COC条項(チェンジオブコントロール)― 売る直前に取引が止まる理由

監修 長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役公開 2026年10月17日
COC条項(チェンジオブコントロール)― 売る直前に取引が止まる理由

会社の株主が変わると、取引先との契約が切れることがあります。

契約書に「相手方の支配権に変更が生じた場合、本契約を解除できる」と書かれている場合です。これをCOC条項(チェンジオブコントロール条項)といいます。

株式譲渡は会社そのものを渡す形なので、契約は自動で引き継がれます。株式譲渡と事業譲渡の違いで書いたとおりです。COC条項は、その唯一の例外になります。

なぜ最終段階で問題になるのか

この条項は、デューデリジェンスで契約書を全部読んだときに見つかります。つまり基本合意を結んだ後です。

そこまで来ると、売り手は心理的にも引き返しにくい。買い手は「この取引先が切れるなら、その売上は見込めない」と言ってくる。結果として、次のどれかになります。

  1. 取引先に同意をもらいに行く … 売却を打ち明けることになる
  2. 価格を下げる … その取引の売上を評価から外される
  3. 条件付きにする … 同意が取れたら満額、取れなければ減額(アーンアウトの形)
  4. 破談 … 主要取引がそれ1本だった場合

1を選ぶと、秘密保持の前提が崩れます。まだ成立していない段階で取引先に知らせることになり、そこから漏れる可能性があります(秘密保持はどこまで守られるか)。

どういう契約に入っていることが多いか

経験上、次の順で見つかります。

1. 銀行の融資契約

シンジケートローンや制度融資には、ほぼ入っています。「期限の利益喪失事由」として書かれていることが多く、条項の名前がCOCでないこともあります。一括返済を求められる形なので、金額の影響が最も大きい。

2. 大手企業との取引基本契約

買い手が同業だと、取引先から見て「競合に情報が渡る」ことになります。ここで解除権が行使される例は実際にあります。

3. 代理店契約・フランチャイズ契約

本部の承諾が必要と明記されているのが普通です。承諾されなければ看板を失います。

4. オフィス・店舗の賃貸借契約

連帯保証人の変更とセットで、貸主の承諾が要ることがあります。

5. ソフトウェアのライセンス契約

法人単位のライセンスで、譲渡禁止や支配権変更時の再契約が定められていることがあります。業務システムが止まると実害が出ます。

「同意が要る」と「解除できる」は違う

契約書の書き方は大きく2つに分かれます。

書き方 意味 重さ
事前の書面による承諾を要する 相手の承諾が条件 重い。取りに行くしかない
解除することができる 相手に解除権があるだけ 軽い。使われないことも多い

後者は、相手に取引を続ける経済的な理由があれば、使われません。実際には通知だけで済むことがほとんどです。ここを見極めずに「COC条項がある=アウト」と考えると、不必要に価格を譲ることになります。

いつ調べるべきか

売ると決める前です。遅くとも、仲介会社と契約する前には把握しておいてください。

理由は2つあります。デューデリジェンスで買い手に先に見つけられると、こちらが知らなかったという事実が信用の問題になること。そして、事前に分かっていれば打ち手が増えることです。

調べ方

手元の契約書を全部出して、次の語を探します。

  • 支配権、経営権、議決権
  • 株主の変更、資本構成の変更
  • チェンジ・オブ・コントロール、COC
  • 期限の利益の喪失(融資契約)
  • 承諾、同意、事前の書面

該当した契約を、金額の大きい順に並べる。これだけで、どこが交渉の焦点になるかが先に分かります。

事前にできること

条項を外す交渉は、売却と関係ない時期にやる。契約更新のタイミングで、通常の条件見直しとして持ちかけるのが自然です。売却直前に言い出すと、理由を察されます。

代替可能性を作っておく。その取引先が売上の3割を占めていて、切れたら事業が成り立たないなら、COC条項の有無に関係なく価格は下がります(買い手が見つからない会社の特徴)。取引先の分散は、COC対策としても効きます。

融資は借換えを検討する。条項のない金融機関に借り換えておけば、論点が1つ消えます。ただし経営者保証の扱いとセットで考える必要があります。

まとめ

  • 株式譲渡では契約は自動で引き継がれる。COC条項はその例外
  • 見つかるのはデューデリジェンスの段階。基本合意の後なので引き返しにくい
  • 入りやすいのは融資契約、大手との取引基本契約、代理店契約、賃貸借、ソフトライセンス
  • 「承諾が要る」と「解除できる」は重さが違う。一律に諦めない
  • 調べるのは売ると決める前。知らずに指摘されると信用の問題になる

自社の契約にどの程度のリスクがあるか分からない方は、無料相談からお問い合わせください。主要な契約の種類をうかがえば、どこを先に見るべきかをお伝えできます。

監修

長谷川 桂介

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役

経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。

YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。

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