株式会社イチネンホールディングスのM&A実績
開示文で毎回「規模拡大を目的とした積極的なM&A」を掲げ、自動車部品、梱包機、遊技機部品、樹脂部品、ガラス加工、肥料と、業種をまたいで買い続けている会社です。買った会社を既存の事業部門の隣に置き、仕入れや販路をまとめる形が基本です。売り手は個人オーナー、投資ファンド、三菱商事のような大企業、事業再生中の会社まで幅があります。
株式会社イチネンホールディングスが公表した適時開示9件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月13日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 大阪府大阪市
- 設立
- ―
- 事業内容
- 自動車リース関連、ケミカル、パーキング、機械工具販売、合成樹脂、農業関連(肥料)の6事業に、ガラス製品などの「その他事業」を加えた計7事業を傘下の事業会社で営む持株会社
- 売上高
- 1,622億5,400万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 109億2,600万円
- 純資産
- 721億4,500万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 肥料の製造・卸売(農業関連事業)/自動車部品・自動車関連用品の卸売・製造/合成樹脂部品(自動車エンブレム、遊技機部品)/ガラス加工製品/梱包機・機械工具
- 対象の規模
- 対象の売上 5.3億円〜263億円
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。売り手の会社から事業だけを会社分割で新会社に移し、その新会社を買う形を繰り返し使っている(トヨシマ、アクセス、浅間製作所、日石硝子工業)
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 社名を残して子会社にするのが基本で、マルイ工業や日東エフシーは買収時の社名のままです。ただし大企業の子会社だった会社は「イチネン」を冠した社名に変わっています(三菱商事アグリサービス→イチネンMAC)。イチネンHDの社長が買った会社の代表取締役会長に就き、元の社長は社長として残る形が多く見られます(マルイ工業、日東エフシー)。
- 取得価額は原則「守秘義務契約により非開示」です。ただし日石硝子工業と三菱商事アグリサービス/エムシー・ファーティコムでは、取引の後に「開示が可能な状況となった」として金額を追って公表しています
- 会社分割で「事業だけ」を買う形が多いのが特徴です。アクセスと浅間製作所では、事業を渡したあとの元の会社が「不動産の賃貸」「事業及び不動産への投資」に目的を変えて残っています。日石硝子工業でも現金・預金や借入金などは引き継ぎの対象外でした。不動産や現預金を手元に残したまま事業だけを売るという選択肢の実例です
- 赤字の会社も買っています。浅間製作所は直前期に営業損失7億600万円、トヨシマは当期純損失4億8,900万円で、地域経済活性化支援機構(REVIC)の再生支援案件でした
- 大企業の子会社の引き受け手にもなっています。2026年には三菱商事から肥料の2社を、合わせて32億円余りで取得しました
買収の履歴9件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
エムシー・ファーティコム株式会社(93.16%)
多種多様な肥料(機能性肥料など)の製造・販売/東京都千代田区/1966年5月設立
- 取得価額
- 27億9,400万円
- 対象の売上
- 148億9,800万円
- 対象の営業利益
- 2億5,900万円
- 対象の純資産
- 46億9,300万円
決算期:2025年3月期(単体)/譲渡前の株主:三菱商事72.83%、UBE20.33%、トモエ肥料販売協同組合連合会6.84%(三菱商事とUBEから取得)/当初は守秘義務により非開示。2026年5月26日に普通株式2,794百万円と公表(93.16%分)。アドバイザリー費用等は未確定
買収理由:製品ラインナップと機能性肥料の開発力を、グループの日東エフシーの開発力と組み合わせる
売上148億9,800万円・営業利益2億5,900万円・純資産46億9,300万円。93.16%分で27億9,400万円なので、100%に直すと約30億円、純資産の6割強の水準です。営業利益は17億8,700万円→営業損失11億7,700万円→2億5,900万円と振れ、直前期も当期純損失3億5,900万円でした。業績が大きく崩れた直後でも、製品力があれば買い手はつきます。ただし価格は純資産を下回っています。
2026年6月1日に株式取得が完了しました。2027年6月1日付で「株式会社イチネンファーティコム」に商号変更する予定と開示されています。
確認元:三菱商事アグリサービス株式会社及びエムシー・ファーティコム株式会社の株式取得(子会社化)の完了並びに商号変更等に関するお知らせ
出典:三菱商事アグリサービス株式会社及びエムシー・ファーティコム株式会社の株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ
三菱商事アグリサービス株式会社
肥料原料の輸出入、肥料製品・農業資材の卸売/東京都千代田区/1989年10月設立
- 取得価額
- 4億3,900万円
- 対象の売上
- 263億3,700万円
- 対象の営業利益
- 3億1,700万円
- 対象の純資産
- 13億9,800万円
決算期:2025年3月期(単体)/譲渡前の株主:三菱商事株式会社(上場企業)が100%保有/当初は守秘義務により非開示。取引実行前の2026年5月26日に「開示が可能な状況となった」として普通株式439百万円と公表。アドバイザリー費用等は未確定
買収理由:多様な原料調達ルートと海外を含む販売網を取り込み、農業関連事業の購買力と販売力を強める
売上263億3,700万円・営業利益3億1,700万円・純資産13億9,800万円に対して、取得価額は4億3,900万円。純資産の約3割の値段です。売上は491億円→305億円→263億円と縮み、前々期は営業赤字でした。総資産が3年で338億円から191億円へ減っており、商社の子会社として大きな取引を抱える事業は、売上の割に値段がつきにくいことがうかがえます。売り手は大企業でも、価格は純資産を下回ることがあるという実例です。
2026年6月1日に株式取得が完了し、同日付で「株式会社イチネンMAC」に商号変更しました。社長はイチネン側から就いています。
確認元:三菱商事アグリサービス株式会社及びエムシー・ファーティコム株式会社の株式取得(子会社化)の完了並びに商号変更等に関するお知らせ
出典:三菱商事アグリサービス株式会社及びエムシー・ファーティコム株式会社の株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ
日石硝子工業株式会社(新設分割会社)
合わせガラス・強化ガラス・複層ガラス・装飾ガラスの製造販売と施工/富山県高岡市/分割会社は1988年4月設立設立
- 取得価額
- 1億8,500万円
- 対象の売上
- 6億7,400万円
- 対象の営業利益
- 6,800万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2024年10月期(譲受部門)/譲渡前の株主:個人株主48.3%、14.7%、11.1%ほか(氏名は非公開)/当初は守秘義務により非開示。取引完了後の2025年6月に公表。アドバイザリー費用等10百万円を加えた合計は196百万円。現金・預金、金銭債権・債務は承継対象外/譲受部門(ガラス事業の全部)の数値。新設会社のため確定した決算はない
買収理由:グループの新光硝子工業との技術連携、原材料調達のスケールメリット、商品ラインナップの拡充
売上6億7,400万円・営業利益6,800万円の事業を1億8,500万円、営業利益の約2.7倍で取得しています。分割会社は2022年10月期に純資産マイナス4,100万円の債務超過で、そこから2年で7,100万円まで戻していました。借入金や現預金は売り手側に残し、事業に使う資産と取引先だけを渡す形のため、価格は「事業そのもの」の値段と読めます。分割元は株式会社NSGに社名を変えて残りました。
2025年3月31日に新設会社「日石硝子工業株式会社」として取得が完了しました。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
確認元:日石硝子工業株式会社からの事業譲受を目的とした新設分割会社の株式取得(子会社化)の完了及び人事異動に関するお知らせ
出典:日石硝子工業株式会社からの事業譲受を目的とした新設分割会社の株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ
日東エフシー株式会社
化成肥料・配合肥料の製造販売、試験圃場を使った栽培指導。子会社9社・孫会社1社/愛知県名古屋市/2023年1月(2023年3月に肥料事業を吸収分割で承継)設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 168億9,600万円
- 対象の営業利益
- 25億9,300万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2022年9月期(連結)/譲渡前の株主:イースト投資事業有限責任組合85.85%、West L.P.13.15%ほか(投資ファンド)/守秘義務契約により非開示/旧会社の連結の数値。分割前の不動産事業と譲渡済み子会社1社を含む
買収理由:肥料事業の知見・技術を取り込み、農業関連事業をグループの主力事業のひとつに育てる
売上168億9,600万円・営業利益25億9,300万円(いずれも不動産事業を含む旧会社の連結)。売り手は投資ファンドで、ファンドは売る前に不動産事業を切り離し、肥料事業だけを新会社に移してから渡しています。開示の純資産466億6,100万円もこの不動産を含んだ数字です。イチネンはこの会社を足がかりに肥料事業を広げ、2026年の三菱商事2社の買収につなげています。
2026年4月の三菱商事アグリサービス等の取得の開示で「日東エフシー株式会社他9社」としてグループの農業関連事業の中核に挙げられています。商号変更や合併の開示は確認できていません。
確認元:三菱商事アグリサービス株式会社及びエムシー・ファーティコム株式会社の株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ
マルイ工業株式会社
樹脂製エンブレムなど自動車用内外装部品の製造販売、金型の設計製造。タイに製造・販売拠点/新潟県胎内市/1947年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 64億1,400万円
- 対象の営業利益
- 2億3,200万円
- 対象の純資産
- 47億9,500万円
決算期:2023年3月期(連結)/譲渡前の株主:ネクスト・キャピタル・パートナーズⅡ投資事業有限責任組合60.9%、Kojimachi Opportunities Fund L.P.21.4%、Hanzomon Opportunities Fund L.P.17.6%(投資ファンド)/守秘義務契約により非開示
買収理由:合成樹脂事業での製造ノウハウ共有と拠点の相互活用、タイ拠点を使った海外事業の拡大
創業1947年、売上64億1,400万円・営業利益2億3,200万円・純資産47億9,500万円。営業利益は7億5,200万円→3億9,700万円→2億3,200万円と3期続けて下がっている局面での譲渡でした。売り手はファンドです。社長の中澤鉄氏は買収後も代表取締役 社長執行役員として残り、イチネンHDの社長が会長に就いています。
2026年4月の開示の役員兼務欄に「マルイ工業株式会社 代表取締役会長」とあり、社名のまま子会社として残っています。商号変更や合併の開示は確認できていません。
確認元:三菱商事アグリサービス株式会社及びエムシー・ファーティコム株式会社の株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ(開示事項の経過)
株式会社浅間製作所の事業(遊技機部品)
遊技機器の部品の製造・販売/愛知県名古屋市
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 99億3,400万円
- 対象の営業利益
- △7億600万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2019年3月期(分割会社)/完了の開示に金額の記載なし/分割会社(旧・浅間製作所)の数値
買収理由:合成樹脂事業で遊技機部品を手がけるイチネンジコーとの相乗効果、遊技機メーカーとの取引関係と品質管理ノウハウの活用
売上99億3,400万円で営業損失7億600万円。営業利益は1億5,300万円→8,500万円→損失7億600万円と悪化していました。それでも「業界を創成期から支えてきた実績」と取引先との関係が評価されています。分割会社の純資産は54億6,300万円ありましたが、事業を渡したあとの元の会社は目的を「事業及び不動産への投資等」に変えて残りました。赤字に落ちても、取引基盤のある事業は引き取り手が見つかります。
2020年3月2日に承継会社が「株式会社浅間製作所」として始動しました。2021年9月に「連結子会社間の会社分割」の開示がありますが、本文の文字が読み取れず、この会社が関係するかは確認できていません。
株式会社アクセスの事業(自動車部品卸売)
各種自動車部品・自動車関連付属品の卸売。従業員205名/大阪府大阪市/分割会社は2014年11月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 153億6,100万円
- 対象の営業利益
- 3億5,100万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2019年3月期(承継事業)/譲渡前の株主:株式会社FEL41.78%、松村正史11.88%、長瀬隆弘8.61%、鵜飼滋7.58%ほか/相手方の強い要請により非開示。承継する事業の資産・負債の時価相当額をもとに協議して決めたと開示/承継する事業(卸売事業の全部)の数値
買収理由:機械工具販売事業と仕入・販売の両面で相乗効果を見込み、規模と収益性を高める
売上153億6,100万円・営業利益3億5,100万円の卸売事業。承継した資産74億8,400万円・負債51億2,100万円で、差し引き約23億6,000万円(簿価)でした。価格は「時価の純資産」をもとに決めたと書かれています。事業を渡したあと、元の会社は本店を東京に移し、目的を「不動産の賃貸、管理」に変えて残りました。事業は売り、不動産の会社として残るという形です。
2019年11月1日に承継会社が「株式会社アクセス」として始動しました。その後の開示の役員兼務欄に「株式会社イチネンアクセス」が出てくるため、イチネンアクセスに改称したものと推定しています(商号変更そのものの開示は確認できていません)。
株式会社トヨシマの事業(フォークリフト用フォーク、自動車部品)
フォークリフト用フォーク・自動車部品の製造、自動車部品の卸売/大阪府池田市/分割会社は1936年3月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 49億9,700万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2017年3月期(分割会社)/譲渡前の株主:田邉義和(社長)61.6%ほか/守秘義務契約により非開示/分割会社(旧・トヨシマ)単体の数値
買収理由:機械工具販売事業との相乗効果。フォークアーム製造はニッチで市場占有度の高い事業
創業1936年。売上49億9,700万円、経常利益1,800万円、当期純損失4億8,900万円。米国バネ事業の買収や工場の浸水被害で借入金が増え、市場縮小と価格競争で収益が悪化していました。メインバンクとイチネンが共同で機構に支援を申し込み、事業を新会社に移して引き継ぐ形です。資金繰りに詰まった会社でも、強い製品があれば事業ごと引き継ぐ相手は見つかる、という例です。
2018年8月1日に承継会社が「株式会社トヨシマ」として始動しました。その後の開示には中国子会社の蘇州豊島機械配件有限公司の名は出てきますが、株式会社トヨシマ自体の名は見当たらず、合併や商号変更の有無は確認できていません。
昌弘機工株式会社
「SPOT」ブランドの自動梱包機・封緘機・結束機の製造販売/大阪府四条畷市/1957年5月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 5億3,500万円
- 対象の営業利益
- 600万円
- 対象の純資産
- 5億3,900万円
決算期:2017年4月期/譲渡前の株主:個人1名(髙見 耕示)が100%保有/守秘義務契約により非開示
買収理由:機械工具販売事業の取扱商品の充実と新たな商圏への進出
創業1957年、売上5億3,500万円・営業利益600万円・純資産5億3,900万円。社長1人が株式を100%持つ会社です。2015年4月期は営業損失3,500万円で、その後も利益は数百万円にとどまっていました。それでも純資産が売上と同じくらい積み上がった、自社ブランドを持つ老舗メーカーとして買われています。利益が薄くても、ブランドと財務の厚みがあれば売り先はあります。
2018年1月25日に株式の引き渡しが完了しました。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- エムシー・ファーティコム株式会社(93.16%)27億9,400万円(売上の0.19倍・営業利益の10.8倍)
- 三菱商事アグリサービス株式会社4億3,900万円(売上の0.02倍・営業利益の1.4倍)
- 日石硝子工業株式会社(新設分割会社)1億8,500万円(売上の0.27倍・営業利益の2.7倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社イチネンホールディングスが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月13日