株式会社サイネックスのM&A実績
「地方創生のプラットフォーム」を掲げ、自治体・地域事業者向けのサービスを増やすために買っている会社です。2020年以降は売上1億〜3億円規模の会社を、創業者や個人株主から100%買う案件が続いています。業種はシステム開発、デジタル制作、歯科材料卸とばらばらで、同業を束ねるロールアップではなく、本業の顧客(自治体・中小事業者)に売れるサービスを持つ会社を足していく買い方です。
株式会社サイネックスが公表した適時開示6件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 大阪府大阪市天王寺区
- 設立
- 1966年2月
- 事業内容
- 官民協働の行政情報誌『わが街事典』や電話帳『テレパル50』の発行を軸に、DXサポート、郵便発送代行などのロジスティクス、歯科材料卸のヘルスケアまで手がける地方創生支援の会社
- 売上高
- 170億8,900万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 1億6,700万円
- 純資産
- 80億5,700万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 地域情報誌・情報ポータルサイト/郵便物等の発送代行/システム開発(FileMaker、金融機関向けサーバー)/デジタルコンテンツの企画・制作/歯科医療機械器具・歯科材料の卸
- 対象の規模
- 対象の売上 1.35億円〜13.1億円(業績非開示の2件を除く)
- 手法
- 株式譲渡(100%子会社化)が中心。上場会社の子会社から、会社分割で切り出した事業会社の株式を買った例もある
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残すのが基本です。2026年3月期の決算短信でも、ベックがシステム開発支援、ナインがデジタルコンテンツ制作を担うと社名入りで書かれています。
- 取得価額が出ているのは2015年・2016年の2件だけです。エルネットの事業が2億7,000万円、サンマークが6億8,500万円。2020年以降の4件はすべて「相手方の意向」「相手先との協議」で非開示です
- 非開示の案件でも、ナインでは「第三者による株式価値評価を実施し、この結果を参考に公正な価額で取得」と算定方法が書かれています
- 業績を開示していない案件が2件あります(ベック、マルヤマ歯科商店)。小さな会社を買うときは、対象の数字を出さずに開示を済ませることがあります
- 売り手は個人が中心ですが、2015年のエルネットは東証二部上場のウイルコホールディングスの子会社でした
買収の履歴6件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社ジュッポーワークス
ローコードツール「Claris FileMaker」を使った業務システムの開発・保守運用、トレーニング(Claris プラチナパートナー)/大阪府大阪市北区/1994年9月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 3億2,000万円
- 対象の営業利益
- 2,700万円
- 対象の純資産
- 1億800万円
決算期:2025年6月期/譲渡前の株主:個人1名(林 嘉久)が100%保有。代表取締役は別の人(寺戸 美香子)/相手方の意向で非開示。業績予想への影響は軽微と開示
買収理由:DXサポート事業で、中小事業者や自治体に業務改善システムを提供できるようにする
売上3億2,000万円・営業利益2,700万円・純資産1億800万円。売上は2億9,200万円→2億7,900万円→3億2,000万円、営業利益は900万円→1,100万円→2,700万円と、直近期に利益が大きく伸びたところでの譲渡です。株を100%持つオーナーと代表取締役が別の人で、経営を任せたオーナーが株を手放す形でした。設立30年超、資本金2,400万円の会社でも、メーカー認定のパートナー資格という代わりのききにくい強みが評価されています。
株式会社ナイン
デジタルコンテンツの企画・開発・制作/東京都品川区/2013年12月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1億3,500万円
- 対象の営業利益
- 400万円
- 対象の純資産
- 2,000万円
決算期:2022年9月期/譲渡前の株主:個人1名(渋谷 太郎)が100%保有/株主個人の意向により非公表。第三者による株式価値評価を参考に取得
買収理由:デジタルクリエイティブ人材と映像・システム系のディレクション人材の獲得
この会社の案件でいちばん小さい会社です。売上1億3,500万円、営業利益は0→0→400万円、純資産2,000万円。利益はほぼ出ていませんでしたが、売上は9,900万円→1億3,200万円→1億3,500万円と伸びていました。買い手が欲しかったのは利益ではなくクリエイターとディレクターという人材です。利益が薄くても、人が育っている会社には買い手がつきます。
2026年3月期の決算短信に、DXサポート事業で「株式会社ナインによるデジタルコンテンツの企画・開発・制作」を展開していると社名入りで書かれています。
有限会社マルヤマ歯科商店
歯科医療機械器具・歯科材料の卸、歯科医院の新規開業支援、メンテナンス/兵庫県三木市/2004年1月(創業1977年3月)設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:丸山 公治50.0%、個人1名(氏名非公表)50.0%/相手先との協議により非公開
買収理由:ヘルスケア事業の中核企業として迎え、健康寿命の延伸による地方創生につなげる
創業1977年、資本金300万円の有限会社。業績は開示されていません。本業(情報誌・広告)とまったく別の歯科材料卸で、買い手は「ヘルスケア事業の中核企業」と位置づけました。2026年3月期の決算短信にも、歯科材料の販売を行う「ヘルスケア事業」がセグメントとして載っています。買い手の本業と離れた業種でも、買い手が新しい柱にしたい分野なら買われます。株主が2名で半分ずつという形でも、2名から同時に買い取って100%取得しています。
2026年3月期の決算短信に「ヘルスケア事業(歯科医師向けの歯科医療機械器具・歯科材料の販売等)」は残っていますが、社名の記載はなく、法人として残っているかは確認できていません。
株式会社ベック
金融機関・通信キャリア向けサーバー(HP NonStopサーバー等)の開発・保守、オープン系システム開発/大阪府大阪市中央区/1997年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:西本 瑞紀94.0%、個人1名(氏名非公表)6.0%/相手先との協議により非公開
買収理由:ICTサービスシステムの内製化と、システム開発事業への進出
資本金3,000万円。業績は開示されていません。無停止型サーバーというニッチな分野で知名度のある会社で、買い手はICTサービスのシステムを内製化して価格競争力を上げる狙いでした。買い手の外注先・仕入先になり得る会社は、内製化の手段として買われます。取得後もグループのシステム開発支援を担っています。
2026年3月期の決算短信に、DXサポート事業で「株式会社ベックによるシステム開発支援」を展開していると社名入りで書かれています。
株式会社サンマーク
月刊の無料地域情報誌『Nasse』(福岡市・北九州市・熊本市)の発行、情報ポータルサイトの運営/福岡県福岡市中央区/1987年1月設立
- 取得価額
- 6億8,500万円
- 対象の売上
- 13億1,400万円
- 対象の営業利益
- 8,900万円
- 対象の純資産
- 4億9,200万円
決算期:2015年9月期/譲渡前の株主:阿多 浩一10.0%、株式会社ウイズ10.0%、株式会社ソレイユ出版10.0%、個人6名70.0%。譲渡実行日までに阿多氏が全株を集め、阿多氏1名から取得/アドバイザリー費用等(概算)15百万円を加えた合計は700百万円(概算)。取得資金は自己資金と銀行借入。営業利益の約7.7倍、純資産の約1.4倍/開示の売上高は消費税等を含む
買収理由:地域情報誌の事業を取り込み、九州での営業網と全国の営業網をつなぐ
6億8,500万円で、金額が開示されたこの会社最大の案件です。売上13億1,400万円・営業利益8,900万円・純資産4億9,200万円。売上は14億1,200万円→13億5,900万円→13億1,400万円と縮み、営業利益も1億5,900万円→7,600万円→8,900万円と落ちた局面での譲渡でした。それでも営業利益の約7.7倍、純資産の約1.4倍がついています。株主が9者に分かれていましたが、社長が先に他の株主の株を買い集め、1人の売り手としてまとめてから譲渡しています。
2016年10月3日に株式取得の予定と開示。その後の商号変更・合併・再譲渡の有無は、手元の開示では確認できていません。
株式会社エルネットの郵便物等発送代行事業(新設分割会社)
郵便物等の発送代行/大阪府大阪市西区(分割会社の所在地)/2015年10月(新設分割で設立。分割会社は2014年6月設立)設立
- 取得価額
- 2億7,000万円
- 対象の売上
- 8億9,200万円
- 対象の営業利益
- 2,200万円
- 対象の純資産
- 1,200万円
決算期:2014年10月期(5か月間)/譲渡前の株主:株式会社ウイルコホールディングス(東証二部上場)の100%子会社エルネット/アドバイザリー費用等(概算)10百万円を加えた合計は280百万円(概算)。取得資金は自己資金/エルネットの2014年6月〜10月の5か月間の社内集計(対象事業のみ)。通期の数字ではない
買収理由:事業領域の拡大と、全国の営業網を使った新規顧客の開拓。自治体・地域事業者のDM発送コスト削減
対象事業の売上8億9,200万円・営業利益2,200万円は5か月間だけの数字です。新設会社が引き継いだ資産は1,588万円、負債は371万円で、差し引き約1,200万円。手元の資産はわずかでも、事業そのものに2億7,000万円がついています。売り手は上場会社グループで、無料情報誌の発行は手元に残し、発送代行事業だけを切り出して売っています。事業の一部だけを売る実例です。
2026年3月期の決算短信に「ロジスティクス事業(郵便発送代行事業ほか)」は残っていますが、新設会社の社名は開示されておらず、法人として残っているかは確認できていません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された2件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社サンマーク6億8,500万円(売上の0.52倍・営業利益の7.7倍)
- 株式会社エルネットの郵便物等発送代行事業(新設分割会社)2億7,000万円(売上の0.30倍・営業利益の12.3倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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