株式会社技術承継機構のM&A実績
自らを「連続買収(譲受)企業」と呼び、中小製造業の事業承継だけを目的に買い続けている会社です。2025年3月からの約1年半で11社を取得し、2025年12月期だけで7グループを迎えています。対象は切削加工・研削・熱処理・鋳造・ばね・電源機器といった町工場型の会社が中心で、公式サイトに「譲受後の譲渡は想定せず」と書いているのが特徴です。2026年からは大企業の子会社の切り出し(カーブアウト)も買い始めています。
株式会社技術承継機構が公表した適時開示11件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都渋谷区
- 設立
- 2018年7月
- 事業内容
- 後継者のいない中小製造業と製造業関連企業を譲り受け、経営支援を行う持株会社。「譲受後の譲渡は想定せず」と明言している
- 売上高
- 149億6,100万円(2025年12月期(連結))
- 営業利益
- 14億3,200万円
- 純資産
- 92億1,100万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 金属の切削・研削加工/熱処理・表面処理・鋳造/自動車用ばね部品/電源機器・電磁クラッチ等の電機部品/プリント基板関連の加工・装置販売/中古フォークリフトの販売・レンタル
- 対象の規模
- 対象の売上 3.4億円〜48.6億円(多くは5億〜15億円)
- 手法
- 株式譲渡で100%取得する形のみ。案件ごとに買収用の子会社(NGTG11〜NGTG20)を作り、その子会社が株式を買う。資金は自己資金と銀行借入の組み合わせ
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残しています。上場前に買った10社も含め、取得した会社はすべて公式サイトのグループ会社一覧に載っており、合併や再売却の開示はありません。社長が交代したかどうかは開示からは分かりません。
- 取得価額は11件中2件で開示されています。多賀製作所が23億7,900万円、堀越精機が26億1,200万円でした。ほかの案件は「当事者間の守秘義務契約」「相手先の強い要望」による非開示です
- 非開示でも下限が読める案件があります。アドバンスと三晃技研工業では「直前連結会計年度末日の連結純資産の15%以上の額で譲受」と書かれており、当時の連結純資産からそれぞれ約6億円以上、約13.8億円以上と読めます
- 純資産より安く買った案件が複数あります。アルファーシステムでは負ののれん発生益3億円を計上したと開示しており、多賀製作所でも負ののれんが出る見込みとされました。2025年12月期の負ののれん発生益は合計23億3,900万円です。純資産が厚くても、それがそのまま値段になるとは限らないことが分かります
- 売り手の名前はほぼ全件で非開示です。大株主も「相手先との協議の結果、非開示」とされ、個人オーナーかどうかは開示からは確認できません。名前が出ているのは上場企業シンフォニアテクノロジーから買った大崎電業社だけです
- 上場前にも豊島製作所、東洋マーク、篠原製作所など10社を買っています。これらは開示が無いため一覧に入れていませんが、いずれもグループ会社として残っています
買収の履歴11件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
三晃技研工業株式会社
プリント基板関連の加工サービス、製造装置・資材の販売/大阪府大阪市/1980年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 40億2,100万円
- 対象の営業利益
- 5億400万円
- 対象の純資産
- 15億4,900万円
決算期:2026年3月期/譲渡前の株主:非開示(相手先の要望による)/相手先の強い要望により非開示。ただし「直前連結会計年度末日の連結純資産の15%以上の額」と明記。2025年12月期の連結純資産92億1,100万円(訂正後)の15%=約13.8億円以上と読める。アドバイザリー費用は未確定
買収理由:プリント基板関連の加工・装置・資材販売の事業を次世代に引き継ぐ
売上40億2,100万円・営業利益5億400万円・純資産15億4,900万円。営業利益が2億5,800万円から5億400万円へほぼ倍増した決算の直後に売っています。業績が最も良い年を譲渡のタイミングに選んだ形です。なお売上は装置・資材の販売を総額で計上しており、連結後は会計処理を見直す予定と開示されています。仕入販売の比率が高い会社は、買い手の基準で売上が小さく見直されることがある点は知っておくとよいでしょう。
株式会社大崎電業社
電磁クラッチ・ブレーキ、スリップリングの製造/東京都大田区/1947年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 11億8,200万円
- 対象の営業利益
- 8,600万円
- 対象の純資産
- 7億5,500万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:シンフォニアテクノロジー株式会社(上場企業)が100%保有/非開示。アドバイザリー費用は未確定
買収理由:電磁クラッチ・ブレーキ等の製造技術を次世代に引き継ぐ。同社にとってカーブアウト第1号案件
売上11億8,200万円・営業利益8,600万円・純資産7億5,500万円。営業利益は4,400万円→5,900万円→8,600万円と伸びていました。売り手は親会社の上場企業で、創業1947年の老舗子会社を手放した案件です。買い手側のグループ会社がもともとシンフォニアテクノロジーに製品を売っている取引先で、取引関係のある相手に子会社を渡した形でした。
堀越精機株式会社
各種産業機器・機械の切削加工/東京都大田区/1956年5月設立
- 取得価額
- 26億1,200万円
- 対象の売上
- 11億8,300万円
- 対象の営業利益
- 4億3,100万円
- 対象の純資産
- 10億5,600万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:非開示(相手先の要望による)/法務・財務の調査結果を勘案し当事者間の協議で決定。アドバイザリー費用は未確定のため含まない。資金は自己資金と金融機関借入
買収理由:切削加工技術を次世代に引き継ぐ
取得価額26億1,200万円は、この会社の開示案件で最大です。売上11億8,300万円に対して営業利益4億3,100万円(利益率36%)、営業利益の約6.1倍、純資産の約2.5倍の値段でした。純資産は3期で2億円→5億7,700万円→10億5,600万円と急増しています。町工場の切削加工でも、利益率が高ければ純資産を大きく上回る値段がつきます。
株式会社アドバンス
フォークリフトの中古販売・買取・輸出・レンタル・メンテナンス/大阪府大阪市/1978年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 12億5,100万円
- 対象の営業利益
- 6,100万円
- 対象の純資産
- 16億9,700万円
決算期:2025年3月期(簡便合算)/譲渡前の株主:非開示(相手先の要望による)/相手先の強い要望により非開示。ただし「直前連結会計年度末日の連結純資産の15%以上の額」と明記。2024年12月期の連結純資産40億200万円の15%=約6億円以上と読める/単体と傘下の事業子会社を簡便的に合算した2025年3月期の数値。単体は売上9億5,300万円・営業利益2,600万円・純資産7億2,000万円
買収理由:フォークリフトの中古販売・レンタル・メンテナンス事業を次世代に引き継ぐ
合算で売上12億5,100万円・営業利益6,100万円・純資産16億9,700万円。利益は小さいものの、純資産が売上を上回るほど厚い会社でした。製造業そのものではなく「製造業に関連する企業」として、工場で使う機械の流通・保守の会社も対象に入ることが分かる案件です。
有限会社山泰鋳工所
鋳造/埼玉県川口市/1960年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 13億6,800万円
- 対象の営業利益
- 1億700万円
- 対象の純資産
- 3億3,600万円
決算期:2025年5月期/譲渡前の株主:非開示/相手先の強い要望により非開示
買収理由:鋳造技術を次世代に引き継ぐ
売上13億6,800万円・営業利益1億700万円・純資産3億3,600万円。純資産は3期で1億6,800万円→2億5,700万円→3億3,600万円と倍増していました。有限会社のまま、売上13億円規模まで育った鋳造会社です。取引のある兄弟会社と一緒に売ることで、仕事の流れごと引き継がれています。
2025年10月1日に取引実行。公式サイトのグループ会社一覧に「株式会社山泰鋳工所・製作所」として掲載され、2025年12月期決算短信でも「株式会社山泰鋳工所」と表記されています。有限会社から株式会社に移行したとみられます(表記からの推定)。
株式会社山泰製作所
精密切削加工・組立/新潟県南魚沼市/1987年9月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 10億800万円
- 対象の営業利益
- 2,500万円
- 対象の純資産
- 5億2,900万円
決算期:2024年8月期/譲渡前の株主:非開示/相手先の強い要望により非開示
買収理由:精密切削加工・組立技術を次世代に引き継ぐ
売上10億800万円・営業利益2,500万円・純資産5億2,900万円。売上は15億8,700万円→15億2,100万円→10億800万円、営業利益は1億5,000万円→8,900万円→2,500万円と、2年で大きく落ち込んだ局面での譲渡です。それでも黒字を保っていれば買い手はつきます。役員が兼任し取引もある鋳造会社(山泰鋳工所)と、資本関係はないまま2社セットで引き取られました。
2025年10月1日に取引実行。公式サイトのグループ会社一覧に「株式会社山泰鋳工所・製作所」としてまとめて掲載されています。
株式会社多賀製作所
自動車用ブレーキ・EV向けの金属ばね部品の製造(中国・天津に製造子会社)/埼玉県さいたま市/1958年6月設立
- 取得価額
- 23億7,900万円
- 対象の売上
- 48億5,500万円
- 対象の営業利益
- 1億4,300万円
- 対象の純資産
- 46億円
決算期:2024年12月期(簡便合算)/譲渡前の株主:非開示/法務・財務の調査結果を勘案し当事者間の協議で決定。資金は自己資金と金融機関借入。負ののれんが発生し特別利益に計上する見込みと開示/単体と子会社を簡便的に合算した2024年12月期の数値。単体は売上28億500万円・営業損失2,300万円・純資産16億2,100万円
買収理由:自動車用ブレーキ・EV部品向けの金属ばね製造技術を次世代に引き継ぐ
合算で売上48億5,500万円・営業利益1億4,300万円・純資産46億円に対し、取得価額は23億7,900万円。合算純資産のほぼ半分です。単体では営業損失2,300万円で、利益の多くは中国子会社が出していました。純資産が厚くても利益が薄ければ、純資産を大きく下回る値段になることを示す例で、買い手は負ののれん(安く買えた分の利益)が出る見込みと開示しています。
株式会社アルファーシステム
電源機器の設計・製造・販売/長野県飯田市/1985年10月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 4億7,800万円
- 対象の営業利益
- 8,200万円
- 対象の純資産
- 17億9,300万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:非開示/当事者間の守秘義務契約により非開示。取得後に負ののれん発生益3億円を計上したと開示されており、取得価額が受け入れた純資産の時価を下回ったことが読める
買収理由:電源機器の設計・製造技術を次世代に引き継ぐ
売上4億7,800万円・営業利益8,200万円に対し、純資産は17億9,300万円と売上の3.7倍ありました。総資産18億2,700万円のほとんどが純資産という無借金の会社です。それでも買い手は負ののれん3億円を計上しており、純資産より安い値段で売られています。内部にお金を貯め込んだ会社は、その分がそのまま値段に上乗せされるとは限らないことが分かる案件です。
株式会社神田鉄工所
各種産業機器・機械の切削加工/兵庫県淡路市/1962年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 3億4,100万円
- 対象の営業利益
- 900万円
- 対象の純資産
- 9億600万円
決算期:2025年4月期/譲渡前の株主:非開示/当事者間の守秘義務契約により非開示
買収理由:切削加工技術を次世代に引き継ぐ
この会社の開示案件で最小です。売上3億4,100万円・営業利益900万円・純資産9億600万円。売上は6億1,800万円→4億8,800万円→3億4,100万円、営業利益は1億5,100万円→9,700万円→900万円と、3期続けて大きく落ち込んでいる最中の譲渡でした。淡路島の切削加工の会社でも、技術があれば上場企業の買い手がつきます。
株式会社サンテック産業
金属の焼鈍(熱処理)、ショットブラスト、表面潤滑処理/愛知県名古屋市/1990年10月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 7億1,500万円
- 対象の営業利益
- 4,700万円
- 対象の純資産
- 8億3,300万円
決算期:2024年9月期(簡便連結)/譲渡前の株主:非開示/当事者間の守秘義務契約により非開示/サンテック産業と子会社サンリツの決算期を同一とみなして簡便的に連結した数値
買収理由:熱処理・ショットブラスト・表面潤滑処理の技術を次世代に引き継ぐ
売上7億1,500万円・営業利益4,700万円・純資産8億3,300万円。営業利益は1億3,800万円→5,400万円→4,700万円と下がっていました。熱処理やボンデ処理のような加工工程の一部だけを請け負う会社でも、「ものづくりを下支えする技術」として買い手がつきます。
株式会社ミヤサカ工業
センターレス研削・平面研削加工、自社開発製品「コッくん」シリーズの販売/長野県茅野市/1990年1月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 5億7,700万円
- 対象の営業利益
- 9,700万円
- 対象の純資産
- 6億800万円
決算期:2024年6月期/譲渡前の株主:非開示/当事者間の守秘義務契約により非開示
買収理由:センターレス研削技術と自社開発製品の事業を次世代に引き継ぐ
売上5億7,700万円・営業利益9,700万円(利益率17%)・純資産6億800万円。売上は4億8,600万円→5億3,900万円→5億7,700万円と伸びていました。下請けの研削加工に加えて自社製品を持っていたことが、取得理由に名指しで挙げられています。自社製品を持つ下請け工場は、加工技術と製品の両方で評価されます。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された2件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 堀越精機株式会社26億1,200万円(売上の2.21倍・営業利益の6.1倍)
- 株式会社多賀製作所23億7,900万円(売上の0.49倍・営業利益の16.6倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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