株式会社TalentXのM&A実績
採用支援のソフトウェア会社が、周辺の人事・採用サービスを「ロールアップ型M&A」で取り込み始めたところです。開示に「小規模な取り組みからM&AおよびPMIの実行力を確立し、将来的なより大きなM&Aへの展開を見据える」と書いており、売上1億円に満たない会社や事業の一部から買っています。売り手はいずれも創業者個人です。
株式会社TalentXが公表した適時開示3件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都新宿区
- 設立
- ―
- 事業内容
- 採用プラットフォーム「MyTalent Platform」(リファラル採用、タレントプール採用、採用ブランディング、採用管理)の提供と、採用コンサルティング・人材紹介
- 売上高
- 17億5,100万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 3億3,400万円
- 純資産
- 8億9,200万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 人事・採用支援サービス/人材紹介/スタートアップ向け採用支援
- 対象の規模
- 対象の売上 0.59億円〜2.7億円(事業譲受の1件は業績非開示)
- 手法
- 株式譲渡(完全子会社化、80%取得の子会社化)と事業譲受
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名を変えずに子会社として残しています。Crepeは「結合後企業の名称に変更はありません」と開示され、代表者も引き続き経営に関わる形です。エージェントキューブは80%の取得で、創業者が20%を持ち続けます。
- 取得価額は適時開示では非開示ですが、決算短信で判明することがあります。Crepeは適時開示で非開示でしたが、2026年3月期決算短信の企業結合注記に取得原価1億4,000万円と出ています
- 買い手自身の連結純資産が8億9,200万円と小さいため、「純資産の15%」の基準が約1億3,400万円と低く、1億円台の案件でも「15%以上」と書かれます。エージェントキューブはこれに当たります
- 価格の算定方法は毎回「DCF法および類似会社比較法等」と明記されています
- 適時開示基準に該当しない小さな事業譲受(KIRIKAE社の一部事業)も、任意でお知らせを出しています
買収の履歴3件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社エージェントキューブ
人材紹介(若手人材が中心)/東京都港区/2013年1月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 2億7,000万円
- 対象の営業利益
- 3,200万円
- 対象の純資産
- 1億7,100万円
決算期:2025年12月期/譲渡前の株主:個人1名(岩本 晃一)が100%保有/相手方との守秘義務により非開示。DD・DCF法・類似会社比較法等による評価をもとに協議。「直前連結会計年度末の連結純資産額の15%以上」と開示されており、2026年3月期の連結純資産892百万円の15%=約134百万円以上(80%分)と下限が読める。100%に換算すると約167百万円以上
買収理由:「入社後の活躍」を重視する若手向け人材紹介を取り込み、自社のハイクラス向け人材紹介「X Agency」と合わせて対象人材層を広げる。AIによるマッチング・業務効率化
売上2億7,000万円・営業利益3,200万円・純資産1億7,100万円。売上は2億1,100万円→2億3,300万円→2億7,000万円と3期連続で伸び、純資産も毎年2,000万円強ずつ積み上がっていました。下限から逆算すると営業利益の5倍前後以上、純資産とほぼ同額以上の評価です。買われたのは80%で、創業社長は20%を持ったまま残る形です。人材紹介のように社長個人の関係で回る事業では、売ったあとも社長が残ることを前提にした取引が組まれやすいことが読み取れます。
2026年10月1日に株式譲渡を実行予定と開示されています。実行完了や社名変更を示す後続開示は手元にありません。
株式会社Crepe
フリーランスのプロ人事のネットワークを使った人事・採用支援「すごい人事」の運営/東京都千代田区/2019年10月設立
- 取得価額
- 1億4,000万円
- 対象の売上
- 5,900万円
- 対象の営業利益
- △1,300万円
- 対象の純資産
- △800万円
決算期:2024年9月期/譲渡前の株主:個人1名(増田 佳奈絵)が100%保有/適時開示では守秘義務により非開示(DCF法・類似会社比較法等で算定)。2026年3月期決算短信の企業結合注記で取得原価140百万円(現金)と判明。別途アドバイザリー報酬等20百万円。のれん134.6百万円を7年で償却
買収理由:自社の採用プラットフォームに、プロ人事のフリーランスネットワークによる採用オペレーション・戦略支援を組み合わせる
直前期は売上5,854万円・営業損失1,315万円・純資産マイナス770万円の債務超過でした。売上も7,755万円から落ちていました。それでも1億4,000万円で売れています。受け入れた純資産は約540万円で、価格のほとんど(1億3,458万円)がのれん、つまり2,000名超のプロ人事のネットワークとノウハウへの評価です。譲渡の半年前に増資をして資本を手当てしており、社長は売ったあとも代表として経営に残っています。数字が赤字でも、買い手の事業にない「人のネットワーク」を持っていれば値段はつきます。
2025年10月1日に株式取得を完了。2026年3月期決算短信で新規の連結子会社として記載され、「結合後企業の名称に変更はありません」とされています。
KIRIKAE株式会社のスタートアップ向け採用支援事業(一部)
スタートアップ向けの採用支援(現場起点の採用改善の伴走)/東京都目黒区
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:KIRIKAE株式会社(代表取締役 浅川 海嵐)/非開示。適時開示基準に該当しない見込みの小規模案件として任意で開示。なお2026年3月期決算短信のキャッシュ・フロー計算書に「事業譲受による支出」4百万円があるが、本件の金額とは明記されていない
買収理由:譲り受けた知見を自社プラットフォームに取り込み、プロダクトと現場支援をつなぐ支援モデルを実証する。M&AとPMIの実行力を小規模案件から確立する第一歩
会社ごとではなく、サービスの一部だけを切り出して売った例です。買い手は本件を「ロールアップモデルの第一歩」と位置づけ、今後は「採用」「タレント」「人材開発」に対象を広げると書いています。事業の一部だけでも、買い手の製品と組み合わせられるなら引き取り手がいることを示す案件です。
事業はTalentX本体が譲り受けており、独立した法人としては残りません。その後の事業の扱いを示す開示は手元にありません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された1件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社Crepe1億4,000万円(売上の2.37倍)※営業赤字での譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
関連する記事
本ページは株式会社TalentXが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月12日