約書の作成・確認 弁護士 数十万円〜
税務の設計 税理士 数万〜数十万円

全部合わせても、仲介の最低手数料より大幅に安く収まることが多い。「安く済ませる」ではなく「必要なところに使う」という考え方です。

併用という選択

マッチングサイトに掲載しつつ、事業承継・引継ぎ支援センターにも相談するという進め方もあります。公的機関は相談無料で、中立的な意見が聞けます(事業承継・引継ぎ支援センターの使いどころ)。

また、マッチングサイトによってはアドバイザーの紹介制度を持っています。自力で進めるのが不安なら、これを使う手もあります。ただし紹介されたアドバイザーの費用体系は、別途確認してください。

まとめ

  • 費用は数万円〜数十万円。仲介と比べて圧倒的に安い
  • 譲渡価格3,000万円以下なら有力な選択肢
  • 掲載情報から特定されるリスクがある。粒度に注意
  • 買い手の資金力と方針を、自分で見極める必要がある
  • 書類と交渉は自力。最終契約書だけは必ず弁護士に
  • 専門家はスポットで使う。それでも仲介より安く収まることが多い

自社の規模でどの手段が現実的か知りたい方は、無料相談からお問い合わせください。

監修

長谷川 桂介

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役

経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。

YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。

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