7049東証グロース

株式会社識学のM&A実績

組織コンサルティングの会社が、2026年から「長期保有型M&A」を第二の成長エンジンに据え、買収専門の完全子会社「識学グロースキャピタルパートナーズ」を通じて、5月から7月の約2か月で3社を買いました。売り手は創業社長や役員4名の持株会社、上場企業の子会社と幅があります。いずれも「組織診断で改善余地が大きい」と判断した会社に識学を入れて伸ばす、という方針で、買ったあとに売り抜けるのではなく、長く持つと明言しています。

株式会社識学が公表した適時開示5件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)

会社概要

本社
東京都品川区
設立
―
事業内容
組織運営理論「識学」を使った経営・組織コンサルティング、研修、Webサービスの提供。2026年からは買収専門の子会社を通じて中小企業を買い、識学を入れて立て直す事業も始めている
売上高
65億3,600万円(2026年2月期(連結))
営業利益
4億9,100万円
純資産
36億5,900万円

どんな会社を買っているか

買う業種
業務用厨房機器(フライヤー・油ろ過機)の販売・保守/自動車板金塗装工場向けの塗装ブースの設計・施工・保守/ハンドメイドアクセサリーの委託販売店/プロバスケットボールクラブの運営(2026年に大半を譲渡)/M&Aコンサルティング(事業譲受)
対象の規模
対象の売上 7.5億円〜18.8億円(2026年の3件)。2020年には売上2.2億円・債務超過のスポーツクラブも子会社化
手法
株式譲渡で100%取得が中心。2026年の3件はすべて子会社の識学グロースキャピタルパートナーズが買い手(孫会社化)。過去には事業譲受、第三者割当増資の引受による子会社化もある
赤字でも買うか
買っている(実績あり)
買収後の扱い
買った会社は社名のまま子会社として残しています。公式サイトのグループ会社一覧には、2026年に買った3社(ネクサスホールディングスはその子会社ネキストも)がそのまま載っています。一方、2020年に子会社化したプロバスケットボールクラブの運営会社は、2026年6月に株式の大半を投資会社へ譲り、持分法適用会社として関わりを残す形に切り替えました。
  • 2026年の3件は、取得価額がすべて開示されています。storyteller 5億2,250万円、マッハ機器 3億7,300万円、ネクサスホールディングス 2億円。価格非開示が多い名鑑の中では珍しい買い手です
  • アドバイザリー費用の概算まで開示しています。4,500万円、4,200万円、3,500万円で、株式の価格に対して約9%〜18%。小さい案件ほど、費用の割合が重くなることが数字で見えます
  • 価格はいずれも「法務・財務に関する調査の結果等を合理的に勘案のうえ、当事者間の協議を経て決定」とされ、算定方法の名前(DCF法など)は書かれていません。資金は自己資金と金融機関からの借入の組み合わせです
  • 買収理由に毎回「組織診断の結果、改善余地が大きい」と書かれています。営業や設計の仕組み化が進んでいない会社を、伸びしろとして評価して買うという考え方です

買収の履歴5件

すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。

2026年7月10日株式譲渡(子会社の識学グロースキャピタルパートナーズが100%取得=孫会社化)

ネクサスホールディングス株式会社(子会社ネキスト株式会社を含む)

自動車の板金塗装工場向け塗装ブースの販売・設置工事・保守、少量危険物貯蔵庫の製造・販売/愛知県あま市/2023年12月(事業会社のネキストは1989年4月)設立

取得価額
2億円
対象の売上
7億5,000万円
対象の営業利益
8,700万円
対象の純資産
1億3,700万円

決算期:2025年11月期(簡易連結)/譲渡前の株主:飯田 幸宏50.0%、西川 信一16.7%、山下 和弥16.7%、飯田 友和16.7%(社長・役員2名・従業員の個人4名)/アドバイザリー費用(概算)35百万円を加えた合計は235百万円(概算)。法務・財務の調査結果等を勘案し当事者間の協議で決定。資金は自己資金と金融機関からの借入/持株会社とネキストの単体決算を合算し内部取引等を消去した簡易的な連結ベース(未監査)。ネキストは7月決算のため2025年7月期の数値

買収理由:長期保有型M&Aの一環。塗装ブースの設計から保守まで一貫して手がける希少性と、純正消耗品によるストック型収益を評価。識学を入れて営業・設計体制を仕組み化する

簡易連結で売上7億5,000万円・営業利益8,700万円・純資産1億3,700万円。取得価額2億円は、営業利益の約2.3倍、純資産の約1.5倍です。事業会社のネキストは2023年7月期の売上9億6,000万円から6億1,100万円へ大きく落ち、翌期7億5,000万円に戻した局面での譲渡でした。株主は社長50%のほか、役員2名と従業員1名が16.7%ずつ持っていました。持株会社を作って役員や社員にも株を持たせていても、4名全員から100%を買い取る形で成立しています。

買収後存続2026年10月9日時点

株式譲渡の実行日は2026年8月4日(予定)と開示されていました。公式サイトのグループ会社一覧に、ネクサスホールディングスとその子会社ネキストが連結子会社として載っています。

確認元:株式会社識学 グループ会社一覧

出典:連結子会社によるネクサスホールディングス株式会社の株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ

2026年7月2日株式譲渡(子会社の識学グロースキャピタルパートナーズが100%取得=孫会社化)

マッハ機器株式会社

業務用フライヤー・食用油ろ過装置など業務用厨房機器の販売と保守/東京都江東区/2015年8月設立

取得価額
3億7,300万円
対象の売上
18億8,200万円
対象の営業利益
9,600万円
対象の純資産
4億5,200万円

決算期:2025年12月期/譲渡前の株主:株式会社ラックランド(東証プライム上場)が100%保有/アドバイザリー費用(概算)42百万円を加えた合計は415百万円(概算)。法務・財務の調査結果等を勘案し当事者間の協議で決定。資金は自己資金と金融機関からの借入

買収理由:長期保有型M&Aの一環。スーパーの総菜部門やコンビニ向けフライヤーの本体販売と、ろ過材などのストック売上を併せ持つ事業モデルを評価。識学で営業活動を仕組み化する

売上18億8,200万円・営業利益9,600万円・純資産4億5,200万円。取得価額3億7,300万円は、営業利益の約3.9倍で、純資産(4億5,200万円)を下回る水準です。3期とも黒字で純資産も増え続けていましたが、売り手は店舗設計・施工の上場企業ラックランドで、親会社の本業から見て周辺にある子会社を手放した案件です。黒字が続き純資産が積み上がっていても、価格が純資産を上回るとは限らないことを示しています。

買収後存続2026年10月9日時点

株式譲渡の実行日は2026年7月31日(予定)と開示されていました。公式サイトのグループ会社一覧に連結子会社として載っています。

確認元:株式会社識学 グループ会社一覧

出典:連結子会社によるマッハ機器株式会社の株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ

2026年5月13日株式譲渡(子会社の識学グロースキャピタルパートナーズが100%取得=孫会社化)

株式会社storyteller

ハンドメイドアクセサリーの委託販売店(全国の商業施設に29店舗)、キャラクター・企業とのコラボ雑貨の企画販売/東京都狛江市/2013年4月設立

取得価額
5億2,250万円
対象の売上
9億600万円
対象の営業利益
77万円
対象の純資産
3億4,500万円

決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:個人1名(新堀 健太郎、代表取締役社長)が100%保有/アドバイザリー費用(概算)45百万円を加えた合計は567.5百万円(概算)。法務・財務の調査結果等を勘案し当事者間の協議で決定。資金は自己資金と金融機関からの借入

買収理由:長期保有型M&Aの第一号案件。約2,000名の作家ネットワークと、ルミネ・東急プラザなどへの出店実績を持つブランド力を評価

売上9億600万円・営業利益77万円・純資産3億4,500万円。営業利益は△1,758万円→1,066万円→77万円と、ほぼ収支トントンの会社に、純資産の約1.5倍にあたる5億2,250万円がついています。利益ではなく、29店舗の売場と約2,000人の作家とのつながり、商業施設での知名度が値段の根拠になったと読めます。利益が出ていなくても、他社がすぐには作れない販路や取引先を持っていれば評価の対象になる例です。

買収後存続2026年10月9日時点

株式譲渡の実行日は2026年6月12日(予定)と開示されていました。公式サイトのグループ会社一覧に連結子会社として載っています。

確認元:株式会社識学 グループ会社一覧

出典:連結子会社による株式会社storytellerの株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ

2020年3月12日第三者割当増資の引受(新株8,500株を引き受け、議決権の56.4%を取得して子会社化)

福島スポーツエンタテインメント株式会社

プロバスケットボールチーム「福島ファイヤーボンズ」(B.LEAGUE)の運営、試合興行・グッズ・チケット販売/福島県郡山市/2013年5月設立

取得価額
8,500万円
対象の売上
2億1,600万円
対象の営業利益
190万円
対象の純資産
△6,300万円

決算期:2019年6月期/譲渡前の株主:光建工業7.6%、東北装美6.1%、金田建設5.5%ほか少数株主113名(地元企業など)/新株の引受額。アドバイザリー費用(概算)4.6百万円を加えた合計は89.6百万円(概算)。お金は既存株主ではなく会社に入る形

買収理由:識学を企業以外の組織(スポーツチーム)に応用する。営業体制・マーケティングの課題で業績が伸び悩んでいたクラブを、組織改善で伸ばす

売上2億1,600万円・営業利益190万円、純資産はマイナス6,300万円の債務超過で、前の2期は営業赤字でした。株主が地元企業など100名以上に分かれていたため、既存株主から株を買い集めるのではなく、新しく株を発行してもらい、その出資金で過半数を握る形をとっています。お金が会社に入るので、債務超過の解消にもそのまま使えます。株主が多く散らばった会社でも支配権を移せる方法のひとつです。

買収後再売却2026年10月9日時点

識学の持分は88.6%まで増えていましたが、2026年6月22日に62.0%分(35,709株)を株式会社K Asset Managementへ2億1,000万円(1株5,881円)で譲渡すると開示し、識学の持分は26.6%に下がりました。公式サイトのグループ会社一覧では持分法適用会社として載っています。

確認元:連結子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ

出典:福島スポーツエンタテインメント株式会社の第三者割当増資の引受(子会社化)に関するお知らせ

2019年5月15日事業譲受(事業に関する売掛金・前渡金・前受金等を引き継ぎ)

TIGALA株式会社の月額制M&A法人コンサルティング事業

経営者向けの月額制M&Aコンサルティング/東京都港区/譲渡会社は2011年12月設立設立

取得価額
3億円
対象の売上
―
対象の営業利益
―
対象の純資産
―

決算期:非開示/譲渡前の株主:TIGALA株式会社(M&A仲介業。正田 圭が73.80%を保有)/譲渡価額300,000千円を事業譲受日に現金で決済。正ののれんが発生する見込みと開示/対象事業の2019年5月期の売上は「識学の直近事業年度の売上額の10%未満」とだけ開示

買収理由:M&Aの知見を経営者に提供する事業を取り込み、組織の内側(識学)と外部資源の獲得(M&A)の両面から支援するコンサルティングにする

2019年4月1日に基本合意(価格は未定)、5月15日に本契約で3億円と決まりました。会社ごとではなく、月額制のコンサルティングという「事業」だけを3億円で買った案件です。引き継いだ資産は売掛金・前渡金・前受金等に限られ、価格の大半はのれん、つまり顧客基盤やサービスの仕組みへの対価です。設備や在庫を持たないサービス業でも、継続課金の顧客がいれば事業単位で値段がつきます。

買収後不明2026年10月9日時点

事業譲受のため識学本体の事業として引き継がれました。その後この事業を継続しているか、譲渡・撤退したかを示す開示や公式サイトの記載は確認できていません。

確認元:事業譲受の本契約締結のお知らせ

出典:事業譲受の本契約締結のお知らせ

この会社に売るといくらか

取得価額が開示された5件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。

  • ネクサスホールディングス株式会社(子会社ネキスト株式会社を含む)2億円(売上の0.27倍・営業利益の2.3倍)
  • マッハ機器株式会社3億7,300万円(売上の0.20倍・営業利益の3.9倍)
  • 株式会社storyteller5億2,250万円(売上の0.58倍・営業利益の683.0倍)
  • 福島スポーツエンタテインメント株式会社8,500万円(売上の0.39倍・営業利益の44.7倍)
  • TIGALA株式会社の月額制M&A法人コンサルティング事業3億円

自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。

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