株式会社神戸物産のM&A実績
「食の製販一体体制」を目標に、業務スーパーで売る商品を作るための工場を買っている会社です。酒蔵、食肉処理場、製パン・製菓材料のメーカーなど、対象は国内の食品メーカーが中心。債務超過の会社や、民事再生中の会社も買っています。買った会社や既存の子会社が次の買い手になることも多く、2026年には子会社の関原酒造が同じ新潟県長岡市の柏露酒造を取得しました。2015〜2018年には当時の外食子会社(ジー・テイストなど)が飲食チェーンを買っていましたが、この外食グループは2020年にグループから外れています。
株式会社神戸物産が公表した適時開示9件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 兵庫県加古川市
- 設立
- ―
- 事業内容
- 「業務スーパー」のフランチャイズ本部。国内のグループ工場で食品を製造し、業務スーパーで売る「製販一体」を掲げる
- 売上高
- 5,517億100万円(2025年10月期(連結))
- 営業利益
- 398億7,800万円
- 純資産
- 1,614億円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 酒類の製造(清酒・焼酎・みりん)/食肉処理・養鶏/製パン・製菓材料、レトルト食品の製造/飲食店チェーン(2015〜2018年、当時の外食子会社経由)
- 対象の規模
- 対象の売上 600万円〜27.6億円(会社分割・事業譲受の案件は対象の売上非開示)
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。子会社が買い手になる「孫会社化」、会社分割で事業だけを受け皿会社に移してその株式を買う形、事業譲受、民事再生のスポンサーとして増資を引き受ける形も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 食品メーカーは社名のまま子会社として残すのが基本です。菊川、朝びき若鶏、上原食品工業は公式サイトのグループ会社一覧に今も載っています。一方で、子会社同士を合併させて整理することもあり、2019年には食品製造の子会社4社を合併で消し、食品販売の子会社を関原酒造に統合しています。外食子会社経由で買った飲食チェーンは、2020年に外食グループごと神戸物産の手を離れました。
- 取得価額を開示することが多い会社です。9件のうち5件で金額が出ています(800万円台〜7億円)
- 債務超過の会社でも買っています。上原食品工業は純資産マイナス5億9,000万円で7億円、菊川は分割元が純資産マイナス3億7,500万円の酒蔵から、酒造事業だけを5,000万円で引き取りました
- 民事再生中の会社のスポンサーにもなっています。オーディンフーズ(売上27億円)とタケモトフーズ(売上15億円)は、いずれも既存の株式をいったん消したうえで、1,000万円の増資を引き受けて子会社にしました。スポンサー契約から子会社化まで約4か月です
- 買い手側のグループ再編で、親会社が変わることがあります。外食子会社ジー・テイスト経由で買った壁の穴、タケモトフーズ、オーディンフーズ(現テンフォー)は、2020年に神戸物産がジー・テイストの親会社の株式を手放したため、神戸物産グループから外れました
- 2026年には、グルメ杵屋と作る合弁会社MEAL HUB経由で、香港・韓国・タイ・グアムなどの機内食会社群(LSGグループ)を買う契約を結んでいます。海外案件のため、この一覧には入れていません
買収の履歴9件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
柏露酒造株式会社
日本酒の製造・販売、酒類の卸売・小売/新潟県長岡市/1956年2月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 8億7,200万円
- 対象の営業利益
- △4,300万円
- 対象の純資産
- 1億6,600万円
決算期:2025年6月期/譲渡前の株主:濵田HD株式会社(鹿児島県いちき串木野市の不動産会社)が100%保有。同社代表の兄弟が業務スーパーのFCオーナー/相手先との取り決めにより非開示。第三者機関のデューデリジェンス結果に基づき、双方協議で決定
買収理由:需要拡大でフル稼働が続く関原酒造の生産能力を増強し、麹製造技術などを取り込む
売上8億7,200万円・営業損失4,300万円・純資産1億6,600万円。売上は10億7,400万円→9億2,100万円→8億7,200万円と減り、3期続けて営業赤字、純資産も2億6,000万円から1億6,600万円まで減っていた局面での譲渡です。買い手は親会社ではなく、同じ長岡市の酒蔵である子会社の関原酒造でした。近くの同業が生産能力を欲しがっている場合、赤字でも設備と技術に値段がつきます。売り手は鹿児島県の不動産会社(濵田HD)で、その代表の兄弟が業務スーパーのFCオーナーという接点がありました。
2026年4月30日に譲渡実行予定として開示され、その後の商号変更や合併の開示はありません。ただし公式サイトのグループ会社一覧(孫会社は載らない可能性あり)には未掲載のため、存続は推定です。
上原食品工業株式会社
製パン・製菓用のフラワーペースト、バタークリーム、餡、フィリング、レトルト食品の製造・販売/東京都荒川区/1954年12月設立
- 取得価額
- 7億円
- 対象の売上
- 15億6,400万円
- 対象の営業利益
- △1,400万円
- 対象の純資産
- △5億9,000万円
決算期:2024年3月期/譲渡前の株主:株式会社ADEKA(上場企業)が100%保有
買収理由:関東の製造拠点として、PB商品を充実させる
純資産マイナス5億9,000万円の債務超過で、営業利益も2期続けて赤字。それでも7億円で売れています。売上15億6,400万円に対して0.45倍です。売り手は化学メーカーのADEKAで、本業から離れた食品子会社を、その製品を売り場で使える買い手に渡した形です。債務超過でも、70年続いた製造技術と工場は値段になります。
株式会社壁の穴
飲食店(スパゲティ専門店「壁の穴」、イタリア料理店、うどん専門店)29店舗/東京都渋谷区/1976年3月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 20億9,600万円
- 対象の営業利益
- 1,800万円
- 対象の純資産
- 6億6,600万円
決算期:2017年12月期/譲渡前の株主:秘密保持義務により非開示/売り手との秘密保持義務により非開示
買収理由:知名度のあるブランドと好立地の店舗網を取り込み、外食の業態を広げる
1953年創業の和風パスタの老舗。売上20億9,600万円・営業利益1,800万円・純資産6億6,600万円。売上は24億5,300万円→22億6,700万円→20億9,600万円と減り続けていました。開示文には、買い手の食材調達やスケールメリットで売り手のコストを下げられることが理由として書かれています。売上が落ちていても、ブランドと百貨店・商業施設の好立地は評価されます。
2020年6月30日、神戸物産はジー・テイストの親会社クックイノベンチャーの株式を同社と同社社長に譲渡し、外食グループが神戸物産グループから外れました。同開示では壁の穴はジー・テイストの100%子会社として記載されており、外食グループごと移っています。
株式会社タケモトフーズ
フードコート店、レストラン、カフェの運営(閉鎖予定を含め8拠点)/大阪府堺市/1988年12月設立
- 取得価額
- 1,000万円
- 対象の売上
- 15億5,300万円
- 対象の営業利益
- △2億円
- 対象の純資産
- 1億4,400万円
決算期:2017年6月期(民事再生手続開始前)/譲渡前の株主:竹本一善90.0%、竹本明美10.0%(個人2名)/株式の取得価額10百万円。アドバイザリー費用2百万円を加えた合計は12百万円/2018年7月の開示の3期推移による数値。2018年2月のスポンサー契約の開示では同期の売上を1,022百万円と記載しており、開示間で食い違いがある
買収理由:フードコート業態を強化し、食材仕入れを集約する
売上は20億6,600万円→19億400万円と推移し、直前期に営業損失2億円を出して民事再生に入りました。2018年2月にスポンサー契約、7月に子会社化。売上15億円規模の会社が、株式代1,000万円で引き受けられています。民事再生では既存株主の持分は消え、スポンサーの増資で会社が引き継がれます。手遅れになると、オーナーの手元にはほとんど残らないという例です。
2020年6月30日、神戸物産はジー・テイストの親会社クックイノベンチャーの株式を譲渡し、外食グループが神戸物産グループから外れました。同開示ではタケモトフーズはジー・テイストの100%子会社として記載されています。
出典:当社連結子会社(株式会社ジー・テイスト)による株式会社タケモトフーズの募集株式の引受(子会社化)に関するお知らせ(開示事項の経過)
株式会社オーディンフーズ
宅配ピザ「テンフォー」などの製造・宅配・店頭販売(105店舗、うちFC10店舗)/北海道函館市/1969年5月設立
- 取得価額
- 1,000万円
- 対象の売上
- 27億5,700万円
- 対象の営業利益
- △6,200万円
- 対象の純資産
- △6,900万円
決算期:2017年4月期(民事再生手続開始前)/譲渡前の株主:長谷川英直52.4%、長谷川泰子14.0%ほか/アドバイザリー費用等なし
買収理由:中食(宅配)市場の成長を見込み、持ち帰り寿司の宅配と連携する
北海道・東北で105店舗、売上27億5,700万円。営業赤字が3期続き、直前期に純資産マイナス6,900万円の債務超過になって民事再生に入りました。それだけの店舗網を持つ会社が、1,000万円の増資で引き受けられています。2018年3月にスポンサー契約、6月に子会社化。オーナー家の株式は100%減資で消えています。店舗網が残っているうちに動いても、債務超過まで行くとオーナーの取り分はなくなることを示す例です。
2020年6月の開示に、同じ所在地(函館市柏木町24番19号)・同じ設立日(1969年5月23日)の「株式会社テンフォー」がジー・テイストの100%子会社として載っており、社名を変えたものと推定されます。同日、神戸物産はジー・テイストの親会社の株式を譲渡し、外食グループごと神戸物産グループから外れました。
出典:当社連結子会社(株式会社ジー・テイスト)によるオーディンフーズの第三者割当増資の引受(子会社化)に関するお知らせ(開示事項の経過)
株式会社活性化本舗さぬき
飲食店「塩がま屋」1店舗の運営、コンサルティング/香川県綾歌郡宇多津町/2012年4月設立
- 取得価額
- 850万円
- 対象の売上
- 600万円
- 対象の営業利益
- △400万円
- 対象の純資産
- 200万円
決算期:2015年3月期/譲渡前の株主:小池孝明62.8%、渡辺満子21.9%ほか2名(個人4名)。譲渡したのは小池孝明氏/取得価額850万円(アドバイザリー費用等なし)
買収理由:四国エリアの外食店舗網を強化し、店舗運営・立地開発の拠点にする
売上600万円・営業損失400万円・純資産200万円、店舗は1つだけ。それでも上場企業グループが850万円で62%を買い、開示まで出しています。純資産の数倍の値がついた計算です。1店舗・赤字の会社でも、その地域に足場が欲しい買い手には価値があります。
2020年6月にジー・テイストを含む外食グループが神戸物産グループから外れましたが、その開示に載ったジー・テイストの子会社一覧に活性化本舗さぬきの名前はなく、それ以前の合併・売却の開示も確認できていません。
株式会社日本臨床漢方研究機構
薬膳中華レストラン「食文化サロン 白金劉安」1店舗の運営/東京都港区/2004年12月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 4,200万円
- 対象の営業利益
- △1,100万円
- 対象の純資産
- △3,300万円
決算期:2014年11月期/譲渡前の株主:那須正則83.8%ほか複数の個人/売主との協議により非開示。純資産法とDCF法の算定結果を勘案して決定
買収理由:グループの外食事業の強化
売上4,200万円・営業損失1,100万円・純資産マイナス3,300万円。3期続けて営業赤字、債務超過も年々深まっていた1店舗のレストランです。それでも上場企業グループが66.7%を買っています。白金台という立地と、薬膳・漢方を取り入れた独自の業態が理由に挙げられています。
2020年6月にジー・コミュニケーションを含む外食グループが神戸物産グループから外れましたが、その開示に載った子会社一覧に日本臨床漢方研究機構の名前はなく、それ以前の合併・売却の開示も確認できていません。
株式会社但馬の食肉処理場・養鶏事業
鶏肉の生産・加工・販売(食肉処理場と養鶏場)/大阪府大阪市(譲渡会社の所在地)/譲渡会社は2011年2月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:伊藤忠飼料株式会社が100%保有する株式会社但馬/非開示
買収理由:鶏肉を朝に処理して当日販売する製販一体の流通をつくる
飼料会社の子会社が運営していた食肉処理場と養鶏場を、受け皿として作った子会社「朝びき若鶏」が引き取った案件です。会社ごとではなく設備と事業だけの譲受で、業績や金額は開示されていません。開示文によると、譲受後も伊藤忠飼料から飼料と技術指導を受ける形で、売り手との関係が続いています。
菊川株式会社(旧菊川の酒造事業を承継した新会社)
清酒・焼酎・みりん・醸造アルコールの製造・販売/岐阜県各務原市/新会社は2014年1月設立(分割元は1941年3月設立、1871年創業)設立
- 取得価額
- 5,000万円
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:新設会社のため確定した決算なし/譲渡前の株主:分割元の菊川株式会社(金森義信41.9%、大垣共立銀行5.0%、その他53.1%)/2株を50百万円で取得
買収理由:日本酒などを製造し、全国の業務スーパーとグループの外食事業で売る
2014年2月に契約、4月に実行。分割元の菊川は純資産マイナス3億7,500万円(総資産6億5,900万円)の債務超過でした。そこで会社ごとではなく、酒造事業だけを新会社に移し、その株式を5,000万円で買っています。分割元は「株式会社ヒシノ」に社名を変え、「菊川」の名前は新会社が引き継ぎました。創業140年超の酒蔵の名前と蔵を、債務と切り離して残した例です。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された5件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 上原食品工業株式会社7億円(売上の0.45倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社タケモトフーズ1,000万円(売上の0.01倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社オーディンフーズ1,000万円(売上の0.00倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社活性化本舗さぬき850万円(売上の1.42倍)※営業赤字での譲渡
- 菊川株式会社(旧菊川の酒造事業を承継した新会社)5,000万円
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社神戸物産が公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日