HEROZ株式会社のM&A実績
AI企業が、自社のAIと組み合わせる「業務の現場」を持つ小さな会社を買っています。SaaS連携、コンタクトセンター向けAI、AI接客、テレマーケティング、バックオフィスBPOと、いずれも売上5,000万円〜4億円台の規模です。売り手は創業者個人が中心ですが、上場企業やファンドが株主に入っている会社も買っています。中期の戦略として「AI BPaaS」(AIが業務を代行するサービス)を掲げ、人手でやっている業務を持つ会社を取り込む方針です。
HEROZ株式会社が公表した適時開示5件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都港区
- 設立
- ―
- 事業内容
- 将棋アプリなどのBtoCサービスと、生成AIアシスタント「HEROZ ASK」など企業向けAIサービス(AIX事業)、子会社バリオセキュアのセキュリティBPOサービス(AI Security事業)を展開
- 売上高
- 64億2,400万円(2026年4月期(連結))
- 営業利益
- 5億2,300万円
- 純資産
- 58億5,600万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- SaaS連携・導入支援/コンタクトセンター向けAI/AI接客・Web制作/営業コンサルティング・テレマーケティング/バックオフィスBPO(経理・人事の代行)
- 対象の規模
- 対象の売上 0.5億円〜4.2億円
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。100%ではなく50.1%〜86.5%だけを買う形が多い。新設した子会社を受け皿に、事業だけを譲り受ける形も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残しています。ただし2022年に買ったストラテジットは、2026年4月に別の上場企業(GMOグローバルサイン・ホールディングス)へ再び売却されました。買い手が持ち続けるとは限らない例です。
- 5件のうち3件で取得価額が開示されています。ティファナ・ドットコム7億3,000万円、AKMコンサルティング1億500万円(70%分)、bizyの事業4,000万円
- 全部ではなく一部だけを買う案件が多い会社です。エーアイスクエアは50.1%、AKMコンサルティングは70%、ストラテジットは86.5%。創業者や既存株主が残りを持ったまま子会社になっています
- 営業赤字の会社も買っています。エーアイスクエアは3期連続の営業赤字、ティファナ・ドットコムは直前期に営業損失1億400万円(会社側は実質黒字と説明)でした
- ティファナ・ドットコムでは、取得後3年間のAI事業の売上に応じて追加で支払う条件付き対価(アーンアウト)を付けています
買収の履歴5件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
AKMコンサルティング株式会社
スタートアップ向けの経理・人事などバックオフィスBPO、経営コンサルティング/神奈川県横浜市/2023年1月設立
- 取得価額
- 1億500万円
- 対象の売上
- 7,920万円
- 対象の営業利益
- 70万円
- 対象の純資産
- 850万円
決算期:2025年12月期/譲渡前の株主:個人1名(中山 一道)が100%保有/70%分の取得価額。アドバイザリー費用等の概算35百万円を加えた合計は140百万円。100%換算では150百万円相当で、純資産8百万円の約18倍
買収理由:バックオフィス業務の専門知識とAI技術を組み合わせ、AIが業務を代行する「AI BPaaS」製品を共同開発する
創業3年、資本金700万円、純資産845万円の会社に1億500万円(70%分)が付いています。売上は615万円→2,392万円→7,923万円と急伸し、営業利益は直近期にようやく72万円の黒字になったばかりでした。利益や純資産ではなく、伸び方と業務の中身(AIに学ばせるドメイン知識)が値段の根拠になった例です。創業者は30%を持ったまま残っています。
2026年5月1日付で連結子会社化。決算短信の後発事象で「結合後企業の名称:変更ありません」と記載されています。
bizy株式会社の営業コンサルティング事業・テレマーケティング事業
営業コンサルティング、テレマーケティング/東京都港区/譲渡会社は2016年4月設立設立
- 取得価額
- 4,000万円
- 対象の売上
- 5,220万円
- 対象の営業利益
- 1,200万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2024年3月期/譲渡前の株主:高田 恵50.0%、株式会社RAHK総研50.0%/譲受価額40,000千円、現金決済。貸借対照表上の資産・負債の移動はなし。適時開示基準に該当しない任意開示
買収理由:セールス領域・コンタクトセンター領域でのAI活用(AI BPaaS)を進める
売上5,221万円・営業利益1,197万円の事業を4,000万円で譲り受けています。営業利益の約3.3倍です。譲渡会社bizyは純資産マイナス4,968万円の債務超過でしたが、資産・負債は引き継がず事業だけが移りました。受け皿の新会社の社長には、bizyの社長が就く予定と開示されています。会社が債務超過でも、事業と人を一緒に渡す形なら値段は付きます。
受け皿のVOIQ株式会社は、2026年4月期決算短信でもグループのインサイドセールス支援事業を担う会社として記載されています。
株式会社ティファナ・ドットコム
AI接客・案内ソリューション「AIさくらさん」、Web制作/東京都目黒区/2000年5月設立
- 取得価額
- 7億3,000万円
- 対象の売上
- 4億2,300万円
- 対象の営業利益
- △1億400万円
- 対象の純資産
- 4,300万円
決算期:2023年2月期/譲渡前の株主:非開示(相手先に個人を含み、秘密保持義務のため)/このほかに条件付き対価あり。取得後3事業年度にわたり、同社AI事業の売上高に一定の料率を掛けた額を価格調整分として支払う
買収理由:生成AIを企業の現場で使いやすくするため、AIアバター接客の製品と顧客基盤を取り込む
売上4億2,300万円・純資産4,300万円の会社に7億3,000万円+アーンアウト。売上の約1.7倍、純資産の約17倍です。直前期は営業損失1億400万円でしたが、開示では「譲渡に伴う見込み額調整後の実質的な営業利益は2,100万円」と説明されています。決算上の赤字でも、一時的な要因を除いた実力値を示せれば、それを前提に値段が付きます。将来の売上で追加の対価を受け取る形も、売り手と買い手の見立ての差を埋める方法として使われています。
2026年4月期決算短信のセグメント説明に、「AIさくらさん」を提供するグループ会社として社名のまま記載されています。
株式会社エーアイスクエア
コンタクトセンター向けの自動応答・自動要約などAIソリューション、AIコンサルティング/東京都千代田区/2015年12月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 3億4,000万円
- 対象の営業利益
- △6,800万円
- 対象の純資産
- 9,300万円
決算期:2023年6月期/譲渡前の株主:株式会社ブロードバンドタワー42.6%、日本郵政キャピタル29.4%、株式会社メディアドゥ18.3%、石田 正樹5.7%、荻野 明仁4.0%(譲渡したのはブロードバンドタワー、メディアドゥ、個人2名)/契約上の守秘義務により非公表。事業計画を踏まえて取締役会で妥当性を精査したと説明
買収理由:コンタクトセンター領域のサービスと、自社のAI開発技術・LLM活用ノウハウを組み合わせる
売上3億4,000万円、営業損益は△1,200万円→△5,400万円→△6,800万円と3期連続の赤字、純資産も1億6,500万円から9,300万円へ減っていました。それでも上場企業が過半数を買っています。赤字でも、買い手の戦略にはまる技術と顧客があれば買い手は付きます。株主は上場企業2社と創業者らで、創業者側も株を手放しています。
2026年4月期決算短信のセグメント説明に、コンタクトセンター領域のサービスを提供するグループ会社として社名のまま記載されています。
株式会社ストラテジット
SaaS間連携(iPaaS)の開発、SaaS連携アプリストアの運営、SaaS・ERP導入コンサルティング/東京都千代田区/2019年7月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 3億9,700万円
- 対象の営業利益
- 3,200万円
- 対象の純資産
- 8,300万円
決算期:2022年6月期/譲渡前の株主:立原 圭59.5%、ジェームス・ジョシュア・エンリーケ17.0%、ファーストアドバイザーズ投資組合3号10.0%ほか/契約上の守秘義務により非公表。事業計画を踏まえて取締役会で妥当性を精査したと説明
買収理由:SaaS導入・連携のドメイン知識と自社のAI開発ノウハウを組み合わせ、SaaS市場の成長を支援する
設立3年、売上は4,500万円→1億7,600万円→3億9,700万円と急伸し、営業利益3,200万円の黒字でした。伸び盛りの若い会社を、創業者個人とファンドから買った案件です。ただし買収後は営業赤字が続き(2025年2月期は売上2億4,700万円・営業損失1億4,100万円)、約3年8か月後に別の上場企業へ売却されています。買われた後の会社が、さらに次の買い手へ渡ることもあるという例です。
2026年4月30日、保有する94.36%の全株をGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社へ譲渡し、連結から外れました。譲渡価額は基準価額4億円に調整金(上限24.6百万円)を加えた最大424.6百万円で、関係会社株式売却益311百万円を計上しています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- AKMコンサルティング株式会社1億500万円(売上の1.33倍・営業利益の150.0倍)
- bizy株式会社の営業コンサルティング事業・テレマーケティング事業4,000万円(売上の0.77倍・営業利益の3.3倍)
- 株式会社ティファナ・ドットコム7億3,000万円(売上の1.73倍)※営業赤字での譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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