株式会社ArentのM&A実績
建設業向けのパッケージソフトを作る地方の老舗を、約1年で5社続けて買っている会社です。構造計算、原価管理、見積作成、施工管理と、どれも特定の業務に絞ったソフトで、売り手はいずれも代表者個人か、創業家が持つ会社です。M&A方針として「譲り受けた企業の文化や組織を尊重し、自主独立の精神で運営できる体制を維持する」と書いています。
株式会社Arentが公表した適時開示5件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都港区
- 設立
- 2012年7月
- 事業内容
- 建設・プラント業界向けのDXコンサルティングとシステム開発。建設業向けソフトの会社を束ねる「アプリ連携型プラットフォーム」を広げている
- 売上高
- 58億2,800万円(2026年6月期(連結))
- 営業利益
- 9億2,200万円
- 純資産
- 72億5,700万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 建設業向け原価管理・見積作成ソフト/構造計算・工程管理ソフト/建設業向けクラウド業務システム
- 対象の規模
- 対象の売上 3.1億円〜9.1億円
- 手法
- 現金で半分前後を買い、残りを株式交換で取得して完全子会社にする形が多い。業績に応じて後から代金を足すアーンアウトも使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残しています。2026年6月期の決算短信では、スタッグ、建設ドットウェブ、アサクラソフト、レッツの4社が新規連結子会社として挙がっています。
- 売り手は代金の一部を、買い手の株で受け取ることが多い会社です。スタッグは約半分、レッツは8割が株式交換でした
- アーンアウト(業績に応じた追加払い)の上限額まで開示しています。建設ドットウェブは現金4億9,000万円に対して最大25億円、アサクラソフトは5,700万円に対して最大1億5,000万円です
- 1株あたりの価格と第三者算定のレンジを毎回書いています。スタッグはレンジ(1株259万6,000円〜273万3,000円)の中で、レッツはレンジ(188万8,000円〜264万円)の上寄りで決まりました
- 直近の決算が赤字でも買っています。アサクラソフトと建設ドットウェブは、どちらも直前期に営業赤字でした
買収の履歴5件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社レッツ
建設業向け原価管理ソフト「レッツ原価管理Go2」シリーズの開発・販売・保守(従業員22名)/宮城県大崎市/1990年3月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 3億5,200万円
- 対象の営業利益
- 8,100万円
- 対象の純資産
- 6億5,500万円
決算期:2025年7月期/譲渡前の株主:代表者(山崎 教雄)が100%保有/現金で買った20%(108株)は259百万円。残る80%は株式交換で買い手の株式222,480株を交付(基準株価4,672円)。1株あたりの評価は2,407,407円で、第三者算定のレンジは1株1,888,000円〜2,640,000円。全540株に換算すると約13億円(編集部計算)。アドバイザリー費用等の概算62.7百万円は別
買収理由:建設業向け原価管理ソフトを、買い手のアプリ連携型プラットフォームに加える
創業35年、従業員22名の宮城県のソフト会社です。売上は4億3,500万円→4億3,600万円→3億5,200万円、営業利益は1億7,400万円→1億5,400万円→8,100万円と、直近で落ちた局面での譲渡でした。それでも1株あたりの評価は算定レンジの上寄りで、全株換算では約13億円になります。代金の8割は現金ではなく買い手の株で受け取っています。
株式取得と株式交換を経て完全子会社になり、2026年6月期の決算短信で新規連結子会社として社名のまま挙がっています。
アサクラソフト株式会社
見積作成・原価管理のクラウド型データベースシステム「使えるくらうど」の開発・販売/岡山県津山市/1996年8月設立
- 取得価額
- 5,700万円
- 対象の売上
- 3億4,900万円
- 対象の営業利益
- △3,100万円
- 対象の純資産
- 1億600万円
決算期:2025年8月期/譲渡前の株主:株式会社アサクラドゥ(1950年設立、浅倉久雄氏が100%保有)が100%保有/アドバイザリー費用等の概算29百万円は別。これとは別に、アーンアウトとして最大150百万円を業績の達成に応じて支払う
買収理由:見積作成・原価管理ソフトの取り込み
売上は3億9,300万円→4億2,400万円→3億4,900万円、直前期は営業損失3,100万円でした。開示によると、前の2期の売上には働き方改革関連の特需が含まれていました。取得価額5,700万円は純資産1億600万円の半分ほどですが、業績次第で最大1億5,000万円が後から上乗せされます。買い手は「退任役員報酬の整理などのコスト削減余地を踏まえて評価した」と書いており、2026年8月期は単月で黒字化しているとしています。赤字の年に売るなら、アーンアウトで回復分を取りにいくという形の実例です。
株式会社建設ドットウェブ
建設業向けの業務システム・ハードウェアの開発、設計、販売/石川県金沢市/2001年1月設立
- 取得価額
- 4億9,000万円
- 対象の売上
- 9億500万円
- 対象の営業利益
- △6,700万円
- 対象の純資産
- 4億5,100万円
決算期:2025年6月期/譲渡前の株主:株式会社ミックホールディングス(三國家が100%保有)50.12%、岡田健氏、安藤一郎氏ほか/56.9%(489株)分の価額。アドバイザリー費用等の概算143百万円は別。これとは別に、アーンアウトとして最大2,500百万円を営業利益の達成水準に応じて現金で支払う(ミックホールディングス1,513百万円、岡田健氏578百万円、安藤一郎氏409百万円)。残りの株主には買い手の株式27,810株を交付/IT導入補助金の特需で2023年6月期に売上が前倒し計上されている。第三者算定機関による調整後の2025年6月期は売上10億6,200万円・営業利益8,900万円
買収理由:建設業向け業務システムの取り込み
決算書の上では営業利益2億600万円→100万円の損失→6,700万円の損失と、2期続けて営業赤字です。ただしIT導入補助金の特需で売上が前倒しになっていたため、第三者の算定機関が調整し直すと、実力の営業利益は毎年9,000万〜1億円でした。現金で払ったのは56.9%分の4億9,000万円ですが、営業利益が一定の水準に届けば、最大25億円のアーンアウトが上乗せされます。手付けは小さく、将来の利益で大きく受け取る設計です。
株式会社スタッグ
建設業向けを中心としたソフトウェアの設計・開発・販売/神奈川県横浜市/1997年4月設立
- 取得価額
- 5億4,400万円
- 対象の売上
- 5億9,700万円
- 対象の営業利益
- 1億600万円
- 対象の純資産
- 6億9,600万円
決算期:2025年1月期/譲渡前の株主:代表者(石田 泰三)43.25%、石田まどか氏25.00%、株式会社ニューメディア総合企画10.00%ほか/50.25%(201株)分の価額。アドバイザリー費用等の概算63百万円は別。残りは株式交換で買い手の株式98,505株を交付。第三者算定のレンジは1株2,596,000円〜2,733,000円(収益還元法)
買収理由:建設業向けソフトの取り込み
売上は4億5,400万円→4億5,800万円→5億9,700万円、営業利益は9,000万円→5,100万円→1億600万円。半分を現金5億4,400万円で買い、残りを株式交換で取得しています。全株に換算すると約10億8,000万円で、営業利益の約10倍、純資産の約1.6倍です(編集部計算)。
株式会社構造ソフト
建築の構造計算ソフト、建築・土木の工程管理システム/東京都北区/1967年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 3億800万円
- 対象の営業利益
- 6,400万円
- 対象の純資産
- 3億1,300万円
決算期:2024年6月期/譲渡前の株主:代表者(原 泰紀)52%、個人1名48%/株式取得先の要望により非開示
買収理由:スーパーゼネコンにも使われる構造計算・工程管理ソフトの取り込み
設立1967年。売上は3億円前後で横ばいですが、営業利益は3,800万円→8,900万円→6,400万円、純資産は2億1,000万円→3億1,300万円と積み上がっていました。売上3億円規模のソフト会社でも、大手ゼネコンという顧客基盤があれば買い手が付きます。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- アサクラソフト株式会社5,700万円(売上の0.16倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社建設ドットウェブ4億9,000万円(売上の0.54倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社スタッグ5億4,400万円(売上の0.91倍・営業利益の5.1倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社Arentが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日