「買い手が見つからない会社」の特徴と改善策

監修 長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役公開 2026年8月4日
「買い手が見つからない会社」の特徴と改善策

仲介会社と契約し、買い手候補に打診を始めた。しかし数ヶ月経っても手が挙がらない。

この状態には必ず原因があります。そして原因によって、打つ手が変わります。この記事では、切り分けと対処を整理します。

まず確認|本当に打診されているか

対処に入る前に、そもそも十分な数に打診されているかを確認してください。

  • 何社に打診したのか、具体的な社数を聞く
  • 打診先の業種・地域の内訳
  • 同業以外の候補は含まれているか
  • 反応の内容(そもそも開封されていないのか、資料を見て断られたのか)

打診数が10社に満たないなら、それは「売れない」のではなく「探していない」可能性があります。

仲介会社が自社のネットワーク内だけで完結させていないか。買い手候補を広げる力は、仲介会社によって大きく違います(M&A仲介会社の選び方)。

原因1|資料の質が低い

意外に多い原因です。

ノンネームシートの粒度が粗すぎて、買い手が関心を持てない。あるいは企業概要書に強みが書かれていない。

  • 「技術力が高い」など抽象的な表現ばかり
  • 業種特有の価値が書かれていない(許認可、有資格者、経審の評点など)
  • 正常収益力の調整が反映されておらず、利益が実際より低く見える
  • 譲渡理由が曖昧で、隠している問題があると勘繰られる

対処:資料を自分の目で読み直す。担当者が業種を理解していなければ、その価値は買い手にも伝わりません(ノンネームシート・企業概要書(IM)とは)。

原因2|価格が相場から離れている

希望価格が高すぎれば、買い手は検討の土俵にも乗りません。

確認すること

  • 提示されている価格の算定根拠(時価純資産と正常営業利益の内訳)
  • 年買法で何年分を乗せているか
  • EBITDA倍率にすると何倍か。業種の相場レンジに収まっているか

対処:算定の内訳を出させ、業種の相場と突き合わせる(会社はいくらで売れるのか、EBITDA倍率で見る自社の相場)。

なお、契約を取るために高い価格を提示し、後で下げてくる仲介会社もあります。最初の提示額が相場から乖離していたなら、それが原因かもしれません。

原因3|利益が出ていない

赤字、または営業利益がほぼゼロ。この場合、年買法で乗せる利益がないため、時価純資産までしか価格が出ません。

資産の薄い業種(IT、サービス)なら、価格そのものが小さくなります。

対処

  • 正常収益力で見れば黒字になるかを確認する。役員報酬の適正超過分、節税目的の保険料、私的経費を戻すと黒字になる会社は多い
  • 赤字の原因が一過性なら、その説明を資料に入れる
  • 不採算部門を切り離した場合の収益力を示す
  • 改善に1〜2年かけられるなら、業績を戻してから再挑戦する

原因4|社長依存が強い

受注が社長の人脈で決まり、価格も社長が決め、現場も社長が仕切っている。買い手から見れば「社長が抜けたら利益も消える会社」です。

これは価格が下がるだけでなく、そもそも買い手が付かない理由になります。

対処(時間はかかりますが、最も効きます)

  • 主要顧客の窓口を社員にも持たせる
  • 見積・価格決定の基準を文書化する
  • 決裁権限規程を作り、一定額以下は現場で決める
  • 社長が長期の引き継ぎ期間を受け入れる意思を示す

最後の点は即効性があります。「3年残ります」と言えるかどうかで、買い手の警戒が変わります。

原因5|顧客が集中している

上位1社で売上の70%を超えていると、買い手は「その取引が切れたら終わる」と判断します。

対処

  • その取引の質を説明する。契約期間、技術的な代替困難性、担当者ではなく会社同士の関係であること
  • 新規開拓や別セグメントへの展開で、比率が下がる方向に動いている実績を示す
  • その大口顧客自体が買い手候補になることがあります。垂直統合の動機がある場合、最も高く評価する相手になり得ます

原因6|業界が縮小している

市場そのものが縮んでいる場合、買い手側も将来を見込めません。

対処

  • 同業ではなく、隣接業種や異業種に候補を広げる。人材や許認可、顧客基盤を目的とした買収なら、業界の成長性は主要な判断軸になりません
  • その地域に進出したい会社を探す
  • 事業の一部(収益性の高い部門)だけを切り出して譲渡する

原因7|条件が厳しすぎる

「全従業員の雇用と処遇を永久に維持」「社名を絶対に変えない」「社長は半年で退く」。条件を固めすぎると、買い手が引きます。

対処:譲れない線と、任せる部分を分ける。優先順位を付けて、下位の条件は交渉材料にする。

それでも見つからない場合

一定期間探して動かないなら、次の選択肢を検討します。

1. 仲介会社を変える。 専任条項の期間が切れたら、別の会社に相談する。買い手候補の顔ぶれがまったく違うことがあります。

2. マッチングサイトを併用する。 仲介のネットワークに乗らない買い手(個人、小規模法人)にリーチできます(M&Aマッチングサイトは売り手にとって使えるか)。

3. 事業承継・引継ぎ支援センターに相談する。 公的機関で相談無料。地域の候補や後継者人材バンクという別ルートがあります(事業承継・引継ぎ支援センターの使いどころ)。

4. 1〜2年かけて条件を整える。 社長依存の解消、業績の回復、顧客の分散。時間があるなら、これが最も確実です(売却価格を上げる5つの打ち手)。

5. 廃業と比較する。 ただし、廃業コストを試算してから判断してください。設備の撤去と原状回復で手残りがマイナスになることもあります(会社を「たたむ」と「売る」はどちらが得か)。

「売れない」と決めつけない

社長が価値だと思っていないものに、買い手が付くことがあります。許認可、有資格者、地域の顧客基盤、定着している従業員。「特別なことは何もしていない」と言う会社ほど、続けてきたこと自体が参入障壁になっていることがあります。

一社の仲介会社の反応だけで判断せず、別の窓口でも意見を聞いてください。

現状を整理したい方は、無料相談からお問い合わせください。

監修

長谷川 桂介

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役

経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。

YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。

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