ノンネームシート・企業概要書(IM)とは

買い手を探す段階で使う資料は2種類あります。ノンネームシートと企業概要書(IM)です。
役割がまったく違い、どちらも社長が中身を確認すべき資料です。仲介会社任せにすると、会社が特定されたり、逆に関心を持たれないまま時間が過ぎたりします。
ノンネームシート ― 社名を伏せた1枚
買い手候補への最初の打診に使う、A4で1枚程度の資料です。社名が分からないように書くのが原則です。
記載する内容
- 業種(粒度を調整する)
- 地域(都道府県ではなく「関東」など広めに)
- 売上規模(レンジで表記)
- 営業利益の水準(レンジ)
- 従業員数(レンジ)
- 譲渡理由(後継者不在など)
- 特徴・強み
- 希望する譲渡形態
社長が確認すべきこと
1. 自社が特定されないか。
これが最大の確認点です。業界内の人が読んで「あの会社だ」と分かってしまう記述になっていないか。
- ニッチな業種を細かく書いていないか
- 地域が狭すぎないか
- 特徴的な技術や取引先を書いていないか
- 数字が具体的すぎないか
「北関東・産業用機械の部品加工・年商8億円・従業員40名・特殊な◯◯工法」と書けば、同業には特定されます。粒度を粗くしてください(秘密保持はどこまで守られるか)。
2. 強みが伝わるか。
一方で、粗くしすぎると誰も関心を持ちません。特定されない範囲で、買い手が「話を聞いてみたい」と思う要素を入れる必要があります。
- 「取得に年単位かかる許認可を保有」(許可名は書かない)
- 「有資格者が◯名在籍」
- 「創業◯十年、主要取引先との取引継続◯年以上」
- 「直近3期増収増益」
3. 譲渡理由が納得できるか。
買い手が最初に疑うのは「なぜ売るのか」です。後継者不在、体力的な問題、選択と集中。曖昧だと、隠している問題があると勘繰られます。
企業概要書(IM) ― NDA締結後の詳細資料
関心を示した買い手と秘密保持契約を結んだうえで開示する、20〜40ページ程度の資料です。IM(Information Memorandum)と呼ばれます。
記載する内容
- 会社概要(社名、沿革、資本構成、役員)
- 事業内容の詳細
- 財務情報(3〜5期分の決算、正常収益力の説明)
- 主要取引先と売上構成
- 組織図、従業員の構成
- 設備、拠点、許認可
- 市場環境と競合
- 今後の見通し
- 譲渡条件の希望
社長が確認すべきこと
1. 正常収益力の説明が入っているか。
決算書の営業利益をそのまま載せているIMは、価格を安く見せています。役員報酬の適正超過分、節税目的の保険料、私的性格の経費を戻した数字と、その内訳が説明されているかを確認してください。ここが数千万円の差になります(年買法とは)。
2. 強みが具体的に書かれているか。
「技術力が高い」ではなく、「◯◯の加工精度で△△ミクロンを実現」「この工程を扱える会社は国内に数社」。買い手が自社と比較できる形になっているか。
3. 弱みを隠していないか。
顧客の集中、社長依存、設備の更新時期。これらは必ずデューデリジェンスで出てきます。IMで触れずに後から発覚すると、価格の減額どころか信頼の問題になります。
先に書いておけば「織り込み済み」になり、後から出れば「減額材料」になります。この差は大きい。
4. 数字が決算書と一致しているか。
意外にありますが、IMの数字と決算書が合っていないと、その時点で資料全体の信頼が失われます。
誰が作るのか
通常は仲介会社が作成し、社長が確認します。しかし担当者が自社の業種を理解していないと、強みが表現されません。
- 建設業なら、許可の種類と経営事項審査の評点
- 運送業なら、許可の内容とドライバーの構成
- IT なら、契約形態と継続収益の比率
これらが書かれていないIMは、業種特有の価値を買い手に伝えられません。結果として価格が伸びない。担当者の業種理解を測る材料にもなります(M&A仲介会社の選び方)。
打診先リストも確認する
資料と同じくらい重要なのが、誰に渡すかです。
打診先リストには、競合他社、主要取引先、社長の知人が経営する会社が含まれていることがあります。リストは必ず事前に確認し、除外したい先を伝えてください。これは売り手の当然の権利です。
追加の打診があるたびに、リストを見せてもらうようにしてください。
良い資料は買い手を増やす
ノンネームシートで関心を引き、IMで納得させる。この2つの質が、打診先の数と、その後の温度感を決めます。
買い手が複数現れれば競争が働き、譲渡価格が上がります。資料の質は、そのまま価格に跳ね返ります。仲介会社任せにせず、必ず自分の目で読んでください。
作成された資料が妥当か判断したい方は、無料相談からお問い合わせください。
監修

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役
経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。
YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。
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