株式会社TOKAIホールディングスのM&A実績
ガス、ケーブルテレビ、情報通信、建設の4つの事業で、地域の中小企業を事業ごとの子会社に買わせていく形を続けている会社です。2017年度からの中期経営計画では「4年間で総額1,000億円のM&A投資」を掲げていました。売り手の多くは創業者や親族などの個人オーナーで、売上2億円前後のIT会社から、売上20億円の地方ゼネコン、契約1万件規模のケーブルテレビ局まで幅があります。自治体が手放す都市ガス事業の受け皿にもなっています。
株式会社TOKAIホールディングスが公表した適時開示12件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 静岡県静岡市
- 設立
- 2011年4月
- 事業内容
- 静岡発祥の生活インフラ企業グループの持株会社。LPガス・都市ガス、宅配水、ケーブルテレビ、情報通信、建築・設備工事などを、子会社を通じて展開
- 売上高
- 2,448億3,800万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 186億9,900万円
- 純資産
- 1,044億6,200万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- ケーブルテレビ局/ソフトウェア受託開発・システム開発/総合建設・電気工事・大規模修繕/ビルメンテナンス/都市ガス事業(自治体からの譲受)
- 対象の規模
- 対象の売上 1.4億円〜20.5億円(建設・ビルメンテナンスの3件とCATV事業の譲受1件は業績非開示)
- 手法
- 株式譲渡による子会社化が中心。グループのTOKAI(ガス・建設)、TOKAIコミュニケーションズ(情報通信)、TOKAIケーブルネットワークや倉敷ケーブルテレビ(CATV)が買い手になる。ケーブルテレビやガスでは事業譲受も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残すのが基本です。2026年10月時点のグループ企業一覧に、サイズ、テレビ津山、日産工業、仙台CATV、中央電機工事、イノウエテクニカ、マルコオ・ポーロ化工、クエリがそのままの社名で並んでいます。持株会社の形で買ったアムズブレーンだけは一覧から消え、事業会社のアムズユニティーが残っています。
- 取得価額は掲載した全件で非開示です。仙台CATVでは「相手先の意向により開示を差し控える」「第三者機関の株式価値算定をもとに双方協議で決定」と書かれていますが、他の案件は取得価額そのものに触れていません
- 同じ地域で業種を少しずつ足していく買い方です。中京圏では、2019年に土木の日産工業、2020年に電気工事の中央電機工事、2021年に大規模修繕のマルコオ・ポーロ化工と続け、開示文で「主要工事の受注体制を構築してきた」と説明しています
- オーナー=社長とは限りません。日産工業は株主1名が100%を持ち、社長は別の人でした。中央電機工事は社長の持分が41.3%で、残りは親族が持っていました
- 2024年にも株式会社フジプロ、株式会社ジーアンドエフの株式取得を開示しており、2社ともグループ企業一覧に載っています。開示本文を確認できていないため、この一覧の件数には入れていません
- フィリピンの水力発電会社の取得(2026年、実行日は延期中)など海外案件や、資本業務提携は載せていません
買収の履歴12件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社クエリ
ITシステム・ソフトウェア・スマホアプリの受託開発、Web制作・運用/東京都豊島区/2006年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 3億5,500万円
- 対象の営業利益
- 3,900万円
- 対象の純資産
- 1億1,800万円
決算期:2020年12月期/譲渡前の株主:個人1名(橋本 友夫)が100%保有/非開示。取得価額に関する記述はありません
買収理由:クエリの開発力とTOKAIコミュニケーションズのクラウド・ネットワーク領域を組み合わせ、体制強化とサービス領域の拡大を図る
資本金1,000万円、社長が株式を100%持つ受託開発会社です。売上は2億4,700万円→3億3,700万円→3億5,500万円、営業利益は2,700万円→3,100万円→3,900万円と、3期とも伸びていました。開示文は「大手顧客との長年にわたる継続的な信頼関係」を強みに挙げています。規模は小さくても、固定客を持ち業績が右肩上がりのIT会社は、インフラ系の上場企業の買収対象になります。
2021年4月30日に取得済み。TOKAIホールディングスのグループ企業一覧に「株式会社クエリ」が連結子会社として掲載されています。
株式会社マルコオ・ポーロ化工
マンション・公共施設などの大規模修繕工事/愛知県豊田市/1992年5月(創業1975年3月)設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:代表取締役の黒田 洪二氏から取得(持株比率の記載なし)/非開示。取得価額に関する記述はありません
買収理由:大規模修繕の営業・技術ノウハウを取り込み、中京エリアでの設備工事の対応分野を広げる
資本金8,000万円、創業から約45年の修繕工事会社です。業績は開示されていません。TOKAIは2019年に土木(日産工業)、2020年に電気工事(中央電機工事)を中京圏で買っており、この案件はその3社目です。買い手が「今どの地域で、どの工事の穴を埋めたいか」がはっきりしていると、話がまとまりやすいことが読み取れます。逆に売り手からは、自社の業種と地域を補いたい買い手を探す、という発想が使えます。
2021年4月9日に取得済み。グループ企業一覧に「株式会社マルコオ・ポーロ化工」が連結子会社として掲載されています。
株式会社イノウエテクニカ
ビルメンテナンス(消防設備点検・清掃・警備等)、アウトソーシング、飲食ほか/静岡県沼津市/1977年設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:代表取締役の井上 武雄氏から取得(持株比率の記載なし)/非開示。取得価額に関する記述はありません
買収理由:静岡県東部の公共施設・病院・工場などの管財業務を引き継ぎ、ビルメンテナンス事業を広げる
資本金3,000万円、沼津市を拠点に公共施設や病院の管理を長く請け負ってきた会社です。業績は開示されていません。開示文は業界の課題として「人材の確保」を挙げ、買い手側の県内の組織力を使って営業エリアを広げるとしています。地元の官公庁や病院との長い取引実績は、業績の数字とは別に評価される材料になっています。
2020年11月6日に取得済み。グループ企業一覧に「株式会社イノウエテクニカ」が連結子会社として掲載されています。
中央電機工事株式会社
電気設備工事(官公庁の公共工事、金融機関・大手企業の民間工事)/愛知県名古屋市/1955年1月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:小栗 恒夫41.3%、小栗氏の親族58.7%/非開示。取得価額に関する記述はありません
買収理由:空調・衛生に電気を加え、設備工事の主要3工事を自前で受注できる体制にする
創業65年、資本金2,000万円の電気工事会社です。業績は開示されていません。社長の持分は41.3%で、残りの58.7%は親族が持っていましたが、100%の譲渡が成立しています。開示文は業界の課題として「高齢化に伴う技術労働者の不足」を挙げており、有資格者を抱える会社であること自体が買う理由になっています。
仙台CATV株式会社
ケーブルテレビ(仙台市・名取市、約5万7,000件)、インターネット接続/宮城県仙台市/1983年3月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 10億3,700万円
- 対象の営業利益
- 6,600万円
- 対象の純資産
- 17億8,700万円
決算期:2019年3月期/譲渡前の株主:同和興業株式会社74.2%、同和警備株式会社13.7%(いずれも仙台市の事業会社)/相手先の意向により非開示。第三者機関の株式価値算定をもとに双方協議で決定
買収理由:東北に営業エリアを広げ、CATVに加えてグループの生活関連サービスを展開する
売上10億3,700万円・営業利益6,600万円・純資産17億8,700万円。売り手は個人ではなく、地元のビル管理会社と警備会社でした。本業と別に持っていたケーブルテレビ局を、全国でCATVを運営する専業グループに渡した形です。純資産が売上を大きく上回る設備産業の会社で、取得価額は「第三者機関の算定をもとに協議」と書かれています。
2020年3月31日に取引実行予定として開示。グループ企業一覧に「仙台CATV株式会社」が連結子会社として掲載されています。
日産工業株式会社
総合建設業(公共土木工事に強み)、不動産業/岐阜県下呂市/1970年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 20億4,600万円
- 対象の営業利益
- 1億9,700万円
- 対象の純資産
- 17億6,700万円
決算期:2019年2月期/譲渡前の株主:個人1名(今井 勝治)が100%保有(代表取締役社長は別の人物)/非開示。取得価額に関する記述はありません
買収理由:土木の技術力を取り込み、土木・建築・設備工事を総合的に展開する。中京圏のLPガス事業とのシナジー
売上20億4,600万円・営業利益1億9,700万円・純資産17億6,700万円。掲載した案件で最大の売上です。売上は25億1,200万円→22億9,500万円→20億4,600万円と3期続けて減っていましたが、営業利益は直近期で1億9,700万円に戻し、純資産は売上に近い水準まで積み上がっていました。株主1名が100%を持ち、経営は別の社長に任せている会社でも、そのまま上場企業グループに入っています。開示文は「多数の有資格者」と「約50年の信用」を評価の理由に挙げています。
株式会社アムズブレーン(事業会社アムズユニティーの親会社)
ソフトウェアの受託開発、システムの運用・保守(子会社アムズユニティーが事業を担う)/岡山県岡山市/1989年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1億8,000万円
- 対象の営業利益
- △700万円
- 対象の純資産
- 1億9,000万円
決算期:2018年12月期(アムズユニティー)/譲渡前の株主:松本 晃良89%、松本 順一10%、石田 貴仁1%(取得したのは松本氏2名の99%)/非開示。取得価額に関する記述はありません/事業会社アムズユニティー単体の数値。持株会社アムズブレーン単体は売上0円・営業損失17万6,000円・純資産3,000万円(2019年3月期)
買収理由:岡山の自社データセンターを核に、開発体制を強化する
事業会社アムズユニティーは売上1億8,000万円・純資産1億9,000万円。営業利益は△1,900万円→1,100万円→△700万円と、直近期は営業赤字でした。それでも、岡山に自社データセンターを持つ買い手にとって、地元の開発要員とノウハウが評価されています。株主の2名から99%を買い、社長の持つ1%は残る形でした。赤字の年があっても、買い手の拠点と噛み合えば話は進みます。
グループ企業一覧には事業会社の「株式会社アムズユニティー」が連結子会社として載っていますが、持株会社のアムズブレーンは載っていません。合併などの開示は確認できておらず、アムズブレーンがどうなったかは追えていません。
にかほ市のガス事業
都市ガス事業(需要家約5,200件)/秋田県にかほ市
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 4億1,700万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2018年度/譲渡前の株主:秋田県にかほ市(ガス水道局)/非開示。譲渡価額に関する記述はありません/都市ガス売上高(2018年度)
買収理由:都市ガス事業の広域展開。下仁田町に続く静岡県外2か所目
都市ガス売上4億1,700万円、需要家5,172件、ガス事業に携わる職員は7名。2018年7月に市が公募を始め、2019年3月に優先交渉権者に選定、5月に市議会の議決で契約が成立し、国の認可を経て2020年4月1日に引き継ぐ予定、という流れが開示されています。自治体が事業を手放すときは、公募→議会の議決→監督官庁の認可と、1年半以上かかることが分かる例です。
2019年10月25日に国の事業譲渡譲受認可を取得(2019年11月11日開示)。事業を引き継いだ「にかほガス株式会社」がグループ企業一覧に連結子会社として掲載されています。
有限会社シオヤのケーブルテレビ事業
ケーブルテレビ(田方郡函南町・沼津市大平などの放送サービス)/静岡県三島市/譲渡会社は1959年1月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:有限会社シオヤ(家電販売・不動産賃貸も営む資本金300万円の会社)/非開示。譲受価額に関する記述はありません
買収理由:隣接エリアの放送サービスを引き継ぎ、設備投資で放送・通信・電話のトリプルプレイと4K・8Kに対応する
資本金300万円の有限会社が、家電販売や不動産賃貸と並行して営んでいたケーブルテレビ事業だけを譲った案件です。会社は手元に残し、設備投資が重くなる事業だけを専業に渡す形です。両社には以前から映像伝送の取引があったと開示されており、取引先が買い手になった例でもあります。
2019年10月1日に事業譲受の予定と開示。譲受先のTOKAIケーブルネットワークはグループ企業一覧に掲載されていますが、譲受完了を示す後続開示は確認できておらず、事業が同社で続いているというのは推定です。
株式会社サイズ
オンラインリサーチ向け自社開発アンケートシステムの提供、受託システム開発/東京都渋谷区/1975年12月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1億7,900万円
- 対象の営業利益
- 3,600万円
- 対象の純資産
- 1億5,700万円
決算期:2017年11月期/譲渡前の株主:中村 立之97.5%、その他2.5%/非開示。取得価額に関する記述はありません
買収理由:アンケートのデータ収集ソリューションを、グループ顧客向けのデジタルマーケティングに活かす
売上1億7,900万円・営業利益3,600万円(利益率20%)・純資産1億5,700万円。掲載した株式取得の中で最小の売上です。営業利益は2,200万円→6,900万円→3,600万円と上下していますが、純資産は8,400万円→1億5,700万円と3期で倍近くに増えていました。売上2億円弱でも、自社で開発した製品を持っていれば上場企業グループの買収対象になります。
2018年9月13日に取引実行予定として開示。グループ企業一覧に「株式会社サイズ」が連結子会社として掲載されています。
下仁田町のガス事業
都市ガス事業(需要家約1,300件)/群馬県甘楽郡下仁田町
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1億4,300万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2016年度/譲渡前の株主:群馬県下仁田町/非開示。譲渡価額に関する記述はありません/都市ガス売上高(2016年度)
買収理由:都市ガス事業の広域展開の第一歩として、静岡県外に初めて進出する
都市ガス売上1億4,300万円、需要家1,336件、従業員5名という小さな町営ガス事業です。2018年4月に仮契約と町議会の議決、10月に国の認可を受け、2019年4月1日に引き継ぐ、という段取りが開示されています。譲受後は町内に支店を置いて保安体制を整えるとしています。この規模の事業でも、地域の顧客基盤そのものに買い手がつく例です。
2018年10月11日に国の認可を取得(同日開示)。2019年5月24日開示の『にかほ市ガス事業の譲受けに関するお知らせ』に「本年4月からは群馬県下仁田町の都市ガス事業を譲り受け」とあり、東海ガスの事業として引き継がれています。
株式会社テレビ津山
ケーブルテレビ(津山市・勝央町、約1万件)、インターネット接続/岡山県津山市/1976年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 4億1,300万円
- 対象の営業利益
- 4,200万円
- 対象の純資産
- 1億6,300万円
決算期:2017年3月期/譲渡前の株主:三谷 太郎96.00%、津山市2.00%、勝央町2.00%(取得したのは三谷氏の96.00%)/非開示。取得価額に関する記述はありません
買収理由:岡山県内のCATVエリアを広げ、互いのノウハウでシナジーを生む
売上4億1,300万円・営業利益4,200万円・純資産1億6,300万円。売上は5億500万円→4億3,900万円→4億1,300万円、営業利益は6,700万円→4,400万円→4,200万円と、3期続けて下がっている局面での譲渡でした。社長が96%、地元の市と町が2%ずつ持つ形で、買い手は社長の持分だけを取得し、自治体の持分は残っています。当初の実行予定は2018年1月11日でしたが、実務上の手続きが終わった2月9日に完了しています。
2018年2月9日に取得完了(同日開示)。グループ企業一覧に「株式会社テレビ津山」が連結子会社として掲載されています。
関連する記事
本ページは株式会社TOKAIホールディングスが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日