ノンネームシート・企業概要書(IM)とは

監修 長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役公開 2026年8月13日
ノンネームシート・企業概要書(IM)とは

買い手を探す段階で使う資料は2種類あります。ノンネームシートと企業概要書(IM)です。

役割がまったく違い、どちらも社長が中身を確認すべき資料です。仲介会社任せにすると、会社が特定されたり、逆に関心を持たれないまま時間が過ぎたりします。

ノンネームシート ― 社名を伏せた1枚

買い手候補への最初の打診に使う、A4で1枚程度の資料です。社名が分からないように書くのが原則です。

記載する内容

  • 業種(粒度を調整する)
  • 地域(都道府県ではなく「関東」など広めに)
  • 売上規模(レンジで表記)
  • 営業利益の水準(レンジ)
  • 従業員数(レンジ)
  • 譲渡理由(後継者不在など)
  • 特徴・強み
  • 希望する譲渡形態

社長が確認すべきこと

1. 自社が特定されないか。

これが最大の確認点です。業界内の人が読んで「あの会社だ」と分かってしまう記述になっていないか。

  • ニッチな業種を細かく書いていないか
  • 地域が狭すぎないか
  • 特徴的な技術や取引先を書いていないか
  • 数字が具体的すぎないか

「北関東・産業用機械の部品加工・年商8億円・従業員40名・特殊な◯◯工法」と書けば、同業には特定されます。粒度を粗くしてください(秘密保持はどこまで守られるか)。

2. 強みが伝わるか。

一方で、粗くしすぎると誰も関心を持ちません。特定されない範囲で、買い手が「話を聞いてみたい」と思う要素を入れる必要があります。

  • 「取得に年単位かかる許認可を保有」(許可名は書かない)
  • 「有資格者が◯名在籍」
  • 「創業◯十年、主要取引先との取引継続◯年以上」
  • 「直近3期増収増益」

3. 譲渡理由が納得できるか。

買い手が最初に疑うのは「なぜ売るのか」です。後継者不在、体力的な問題、選択と集中。曖昧だと、隠している問題があると勘繰られます。

企業概要書(IM) ― NDA締結後の詳細資料

関心を示した買い手と秘密保持契約を結んだうえで開示する、20〜40ページ程度の資料です。IM(Information Memorandum)と呼ばれます。

記載する内容

  • 会社概要(社名、沿革、資本構成、役員)
  • 事業内容の詳細
  • 財務情報(3〜5期分の決算、正常収益力の説明)
  • 主要取引先と売上構成
  • 組織図、従業員の構成
  • 設備、拠点、許認可
  • 市場環境と競合
  • 今後の見通し
  • 譲渡条件の希望

社長が確認すべきこと

1. 正常収益力の説明が入っているか。

決算書の営業利益をそのまま載せているIMは、価格を安く見せています。役員報酬の適正超過分、節税目的の保険料、私的性格の経費を戻した数字と、その内訳が説明されているかを確認してください。ここが数千万円の差になります(年買法とは)。

2. 強みが具体的に書かれているか。

「技術力が高い」ではなく、「◯◯の加工精度で△△ミクロンを実現」「この工程を扱える会社は国内に数社」。買い手が自社と比較できる形になっているか。

3. 弱みを隠していないか。

顧客の集中、社長依存、設備の更新時期。これらは必ずデューデリジェンスで出てきます。IMで触れずに後から発覚すると、価格の減額どころか信頼の問題になります。

先に書いておけば「織り込み済み」になり、後から出れば「減額材料」になります。この差は大きい。

4. 数字が決算書と一致しているか。

意外にありますが、IMの数字と決算書が合っていないと、その時点で資料全体の信頼が失われます。

誰が作るのか

通常は仲介会社が作成し、社長が確認します。しかし担当者が自社の業種を理解していないと、強みが表現されません。

  • 建設業なら、許可の種類と経営事項審査の評点
  • 運送業なら、許可の内容とドライバーの構成
  • IT なら、契約形態と継続収益の比率

これらが書かれていないIMは、業種特有の価値を買い手に伝えられません。結果として価格が伸びない。担当者の業種理解を測る材料にもなります(M&A仲介会社の選び方)。

打診先リストも確認する

資料と同じくらい重要なのが、誰に渡すかです。

打診先リストには、競合他社、主要取引先、社長の知人が経営する会社が含まれていることがあります。リストは必ず事前に確認し、除外したい先を伝えてください。これは売り手の当然の権利です。

追加の打診があるたびに、リストを見せてもらうようにしてください。

良い資料は買い手を増やす

ノンネームシートで関心を引き、IMで納得させる。この2つの質が、打診先の数と、その後の温度感を決めます。

買い手が複数現れれば競争が働き、譲渡価格が上がります。資料の質は、そのまま価格に跳ね返ります。仲介会社任せにせず、必ず自分の目で読んでください。

作成された資料が妥当か判断したい方は、無料相談からお問い合わせください。

監修

長谷川 桂介

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役

経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。

YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。

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