株式会社南陽のM&A実績
機械商社が、もともと取引のあった中小の機械メーカーを数年に1社のペースで買っている会社です。4件すべてが「開発・設計・製造からアフターサービスまで一貫して対応できるメーカー」で、理由もほぼ同じ文面の「南陽グループの営業力と当該会社の技術力を融合」。売り手は社長個人や創業家で、どの会社とも買収前から営業上の取引関係がありました。
株式会社南陽が公表した適時開示4件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 福岡県福岡市
- 設立
- ―
- 事業内容
- 建設機械の販売・レンタル、電子機器・油空圧機器などの産業機器の販売と製造、砕石の製造販売を行う九州の機械商社
- 売上高
- 368億1,500万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 28億900万円
- 純資産
- 274億9,200万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 半導体製造装置/半導体部品向け洗浄機・省力化機械/流体制御機器・システム/精密加工部品・FAメカトロニクス
- 対象の規模
- 対象の売上 5.5億円〜6.9億円
- 手法
- 株式譲渡で100%を取得(子会社化)
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 買った会社は子会社として残し、親会社の営業網で製品を売る形です。2026年3月期の決算短信でも「製造子会社とのシナジーを追求し、当社グループ製品の販売強化に注力」と書いています。
- 4件中2件で取得価額を開示しています。戸髙製作所は3億5,200万円、アプリオリは11億2,000万円。どちらもアドバイザリー費用等の概算額まで出しています
- 全件で、買う前から取引のあった会社です。仕入先・販売先として付き合いのある商社が、そのまま買い手になっています
- 対象はいずれも売上5億〜7億円、営業利益2,000万〜3,000万円台の規模でした。利益が大きくない町工場規模のメーカーでも買われています
- 4件中3件で、直近3期のうち1期に営業赤字がありました。その後に黒字へ戻した局面での譲渡です
買収の履歴4件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
アプリオリ株式会社
半導体・光ファイバー・基板ガラスの製造工程で使う流体制御機器の販売・輸入販売、流体制御システムの製造販売/東京都千代田区/1983年8月設立
- 取得価額
- 11億2,000万円
- 対象の売上
- 5億4,700万円
- 対象の営業利益
- 3,400万円
- 対象の純資産
- 6億7,500万円
決算期:2025年6月期/譲渡前の株主:間瀬康之(代表取締役)87.5%、間瀬悦子12.5%(個人2名)/アドバイザリー費用等(概算額)62百万円を加えた合計は1,182百万円。直前期の純資産675百万円の約1.7倍、営業利益34百万円の約33倍。なお2026年3月期の決算短信で、この取得により負ののれん発生益100百万円を計上したと開示されている
買収理由:商社機能と開発・設計・製造を併せ持つメーカーの技術力を、グループの営業力と組み合わせる
売上5億4,700万円・営業利益3,400万円・純資産6億7,500万円の会社に、11億2,000万円の値段がついています。営業利益は△200万円→900万円→3,400万円と、3期前は赤字でした。目を引くのは、買い手の決算短信に負ののれん発生益1億円が出ている点です。買い手が時価で見直した純資産が、払った金額より大きかったことになります。帳簿の純資産が厚い会社は、利益が小さくても純資産を軸に値段がつくことを示す例です。
株式会社AQUAPASS
半導体精密部品向け超音波洗浄機・省力化機械の製造販売/佐賀県西松浦郡有田町/2016年12月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 5億9,500万円
- 対象の営業利益
- 2,300万円
- 対象の純資産
- 1億300万円
決算期:2023年3月期/譲渡前の株主:株式会社アクアグループ(不動産賃貸・有価証券運用の会社。代表は対象会社と同じ今泉浩一氏)が100%保有/取得価額の記載なし。連結業績への影響は「軽微」と開示
買収理由:開発・設計・製造から設置後のメンテナンスまで一貫対応できるメーカーの技術力を、グループの営業力と組み合わせる
売上5億9,500万円・営業利益2,300万円・純資産1億300万円。売上は4億1,400万円→4億4,900万円→5億9,500万円と伸びていました。株主は社長個人ではなく、社長が代表を務める資産管理会社です。オーナーが持株会社や資産管理会社を通して株を持っている形でも、そのまま売れます。対象会社は買い手の株式も1,210株持っていて、取引先同士の関係が深かったことがうかがえます。
2024年2月20日に取引実行。その後の商号変更や合併の開示はありませんが、手元の決算短信には社名の記載がなく、存続を確認できる資料はありません。
株式会社エイ・エス・エイ・ピイ
半導体製造の前工程に特化した半導体製造装置の製造販売/埼玉県さいたま市/1999年2月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 6億2,300万円
- 対象の営業利益
- 2,100万円
- 対象の純資産
- 2億2,500万円
決算期:2021年12月期/譲渡前の株主:個人1名(大澤 信、代表取締役)が100%保有/株式譲渡契約上の秘密保持義務により非開示
買収理由:開発・設計・製造からアフターサービスまで一貫対応できるメーカーの技術力を、グループの営業力と組み合わせる
売上6億2,300万円・営業利益2,100万円・純資産2億2,500万円。売上は8億6,300万円→3億7,600万円→6億2,300万円と大きく振れ、2020年12月期は営業損失3,600万円でした。半導体の波で業績が上下する装置メーカーでも、取引先の商社が引き受けています。社長が株を全部持ち、決議と同じ日に譲渡を実行しています。
2022年7月19日に取引実行。その後の商号変更や合併の開示はありませんが、手元の決算短信には社名の記載がなく、存続を確認できる資料はありません。
株式会社戸髙製作所
精密加工部品、FAメカトロニクス、船舶関連機器の製造販売/大分県大分市/1970年1月設立
- 取得価額
- 3億5,200万円
- 対象の売上
- 6億8,700万円
- 対象の営業利益
- 3,400万円
- 対象の純資産
- 3億7,100万円
決算期:2016年6月期/譲渡前の株主:戸髙猛夫36.3%、戸髙庸夫34.3%、戸髙千淵29.4%(創業家の個人3名)/アドバイザリー費用等(概算額)55百万円を加えた合計は407百万円。直前期の純資産371百万円の約0.95倍、営業利益34百万円の約10倍
買収理由:設計・電気・制御・ソフト設計から組立・加工まで一貫対応できるメーカーの技術力を、グループの営業力と組み合わせる
売上6億8,700万円・営業利益3,400万円・純資産3億7,100万円で、取得価額は3億5,200万円。ほぼ純資産と同じ額です。営業利益は900万円→△700万円→3,400万円と、前々期は赤字でした。設立から47年の会社で、株は創業家3名がほぼ3等分で持っていました。利益が薄い年が続いた製造業だと、純資産前後が値段の目安になることが読み取れる例です。
2017年3月1日に取引実行予定として開示。その後の商号変更や合併の開示はありませんが、手元の決算短信には社名の記載がなく、存続を確認できる資料はありません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された2件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- アプリオリ株式会社11億2,000万円(売上の2.05倍・営業利益の32.9倍)
- 株式会社戸髙製作所3億5,200万円(売上の0.51倍・営業利益の10.4倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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