M&Aマッチングサイトは売り手にとって使えるか

M&Aマッチングサイトは、売り手が案件情報を掲載し、買い手が閲覧して申し込む形のプラットフォームです。バトンズ、トランビなどが知られています。
仲介会社を通さないため、費用が圧倒的に安い。一方で、交渉も書類作成も自分で進めることになります。
結論から言えば、譲渡価格が数千万円規模なら有力な選択肢、数億円規模なら仲介やFAのほうが合理的です。
費用の比較
| 手段 | 費用の目安 |
|---|---|
| M&A仲介 | 数百万〜数千万円(最低手数料が効く) |
| マッチングサイト | 数万円〜数十万円(掲載料+成約手数料) |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 相談無料(成約時に一部費用が生じる場合あり) |
譲渡価格3,000万円の案件で、仲介の最低手数料が2,000万円なら手残りは1,000万円です。この規模では仲介が成立しません(最低手数料の罠)。
マッチングサイトなら、費用は数十万円で収まります。手残りの差は決定的です。
向いているケース
- 譲渡価格が3,000万円以下
- 1〜数店舗の飲食・小売、小規模なサービス業
- 事業の一部だけを譲渡したい
- 社長自身が交渉に対応できる
- 時間に余裕がある(買い手が現れるまで待てる)
向いていないケース
- 譲渡価格が1億円を超える
- 従業員が多く、雇用条件の交渉が複雑
- 許認可の承継が絡む
- 秘密保持を厳格に守りたい
- 社長が交渉に時間を割けない
3つの注意点
1. 掲載情報から特定される
最も現実的なリスクです。
掲載する情報は、業種、地域、売上規模、従業員数、譲渡理由など。書き方によっては業界内で簡単に特定されます。
- ニッチな業種を細かく書く
- 地域を市町村レベルで書く
- 特徴的な技術や設備に触れる
これらが重なれば、同業には分かります。そして掲載は不特定多数が見られる状態です。仲介経由の打診と違い、誰が見たかを管理できません。
対策は、粒度を粗くすることです。地域は「関東」まで、売上は「1〜3億円」のレンジで。ただし粗くしすぎると買い手の関心を引けません(秘密保持はどこまで守られるか)。
従業員や取引先に見つかるリスクも考慮してください。
2. 買い手の質を自分で見極める
仲介会社が入っていれば、ある程度の選別が働きます。マッチングサイトでは、申し込んできた相手が本当に買えるのかを、自分で判断する必要があります。
確認すべきこと
- 買収資金の裏付けはあるか(自己資金か、借入の目処は立っているか)
- 法人か個人か。法人なら決算内容を見せてもらえるか
- 過去に買収の実績があるか
- 買収後の方針は明確か(従業員をどうするか、事業をどう伸ばすか)
- 連絡のレスポンスと、話の一貫性
条件を後から変えてくる、資金の話を避ける、急がせる。こうした相手には注意してください。
なお、買い手が個人のケースも増えています。独立を目指す会社員や、複数事業を持ちたい個人事業主。悪いわけではありませんが、資金力と経営経験の確認は必須です。
3. 書類と交渉を自分でやることになる
マッチングサイトが提供するのは「場」です。以下は自分で進めます。
- 事業の概要資料の作成
- 秘密保持契約の締結
- 価格の交渉
- 基本合意書の作成
- デューデリジェンスへの対応
- 最終契約書の作成・確認
- クロージングの手続き
とくに最終契約書は、必ず弁護士に見てもらってください。表明保証と補償条項の設計を誤ると、譲渡代金を超える請求を受けるリスクが残ります(最終契約(SPA)の重要条項)。
専門家をどこで使うか
「全部自分でやる」必要はありません。スポットで専門家を使うのが現実的です。
| 局面 | 誰に | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 価格の妥当性の確認 | 税理士・会計士 | 数万〜数十万円 |
| 基本合意書の確認 | 弁護士 | 数万〜十数万円 |
| 最終契約書の作成・確認 | 弁護士 | 数十万円〜 |
| 税務の設計 | 税理士 | 数万〜数十万円 |
全部合わせても、仲介の最低手数料より大幅に安く収まることが多い。「安く済ませる」ではなく「必要なところに使う」という考え方です。
併用という選択
マッチングサイトに掲載しつつ、事業承継・引継ぎ支援センターにも相談するという進め方もあります。公的機関は相談無料で、中立的な意見が聞けます(事業承継・引継ぎ支援センターの使いどころ)。
また、マッチングサイトによってはアドバイザーの紹介制度を持っています。自力で進めるのが不安なら、これを使う手もあります。ただし紹介されたアドバイザーの費用体系は、別途確認してください。
まとめ
- 費用は数万円〜数十万円。仲介と比べて圧倒的に安い
- 譲渡価格3,000万円以下なら有力な選択肢
- 掲載情報から特定されるリスクがある。粒度に注意
- 買い手の資金力と方針を、自分で見極める必要がある
- 書類と交渉は自力。最終契約書だけは必ず弁護士に
- 専門家はスポットで使う。それでも仲介より安く収まることが多い
自社の規模でどの手段が現実的か知りたい方は、無料相談からお問い合わせください。
監修

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役
経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。
YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。
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