株式会社U-NEXT HOLDINGSのM&A実績
動画配信と店舗向けサービスの両方で、既存の顧客基盤に売れる商材や機能を持つ会社を買っています。売上数千万円の赤字スタートアップや、純資産がマイナスの電力小売会社から、ブラザー工業のカラオケ子会社のような大型案件まで幅があります。店舗向けの営業網(全国150拠点・2,000名超と開示)にサービスを載せられるかどうかが、毎回の買収理由に出てきます。
株式会社U-NEXT HOLDINGSが公表した適時開示9件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都品川区
- 設立
- 2009年2月
- 事業内容
- 動画配信「U-NEXT」、店舗向け音楽配信「USEN」を軸に、店舗DX、通信、電力、キャッシュレス決済、家賃保証などを束ねる持株会社
- 売上高
- 3,904億800万円(2025年8月期(連結))
- 営業利益
- 315億7,100万円
- 純資産
- 1,087億800万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 動画配信・アニメ制作/業務用カラオケ/店舗向け音楽放送・店舗DX/フードデリバリー関連(フランチャイズ、オーダー管理システム)/キャッシュレス決済/電力小売/家賃保証
- 対象の規模
- 対象の売上 0.28億円〜277億円(中小企業規模の案件は売上0.28億円〜18億円)
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。家賃保証や電力など事業ごとの子会社が買い手になる「孫会社化」、株式交換も使う。大型案件では70%だけ取得する形もある
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 同じ事業を営むグループ会社に吸収合併することが多い会社です。キャンシステムはUSENに、Paravi運営会社はU-NEXTに、新日本信用保証は買い手のUSEN TRUSTに合併する予定と開示されました。社名を残す場合も、グループ名を冠した社名に変えることがあります(ネットムーブ→USEN FinTech、バーチャルレストラン→WannaEat)。
- 1円での買収が2件あります。純資産マイナス1億2,200万円のくこくエネルギーと、純資産1億5,200万円の新日本信用保証です。赤字や薄利の会社でも、引き取り手がいれば値段がつかない形で譲渡が成立しています
- 個人オーナーとの案件は価格非開示が多いものの、「連結純資産の15%未満」「相手先が個人であること及び守秘義務により非開示」と理由が書かれます。Toremoroは個人からの取得でも7,700万円と開示されました
- 取得後すぐの合併予定まで最初の開示に書く会社です。Toremoro、新日本信用保証、Paravi運営会社はいずれも、取得の時点で合併する予定が示されていました。法人として残したい売り手は、交渉の段階で確かめる必要があります
- 2016年にはアルテリア・ネットワークスから集合住宅向けブロードバンド回線の顧客基盤(売上66億8,000万円)を30億円で譲り受けています。資産・負債を引き継がない顧客契約だけの譲受のため、一覧には入れていません
買収の履歴9件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社GoHands
アニメ・ゲーム等の視聴覚コンテンツの企画、制作/大阪府大阪市/2008年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 4億6,400万円
- 対象の営業利益
- 200万円
- 対象の純資産
- 3,400万円
決算期:2025年7月期/譲渡前の株主:個人1名(岸本 鈴吾)が100%保有/相手先が個人であること及び守秘義務により非開示。対象会社の事業計画に基づく株価算定を用いて交渉。「連結純資産及び単体純資産の15%未満」
買収理由:IP関連ビジネスの強化。海外作品のローカライズの内製化、自社IPのアニメ化
売上4億6,400万円・営業利益190万円・純資産3,400万円。営業利益は3期とも数百万円以下で、ほぼトントンの制作会社です。それでも、買い手側の外注費(スタジオや人員)を内製に置き換えられる点と、制作力そのものが評価されています。利益が薄くても、買い手のコストを減らせる設備や人材があれば買われる例です。
2026年6月1日に株式取得予定として開示され、その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
新日本信用保証株式会社
家賃保証事業(取扱店約5,000社)/東京都墨田区/2008年3月設立
- 取得価額
- 1円
- 対象の売上
- 16億4,500万円
- 対象の営業利益
- 3億700万円
- 対象の純資産
- 1億5,200万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:オーシャン・キャピタル株式会社80%、合同会社ディープエコロジー20%/株式の取得価額は1円。別途アドバイザリー費用等(概算)20百万円。売主が実行日までに他の株主の持分も取得したうえで100%を譲渡する合意
買収理由:同じ家賃保証事業の取り込み。取扱店の切替、審査・債権回収業務の集約、拠点の統合によるコスト削減
売上16億4,500万円・純資産1億5,200万円の会社が1円で譲渡されています。開示の営業損益は307百万円ですが、経常損益は2百万円・当期純損益は1百万円で、前の2期も経常利益は1,800万円・100万円にとどまっていました。売り手は投資会社です。買い手が評価したのは利益ではなく約5,000社の取扱店網で、取得後は拠点も業務も買い手側に集約し、法人は合併で消える予定です。利益の出ない会社でも、顧客網に価値があれば引き取り手はいますが、その場合の値段は「ほぼゼロ」になりうることを示しています。
取得時の開示で、2026年9月1日を効力発生日として買い手のUSEN TRUSTに吸収合併する予定と示されていました。予定日は過ぎていますが、合併完了の開示は確認できておらず、予定どおり実行されたとの推定です。
株式会社エクシング
業務用カラオケ「JOYSOUND」、音楽・映像ソフト、ヘルスケア事業/愛知県名古屋市/1948年12月(創業は1992年5月)設立
- 取得価額
- 175億円
- 対象の売上
- 277億800万円
- 対象の営業利益
- 17億2,500万円
- 対象の純資産
- 145億400万円
決算期:2025年3月期(単体、IFRS)/譲渡前の株主:ブラザー工業株式会社(上場企業)が100%保有/70%分の取得価額。別途アドバイザリー費用等(概算)250百万円、合計(概算)17,750百万円/エクシング単体(IFRSベース)の数値。子会社・孫会社9社を含むグループ10社の単純合算では売上407億4,300万円・営業利益23億200万円
買収理由:カラオケ楽曲の動画配信への活用、カラオケ店舗網への映像コンテンツ提供、ホテル・飲食店・介護施設への機器拡販
売上277億円、取得価額175億円という大型案件で、中小企業の売却相場とはかけ離れています。参考になるのは形のほうです。売り手のブラザー工業は、譲渡の前にカラオケ店舗を運営する子会社(純資産マイナス95億円)を先に切り離し、残る事業の70%だけを売っています。上場企業同士でも、売りにくい部分を外し、一部を持ち続ける組み立てが使われています。
2026年4月1日に株式取得予定として開示され、その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
くこくエネルギー株式会社
電力小売事業/東京都千代田区/2017年8月設立
- 取得価額
- 1円
- 対象の売上
- 4,100万円
- 対象の営業利益
- △2,200万円
- 対象の純資産
- △1億2,200万円
決算期:2024年12月期/譲渡前の株主:エネルリンクホールディングス株式会社が100%保有(同社は町田 錠二が100%保有)/取得価額1円
買収理由:電力小売事業のマーケティング体制の整備・強化
純資産マイナス1億2,200万円の債務超過、売上は2億6,100万円→9,200万円→4,100万円と縮小していた会社が、1円で譲渡されています。オーナー個人の持株会社が持っていた会社です。開示文には「対象会社は赤字決算となっておりますが」と書いたうえで、早期黒字化を見込むとしています。債務超過の会社でも、廃業ではなく「1円で引き取ってもらう」出口があることを示す例です。
取得時の開示で「株式会社U-POWER GREEN MARKETING」への商号変更予定が示されましたが、変更が実施されたかは確認できていません。
ネットムーブ株式会社
キャッシュレス決済サービス(ペイメント・サービス・プロバイダ)/東京都千代田区/2000年2月設立
- 取得価額
- 55億円
- 対象の売上
- 14億9,900万円
- 対象の営業利益
- 6億4,400万円
- 対象の純資産
- 16億6,500万円
決算期:2024年3月期(ペイメント事業)/譲渡前の株主:住信SBIネット銀行株式会社(上場企業)が100%保有/株式の取得価額。別途アドバイザリー費用等(概算)275百万円、合計(概算)5,775百万円。株式譲渡契約所定の方法で調整予定。アクワイアリング事業の承継対価は別に現金1,000百万円(第三者算定のDCF法で952〜1,207百万円)/対象会社のうちペイメント事業のみの数値(監査未了)
買収理由:キャッシュレス決済の営業から審査・システム・導入までの一本化。非対面決済への拡大
売上14億9,900万円・営業利益6億4,400万円・純資産16億6,500万円に対して55億円。営業利益の約8.5倍、純資産の約3.3倍という計算になります。売り手は銀行で、規模も中小企業の売却とは異なりますが、買い手が欲しいペイメント事業だけを残し、他の事業は先に切り出してから売るという組み立ては、事業が複数ある会社の売却でも使えます。買い手とは5年来の取引先でした。
2024年12月2日に完全子会社化が完了し、2025年3月1日付で「株式会社USEN FinTech」に商号変更しました(2025年1月30日開示の変更のお知らせ、および2025年10月14日開示の『2025年8月期決算短信〔日本基準〕(連結)』による)。アクワイアリング事業の承継は許認可の関係で2026年3月2日予定まで延期されています。
出典:ネットムーブの株式取得による完全子会社化及びネットムーブによる住信SBIネット銀行のアクワイアリング事業の会社分割による事業承継に関するお知らせ
株式会社Toremoro
フードデリバリーの複数プラットフォームのオーダーを一元管理するシステムの開発・提供/東京都港区/2018年6月設立
- 取得価額
- 7,700万円
- 対象の売上
- 2,800万円
- 対象の営業利益
- △6,400万円
- 対象の純資産
- △2,200万円
決算期:2023年5月期(決算確定前の月次累計)/譲渡前の株主:中野 凱仁85.5%、Founder Foundry1号投資事業有限責任組合10.1%ほか/別途アドバイザリー費用として概算5百万円
買収理由:フードデリバリーブランドのフランチャイズとオーダー一元管理システムのセット販売
売上2,800万円、営業損失6,400万円、純資産マイナス2,200万円の創業5年のスタートアップが7,700万円で売れています。3期連続の営業赤字で、債務超過にも転じていました。買い手が評価したのは、すでに持っていたフランチャイズ事業と組み合わせて売れるシステムだったことです。赤字でも、買い手の既存商品の「足りない部品」になれば値段がつきます。ただし取得と同時に合併予定が示されており、会社としては残らない前提の売却でした。
取得時の開示で、WannaEatを存続会社とする吸収合併を予定していると示されましたが、合併の完了は開示で確認できていません。2025年10月14日開示の『2025年8月期決算短信〔日本基準〕(連結)』ではWannaEatが事業を運営する子会社として挙げられています。
確認元:フードデリバリーオーダーの一元管理サービスを展開する株式会社Toremoroの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
出典:フードデリバリーオーダーの一元管理サービスを展開する株式会社Toremoroの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社プレミアム・プラットフォーム・ジャパン
動画配信サービス「Paravi」の運営/東京都港区/2017年7月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 85億3,500万円
- 対象の営業利益
- △7億3,800万円
- 対象の純資産
- 60億6,600万円
決算期:2022年3月期/譲渡前の株主:TBSホールディングス31.25%、日本経済新聞社15.63%、テレビ東京ホールディングス15.63%、電通グループ14.80%、WOWOW7.45%、博報堂DYメディアパートナーズ7.30%/株式交換のため現金の取得価額はなし。交換比率は第三者算定(大和証券)のDCF法レンジ6.34〜8.93の範囲内で決定
買収理由:動画配信サービスの統合による国内ドラマ・バラエティのラインアップ強化
大手メディア各社の合弁会社を株式交換で取り込んだ案件で、中小企業の売却相場とはかけ離れています。売上85億3,500万円に対し営業損失は33億3,300万円→6億7,700万円→7億3,800万円と赤字が続いていました。参考になるのは対価の形で、現金ではなく買い手の株式を受け取る株式交換が使われています。売り手は売却後も買い手の株主として成長の果実を受け取れる形です。
株式交換の効力発生直後の2023年3月31日を効力発生日として、U-NEXTを存続会社とする吸収合併が予定されていました。買い手の公式サイトの沿革にも2023年に「U-NEXTとParaviが統合」とあります。
確認元:簡易株式交換によるプレミアム・プラットフォーム・ジャパンの完全子会社化及び同社と連結子会社の合併並びに連結子会社の第三者割当による新株発行のお知らせ
出典:簡易株式交換によるプレミアム・プラットフォーム・ジャパンの完全子会社化及び同社と連結子会社の合併並びに連結子会社の第三者割当による新株発行のお知らせ
株式会社バーチャルレストラン
既存の厨房で始められるフードデリバリーブランドのフランチャイズ本部/東京都中央区/2020年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 4億8,400万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2022年5月期(速報値)/譲渡前の株主:個人1名(牧本 天増)が100%保有/守秘義務により非開示。デューデリジェンスと第三者機関の株式価値算定をもとに決定。「連結及び単体純資産の15%未満」/決算確定前の2021年6月〜2022年5月の月次累計(速報値)。前期(2021年5月期)は1億1,800万円
買収理由:グループの飲食店顧客基盤へのクロスセルと、営業網を使った加盟店開拓
設立から2年余りで売れた会社です。売上は1億1,800万円から4億8,400万円へ4倍に伸びていました。利益や純資産は開示されていません。コロナ禍で生まれた事業でしたが、買い手はUSENの飲食店顧客に売れる商材として評価しています。創業間もなくても、買い手の顧客に売れる商品があれば買われます。
「WannaEat株式会社」に商号変更しています(2023年8月23日開示のToremoro取得のお知らせに「現商号:WannaEat株式会社」と記載)。2025年10月14日開示の『2025年8月期決算短信〔日本基準〕(連結)』でも事業を運営する連結子会社として挙げられています。
確認元:フードデリバリーオーダーの一元管理サービスを展開する株式会社Toremoroの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
出典:フードデリバリーサービス市場への参入を目的とした株式会社バーチャルレストランの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
キャンシステム株式会社
店舗向け音楽・映像放送、セキュリティ、カード決済関連、LED照明など/東京都杉並区/1965年3月設立
- 取得価額
- 15億円
- 対象の売上
- 51億8,800万円
- 対象の営業利益
- 4億円
- 対象の純資産
- 11億6,800万円
決算期:2018年2月期(連結)/譲渡前の株主:工藤 嘉高84%、当社10%ほか(工藤家の個人3名から取得)/既保有10%に加え、90%分(100,000株)の取得価額。過去の施設使用料の未払金約40億円(15年かけて支払う予定)も含めて、第三者機関の株式価値算定を勘案して決定
買収理由:同業の音楽放送事業者をグループの一事業会社とする(2018年1月に基本合意、公正取引委員会の審査を経て実行)
売上51億8,800万円・営業利益4億円・純資産11億6,800万円の老舗で、創業家の個人3名から残り90%を15億円で取得しました。帳簿外に約40億円の未払金を抱えており、価格はそれも含めて決まっています。最終損益は2期連続で赤字でした。基本合意から実行まで、独占禁止法の審査で約8か月かかっています。同業最大手どうしの統合では、審査の期間も見込んでおく必要があります。
2024年9月1日付で株式会社USENを存続会社とする吸収合併により消滅しました(2025年10月14日開示の『2025年8月期決算短信〔日本基準〕(連結)』の連結範囲の変更による)。取得から約6年でした。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された6件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 新日本信用保証株式会社1円(売上の0.00倍・営業利益の0.0倍)
- 株式会社エクシング175億円(売上の0.63倍・営業利益の10.1倍)
- くこくエネルギー株式会社1円(売上の0.00倍)※営業赤字での譲渡
- ネットムーブ株式会社55億円(売上の3.67倍・営業利益の8.5倍)
- 株式会社Toremoro7,700万円(売上の2.75倍)※営業赤字での譲渡
- キャンシステム株式会社15億円(売上の0.29倍・営業利益の3.8倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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