株式会社EnjinのM&A実績
PR会社が、本業で抱える約2,500社の顧客基盤を活かせる分野として、不動産・観光バス・訪日観光と畑違いの小さな会社を続けて買っている例です。売り手はいずれも個人オーナーです。2026年の3件はどれも全部ではなく過半数(51〜66%)だけを取得し、うち2件はオーナーから株を買う部分と、会社が発行する新株(第三者割当増資)を引き受ける部分を組み合わせています。金額は1件数百万円〜5,100万円と小さく、売上1億〜5億円規模の会社が相手です。
株式会社Enjinが公表した適時開示4件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都中央区
- 設立
- ―
- 事業内容
- 中堅・中小企業や医療機関向けのPRコンサルティング(テレビ・新聞・雑誌・Webメディアを使った広報支援)と、メディアマッチングサービス「メディチョク」の運営。2026年から不動産事業・観光事業にも参入
- 売上高
- 26億9,900万円(2026年5月期(連結))
- 営業利益
- 3億6,100万円
- 純資産
- 44億600万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- PR・広報コンサルティング/不動産の売買・賃貸/観光バス/訪日観光(インバウンド向けツアー)
- 対象の規模
- 対象の売上 1.2億円〜5.0億円
- 手法
- 株式譲渡と第三者割当増資の引受を組み合わせた過半数取得が中心。買った子会社を通じて次の会社を買う「孫会社化」も使う。2023年の同業(PR会社)買収は100%取得
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 社名を残して子会社として持つのが基本です。2023年に買ったアズ・ワールドコムジャパンは3年後もグループ企業として残っています。田辺観光バスは取得に合わせて「En Journey」に商号変更し、その後は訪日観光のホタルスを買う側に回っています。
- 適時開示の時点では取得価額を毎回伏せています。理由は「売主の意向」で、書かれるのは「金額は僅少」だけです
- ただし後から金額が分かります。2026年5月期の決算短信の企業結合注記に、クロスロード6.6百万円、田辺観光バス5.1百万円、ホタルス51.0百万円と取得原価が出ています
- 株式取得と第三者割当増資を組み合わせる形では、取得原価の全額がオーナーに渡るわけではありません。増資分は会社に払い込まれるお金です。クロスロードは株数で半々、田辺観光バスは計画段階で株数の9割が増資分でした
- 営業赤字の会社は買っていませんが、クロスロードは前々期に債務超過(純資産△1,524万円)でした。田辺観光バスは直前期に最終赤字(△488万円)です
買収の履歴4件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社ホタルス
訪日観光事業(インバウンド・富裕層向けの体験型ツアーなど)/大阪府大阪市/2020年9月設立
- 取得価額
- 5,100万円
- 対象の売上
- 4億9,100万円
- 対象の営業利益
- 900万円
- 対象の純資産
- 900万円
決算期:2025年6月期/譲渡前の株主:非開示(大株主は先方の意向で非公表)/適時開示では「売主の意向により非開示、金額は僅少」。2026年5月期の決算短信の企業結合注記で、51%の取得原価が51.0百万円(現金)と判明。既存株をオーナー側から買う形で、増資分は含まない。アドバイザリー費用等1.0百万円は別。のれん46.4百万円を7年で償却。単純に100%へ引き直すと約1億円
買収理由:観光バス事業に、旅全体の付加価値を高める企画力・コンテンツ力を加える。インバウンドや富裕層向け観光の取り込み
設立5年。売上は2,800万円→8,000万円→4億9,100万円と急成長中で、営業利益907万円・純資産889万円。51%で5,100万円ですから、単純に100%へ引き直すと約1億円、営業利益のおよそ11倍、純資産のおよそ11倍です。利益や純資産がまだ小さくても、伸びている会社は利益の何倍という水準で評価されることがあります。買われたのは51%だけで、残る49%はEnjin側以外の株主が持ち続ける形でした。適時開示では「僅少」としか書かれず、金額は決算短信で初めて出ています。
2026年4月1日に株式取得。2026年5月期の決算短信で新規連結子会社として記載され、結合後の社名は「変更はありません」とされています。(根拠は2026年7月13日開示の「2026年5月期決算短信〔日本基準〕(連結)」)
株式会社クロスロード
不動産事業(不動産の売買・賃貸)/東京都港区/2021年6月設立
- 取得価額
- 660万円
- 対象の売上
- 1億2,000万円
- 対象の営業利益
- 2,100万円
- 対象の純資産
- 200万円
決算期:2025年5月期/譲渡前の株主:個人(東京都在住、氏名・持株比率は非公開)/適時開示では「売主の意向により非開示、金額は僅少」。2026年5月期の決算短信の企業結合注記で、取得原価は合計6.6百万円(現金)と判明。内訳:オーナーから買う株が330株、増資で新たに引き受ける株が330株で、株数は半々。増資で資本金は5百万円から10百万円になる予定と開示。金額の内訳は開示されていないが、1株あたり同じ値段なら、オーナーに渡ったのは約3.3百万円、残る約3.3百万円は会社に払い込まれた計算。アドバイザリー費用等0.6百万円は別。のれん5.5百万円を5年で償却
買収理由:顧客の中小企業・医療機関から寄せられる資産運用の相談に応える不動産事業への新規参入。将来は不動産の小口化・トークン化も視野
売上1億1,995万円・営業利益2,064万円・純資産230万円。売上は7億2,681万円→627万円→1億1,995万円と物件の売買で大きく振れ、前々期は営業損失4,045万円・純資産△1,524万円の債務超過でした。そこから前期に黒字へ戻したタイミングでの譲渡です。取得原価6.6百万円は、営業利益の3分の1ほどにとどまります。決算短信では受け入れた資産2億5,023万円に対し負債が2億4,854万円で、価格の大半はのれんでした。利益が出ていても、純資産が薄く借入の多い会社では金額が小さくなりうるという一つの目安になります。オーナーに払う部分と会社に入れる部分が半々なので、売り手の手取りはさらにその半分程度です。
2026年3月1日に株式取得。決算短信で新規連結子会社として記載され、結合後の社名は「変更はありません」。同社の取得に伴い、Enjinは報告セグメントに「不動産事業」を新設しています。(根拠は2026年7月13日開示の「2026年5月期決算短信〔日本基準〕(連結)」)
株式会社田辺観光バス
観光事業(観光バス)/大阪府泉大津市/2023年2月設立
- 取得価額
- 510万円
- 対象の売上
- 5億円
- 対象の営業利益
- 700万円
- 対象の純資産
- 70万円
決算期:2025年8月期/譲渡前の株主:個人(和歌山県在住、氏名・持株比率は非公開)/適時開示では「売主の意向により非開示、金額は僅少」。2026年5月期の決算短信の企業結合注記で、取得原価は5.1百万円(現金)と判明。内訳:開示時点の計画では、オーナーから買う株が56株、増資で新たに引き受ける株が504株で、株数の9割が増資分。増資で資本金は1百万円から10百万円になる予定と開示。ただし実際に取得した議決権比率は51%で、計画からの変更の中身と、オーナーに払った額・増資に払い込んだ額の金額内訳は開示されていない。アドバイザリー費用等0.6百万円は別
買収理由:インバウンドと大阪IRを見込んだ観光バス事業への新規参入。業界のドライバー不足・車両投資負担による再編・事業承継ニーズ
設立3年目、資本金100万円。売上4億9,974万円・営業利益692万円に対し、純資産は73万円しかなく、直前期は最終赤字(△488万円)でした。この案件では、オーナーの株を買い取るのは一部で、大半は会社が新しく発行する株をEnjinが引き受ける形です。増資のお金は会社に入り、資本金は10倍になります。オーナーがまとまった現金を受け取る売却ではなく、上場企業を株主に迎えて会社の資本を厚くするという選択です。買い手自身も開示の中で、観光バス業界で事業承継ニーズが表に出てきていると書いています。なお決算短信では、期首に取得していたと仮定した場合の影響額を売上2,557万円・営業損失2,790万円と開示しており、前期の数字とは大きく違います(理由の説明はありません)。
2026年3月1日に株式取得。決算短信では結合後の社名が「株式会社En Journey」とされ、本店は和歌山県白浜町に移っています。その後、同社が買い手となってホタルスを子会社化しました。(根拠は2026年7月13日開示の「2026年5月期決算短信〔日本基準〕(連結)」)
アズ・ワールドコムジャパン株式会社
対外的PR・メディア対策のコンサルティング、PR成果物の制作(戦略PR)/東京都港区/1989年5月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 2億7,000万円
- 対象の営業利益
- 250万円
- 対象の純資産
- 9,500万円
決算期:2022年4月期/譲渡前の株主:個人2名(廣瀬修二69%、その他個人1名31%)/相手先の強い意向により非開示。第三者算定機関による株式価値の算定結果を勘案して決定。「当社の直前事業年度末の純資産額の15%未満」
買収理由:大企業向けの戦略PR領域への参入。中小・中堅企業向けの既存サービスとの補完
創業1989年の老舗PR会社。売上2億7,010万円に対し、営業利益は250万円(利益率1%未満)と薄く、営業利益は3期で635万円→269万円→250万円と縮んでいました。一方で純資産は9,493万円と厚く、世界44か国のPR会社ネットワークに加盟し、官公庁の入札資格も持っていました。株主は代表者ではない個人2名で、所有と経営が分かれた会社です。利益が薄くても、同業の買い手から見て足りない領域(大企業向けの戦略PR)を持っていれば買われます。
Enjinの会社概要ページの「グループ企業」欄に社名のまま掲載されています。2026年5月期の決算短信でも子会社として事業内容が紹介されています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社ホタルス5,100万円(売上の0.10倍・営業利益の5.7倍)
- 株式会社クロスロード660万円(売上の0.06倍・営業利益の0.3倍)
- 株式会社田辺観光バス510万円(売上の0.01倍・営業利益の0.7倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社Enjinが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日