東部ネットワーク株式会社のM&A実績
横浜の運送会社で、長期ビジョン「トライ2034」で「資本業務提携やM&Aを機動的に実行する」と掲げています。買っているのは売上4億〜14億円規模の地方の運送会社と整備工場です。セメント輸送、工業用ガス輸送と、特殊な荷物を運ぶ会社を2022年から続けて傘下に入れ、2026年には自動車整備工場にも手を広げました。売り手は個人オーナーのほか、運送会社や外資系ガスメーカーの日本法人など事業会社もいます。
東部ネットワーク株式会社が公表した適時開示4件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 神奈川県横浜市
- 設立
- 1943年12月
- 事業内容
- 関東圏を中心としたトラック輸送(飲料・セメント・産業用ガスなど)、3PL、物流施設やオフィスビルの賃貸、自動車整備
- 売上高
- 100億7,700万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 2億7,000万円
- 純資産
- 209億1,300万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- セメント輸送/工業用ガス・高圧ガス輸送/自動車整備(大型車の車検整備)
- 対象の規模
- 対象の売上 3.8億円〜14.2億円
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)。過半数だけ買って残りを後から買い増す形、売り手側で会社分割をして整備事業だけを残してから株式を買う形も使う
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残しています。テーエス運輸と魚津運輸は2026年3月期の決算短信でも子会社として名前が出ています。一方で、以前からの完全子会社だった相模新栄運送(純資産1億2,700万円、営業損失1,700万円)は2024年10月に本体へ吸収合併しており、小さな子会社を整理することもあります。
- 取得価額は4件中1件だけ開示されています。福興商会の14億3,000万円です。ほかの3件は「秘密保持義務」「先方の要請」を理由に非開示でした
- 非開示の案件でも「第三者機関によるデュー・ディリジェンスと株式価値算定を行った」と毎回書いています
- 債務超過の会社も、売り手が債務超過を解消してから引き取っています。テーエス運輸(純資産マイナス4億4,300万円)は、譲渡実行日までに売主の日本エア・リキードが債務超過を解消する条件でした
- 親会社の連結売上は約100億円、純資産は約209億円です。売上規模に比べて純資産が厚く、14億円の案件でも純資産の7%弱にとどまります
買収の履歴4件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社福興商会
自動車整備(江東区東雲の指定工場。大型車中心の車検整備)/東京都墨田区/1950年12月設立
- 取得価額
- 14億3,000万円
- 対象の売上
- 3億8,000万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 3億9,400万円
決算期:2025年12月期(分割後の概算)/譲渡前の株主:個人4名が100%保有(氏名は非公開、東京都内)/取得価額1,430百万円。分割後の純資産見込み394百万円の約3.6倍。分割前の2025年12月期の営業利益45百万円の約32倍にあたる/会社分割後の見込み(2025年12月期実績を基にした概算)。分割前は売上423百万円・純資産840百万円
買収理由:神奈川・東京エリアでの車両整備体制の充実と、整備ノウハウの共有による生産性向上
この会社で唯一、金額が開示された案件です。14億3,000万円。創業70年以上、売上4億円前後の整備工場ですが、純資産は8億円を超えていました。売る前に、整備事業以外を新しい会社へ切り出し、整備工場だけを渡す形を取っています。分割後の純資産3億9,400万円に対して約3.6倍の値段で、大型車の車検ができる指定工場という許認可と立地が評価されたと読めます。営業利益は5,000万円→6,100万円→4,500万円と、直近は少し落ちたところでの譲渡でした。
株式譲渡の実行予定日は2026年12月1日。2027年3月期第3四半期から連結子会社になる予定と開示されています。
テーエス運輸株式会社
液化酸素・液化窒素・液化アルゴンなど高圧ガスの輸送/兵庫県尼崎市/1968年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 6億6,900万円
- 対象の営業利益
- 3,360万円
- 対象の純資産
- △4億4,300万円
決算期:2023年12月期/譲渡前の株主:日本エア・リキード合同会社(外資系産業ガス大手の日本法人)が100%保有/非開示(株式譲渡契約上の秘密保持義務)。第三者機関によるデュー・ディリジェンスと株式価値算定を実施
買収理由:魚津運輸で参入した産業用ガス輸送を一段伸ばし、水素・アンモニアなど新エネルギー輸送にも広げる
売上6億6,900万円・営業利益3,360万円。ただし純資産はマイナス4億4,300万円の債務超過でした。営業利益は580万円→1,600万円→3,360万円と回復途中で、売主の日本エア・リキードが譲渡実行日までに債務超過を解消するという条件で話がまとまっています。荷主だった親会社が、物流子会社を運送の専業に渡した形です。2年後の決算短信では「グループの業績を牽引する中核的な存在」と書かれています。
2024年4月8日に子会社化が完了。2026年3月期の決算短信に「子会社であるテーエス運輸株式会社」として名前が出ています。
魚津運輸株式会社
工業用ガス輸送、セメント輸送、毒物劇物の輸送・貯蔵/富山県魚津市/1953年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 6億5,100万円
- 対象の営業利益
- 6,600万円
- 対象の純資産
- 2億6,800万円
決算期:2022年8月期(見込み)/譲渡前の株主:株式会社アペックス(石川県金沢市の運送会社)が53.23%、自己株式29.79%/非開示(株式譲渡契約上の秘密保持義務)。第三者機関によるデュー・ディリジェンスと株式価値算定を実施。なお残りの株式は2025年12月に35百万円で追加取得/2022年8月期は見込みの数値
買収理由:半導体・鉄鋼・化学向けに需要が安定している工業用ガス輸送への参入。将来の水素輸送も視野
1949年創業、売上6億5,100万円・営業利益6,600万円・純資産2億6,800万円。売上・利益とも3期連続で伸びていました。売り手は創業家ではなく、同じ運送業の会社(アペックス)です。外資系メーカーと直接取引している荷主基盤が評価されています。最初は過半数だけを買い、3年後の2025年12月に残りの株主から買い取って完全子会社にしています。
2025年12月19日に非支配株主の株式をすべて取得して完全子会社になりました。決算短信の企業結合注記で「結合後企業の名称:変更はありません」とされています。
株式会社東北三光
セメント輸送・販売、出荷管理、施設保全/宮城県塩竃市/1994年11月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 14億2,400万円
- 対象の営業利益
- 1,300万円
- 対象の純資産
- 1億2,400万円
決算期:2021年3月期/譲渡前の株主:宮城県内の個人(氏名は先方の要請で非公開)/非開示(先方の要請)。業績への影響は「軽微」と開示/収益認識基準の適用前の数値。適用後は2021年3月期で440百万円程度になる見込みと開示
買収理由:仙台・秋田を中心とするセメント輸送の基盤を受け継ぎ、東北地区の営業を広げる
売上14億2,400万円とありますが、新しい会計基準に合わせると4億4,000万円程度と開示されています。営業利益は400万円の赤字→900万円→1,300万円と薄い利益でしたが、セメントメーカーや同業との50年来のつながりが評価されました。利益が小さくても、地域の荷主との関係そのものに値段がつく例です。
2022年4月15日に譲渡実行予定と開示。その後の合併・商号変更の開示は見当たりませんが、手元の2026年3月期決算短信にも社名が出ておらず、存続は確認できていません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された1件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社福興商会14億3,000万円(売上の3.76倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは東部ネットワーク株式会社が公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月12日