株式会社ウェルディッシュのM&A実績
麦茶の老舗が、本業の赤字を埋めるために2017年から買収を始め、2024年の経営陣刷新後は医療・介護施設向けの食品サービスと化粧品に絞って買い続けている会社です。売り手は創業者個人(100%保有)が中心で、売上2億円台の会社から買っています。一方で、2025年以降は社外取締役が経営する会社や、取締役を送り込んでいる会社の株式を、株式交換や追加取得で取り込む案件が続いています。
株式会社ウェルディッシュが公表した適時開示8件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都港区
- 設立
- 1957年10月
- 事業内容
- 「フジミネラル麦茶」で知られる旧石垣食品。2024年の経営体制刷新後は、医療・介護施設向けの食品サービスとメディカルコスメ(医療化粧品)を軸にしている
- 売上高
- 13億500万円(2025年8月期(連結。決算期変更による5か月の変則決算))
- 営業利益
- 3,200万円
- 純資産
- 32億7,100万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 医療・介護施設向けの食品サービス、介護用品の卸売/医療・福祉コンサルティング/化粧品・健康食品の企画販売(OEM・通販)/宅配水/給食受託・施設管理
- 対象の規模
- 対象の売上 2.1億円〜99.1億円
- 手法
- 株式譲渡(現金)のほか、自社株を渡す株式交換をよく使う。メディアートでは半分を現金、残り半分を株式交換で取得。過半数(51%)だけ買う形、事業譲受もある
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 残すとは限りません。メディアートは2025年に親会社へ吸収合併されました。また、買った会社を短期間で手放した例が2件あります。新日本機能食品は6年後に創業者へ買い戻され(MBO)、ハーバーリンクスは取得から2か月で新社長へ再譲渡されています。
- 取得価額を開示する会社です。8件中6件で金額が出ています。ただし全部を買った案件はハーバーリンクスと宅配水事業だけで、残りは51%分(2件)、50%分(1件)、24%分(1件)の金額です
- 株式交換では値段の目安が読めます。交付株数と、開示された株価の算定レンジを掛ければ、グランドルーフで約19〜23億円、IMGで約39〜41億円です
- 逆アーンアウトを使った例があります。ハーバーリンクスでは、取得後の業績や財務が約束と違えば売り手が補償する契約を結び、実際に表明保証と逆アーンアウトの違反を理由に2か月で手放しています
- IMGホールディングスは買い手の社外取締役が代表を務める会社、ACA Nextは買い手の社長と取締役が取締役に入っている会社です。いずれも開示文に関係が明記されています
買収の履歴8件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
ACA Next株式会社
学校・病院・介護施設の給食受託、施設清掃・管理受託、人材派遣、訪問介護/東京都港区/1991年6月設立
- 取得価額
- 9億円
- 対象の売上
- 99億1,200万円
- 対象の営業利益
- 1億7,400万円
- 対象の純資産
- 6億2,700万円
決算期:2025年10月期(連結)/譲渡前の株主:取得前の大株主はThe Conscious Group 28.5%、CIS Trust Pte.Ltd 20.0%。今回の株式の売り手は開示されていない/追加取得した908株(議決権24.0%分)の取得価額。算定方法の記載はなし。これに先立ち2025年4月に、ACA Next Partnersの新株166株を99.6百万円で引き受けている(同社の合併でACA Next株に転換)
買収理由:給食の大規模工場と、社会福祉施設・医療施設への販売網を取り込み、医療・介護向け食品サービスと冷凍食品の定期配送「Dish」を強化する
売上99億1,200万円・営業利益1億7,400万円・純資産6億2,700万円。この会社の案件でいちばん大きな相手です。ただし買ったのは40.3%までで、過半数ではありません。2025年4月の業務提携と少額出資から始まり、10か月で持分を引き上げて連結子会社にしています。まず提携で組んでから、段階的に株式を移す進め方の実例です。
2026年3月2日に株式譲渡完了予定として開示されました。その後の商号変更や合併の開示は手元の開示にはありません。
株式会社IMGホールディングス
医療施設・福祉施設向けの経営・事業再編コンサルティング/大阪府大阪市/2020年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 22億4,000万円
- 対象の営業利益
- 3億7,700万円
- 対象の純資産
- 5億3,000万円
決算期:2025年7月期/譲渡前の株主:株式会社Medical Management Consulting 91.00%(代表は安井浩倫氏)、安井浩倫 6.00%、ほか個人2名。安井氏は買い手の社外取締役/非開示(株式交換)。交付する600万株に、算定された当社株価648.19円〜687.45円を掛けると約38.9億〜41.2億円。第三者機関のDCF法によるIMG株式価値は1株361万5,715円〜516万5,307円(1,064株で約38.5億〜55.0億円)
買収理由:医療・福祉施設向けのコンサルティング網に、食サービスの助言・提供を組み合わせて一気通貫で支援する
売上22億4,000万円・営業利益3億7,700万円・純資産5億3,000万円。売上は3期で10億7,200万円→17億6,400万円→22億4,000万円と伸びている局面での譲渡です。対価は現金ではなく買い手の株式で、売り手は買い手の大株主になります。純資産の7倍以上の評価で、伸びている会社なら純資産よりも将来の利益で値段がつく例です。
2025年12月11日に効力発生予定として開示され、2025年8月期決算短信の後発事象にも記載されています。その後の商号変更や合併の開示は手元の開示にはありません。
株式会社ハーバーリンクスホールディングス
化粧品・医薬部外品・健康食品の製造販売(顔用制汗コスメ「サラフェプラス」のサブスク通販)/東京都港区/2015年8月設立
- 取得価額
- 7,480万円
- 対象の売上
- 8億1,000万円
- 対象の営業利益
- 2,500万円
- 対象の純資産
- 9,700万円
決算期:2024年7月期/譲渡前の株主:個人1名(牧野 一郎)が100%保有/アドバイザリー費用等17百万円(概算)は別。売り手と、対象会社の財務・事業に関する補償として逆アーンアウト契約を締結。契約の前提となる事業計画(2025年7月期 売上12.1億円・営業利益15百万円)も開示
買収理由:会員のべ30万人のサブスク通販を取り込み、卸売専門だった化粧品と栄養補助食品の一般消費者向け展開を早める
売上8億1,000万円・営業利益2,500万円・純資産9,700万円に対し、取得価額は7,480万円と純資産を下回りました。売上は10億1,900万円→8億9,800万円→8億1,000万円と下がり続け、前々期は営業赤字でした。さらに取得から2か月で、表明保証と逆アーンアウトの「重大な違反」を理由に、買い手は株式を新社長へ売り戻しています。譲渡後も売り手の責任が残る契約では、開示した数字や事業計画の正確さがそのまま問われます。
売り手の牧野一郎氏に表明保証と逆アーンアウトの重大な違反があったとして、2025年5月30日に全株を新代表取締役の渡邉敏弘氏へ10,960万円(諸費用の精算金含む)で譲渡しました。同時に会員向け販売の業務提携を結んでいます。
株式会社グランドルーフ
福祉施設・医療施設向けの介護用品卸売、フード提供サービスの運営受託/大阪府大阪市/2006年10月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 9億円
- 対象の営業利益
- 1億円
- 対象の純資産
- 3,500万円
決算期:2024年10月期/譲渡前の株主:個人20名/非開示(株式交換)。交付する300万株に、算定された当社株価637円〜765円を掛けると約19.1億〜23.0億円。第三者機関のDCF法による株式価値は1株182万5,000円〜276万円(1,000株で18.3億〜27.6億円)
買収理由:介護食・病院食のノウハウと医療・福祉施設の顧客を取り込み、食品開発と施設向け卸売を組み合わせる
売上9億円・営業利益1億円・純資産3,500万円。2年前は債務超過(純資産マイナス3,000万円)で、売上も1,600万円しかありませんでした。それが売上2億6,600万円→9億円と急伸したところで、20億円前後の評価がついています。DCF法の前提は翌期の営業利益が281%増。純資産がほとんどなくても、伸びの勢いと計画で値段が決まる例です。
2026年2月のACA Next取得の開示で「2025年3月には株式会社グランドルーフを子会社化」と記載され、2025年8月期決算短信でも営業網拡大の寄与が触れられています。商号変更や合併の開示はありません。
株式会社カラダノートの宅配水事業
宅配水サービス「カラダノートウォーター」(個人向け・法人向け)/東京都港区/譲渡会社は2008年12月設立設立
- 取得価額
- 1億6,000万円
- 対象の売上
- 6億2,600万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2024年7月期(事業部門)/譲渡前の株主:株式会社カラダノート(上場企業。代表の佐藤竜也氏が51.80%保有)/譲受価格1.6億円(消費税抜)、現金決済。譲り受ける資産・負債の額は開示時点で未確定/宅配水事業のみの数値。売上総利益は273百万円
買収理由:健康意識の高い利用者を顧客として取り込み、健康食品の一般消費者向け展開と商品改良を早める。創業時の水事業の復活
事業の売上6億2,600万円・売上総利益2億7,300万円に対して1億6,000万円。売上の約0.26倍、粗利の約0.6倍です。会社全体ではなく1事業だけを、上場企業同士で売り買いした案件です。ブランド名「カラダノートウォーター」は残すと明記されています。
2025年3月31日に譲受完了予定と開示されました。2026年1月に一般消費者向けの飲料・食品の販売事業を新設分割で切り出す開示がありますが、宅配水事業が含まれるかは記載がなく、追えていません。
出典:株式会社カラダノート(東証グロース証券コード4014)との戦略的パートナーシップ契約並びに事業譲渡契約締結のお知らせ
株式会社メディアート
化粧品・健康食品の販売(プライベートブランドのOEM・卸売)、育毛剤・育毛機器/愛知県名古屋市/1998年9月設立
- 取得価額
- 1億5,000万円
- 対象の売上
- 2億3,800万円
- 対象の営業利益
- 4,300万円
- 対象の純資産
- 1億3,000万円
決算期:2023年9月期/譲渡前の株主:個人1名(間野 賢治)が100%保有/現金で取得した50%分の価額。DCF法で算定。残り50%は株式交換で当社株100万株を交付(算定株価148〜151円で約1.5億円)。単体決算では子会社株式が327百万円増加と開示
買収理由:継続して黒字の会社を取り込み、継続企業の前提に疑義がある状態からグループ損益を改善する
従業員4名、売上2億3,800万円・営業利益4,300万円(利益率18%)・純資産1億3,000万円。半分は現金、半分は買い手の株式で受け取る形で、売り手の間野氏はその後、買い手の株主名簿に4.6%の大株主として載っています。買い手は当時、継続企業の前提に疑義が付いた赤字会社で、資金調達の中止で取得日が1か月延びました。買い手の財務状態も、売る前に確かめるべき点です。
2025年8月期決算短信に「本連結会計年度中に株式会社メディアートを親会社で吸収合併し」と記載されています(2026年2月の開示には「連結子会社である株式会社メディアート」との表記も残っています)。
株式会社エムアンドオペレーション
飲食店の運営(直営1店舗、受託6店舗。居酒屋・焼肉・そば・チーズ料理)/東京都大田区/2011年12月設立
- 取得価額
- 2,550万円
- 対象の売上
- 2億1,375万円
- 対象の営業利益
- △444万円
- 対象の純資産
- 133万円
決算期:2017年11月期/譲渡前の株主:個人1名(櫻井 寛)が100%保有/51%分の取得価額。アドバイザリー費用等(概算)0.47百万円を加えた合計は25.97百万円。100%に単純換算すると約50百万円
買収理由:飲食店事業の基盤強化と、飲食店向けネット通販の展開
資本金300万円、売上2億1,400万円で直近期は営業赤字440万円、純資産133万円。それでも51%に2,550万円がついています。決め手は人材採用と育成の強みでした。開示文には「創業社長のノウハウのみに依存する経営体制から」脱する狙いが書かれており、社長1人に頼る状態を変えたい会社が、半分だけ売って後ろ盾を得る形です。
2024年1月の開示で過去に子会社化した会社として触れられていますが、その後の存続・売却を確認できる開示は手元にありません。
株式会社新日本機能食品
美容・健康商材の企画・製造・卸、会員制通販卸サイトとEコマースの運営/東京都渋谷区/2002年8月設立
- 取得価額
- 3億600万円
- 対象の売上
- 22億2,063万円
- 対象の営業利益
- 345万円
- 対象の純資産
- 6,497万円
決算期:2017年7月期/譲渡前の株主:個人1名(小林 憲司)が100%保有/51%分の取得価額。アドバイザリー費用等(概算)2百万円を加えた合計は308百万円。100%に単純換算すると約600百万円
買収理由:上場廃止の猶予期間入りしていた中で、営業利益と営業キャッシュ・フローを確保する。ネット通販への健康茶の販路拡大
売上22億2,100万円に対し営業利益は345万円、純資産6,500万円で51%に3億600万円。買い手は上場廃止を避けるために黒字の会社を必要としていました。買い手の事情が切迫しているときは、高い値段がつくことがあります。ただし業績は伸びず実質債務超過となり、2024年に創業者の小林氏が51%を2,000万円で買い戻しました(MBO)。3億円で売った株を2,000万円で取り戻した形で、半分だけ売って経営に残る選択には、こうした出口もありえます。
2024年7月31日、代表取締役の小林憲司氏とMBO型の株式譲渡契約を結び、保有する51%を2,000万円で全株売却して非子会社化しました。買い手側の簿価は業績不振で0円になっていたと開示されています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された6件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- ACA Next株式会社9億円(売上の0.09倍・営業利益の5.2倍)
- 株式会社ハーバーリンクスホールディングス7,480万円(売上の0.09倍・営業利益の3.0倍)
- 株式会社カラダノートの宅配水事業1億6,000万円(売上の0.26倍)
- 株式会社メディアート1億5,000万円(売上の0.63倍・営業利益の3.5倍)
- 株式会社エムアンドオペレーション2,550万円(売上の0.12倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社新日本機能食品3億600万円(売上の0.14倍・営業利益の88.6倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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