株式会社fonfunのM&A実績
2023年のTOBで経営陣が替わってから、M&Aを成長の中心に置いている会社です。買うのはIT・SaaS・技術者派遣の小さな会社や事業で、対象の売上は1億円前後から10億円まで。買収基準として「黒字事業」「投資回収期間5年以内」を掲げています。売り手は個人オーナーのほか、事業の一部を切り離したい会社やファンドです。この名鑑の中でいちばん、金額と算定根拠を細かく開示する会社です。
株式会社fonfunが公表した適時開示11件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月8日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都渋谷区
- 設立
- 1997年3月
- 事業内容
- SaaSの提供と、ソフトウェア開発・技術者派遣による企業のDX支援
- 売上高
- 21億1,100万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 2億4,200万円
- 純資産
- 14億1,300万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- SaaS(クラウド電話、営業支援、SMS送信、ノーコード開発)/システム開発・SES(技術者派遣)/コールセンター向け人材派遣/通信網のシステム開発・基地局工事
- 対象の規模
- 対象の売上 0.58億円〜10.2億円
- 手法
- 株式譲渡、持分の取得(合同会社)、事業譲受、吸収分割を使い分ける。取得資金は銀行借入で、全額を借入でまかなった案件もある
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は、早ければ2か月で本体に吸収合併します。2024年7月に買ったselfree・グルーコード・イー・クラウドサービスの3社は同年9月30日に、2025年12月に完全子会社にしたマイクロウェーブデジタルは2026年3月31日に合併しました。例外は技術者派遣のYNPで、子会社として残り、その後は自ら事業を譲り受ける側に回っています。
- 金額はほぼ全件で開示されます。ここに載せた11件はすべて取得価額が出ています。伏せられたのは、オンライン診療事業の譲受(2025年8月、事業の業績も非開示のため掲載せず)と、マイクロウェーブデジタルの最初の20%分だけでした
- 第三者算定のレンジまで書かれます。selfreeは「DCF法で4億4,100万〜6億6,100万円」に対して4億4,700万円、イー・クラウドサービスは「DCF法で1億900万〜2億9,300万円、収益還元法で5,100万〜7,900万円」に対して5,000万円でした。算定レンジのどこで決まったかが分かります
- 「調整後EBITDA」を併記します。役員報酬や解約予定の家賃など、買収後に消える費用を足し戻した数字です。グルーコードは営業利益700万円に対して調整後EBITDAが7,000万円と、10倍の差がありました。売り手の決算書の利益だけでは値段が決まらないことが分かります
- 取得資金の借入には「譲り受けた事業のEBITDAを年8,000万円以上に保つ」といった特約が付いています。買い手がどの利益水準を前提に値段を付けたかが、借入の開示から読めます
買収の履歴11件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
ICS株式会社
通信網のシステム開発・保守、エンジニア派遣、通信基地局の設備工事/東京都中央区/2015年9月設立
- 取得価額
- 1億1,000万円
- 対象の売上
- 7億3,200万円
- 対象の営業利益
- △1,700万円
- 対象の純資産
- 1億6,400万円
決算期:2025年8月期/譲渡前の株主:Gホールディングス株式会社が100%保有(同社の株主は新生G成長支援投資事業有限責任組合96.15%と個人2名)/アドバイザリー費用等の概算11百万円を加えた合計額は121百万円。DCF法による第三者算定を勘案。対象会社が親会社に貸している192百万円などは、譲渡前に清算する前提
買収理由:通信インフラ領域のエンジニア人材の獲得とDXソリューション事業の拡大
売上7億3,200万円・営業損失1,700万円・純資産1億6,400万円で、取得価額は1億1,000万円。純資産の0.67倍です。売上は12億900万円→7億6,100万円→7億3,200万円と縮み、営業利益も4,700万円の黒字から2期連続の赤字に落ちていました。2026年8月期は営業利益2,900万円の黒字に戻る見込みと書かれています。売上が4割減った会社でも、黒字に戻る見通しが示せれば買い手は付きます。ただし値段は純資産を下回りました。
2026年10月6日に株式譲渡を実行する予定と開示されています。10月8日時点で、実行の完了を知らせる開示は確認できていません。
インサイドグロース株式会社のカスタマー派遣事業
コールセンター向けの人材派遣(従業員約190名)/東京都千代田区/分割会社は2004年3月設立設立
- 取得価額
- 3億2,500万円
- 対象の売上
- 10億1,500万円
- 対象の営業利益
- 1億6,300万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2026年3月期(事業単位)/譲渡前の株主:分割会社の株主は上川晋一郎氏57.5%、同氏の資産管理会社42.5%/分割対価として現金325百万円。第三者算定(DCF法)は291百万円〜358百万円。全額を西武信用金庫からの借入でまかなう/対象事業の管理資料に基づく参考値。本社機能の間接費用は含まない
買収理由:200名近い派遣人材と、JCOMなど大手取引先との20年近い取引基盤の獲得
事業の売上10億1,500万円・営業利益1億6,300万円に対して、対価は3億2,500万円。営業利益のちょうど2倍です。安く見えますが、開示には理由が書かれています。買い手の事業計画では、承継後の営業利益を年4,700万円と見込んでいます。主要顧客向けの派遣人数が減っていることと、これまで本体が負担していた本社費用を、独立後は事業側が持つことになるためです。事業だけを切り出して売るとき、値段は「本社費用を引いた後の利益」で決まります。
2026年10月1日に吸収分割の効力が発生し、事業はYNPに引き継がれました。
確認元:(開示事項の経過)連結子会社(株式会社YNP)によるインサイドグロース株式会社のカスタマー派遣事業譲受(吸収分割)の効力発生に関するお知らせ
株式会社ディグロスの営業支援SaaS「Sales Performer」事業
営業成績をリアルタイムで共有する営業支援SaaS(1ID月額2,500円)/東京都港区/譲渡会社は2009年6月設立設立
- 取得価額
- 3億4,000万円
- 対象の売上
- 2億2,700万円
- 対象の営業利益
- 7,100万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2025年5月期(事業単位)/譲渡前の株主:譲渡会社の株主は大村剛氏(間接保有を含め100%)/DCF法による第三者評価を参考に合意。取得資金は銀行借入でまかなう
買収理由:クラウドソリューション事業の規模拡大
売上2億2,700万円・営業利益7,100万円の事業を、3億4,000万円で譲り受けています。営業利益の4.8倍です。ただ買い手は、家賃や経費など譲受後に不要になる4,500万〜6,500万円を足し戻した調整後EBITDA 1億3,600万円を併記しており、こちらで見ると2.5倍です。利益率31%のSaaSを事業ごと切り出した例で、売り手の会社自体は営業支援の事業を続けています。
2026年5月1日に譲り受けました。5月20日には取得資金4億円の借入を開示しており、「譲り受けた事業のEBITDAを年8,000万円以上に保つ」という特約が付いています。
株式会社YNP
SES(エンジニアリングサービス)、システム開発。エンジニアの9割以上が女性で、社内託児所を持つ/東京都千代田区/2020年9月設立
- 取得価額
- 2億5,300万円
- 対象の売上
- 9億7,600万円
- 対象の営業利益
- 9,100万円
- 対象の純資産
- 1億9,900万円
決算期:2025年8月期/譲渡前の株主:代表者(野中 優祐)89.2%、ほか10.8%/アドバイザリー費用等の概算11百万円を加えた合計額は264百万円。DCF法による参考評価を勘案
買収理由:DXソリューション事業の拡大と、働き方の多様性による採用力の強化
設立5年、売上9億7,600万円・営業利益9,100万円・純資産1億9,900万円。取得価額2億5,300万円は営業利益の2.8倍、純資産の1.3倍です。営業利益は△1,500万円→1,000万円→9,100万円と、赤字から2年で伸ばしたところでの譲渡でした。
子会社として残り、2026年10月にはインサイドグロースの事業を承継する側になりました。代表取締役は創業者からfonfun取締役の松井都氏に代わっています。決算期を3月に変えた2026年3月期(7か月)は、貸倒引当金1億300万円などを計上して純損失でした。
株式会社マイクロウェーブデジタル
システム開発、デジタルマーケティング支援、エンジニアリングサービス/東京都渋谷区/2020年11月設立
- 取得価額
- 1億2,000万円
- 対象の売上
- 5億2,700万円
- 対象の営業利益
- 140万円
- 対象の純資産
- 4,100万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:株式会社マイクロウェーブ(Webコンサル・システム開発会社)が100%保有/残る80%分の価額。先に取得した20%分は非開示
買収理由:システム開発・デジタルマーケティングの人材とノウハウの獲得
売上5億2,700万円に対して営業利益は140万円、純資産4,100万円。営業利益は690万円→1,630万円→140万円と落ちたところでした。それでも80%分に1億2,000万円が付き、100%に換算すると1億5,000万円、売上の約0.3倍です。利益がほとんど出ていなくても、売上と人材がまとまっていれば値段は付きます。親会社が子会社を切り離した案件で、最初に20%だけ売って3か月様子を見てから残りを売る、という段階的な進め方でした。
インバウンドテクノロジー株式会社のSES事業(ITフリーランスマッチング)
ITフリーランスエンジニアと企業のマッチング/東京都中央区/譲渡会社は2016年1月設立設立
- 取得価額
- 6,200万円
- 対象の売上
- 3億4,600万円
- 対象の営業利益
- 1,400万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2024年8月期(事業単位)/譲渡前の株主:譲渡会社の株主は株式会社H.Nine 47.7%、龍崎宏氏16.3%、林舟之輔氏12.8%ほか/第三者算定(DCF法)は50百万円〜73百万円。3〜4年で投資回収の見通しと開示
買収理由:中期経営ビジョン(売上20億円、エンジニア100人体制)の達成
立ち上げて2年ほどの事業で、売上は400万円→1億5,600万円→3億4,600万円と急伸していました。営業利益1,400万円に対して6,200万円、4.4倍です。
法人ではなく事業を譲り受けた取引で、fonfun本体の事業として引き継がれています。その後、この事業を譲渡した開示はありません。
株式会社イー・クラウドサービス
飲食店向けの日次決算プラットフォーム(SaaS)/北海道札幌市/2024年2月(会社分割で新設)設立
- 取得価額
- 5,000万円
- 対象の売上
- 1億6,800万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2023年12月期(事業単位)/譲渡前の株主:株式会社イー・カムトゥルー(2014年にTOKYO PRO Marketへ上場、2021年に非上場化)が100%保有/第三者算定はDCF法で109百万円〜293百万円、収益還元法で51百万円〜79百万円。2〜3年で投資回収の見通しと開示/新会社に移されたSaaS事業の売上。新会社は1期目のため決算はない
買収理由:安定した月額課金収益の取り込み
売り手のイー・カムトゥルーは、直前期に営業損失4,100万円、純資産マイナス2億6,600万円の債務超過で、減損損失2億800万円も計上していました。そこでSaaS事業だけを会社分割で新会社に移し、その株式を5,000万円で売っています。事業の売上は1億6,800万円で、買い手は利用料が毎月ほぼ同じ額で入り続けていることを確認したと書いています。DCF法の算定は最大2億9,300万円まで出ていましたが、決まった金額は収益還元法の下限に近い5,000万円です。債務超過の会社でも事業は売れる。ただし値段は低いほうで決まるという例です。
グルーコードコミュニケーションズ株式会社
企業向けDX・AI推進/北海道札幌市/2017年2月設立
- 取得価額
- 6億円
- 対象の売上
- 3億9,600万円
- 対象の営業利益
- 700万円
- 対象の純資産
- 5,000万円
決算期:2023年12月期/譲渡前の株主:嵐保憲氏53.16%、Mandarin Orange合同会社37.42%、佐野敦彦氏9.42%/デューデリジェンス費用等1百万円を加えた合計額は601百万円。第三者算定(DCF法)は419百万円〜616百万円。3〜4年で投資回収の見通しと開示
買収理由:DX・AI推進の人材と顧客基盤の獲得
売上3億9,600万円に対して営業利益は700万円、純資産5,000万円。それでも6億円で売れています。営業利益は6,400万円→8,400万円→700万円と直前期に落ちていましたが、買い手は解約予定の家賃など買収後に消える費用約6,000万円を足し戻した「調整後EBITDA」7,000万円で見ていました。こちらで見ると8.6倍です。決算書の利益が落ちた年でも、経営者の個人的な経費や一時的な費用を整理して見せれば、値段は利益の実力で付きます。
合同会社selfree
企業向けクラウド電話システム「CallConnect」の開発・運営/東京都新宿区/2014年7月設立
- 取得価額
- 4億4,700万円
- 対象の売上
- 1億9,300万円
- 対象の営業利益
- 4,100万円
- 対象の純資産
- 9,500万円
決算期:2023年6月期/譲渡前の株主:個人2名(小俣 隼人 66.66%、畠 佑輔 33.34%)/アドバイザリー費用等32百万円を加えた合計額は479百万円。第三者算定(DCF法)は441百万円〜661百万円。全額を銀行借入でまかなう
買収理由:クラウドソリューション事業の拡大
合同会社です。売上1億9,300万円・営業利益4,100万円・純資産9,500万円で、持分の価格は4億4,700万円。営業利益の10.9倍、純資産の4.7倍です。退任予定の役員報酬など3,000万〜5,000万円を足し戻した調整後EBITDAは8,900万円で、こちらで見ると5.0倍。DCF法の算定レンジ(4億4,100万〜6億6,100万円)の下限近くで決まっています。
株式会社ゼロワンのノーコード業務アプリ開発SaaS事業
ノーコード業務アプリ開発SaaS/東京都渋谷区/譲渡会社は2015年10月設立設立
- 取得価額
- 4,100万円
- 対象の売上
- 2億3,700万円
- 対象の営業利益
- △4,400万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2023年8月期(事業単位)/譲渡前の株主:譲渡会社の株主は代表者(一岡 亮大)54.95%、StarshotPartners合同会社17.58%ほか/第三者算定はDCF法で26.7百万円〜60.4百万円、収益還元法で29.8百万円〜40.3百万円
買収理由:DXソリューション事業の拡大
事業の売上2億3,700万円・営業損失4,400万円。譲渡会社は純資産マイナス5,000万円の債務超過でした。開示によると、直前の期に事業構造の改革を進め、売上は減ったものの営業利益は黒字に転じていました。赤字の会社が、黒字化した事業だけを4,100万円で売った形です。
法人ではなく事業を譲り受けた取引で、fonfun本体の事業として引き継がれています。その後、この事業を譲渡した開示はありません。
株式会社クロノスのSMS送信事業
SMS(ショートメッセージ)送信サービス/東京都港区/譲渡会社は2011年9月設立設立
- 取得価額
- 2,500万円
- 対象の売上
- 5,800万円
- 対象の営業利益
- 1,100万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2022年12月期(事業単位)/譲渡前の株主:譲渡会社の株主は前澤芳樹氏(100%)/第三者算定(類似会社比較法)は21.4百万円〜39.1百万円
買収理由:既存のSMS関連サービスとの統合
売上5,800万円・営業利益1,100万円の事業が2,500万円。営業利益の2.3倍です。売上1億円に届かない事業でも、上場企業が買って開示しています。売り手の会社はネットワークやデータセンターの事業を続けており、本業から外れたサービスだけを手放した形です。
法人ではなく事業を譲り受けた取引で、fonfun本体の事業として引き継がれています。その後、この事業を譲渡した開示はありません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された11件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- ICS株式会社1億1,000万円(売上の0.15倍)※営業赤字での譲渡
- インサイドグロース株式会社のカスタマー派遣事業3億2,500万円(売上の0.32倍・営業利益の2.0倍)
- 株式会社ディグロスの営業支援SaaS「Sales Performer」事業3億4,000万円(売上の1.50倍・営業利益の4.8倍)
- 株式会社YNP2億5,300万円(売上の0.26倍・営業利益の2.8倍)
- 株式会社マイクロウェーブデジタル1億2,000万円(売上の0.23倍・営業利益の85.7倍)
- インバウンドテクノロジー株式会社のSES事業(ITフリーランスマッチング)6,200万円(売上の0.18倍・営業利益の4.4倍)
- 株式会社イー・クラウドサービス5,000万円(売上の0.30倍)
- グルーコードコミュニケーションズ株式会社6億円(売上の1.52倍・営業利益の85.7倍)
- 合同会社selfree4億4,700万円(売上の2.32倍・営業利益の10.9倍)
- 株式会社ゼロワンのノーコード業務アプリ開発SaaS事業4,100万円(売上の0.17倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社クロノスのSMS送信事業2,500万円(売上の0.43倍・営業利益の2.3倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社fonfunが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月8日