売却に必要な社内手続き ― 株主総会・取締役会の決議はどこで要るか

監修 長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役公開 2026年9月25日
売却に必要な社内手続き ― 株主総会・取締役会の決議はどこで要るか

契約を結べば終わり、ではありません。会社法が求める決議を踏んでいないと、譲渡の効力そのものが争われます。

オーナー社長が株式の100%を持ち、取締役も自分だけ、という会社でも手続きは必要です。形式的に見えても、議事録が残っていないと後で困ります。

どの決議が要るかは売り方で決まる

売り方 必要な決議
株式譲渡(譲渡制限あり) 取締役会の承認(取締役会がなければ株主総会の普通決議)
事業譲渡(事業の全部または重要な一部) 株主総会の特別決議
会社分割 株主総会の特別決議+債権者保護手続き

株式譲渡と事業譲渡の違いで書いたとおり、売り方の選択は税金と手続きの両方に効きます。手続きの重さで言えば、株式譲渡が圧倒的に軽い。

株式譲渡の場合

定款で譲渡制限を確認する

中小企業の株式は、ほぼ例外なく譲渡制限株式です。定款に「当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を要する」といった条文があります。

まず定款を見て、承認機関がどこになっているかを確認してください。取締役会なら取締役会、「株主総会の承認」と書かれていればそちらです。

手続きの流れ

  1. 譲渡承認請求(売り手が会社に出す)
  2. 取締役会の承認決議
  3. 承認したことの通知(請求から2週間以内)
  4. 株式譲渡契約の締結と決済(クロージング)
  5. 株主名簿の書き換え

社長が1人で全部やる会社でも、1から5まで書面を残します。4だけあって1〜3がない状態が、実務でいちばんよく見ます。

取締役会がない会社

取締役会非設置会社では、株主総会の普通決議で承認します。定款に別段の定めがあればそれに従います。

自分が承認する側でもある場合

社長が売り手であり、かつ取締役会の構成員でもある場合、特別利害関係人として決議に参加できません(会社法369条2項)。

取締役が社長1人なら、取締役会は成立しません。この場合は株主総会で承認するか、定款を確認して対応します。ここは実務で詰まりやすいので、早めに専門家に確認してください。

事業譲渡の場合

こちらは重い手続きになります。

株主総会の特別決議

事業の全部、または重要な一部を譲渡するには、株主総会の特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。

「重要な一部」の目安は、譲渡する資産の帳簿価額が総資産の5分の1を超えるかどうかです(会社法467条1項2号)。これ以下なら株主総会は不要とされます。

反対株主の買取請求

特別決議が要る事業譲渡では、反対した株主が自分の株を公正な価格で買い取れと会社に請求できます。

株主が社長1人なら問題になりませんが、名義株や少数株主が残っていると、ここで出てきます。売る前に株主を整理しておくべき理由のひとつです。

買い手側の手続き

買い手にも、譲り受ける資産の規模によっては株主総会の特別決議が要ります。相手の手続きが遅れるとクロージングがずれるので、日程は双方の決議を前提に組んでください。

議事録をどう作るか

書く内容

取締役会議事録には、

  • 開催日時・場所
  • 出席した取締役・監査役
  • 議題と決議の結果
  • 特別利害関係人がいる場合はその旨
  • 議長と出席取締役の署名または記名押印

日付が重要です。株式譲渡契約の日付より前であること。最終契約の締結日に、承認決議の日付が後になっている議事録を見ることがあります。

いつ作るか

決議のときに作ります。後からまとめて作ると、日付の整合が取れなくなります。

デューデリジェンスでは過去の議事録も見られます。普段から作っていない会社が売却の直前にまとめて作ると、そのことも含めて指摘されます。

保存期間

取締役会議事録は本店に10年間、株主総会議事録も本店に10年間の備置義務があります。

売る前に確認する3点

1. 定款の現物を見る

手元の定款が最新とは限りません。設立から変更していないつもりでも、過去に役員構成の変更に伴って直していることがあります。

2. 過去の議事録が揃っているか

毎期の決算承認の株主総会議事録、役員改選の議事録。ないなら、ないことを前提に進めるほうが安全です。隠しても必ず出ます。

3. 役員の任期が切れていないか

中小企業でよくあるのが、任期満了後の変更登記を忘れているケースです。登記簿上の役員と実態が違うと、議事録の有効性に疑いが出ます。司法書士に相談して先に直してください。

まとめ

  • 必要な決議は売り方で決まる。株式譲渡=取締役会の承認、事業譲渡=株主総会の特別決議
  • 譲渡制限の有無と承認機関は、定款の現物で確認する
  • 売り手の社長が取締役会の構成員なら、特別利害関係人として決議に参加できない
  • 議事録は決議のときに作る。契約日との前後関係を間違えない
  • 役員の任期満了・変更登記漏れは先に直す

自社の手続きが足りているか分からない方は、無料相談からお問い合わせください。定款と登記簿があれば、何が必要かをお伝えできます。

監修

長谷川 桂介

長谷川 桂介ファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役

経営者。1,800社の財務コンサル実績があるファミリーコンサルティング株式会社 代表取締役。これまで4社を経営。経営者として投資や節税、資金調達、事業売却(M&A)など法人の財務に関する実務を経験してきた企業財政のエキスパート。

YouTube「社長の資産防衛チャンネル」(登録者25万人)と「社長のM&Aチャンネル」を運営。M&Aチャンネルでは、実際に会社を譲渡したオーナー経営者へのインタビューを継続して行っている。

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