ENECHANGE株式会社のM&A実績
電力切替の同業を「ロールアップ」型で買ってきた会社です。2021〜2022年は法人向け電力切替の同業2社とEV関連メディア事業を買い、2026年からは非常用発電機の点検など「法定点検・保安」の領域で連続買収を進めると公言しています。売り手は創業社長個人が中心で、4件すべてで取得価額を開示しています。
ENECHANGE株式会社が公表した適時開示4件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都港区
- 設立
- 2015年4月
- 事業内容
- 家庭・法人向けの電力・ガス切替プラットフォーム「エネチェンジ」と、電力会社向けのデータ・SaaS事業を運営
- 売上高
- 66億9,700万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 5億9,200万円
- 純資産
- 47億8,100万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 法人向け電力切替の仲介・コンサルティング/非常用発電機の負荷試験点検・消防設備点検/EV関連のウェブメディア・アプリ
- 対象の規模
- 対象の売上 0.4億円〜3.2億円
- 手法
- 株式譲渡(100%取得)が中心。売らない事業を先に会社分割で切り出してから株式を買う形を繰り返し使う。事業譲受、業績連動の追加支払い(アーンアウト)も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 電力切替の同業2社は、買収から半年〜1年半で本体に吸収合併しています。顧客と営業網を取り込むのが目的で、社名は残していません。一方、2026年の点検会社は「自ら運営して知見をまとめ、次の買収の起点にする」と開示しており、扱いが変わる可能性があります。
- 取得価額を毎回開示しています。4件とも金額と、アドバイザリー費用の概算まで書かれています
- 算定方法も明記されます。2021〜2022年の3件はいずれも「あいわAdvisory株式会社のDCF法による算定結果を勘案」
- 売らない事業を先に切り離させてから買うのが定番です。オーベラス・ジャパンは不動産事業を、ダーウィンは礼服レンタル事業を、譲渡前に別会社へ移しています
- 会社全体では赤字・債務超過でも買っています。オーベラス・ジャパンは直前期に営業損失・純資産マイナスでしたが、切り出し後の電力事業を3億5,000万円で取得しました
- 2026年6月の「事業計画及び成長可能性に関する事項」で、点検・保安領域でのロールアップ方針を掲げています。この領域の事業者は、今後の買い手候補として見ておく価値があります
買収の履歴4件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社ダーウィン
非常用発電機の負荷試験点検(消防法に基づく年1回の法定点検)、消防設備点検/東京都品川区/2011年5月設立
- 取得価額
- 5億7,600万円
- 対象の売上
- 3億1,500万円
- 対象の営業利益
- 9,800万円
- 対象の純資産
- 5,300万円
決算期:2026年3月期(点検事業のみの試算)/譲渡前の株主:個人1名(晴山 暢彦)が100%保有/取得費用等(概算)36百万円を加えた合計は612百万円。点検事業の正常収益力ベースで、営業利益98百万円の約5.9倍、当期純利益76百万円の約7.6倍(編集部計算)/非常用発電機点検事業のみの「正常収益力ベース」(買い手が第三者DDを踏まえて試算、未監査)。会社全体の2026年3月期は売上364・営業利益11・純資産76百万円
買収理由:法定点検に支えられた継続収益の獲得と、電力切替の法人顧客とのクロスセル。点検・保安領域ロールアップの第1号案件
会社全体の営業利益は1,100万円でしたが、買い手は点検事業だけを取り出し「取得後に発生しない費用」を除いた正常収益力として営業利益9,800万円と評価しました。同じ会社でも、オーナー関連の費用や本業以外の事業を外して見せると、利益は大きく変わるという実例です。礼服レンタル事業は譲渡前に別会社へ移して社長の手元に残し、点検事業だけを5億7,600万円で売っています。開示文は「事業者の多くが人手不足や高齢化に伴う承継者不足」と書いており、同じ悩みを持つ点検・保安の会社を続けて買う意向を示しています。
2026年7月31日に株式譲渡実行予定として開示されました。その後の完了・商号変更・合併の開示は確認できていません。公式サイトにグループ会社一覧がなく、存続は開示からの推定です。
アユダンテ株式会社のEVsmart事業
EV専門メディア「EVsmart」と充電スポット検索アプリの開発・運営/東京都千代田区/売り手は2006年2月設立設立
- 取得価額
- 3億円
- 対象の売上
- 3,900万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2022年12月期(推定)/譲渡前の株主:アユダンテ株式会社(SEO・ウェブマーケティング会社。代表の安川 洋が97.9%保有)/税抜。アドバイザリー費用等(概算)7百万円は別。あいわAdvisory株式会社のDCF法による事業価値算定を勘案。買い手側のEV充電事業への効果を織り込んで決めたと開示/2022年6月までの実績から通期換算した推定値(2022年12月期)
買収理由:月間100万PVのメディアと累計20万インストールのアプリを取り込み、EV充電事業の設置台数と単価を伸ばす
売上約3,900万円、経常損失約8,900万円(通期換算の推定)の赤字事業が3億円で売れています。引き継ぐ資産は「金額規模は僅少」なソフトウェア程度でした。価格の根拠は事業そのものの利益ではなく、買い手の本業(EV充電)にもたらす効果を織り込んだと明記されています。本業の会社が片手間で育てたメディアやアプリでも、相性のよい買い手には利益以上の価値があります。
法人ではなく事業を譲り受けた案件です。2025年にEV充電事業を中部電力ミライズとの合弁会社へ移した際も、「EVsmartウェブサイトに係る事業は含まれません」とされ、ENECHANGE側に残りました。
確認元:EV充電事業の合弁会社化に向けた子会社設立、子会社間の吸収分割、中部電力ミライズ株式会社との株式譲渡契約等の締結並びに子会社の異動に関するお知らせ
新電力コム株式会社
法人向け電力切替の仲介、省エネコンサルティング/東京都豊島区/2012年2月設立
- 取得価額
- 1億円
- 対象の売上
- 5,900万円
- 対象の営業利益
- 600万円
- 対象の純資産
- 8,400万円
決算期:2022年1月期/譲渡前の株主:個人1名(内田 勝巳)が100%保有/アドバイザリー費用等(概算)6百万円は別。取得後の売上が一定額を超えた場合に0〜106百万円のアーンアウト対価を追加で支払う合意あり。あいわAdvisory株式会社のDCF法による算定を勘案
買収理由:同業のロールアップ。法人顧客基盤と営業人員・営業ノウハウ・パートナー網の承継
売上5,900万円・営業利益600万円・純資産8,400万円。固定の対価1億円は純資産の約1.2倍で、残りは最大1億600万円のアーンアウトで払う設計です。つまり、売った後に業績が伸びれば総額は最大2倍強になります。2020年1月期は営業赤字でしたが、その後黒字に戻した局面での譲渡です。もともと買い手と紹介の提携をしていた関係から買収に進んだ例で、社長は取得後に退任しています。
2022年12月23日付でENECHANGE本体に吸収合併されました。合併に先立ち、ENECHANGEは新電力コムへの貸付金30百万円を債権放棄しています。
オーベラス・ジャパン株式会社
不動産オーナー・J-REIT・不動産ファンド向けの電力切替サービス/東京都江東区/2015年5月設立
- 取得価額
- 3億5,000万円
- 対象の売上
- 1億1,500万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2021年4月期/譲渡前の株主:非開示(相手方の要請)/アドバイザリー費用等(概算)8百万円は別。あいわAdvisory株式会社のDCF法による算定を勘案/不動産事業を除いた電力事業のみの売上高。会社全体では128百万円
買収理由:同業のロールアップ。不動産業界の法人顧客基盤と営業人員・ノウハウの承継
会社全体では直前期に営業損失1,260万円、純資産マイナス313万円の債務超過でした。それでも、不動産事業を切り離した後の電力事業(売上1億1,500万円、各段階で黒字の見込み)が3億5,000万円で売れています。赤字の原因になっている事業を切り出せば、残る事業は単体で評価されるという例です。切り出した不動産事業は元の代表2名が新会社で続けています。
2022年5月1日付でENECHANGE本体に吸収合併されました。取得から半年で法人としては消えています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された4件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社ダーウィン5億7,600万円(売上の1.83倍・営業利益の5.9倍)
- アユダンテ株式会社のEVsmart事業3億円(売上の7.69倍)
- 新電力コム株式会社1億円(売上の1.69倍・営業利益の16.7倍)
- オーベラス・ジャパン株式会社3億5,000万円(売上の3.04倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページはENECHANGE株式会社が公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日