三洋貿易株式会社のM&A実績
化学品・機械の専門商社が、同じく輸入販売を手がける小さな専門商社やメーカーを10年にわたって買い続けています。売り手の多くは個人オーナーで、対象は売上8,100万円の試験片販売会社から35億円の理化学機器商社まで。「ニッチな商材に強い」「技術営業力がある」が買収理由の決まり文句で、大きさより取扱商材の専門性を見ている買い手です。
三洋貿易株式会社が公表した適時開示14件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都千代田区
- 設立
- 1947年5月
- 事業内容
- 化学品・機械などの専門商社(輸出入と国内販売)
- 売上高
- 1,327億300万円(2025年9月期(連結))
- 営業利益
- 64億3,000万円
- 純資産
- 513億2,100万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 化学品・工業薬品の輸入販売/理化学機器・医療機器/畜産向け飼料原料・動物用医薬品/産業用ポンプ・機材の製造販売/ソフトウェア受託開発/海洋調査・潜水工事
- 対象の規模
- 対象の売上 0.81億円〜35億円
- 手法
- 株式譲渡で100%取得が基本。子会社を通じて孫会社として買う形も使う(三洋テクノス、ワイピーテック経由)
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 社名を残す会社と、統合する会社に分かれます。日本ルフト・日本フリーマン・新東洋機械工業・ワイピーテック・スクラムなどは社名のまま残っています。一方で、本体と商材が重なる小さな商社(ソート、グローバル・トレーディング)は本体へ吸収合併、NKSコーポレーションはアズロと合併して「三洋ライフマテリアル」になりました。
- 取得価額は全件で非開示です。理由は毎回「当事者間の守秘義務」。代わりに「独立した第三者機関の株式価値算定報告書を基に決定」「第三者機関によるデューデリジェンスで価格の妥当性を検証」と書かれています
- 個人の売り手は名前も持株比率も伏せられています。「大株主が個人であり、守秘義務契約を締結していることから開示を控える」という扱いが全件共通です。上場企業に売っても、オーナー個人の名前が開示に出ない例です
- 売上が下がっている会社も買っています。アズロ(6億6,400万円→5億2,200万円)、グローバル・トレーディング(7億9,600万円→4億2,600万円)はいずれも3期連続の減収局面での譲渡でした
- スクラム(2022年)の取得ではアーンアウト方式が使われ、条件を満たせば買収後3年の間に追加の代金が支払われる契約でした
- このほか2023年にKOTAIバイオテクノロジーズを子会社化(現在のグループ会社一覧に掲載)、2025年にシンガポールの自動車部品商社EMASを取得していますが、前者は開示本文を確認できず、後者は海外企業のため一覧に入れていません
買収の履歴14件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
北九潜水株式会社
海洋調査・点検・工事サービス、コンプレッサー等の機材販売/福岡県福岡市/1984年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 2億8,000万円
- 対象の営業利益
- 3,100万円
- 対象の純資産
- 4億8,900万円
決算期:2025年7月期/譲渡前の株主:個人株主4名が100%保有/当事者間の守秘義務により非開示。第三者機関のデューデリジェンスと株価算定を実施
買収理由:海洋関連の資機材と調査・点検・工事サービスを組み合わせ、洋上風力発電関連ビジネスを進めるため
売上2億8,000万円・営業利益3,100万円に対し、純資産4億8,900万円と売上の1.7倍を積み上げていた会社です。注目は創業者が個人事業で営んでいた「九州ダイビングセンター」を、株式取得の前に北九潜水へ事業譲渡させ、それを前提に株を買っている点。個人事業の側は売上1億6,800万円・営業利益相当7,300万円(2025年12月期、参考値)と、会社本体より利益が大きいほどでした。会社と個人事業に分かれている事業も、まとめて1つにしてから売れることを示す例です。
株式会社九州ミタカ
動物用医薬品・飼料添加物・動物用器材の販売/熊本県熊本市/1983年5月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 9億300万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 3億7,700万円
決算期:2025年5月期/譲渡前の株主:共立ホールディングス株式会社が100%保有/当事者間の守秘義務により非開示。第三者機関のデューデリジェンスと株価算定を実施
買収理由:子会社ワイピーテックの飼料ビジネスと、動物用医薬品の販売網を組み合わせるため
売上9億300万円・純資産3億7,700万円。当期純利益は3,500万円→2,100万円→1,600万円と細っていく局面でした。2019年に買ったワイピーテックが、今度は買い手側に回っています。一度グループに入った会社が、同業を買い足す受け皿になる流れです。熊本を中心とした40年超の販売チャネルが評価されています。
三洋貿易の公式サイトのグループ会社一覧には載っていません。一覧は直接の子会社だけを載せているとみられ、孫会社のため載っていない可能性があります(推定)。合併などの開示は確認できていません。
株式会社コスモ・コンピューティングシステム
ソフトウェア受託開発、システム開発・販売・運用/東京都港区/1986年11月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 13億3,700万円
- 対象の営業利益
- 8,100万円
- 対象の純資産
- 2億9,600万円
決算期:2021年10月期/譲渡前の株主:個人(事前に株式を株主1名に集約したうえで取得)/当事者間の守秘義務により非開示。第三者機関のデューデリジェンスで価格の妥当性を検証
買収理由:システム開発を内製化し、顧客とグループ内のデジタル化に素早く対応するため
売上13億3,700万円・営業利益8,100万円・純資産2億9,600万円。商社がシステム会社を買った、本業とは別分野の案件です。目的は外部への販売より「自社のシステム開発の内製化」。買い手の社内需要そのものが買う理由になることがあります。また株主が複数いた状態から、譲渡の前に1名へ株を集めてから売っています。
株式会社スクラム
バイオ関連の測定・分析機器、試薬の輸入販売と受託サービス/東京都江東区/1996年1月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 35億1,800万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 10億7,000万円
決算期:2021年3月期/譲渡前の株主:正晃ホールディングス株式会社が100%保有/当事者間の守秘義務により非開示。アーンアウト方式で、条件を満たせば買収後3年の間に追加の取得代金が発生
買収理由:バイオ関連事業の強化。科学機器事業と商材が重ならず補い合える
この一覧で最大の案件です。売上は20億6,100万円→26億9,200万円→35億1,800万円、純資産は4億8,800万円→10億7,000万円と伸び盛りでの譲渡でした(当期純利益4億700万円)。価格はアーンアウト方式で、買収後3年の業績次第で追加の代金が支払われます。成長中の会社ほど、売り手と買い手の見込みのずれをこの形で埋めることがあります。
株式会社テストマテリアルズ
研究用純金属・合金・非金属(試験片)の販売/東京都千代田区/1987年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 8,100万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 1,600万円
決算期:2020年9月期/譲渡前の株主:個人(守秘義務契約により氏名・持株比率は非開示)/当事者間の守秘義務により非開示。第三者機関のデューデリジェンスで価格の妥当性を検証
買収理由:理化学研究機器事業との相乗効果
この一覧で最小の案件です。売上8,100万円、純資産1,600万円、当期純利益300万円。売上1億円未満でも、上場企業グループは買います。評価されたのは規模ではなく「独自の仕入れルートと加工ノウハウ」でした。
三洋貿易の公式サイトのグループ会社一覧には社名がありません。孫会社のため一覧に載っていない可能性もあります。2024年6月11日開示の『連結子会社による孫会社の吸収合併に関するお知らせ』が関係する可能性がありますが、本文を確認できていません。
株式会社グローバル・トレーディング
食品原料・化粧品原料・工業薬品の輸出販売/東京都千代田区/2007年7月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 4億2,600万円
- 対象の営業利益
- 1,800万円
- 対象の純資産
- 1億2,000万円
決算期:2020年6月期/譲渡前の株主:個人(守秘義務契約により氏名・持株比率は非開示)/当事者間の守秘義務により非開示。第三者機関のデューデリジェンスで価格の妥当性を検証
買収理由:ライフサイエンス分野の補完と、海外拠点網を使った事業拡大
売上は7億9,600万円→6億5,800万円→4億2,600万円と2期で半分近くに減っていました。それでも健康食品・化粧品原料という「付加価値の高い商材」が評価されて譲渡が成立しています。営業利益1,800万円は、のちの合併開示に載っていた同じ期の数字です。
買収から約5か月後、2021年4月1日付で三洋貿易本体に吸収合併されました(2021年1月14日開示の『非連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』)。
株式会社NKSコーポレーション
食品添加物・工業用薬品の輸入販売/東京都中央区/2003年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 5億1,800万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 4,100万円
決算期:2019年3月期/譲渡前の株主:個人(守秘義務契約により氏名・持株比率は非開示)/当事者間の守秘義務により非開示。第三者機関のデューデリジェンスで価格の妥当性を検証
買収理由:ライフサイエンス分野の補完と安定収益
売上は3億8,900万円→4億9,800万円→5億1,800万円と伸びていましたが、純資産は4,100万円と売上の1割未満でした。特定の食品添加物で「ニッチトップ」と認められていたことが買収理由に挙がっています。自己資本が薄くても、商材の強さで買い手はつきます。
2020年10月1日付で、同じく買収したアズロに吸収合併され、アズロは「三洋ライフマテリアル株式会社」に商号変更しました(2020年6月9日開示の『連結子会社と非連結子会社の吸収合併及び商号変更に関するお知らせ』)。
株式会社ワイピーテック
畜産向け機能性飼料原料・飼料添加物の輸入販売/東京都千代田区/1984年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 27億9,600万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 4億1,500万円
決算期:2019年3月期/譲渡前の株主:ヨシモトポール株式会社が100%保有/当事者間の守秘義務により非開示。第三者機関のデューデリジェンスで価格の妥当性を検証
買収理由:化学品事業部の畜産事業との相乗効果。畜産は長期経営計画の注力分野
売上は22億7,000万円→25億1,900万円→27億9,600万円、純資産は1億7,000万円→4億1,500万円と伸びている局面での譲渡。売り手は個人ではなく親会社(ヨシモトポール)で、事業会社が子会社を手放した案件です。ワイピーテックはその後、2025年に九州ミタカを買う側に回っています。
新東洋機械工業株式会社
耐蝕ポンプなど工業用ポンプの製造販売・メンテナンス/埼玉県越谷市/1981年2月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 4億1,200万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 7,200万円
決算期:2018年12月期/譲渡前の株主:個人(守秘義務契約により氏名・持株比率は非開示)/当事者間の守秘義務により非開示。独立した第三者機関の株式価値算定報告書等を基に決定
買収理由:ゴムライニング製ポンプのニッチトップ。グループのマイクロポンプ事業との相乗効果と海外拡販
売上4億1,200万円、純資産7,200万円(総資産3億7,100万円)。純資産は2,000万円→2,900万円→7,200万円とまだ薄い状態でしたが、売上は2億7,000万円→4億1,200万円と伸びていました。ゴムライニング製ポンプで「世界のニッチトップ」と書かれており、小さな会社でも尖った製品があれば商社が買いに来る例です。
アズロ株式会社
医農薬品中間体・電子材料など精密化学品の輸入販売/東京都千代田区/1992年9月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 5億2,200万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 6,900万円
決算期:2017年8月期/譲渡前の株主:個人(守秘義務契約により氏名・持株比率は非開示)/当事者間の守秘義務により非開示。独立した第三者機関の株式価値算定報告書等を基に決定
買収理由:インドでのネットワークに強みを持ち、化学品事業部の医薬品ビジネスを補完
売上は6億6,400万円→5億8,300万円→5億2,200万円、純資産も8,700万円→6,900万円と、どちらも3期続けて下がっていました。それでも「インドでのネットワーク」という他にない強みが評価されています。買収後はNKSコーポレーションを合併して、グループの化学品商社の受け皿になりました。
2020年10月1日付でNKSコーポレーションを吸収合併し、「三洋ライフマテリアル株式会社」に商号変更しました(2020年6月9日開示の『連結子会社と非連結子会社の吸収合併及び商号変更に関するお知らせ』)。新社名で公式サイトの国内グループ会社一覧に掲載されています。
日本フリーマン株式会社
精密鋳造用副資材・型材の輸入販売/神奈川県横浜市/1973年5月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 6億円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 6億9,700万円
決算期:2017年2月期/譲渡前の株主:個人(守秘義務契約により氏名・持株比率は非開示)/当事者間の守秘義務により非開示。独立した第三者機関の株式価値算定報告書等を基に決定
買収理由:精密鋳造市場への新規参入と、アジア拠点を使った拡販
純資産6億9,700万円が売上6億円を上回り、総資産7億4,000万円のほぼすべてが自己資本という無借金型の会社でした。売上は6億3,400万円→6億円とゆるやかに減っていましたが、純資産は毎年積み増しています。内部留保の厚い会社が、上場企業への譲渡を選んだ例です。
古江サイエンス株式会社
理化学機器の製造販売/東京都新宿区/1970年9月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
譲渡前の株主:個人(守秘義務契約により氏名・持株比率は非開示)/開示なし
買収理由:科学機器事業部として本格的な製造業への第一歩
業績・取得割合とも開示されていません(非連結の孫会社としての取得のため、開示を簡略化)。創業1970年の理化学機器メーカーで、商社の三洋貿易にとって「本格的な製造業への第一歩」と位置づけられた案件です。2019年の開示では「三洋古江サイエンス株式会社」として登場しており、グループ入り後に社名に「三洋」が付いたと読めます。
2019年5月13日の開示に「当社子会社の三洋古江サイエンス株式会社」とあり、社名変更していたとみられます(推定)。現在の公式サイトのグループ会社一覧には載っておらず、その後の経過は確認できていません。
日本ルフト株式会社
呼吸器系医療機器の開発・製造販売、医療機器・理化学機器の輸入販売/東京都台東区/1982年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 6億2,000万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 3億5,300万円
決算期:2015年8月期/譲渡前の株主:個人(守秘義務契約により氏名・持株比率は非開示)/当事者間の守秘義務により非開示。独立した第三者機関の株式価値算定報告書等を基に決定
買収理由:医療機器産業への新規参入と、理化学機器の輸入取引での相乗効果
売上6億2,000万円・純資産3億5,300万円(総資産5億2,800万円)。買い手にとっては医療機器業界への参入手段でした。買収から3年後、理化学機器の輸入販売部分だけを親会社へ移し、日本ルフトは医療機器に専念する形に整理されています。会社は残しつつ、事業の中身は組み替えられることがある例です。
公式サイトの国内グループ会社一覧に掲載されています。なお2019年に理化学機器の輸入販売事業を三洋貿易本体へ譲渡し、医療機器事業に集中しています。
株式会社ソート
紫外線吸収剤・光重合開始剤など工業化学薬品の輸入販売/東京都町田市/1991年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 17億3,600万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 3億600万円
決算期:2015年3月期/譲渡前の株主:個人(守秘義務契約により氏名・持株比率は非開示)/当事者間の守秘義務により非開示。独立した第三者機関の株式価値算定報告書等を基に決定
買収理由:インキ・塗料・コーティング事業での販売拡大と相乗効果
売上は14億2,500万円→15億7,900万円→17億3,600万円と伸びていました。三洋貿易本体と商材が近い化学品商社だったため、買収から約2年で本体に吸収合併されています。合併時の開示では、買収後の2017年3月期に売上17億300万円・営業利益2億3,400万円を出していました。買い手の本業に近い会社ほど、法人としては残らない傾向が三洋貿易にはあります。
2018年4月1日付で三洋貿易本体に吸収合併されました(2017年10月12日開示の『連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』)。
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本ページは三洋貿易株式会社が公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日