M&Aにかかる期間 ― 検討開始から着金までの実際

監修 長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役公開 2026年8月17日
M&Aにかかる期間 ― 検討開始から着金までの実際

「どのくらいかかりますか」は、相談で必ず出る質問です。

標準は6〜12ヶ月。ただしこれは平均であって、3ヶ月で終わることも、2年かかることもあります。どこで時間を使うのかを知っておくと、計画が立てられます。

段階別の所要期間

段階 標準 変動幅
1. 準備・資料整理 2週間〜1ヶ月 株式に問題があると年単位
2. 相談先の選定 2週間〜1ヶ月 複数社を比較すると1〜2ヶ月
3. 仲介契約・企業価値算定 2週間 ほぼ固定
4. 買い手候補への打診 1〜3ヶ月 最も読めない。半年以上かかることも
5. トップ面談 2週間〜1ヶ月 複数社と会うと延びる
6. 基本合意 2週間〜1ヶ月 条件交渉が難航すると延びる
7. デューデリジェンス 1〜2ヶ月 問題が出ると追加調査で延びる
8. 最終契約 2週間〜1ヶ月 契約条項の交渉次第
9. クロージング 1日〜数週間 経営者保証の解除交渉で延びることがある

合計すると、順調で6ヶ月前後、標準的なケースで9〜12ヶ月です。

最も読めないのは「買い手探し」

段階4が全体の期間を決めます。ここだけは、努力で短縮しきれません。

早く決まる会社の条件

  • 業績が安定または伸びている
  • 人手不足の業種(人材ごと欲しい買い手が多い)
  • 許認可や有資格者を抱えている
  • 顧客が分散している
  • 譲渡価格が数千万〜数億円の、買い手が動きやすい規模

時間がかかる会社の条件

  • 赤字、または利益の変動が大きい
  • 売上が特定の1社に集中している
  • 社長個人の人脈で受注している
  • 業界が縮小局面にある
  • 譲渡価格の希望が相場から離れている

希望価格が高すぎると、買い手探しの期間が延びます。これは仲介会社が言いにくい部分でもあるので、提示価格の根拠は必ず確認してください(会社はいくらで売れるのか)。

年単位で止まる原因

期間が読めなくなる要因は、ほぼ次の3つに集約されます。

1. 株式の問題

最も多く、最も長引きます。名義株、相続で分散した株、所在不明株主。M&Aは原則として株式を100%集めないと成立しないため、ここが解決しないと先へ進めません。

所在不明株主の株式売却制度には通知が5年以上到達しないなどの要件があり、手続き自体にも時間がかかります。相談前に株主名簿を確認しておくべき理由がここにあります(譲渡側が最初にやるべき準備)。

2. デューデリジェンスで大きな問題が出る

未払残業代、簿外債務、係争。金額が大きければ価格の再交渉になり、場合によっては破談します。

これは事前に潰しておけば防げる種類の遅延です(デューデリジェンスで何を見られるか)。

3. 経営者保証の解除交渉

クロージング直前で止まることがあります。金融機関が買い手の信用力に難色を示すと、調整に時間がかかります。

基本合意の段階で条件に含め、金融機関にも早めに接触しておくことで、後ろ倒しを防げます(経営者保証はM&Aで外れるのか)。

短縮できる部分・できない部分

短縮できる

  • 準備段階(資料を先に揃えておく)
  • 相談先の選定(ただし比較を省くのは損。ここは急がないほうがよい)
  • デューデリジェンス対応(資料の出し方を整理し、窓口を一本化する)

短縮できない

  • 買い手が現れるまでの時間
  • 買い手側の社内稟議・取締役会の日程
  • 金融機関との調整
  • 登記や許認可の手続き

買い手側の意思決定プロセスは、こちらから動かせません。上場企業が買い手なら取締役会の開催日程に縛られますし、決算期をまたぐと稟議が組み直しになることもあります。

急がされたら疑う

期間に関して、ひとつだけ注意点があります。

「今期中に決めないと買い手が逃げる」という言葉で判断を急がせてくる相手とは、条件がよくなることはありません。買い手が本当にその会社を欲しければ、数週間の検討期間で撤退したりしません。

時間的圧力は、交渉を有利に進めるための手段として使われます。焦らされたと感じたら、その時点で一度立ち止まってください。時間的余裕は、それ自体が交渉力です。

逆算して計画を立てる

70歳での引退を考えるなら、引き継ぎ期間(半年〜3年)を含めて逆算します。

70歳 完全引退
 ↑ 引き継ぎ期間 1〜2年
68歳 クロージング・着金
 ↑ M&Aプロセス 6〜12ヶ月
67歳 相談開始
 ↑ 売れる状態にする準備 1〜3年
64〜66歳 準備着手

実質的な判断期限は65歳前後になります(会社売却のタイミング)。

自社の場合にどのくらいかかりそうか知りたい方は、無料相談からお問い合わせください。決算書と株主名簿の状況が分かれば、期間の見立てもお伝えできます。

監修

長谷川 桂介

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役

経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。

YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。

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