「買い手が見つからない会社」の特徴と改善策

仲介会社と契約し、買い手候補に打診を始めた。しかし数ヶ月経っても手が挙がらない。
この状態には必ず原因があります。そして原因によって、打つ手が変わります。この記事では、切り分けと対処を整理します。
まず確認|本当に打診されているか
対処に入る前に、そもそも十分な数に打診されているかを確認してください。
- 何社に打診したのか、具体的な社数を聞く
- 打診先の業種・地域の内訳
- 同業以外の候補は含まれているか
- 反応の内容(そもそも開封されていないのか、資料を見て断られたのか)
打診数が10社に満たないなら、それは「売れない」のではなく「探していない」可能性があります。
仲介会社が自社のネットワーク内だけで完結させていないか。買い手候補を広げる力は、仲介会社によって大きく違います(M&A仲介会社の選び方)。
原因1|資料の質が低い
意外に多い原因です。
ノンネームシートの粒度が粗すぎて、買い手が関心を持てない。あるいは企業概要書に強みが書かれていない。
- 「技術力が高い」など抽象的な表現ばかり
- 業種特有の価値が書かれていない(許認可、有資格者、経審の評点など)
- 正常収益力の調整が反映されておらず、利益が実際より低く見える
- 譲渡理由が曖昧で、隠している問題があると勘繰られる
対処:資料を自分の目で読み直す。担当者が業種を理解していなければ、その価値は買い手にも伝わりません(ノンネームシート・企業概要書(IM)とは)。
原因2|価格が相場から離れている
希望価格が高すぎれば、買い手は検討の土俵にも乗りません。
確認すること
- 提示されている価格の算定根拠(時価純資産と正常営業利益の内訳)
- 年買法で何年分を乗せているか
- EBITDA倍率にすると何倍か。業種の相場レンジに収まっているか
対処:算定の内訳を出させ、業種の相場と突き合わせる(会社はいくらで売れるのか、EBITDA倍率で見る自社の相場)。
なお、契約を取るために高い価格を提示し、後で下げてくる仲介会社もあります。最初の提示額が相場から乖離していたなら、それが原因かもしれません。
原因3|利益が出ていない
赤字、または営業利益がほぼゼロ。この場合、年買法で乗せる利益がないため、時価純資産までしか価格が出ません。
資産の薄い業種(IT、サービス)なら、価格そのものが小さくなります。
対処
- 正常収益力で見れば黒字になるかを確認する。役員報酬の適正超過分、節税目的の保険料、私的経費を戻すと黒字になる会社は多い
- 赤字の原因が一過性なら、その説明を資料に入れる
- 不採算部門を切り離した場合の収益力を示す
- 改善に1〜2年かけられるなら、業績を戻してから再挑戦する
原因4|社長依存が強い
受注が社長の人脈で決まり、価格も社長が決め、現場も社長が仕切っている。買い手から見れば「社長が抜けたら利益も消える会社」です。
これは価格が下がるだけでなく、そもそも買い手が付かない理由になります。
対処(時間はかかりますが、最も効きます)
- 主要顧客の窓口を社員にも持たせる
- 見積・価格決定の基準を文書化する
- 決裁権限規程を作り、一定額以下は現場で決める
- 社長が長期の引き継ぎ期間を受け入れる意思を示す
最後の点は即効性があります。「3年残ります」と言えるかどうかで、買い手の警戒が変わります。
原因5|顧客が集中している
上位1社で売上の70%を超えていると、買い手は「その取引が切れたら終わる」と判断します。
対処
- その取引の質を説明する。契約期間、技術的な代替困難性、担当者ではなく会社同士の関係であること
- 新規開拓や別セグメントへの展開で、比率が下がる方向に動いている実績を示す
- その大口顧客自体が買い手候補になることがあります。垂直統合の動機がある場合、最も高く評価する相手になり得ます
原因6|業界が縮小している
市場そのものが縮んでいる場合、買い手側も将来を見込めません。
対処
- 同業ではなく、隣接業種や異業種に候補を広げる。人材や許認可、顧客基盤を目的とした買収なら、業界の成長性は主要な判断軸になりません
- その地域に進出したい会社を探す
- 事業の一部(収益性の高い部門)だけを切り出して譲渡する
原因7|条件が厳しすぎる
「全従業員の雇用と処遇を永久に維持」「社名を絶対に変えない」「社長は半年で退く」。条件を固めすぎると、買い手が引きます。
対処:譲れない線と、任せる部分を分ける。優先順位を付けて、下位の条件は交渉材料にする。
それでも見つからない場合
一定期間探して動かないなら、次の選択肢を検討します。
1. 仲介会社を変える。 専任条項の期間が切れたら、別の会社に相談する。買い手候補の顔ぶれがまったく違うことがあります。
2. マッチングサイトを併用する。 仲介のネットワークに乗らない買い手(個人、小規模法人)にリーチできます(M&Aマッチングサイトは売り手にとって使えるか)。
3. 事業承継・引継ぎ支援センターに相談する。 公的機関で相談無料。地域の候補や後継者人材バンクという別ルートがあります(事業承継・引継ぎ支援センターの使いどころ)。
4. 1〜2年かけて条件を整える。 社長依存の解消、業績の回復、顧客の分散。時間があるなら、これが最も確実です(売却価格を上げる5つの打ち手)。
5. 廃業と比較する。 ただし、廃業コストを試算してから判断してください。設備の撤去と原状回復で手残りがマイナスになることもあります(会社を「たたむ」と「売る」はどちらが得か)。
「売れない」と決めつけない
社長が価値だと思っていないものに、買い手が付くことがあります。許認可、有資格者、地域の顧客基盤、定着している従業員。「特別なことは何もしていない」と言う会社ほど、続けてきたこと自体が参入障壁になっていることがあります。
一社の仲介会社の反応だけで判断せず、別の窓口でも意見を聞いてください。
現状を整理したい方は、無料相談からお問い合わせください。
監修

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役
経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。
YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。
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