株式会社GA technologiesのM&A実績
不動産の周辺サービスを持つ会社を、創業者個人から買い続けている会社です。家賃保証、賃貸仲介向けSaaS、高級賃貸サイト、投資用マンション販売、不動産ファンドと、本業の隣の領域を1社ずつ足していく買い方です。現金で過半を買い、残りを自社株との株式交換で取得する形を何度も使っており、売り手の創業者は上場企業の株主として残ることになります。
株式会社GA technologiesが公表した適時開示8件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月13日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都港区
- 設立
- 2013年3月
- 事業内容
- AI不動産投資「RENOSY」による中古マンション等の売買・管理と、不動産会社向けSaaS「ITANDI」を展開する不動産テック企業
- 売上高
- 2,489億4,700万円(2025年10月期(連結・IFRS))
- 営業利益
- 70億9,500万円
- 純資産
- 314億5,300万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 家賃債務保証/不動産会社向けSaaS/高級賃貸サイト・賃貸仲介/投資用マンションの販売・資産運用コンサルティング/賃貸住宅のリノベーション/不動産ファンド・金融商品取引業
- 対象の規模
- 対象の売上 0.55億円〜69.8億円
- 手法
- 株式譲渡(現金)で過半を取得し、残りを簡易株式交換(対価は当社株式)で取得して完全子会社化する二段階方式が中心。子会社イタンジが買い手になる孫会社化もある
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残すのが基本です。2018年に買ったイタンジは、その後グループのSaaS事業の中核となり、2023年にはHousmartを買う側に回っています。モダンスタンダードと推定される子会社(RENOSY PLUS)は2022年に吸収合併が決まりましたが、翌月に中止されています。
- 8件中5件で金額が分かります。現金の部分は「守秘義務」で非開示でも、株式交換の部分で第三者機関の算定した1株あたりの価値や算定レンジが開示されるため、会社全体の値段の見当がつきます
- 営業赤字の会社を高く買っています。Housmart(営業損失1億6,100万円)は24億9,600万円、モダンスタンダード(営業損失5,100万円)は全株で15億円の評価でした
- 株式交換の対価は上場企業の株式です。創業者は現金と株式の両方を受け取ります。リコルディでは社長が統合後も代表取締役に留任する予定と開示された一方、リーガル賃貸保証では取得完了時に代表取締役が買い手の社長に交代しています
- 上場企業へのTOB(マーキュリーリアルテックイノベーター)、中国関連(神居秒算)、タイの賃貸仲介事業(DLホールディングス)の案件はこの一覧に載せていません
買収の履歴8件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
エスピーシー証券株式会社
不動産私募ファンドの組成・販売、有価証券の私募の取扱い。子会社SPCアセットマネジメントで不動産ファンドの運用/東京都中央区/2000年12月設立
- 取得価額
- 44億7,800万円
- 対象の売上
- 12億2,700万円
- 対象の営業利益
- 7億1,100万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2025年3月期(売上・営業利益は2社の単純合算、純資産はエスピーシー証券単体)/譲渡前の株主:TPM株式会社(不動産開発・賃貸業)が100%保有/公表時は約50億円。株式譲渡契約に基づく価格調整で4,478百万円に確定し、アドバイザリー費用等50百万円を加えた合計は4,528百万円。補足説明資料で「企業価値/EBITDA 4.2倍」「シナジー含むROIC20%超」「5年以内の投資回収」と開示(公表時の50億円ベース)/エスピーシー証券とSPCアセットマネジメントの単純合算(補足説明資料の数値)。エスピーシー証券単体は売上655百万円・営業利益401百万円・純資産763百万円(売上・営業利益と範囲をそろえるため、純資産の欄は空欄にしています)
買収理由:不動産特定共同事業や金融商品取引業の許認可とファンド運営のノウハウを取り込み、不動産小口化商品・私募ファンド事業へ短期間で参入する
2社合算で売上12億2,700万円・営業利益7億1,100万円(利益率58%)。従業員15名の会社に約45億円がつきました。買い手が欲しかったのは売上よりも「金融の許認可」と「20年以上のファンド運営実績」です。開示文にも「自前での許認可取得及び体制構築に多大な時間を要する」と書かれています。取るのに時間がかかる免許や登録を持っている会社は、それ自体が値段の理由になります。価格調整で公表時より約5億円下がって確定している点も、契約の実務として参考になります。
2026年6月30日に全株式の取得が完了しています。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社Housmart
不動産売買仲介会社向けの営業支援SaaS「PropoCloud」の開発・運営/東京都港区/2014年10月設立
- 取得価額
- 24億9,600万円
- 対象の売上
- 2億8,300万円
- 対象の営業利益
- △1億6,200万円
- 対象の純資産
- 1億3,200万円
決算期:2023年9月期/譲渡前の株主:創業者の針山昌幸35.09%、ほかベンチャーキャピタル等11者(JICベンチャー・グロース・ファンド1号18.15%など)/取得価額2,496百万円(普通株式と優先株式の合計)
買収理由:賃貸仲介向けSaaSのイタンジに売買仲介向けSaaSを加え、賃貸・売買の両方をカバーするプラットフォームにする
売上2億8,300万円に対し、営業損失1億6,100万円、3期連続の営業赤字でした。純資産も2億9,400万円から1億3,200万円へ減っています。それでも取得価額は24億9,600万円、売上の約9倍です。業界最大手への導入実績と、買い手のSaaSと組み合わせたときの市場の広がりが評価されました。赤字でも、買い手の製品と組み合わさる顧客基盤があれば高く売れる例です。
2024年1月4日までに譲渡実行予定と開示されました。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社リコルディ
資産運用型マンションの販売・賃貸、中古住宅のリノベーション・販売、資産形成コンサルティング/東京都千代田区/2010年2月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 69億7,600万円
- 対象の営業利益
- 1億1,700万円
- 対象の純資産
- 1億8,000万円
決算期:2021年6月期/譲渡前の株主:代表取締役の福田俊孝94.29%ほか/現金部分は守秘義務により非開示。第三者機関(WARC)の株式価値算定レンジは1,942〜2,954百万円。株式交換比率はリコルディ株1株に当社株7,124.79株で、基準株価1,403.55円で換算すると1株約1,000万円・全210株で約21億円の評価
買収理由:RENOSYマーケットプレイスの商品ラインナップ拡充と、顧客のライフプランに寄り添うサービスの強化
売上69億7,600万円・営業利益1億1,700万円・純資産1億8,000万円。この会社の案件で売上は最大ですが、利益率は1.7%と薄い会社でした。それでも株式交換の評価からは全体で約21億円、純資産の10倍超の値がついたことが読めます。顧客の9割以上が紹介という営業基盤が評価されました。社長は統合後も代表取締役に留任する予定と開示されています。
2022年3月1日に株式交換が完了し完全子会社になりました。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社パートナーズ
資産運用総合アドバイス(投資用不動産の販売・売買仲介・管理、不動産クラウドファンディング、保険)/東京都品川区/2011年9月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 43億9,400万円
- 対象の営業利益
- 1億2,600万円
- 対象の純資産
- 3億5,100万円
決算期:2020年6月期/譲渡前の株主:個人1名(吉村 拓)が100%保有/現金部分は守秘義務により非開示。第三者機関(税理士法人令和会計社)の算定レンジは1株805万〜1,900.5万円(全200株で16.1億〜38.0億円)。交換比率は1株に当社株4,198株で、基準株価2,423円で換算すると1株約1,017万円・全株で約20億円の評価
買収理由:富裕層・高所得者層の顧客基盤と、不動産ファンド・管理事業の取り込み
売上43億9,400万円・営業利益1億2,600万円・純資産3億5,100万円。売上は2年で13億8,800万円から3倍以上に伸びていました。株式交換の評価からは全体で約20億円、営業利益の約16倍と読めます。オーナー1人が100%持っていても、現金で半分・自社株で半分という受け取り方ができることを示す例です。
2021年6月1日に株式交換が完了し完全子会社になりました。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社モダンスタンダード
高級賃貸サイト「Modern Standard」の運営(会員7万人)/東京都港区/2009年9月設立
- 取得価額
- 15億円
- 対象の売上
- 8億2,900万円
- 対象の営業利益
- △5,100万円
- 対象の純資産
- 2,700万円
決算期:2019年8月期/譲渡前の株主:個人1名(松田 啓介)が100%保有/全株式200株×1株750万円の評価。内訳は現金1,000百万円(134株)と、500百万円相当の当社株式(66株、株式交換)。第三者機関(南青山FAS)のDCF算定レンジ1株674万〜854万円の中で決定
買収理由:富裕層・高所得者層の会員基盤を取り込み、RENOSYとのクロスセルと高所得者向けサービスを展開する
売上8億2,900万円、直前期は営業損失5,100万円・純資産2,700万円でした。営業利益は1,100万円→2,300万円→赤字と崩れた局面です。それでも全株で15億円、うち10億円は現金で売れています。評価されたのは決算の数字ではなく、7万人の富裕層会員という顧客基盤でした。赤字の年でも、ほかで手に入らない顧客を持っていれば値段はつきます。
2022年8月の開示で、設立日(2009年9月1日)・資本金(1,000万円)が一致する完全子会社「株式会社RENOSY PLUS」(高級不動産の賃貸・売買仲介)の吸収合併が発表されたため、同社が商号変更後のモダンスタンダードと推定しています(推定)。同社は2021年10月期に純資産マイナス2億2,500万円で、吸収合併は翌月に中止されています。
イエスリノベーション株式会社
賃貸マンション・アパート専門のデザインリフォーム、リノベーション/東京都中央区/2012年12月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/株式取得先との合意により非公表
買収理由:賃貸物件の空室対策に強いリノベーションを取り込み、不動産投資・賃貸管理・売却事業とのシナジーを狙う
業績も売り手も開示されていない、軽微基準の範囲内の任意開示です。それでも開示文は、平米単価2.5万円(相場の約4分の1)、累計500戸超、平均空室期間1か月、賃料約10%上昇と、同社の強みを具体的な数字で並べています。規模が小さくても、成果を数字で示せる会社は買い手の目に留まります。
2019年9月11日に取得予定と開示されました。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
イタンジ株式会社
不動産仲介会社向けの営業支援クラウド「ノマドクラウド」、仲介・管理会社間の自動化「Cloud ChintAI」の開発・運営/東京都港区/2015年6月設立
- 取得価額
- 28億4,100万円
- 対象の売上
- 2億1,300万円
- 対象の営業利益
- 1億4,500万円
- 対象の純資産
- 3億2,600万円
決算期:2018年5月期/譲渡前の株主:創業者の伊藤嘉盛77.51%、同氏が97.5%を持つフジケンホーム株式会社20.84%ほか/第三者機関(横山公認会計士事務所)のDCF算定を踏まえ1株3,610,108円と決定。全787株で約2,841百万円の評価で、うち現金での取得は510株・1,849百万円、残り277株は株式交換
買収理由:不動産仲介・管理会社向けのBtoBサービスを取り込み、個人向けのRenosyと相互補完する
売上2億1,300万円・営業利益1億4,500万円・純資産3億2,600万円。全体の評価額は約28億円で、営業利益の約20倍、売上の13倍超です。設立3年の会社でした。売り手の創業者は、ほかの株主の株を先に自分に集めてから譲渡しています。買われたイタンジはその後グループのSaaS事業の中核になり、2023年にはHousmartを24億9,600万円で買う側に回っています。
2018年11月16日に株式交換が完了し完全子会社になりました。2023年12月の開示でも連結子会社として、Housmartを取得する買い手になっています。
リーガル賃貸保証株式会社
家賃債務保証(保証契約約4,000件)/東京都新宿区/2015年11月設立
- 取得価額
- 1億5,000万円
- 対象の売上
- 5,500万円
- 対象の営業利益
- 1円未満
- 対象の純資産
- 1,000万円
決算期:2017年9月期/譲渡前の株主:代表取締役の虎石克50.0%、同氏が代表の株式会社C-mind 50.0%/取得価額150百万円
買収理由:賃貸管理の隣接領域である家賃債務保証に参入し、蓄積された保証実績データでAI審査を導入する
売上5,500万円、営業利益はほぼゼロ、純資産1,000万円。設立3年弱・資本金2,000万円の会社に1億5,000万円がつきました。純資産の15倍です。現役弁護士が創業したという信用と、約4,000件の保証実績データが評価されました。利益がまだ出ていなくても、買い手が自分で作ろうとしていた事業の「実績データ」は値段になります。
2018年11月1日に取得が完了し、代表取締役は買い手の社長に交代しています。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された5件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- エスピーシー証券株式会社44億7,800万円(売上の3.65倍・営業利益の6.3倍)
- 株式会社Housmart24億9,600万円(売上の8.82倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社モダンスタンダード15億円(売上の1.81倍)※営業赤字での譲渡
- イタンジ株式会社28億4,100万円(売上の13.34倍・営業利益の19.6倍)
- リーガル賃貸保証株式会社1億5,000万円(売上の2.73倍)※営業利益ほぼゼロでの譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社GA technologiesが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月13日