M&Aにかかる期間 ― 検討開始から着金までの実際

「どのくらいかかりますか」は、相談で必ず出る質問です。
標準は6〜12ヶ月。ただしこれは平均であって、3ヶ月で終わることも、2年かかることもあります。どこで時間を使うのかを知っておくと、計画が立てられます。
段階別の所要期間
| 段階 | 標準 | 変動幅 |
|---|---|---|
| 1. 準備・資料整理 | 2週間〜1ヶ月 | 株式に問題があると年単位 |
| 2. 相談先の選定 | 2週間〜1ヶ月 | 複数社を比較すると1〜2ヶ月 |
| 3. 仲介契約・企業価値算定 | 2週間 | ほぼ固定 |
| 4. 買い手候補への打診 | 1〜3ヶ月 | 最も読めない。半年以上かかることも |
| 5. トップ面談 | 2週間〜1ヶ月 | 複数社と会うと延びる |
| 6. 基本合意 | 2週間〜1ヶ月 | 条件交渉が難航すると延びる |
| 7. デューデリジェンス | 1〜2ヶ月 | 問題が出ると追加調査で延びる |
| 8. 最終契約 | 2週間〜1ヶ月 | 契約条項の交渉次第 |
| 9. クロージング | 1日〜数週間 | 経営者保証の解除交渉で延びることがある |
合計すると、順調で6ヶ月前後、標準的なケースで9〜12ヶ月です。
最も読めないのは「買い手探し」
段階4が全体の期間を決めます。ここだけは、努力で短縮しきれません。
早く決まる会社の条件
- 業績が安定または伸びている
- 人手不足の業種(人材ごと欲しい買い手が多い)
- 許認可や有資格者を抱えている
- 顧客が分散している
- 譲渡価格が数千万〜数億円の、買い手が動きやすい規模
時間がかかる会社の条件
- 赤字、または利益の変動が大きい
- 売上が特定の1社に集中している
- 社長個人の人脈で受注している
- 業界が縮小局面にある
- 譲渡価格の希望が相場から離れている
希望価格が高すぎると、買い手探しの期間が延びます。これは仲介会社が言いにくい部分でもあるので、提示価格の根拠は必ず確認してください(会社はいくらで売れるのか)。
年単位で止まる原因
期間が読めなくなる要因は、ほぼ次の3つに集約されます。
1. 株式の問題
最も多く、最も長引きます。名義株、相続で分散した株、所在不明株主。M&Aは原則として株式を100%集めないと成立しないため、ここが解決しないと先へ進めません。
所在不明株主の株式売却制度には通知が5年以上到達しないなどの要件があり、手続き自体にも時間がかかります。相談前に株主名簿を確認しておくべき理由がここにあります(譲渡側が最初にやるべき準備)。
2. デューデリジェンスで大きな問題が出る
未払残業代、簿外債務、係争。金額が大きければ価格の再交渉になり、場合によっては破談します。
これは事前に潰しておけば防げる種類の遅延です(デューデリジェンスで何を見られるか)。
3. 経営者保証の解除交渉
クロージング直前で止まることがあります。金融機関が買い手の信用力に難色を示すと、調整に時間がかかります。
基本合意の段階で条件に含め、金融機関にも早めに接触しておくことで、後ろ倒しを防げます(経営者保証はM&Aで外れるのか)。
短縮できる部分・できない部分
短縮できる
- 準備段階(資料を先に揃えておく)
- 相談先の選定(ただし比較を省くのは損。ここは急がないほうがよい)
- デューデリジェンス対応(資料の出し方を整理し、窓口を一本化する)
短縮できない
- 買い手が現れるまでの時間
- 買い手側の社内稟議・取締役会の日程
- 金融機関との調整
- 登記や許認可の手続き
買い手側の意思決定プロセスは、こちらから動かせません。上場企業が買い手なら取締役会の開催日程に縛られますし、決算期をまたぐと稟議が組み直しになることもあります。
急がされたら疑う
期間に関して、ひとつだけ注意点があります。
「今期中に決めないと買い手が逃げる」という言葉で判断を急がせてくる相手とは、条件がよくなることはありません。買い手が本当にその会社を欲しければ、数週間の検討期間で撤退したりしません。
時間的圧力は、交渉を有利に進めるための手段として使われます。焦らされたと感じたら、その時点で一度立ち止まってください。時間的余裕は、それ自体が交渉力です。
逆算して計画を立てる
70歳での引退を考えるなら、引き継ぎ期間(半年〜3年)を含めて逆算します。
70歳 完全引退
↑ 引き継ぎ期間 1〜2年
68歳 クロージング・着金
↑ M&Aプロセス 6〜12ヶ月
67歳 相談開始
↑ 売れる状態にする準備 1〜3年
64〜66歳 準備着手
実質的な判断期限は65歳前後になります(会社売却のタイミング)。
自社の場合にどのくらいかかりそうか知りたい方は、無料相談からお問い合わせください。決算書と株主名簿の状況が分かれば、期間の見立てもお伝えできます。
監修

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役
経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。
YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。
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