株式会社コプロ・ホールディングスのM&A実績
技術者派遣の会社を、会社ごと・事業ごとの両方で買っている会社です。売り手は個人オーナー1名の会社が2件、上場企業の子会社、事業の一部だけを手放した会社、投資ファンドと幅があります。規模は売上9,200万円のSES事業から、売上180億円の建設派遣会社まで。2026年には「建設技術者派遣業界の再編の主導的立場」を目指すと開示しており、同業の建設派遣を買い足す方針をはっきり打ち出しています。
株式会社コプロ・ホールディングスが公表した適時開示5件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 愛知県名古屋市
- 設立
- ―
- 事業内容
- 建設業界・プラント業界向けの施工管理技術者の派遣・紹介を中核に、機電・半導体技術者の派遣も手がける人材派遣グループの持株会社
- 売上高
- 366億6,100万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 36億3,200万円
- 純資産
- 99億2,500万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 建設・プラント技術者の派遣・紹介/機械設計技術者の派遣/ITエンジニアのSES・フリーランス紹介
- 対象の規模
- 対象の売上 0.92億円〜180.7億円
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)、吸収分割による事業承継、事業譲受(営業権だけを引き取る形)を使い分ける
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 買った会社は子会社として残し、事業だけを買った案件は既存の子会社に入れています。一方で、本業に合わないと判断した事業は手放しており、2026年にはIT技術者のSES事業を同業の上場企業ジャパニアスへ7億3,000万円で売却しています。
- 個人オーナーからの買収は、取得価額を毎回非公表にしています。理由は「株主が個人であり、守秘義務契約を締結している」ため。株主の氏名・住所も出していません
- 金額が出たのは投資ファンドから買った1件だけです。トライトの292億4,300万円で、全額を三井住友銀行からの借入(8か月)で用意する計画でした
- 事業の一部だけでも買っています。ヒューコス(高砂熱学工業の子会社)の派遣・紹介事業、ピー・アイ・シーのSES事業は、会社ではなく事業だけを引き取る形でした
- 買った事業を後で手放すこともあります。2026年、「未経験者の育成・派遣分野を得意とする当社グループの方向性との違い」を理由に、IT技術者のSES事業を他社へ売却しています
買収の履歴5件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社トライト(建設派遣事業。子会社トライトエンジニアリングを含む)
建設業界向けの人材派遣・人材紹介(求人サイト「施工管理ジョブ」の運営)/大阪府大阪市/2019年2月(トライトエンジニアリングは2004年11月)設立
- 取得価額
- 292億4,300万円
- 対象の売上
- 180億7,200万円
- 対象の営業利益
- 18億1,400万円
- 対象の純資産
- 20億6,100万円
決算期:2024年12月期(トライトエンジニアリング単体)/譲渡前の株主:投資ファンドのカーライルが組成した特別目的会社(株式会社トライトキャリア)が100%保有/アドバイザリー費用等(概算)174百万円を加えた合計は29,417百万円。対価は建設以外の事業を切り離した後の、建設派遣事業の財務数値をもとに算定。資金は三井住友銀行からの借入29,243百万円(期間8か月、無担保・無保証)/建設派遣事業を担う子会社トライトエンジニアリング単体の数値。トライトの連結(医療福祉事業を含む)は売上収益57,116百万円・営業利益5,186百万円
買収理由:建設技術者派遣で「圧倒的業界No.1」を目指し、業界経験者の採用力と全国の拠点・顧客網を取り込む
この会社の案件で唯一、金額が開示されたものです。292億4,300万円。トライトエンジニアリングの売上は131億5,100万円→162億8,800万円→180億7,200万円、営業利益は8億400万円→13億3,500万円→18億1,400万円と伸び続けていました。単純計算では営業利益の約16倍、純資産の約14倍です(ただし親会社への経営指導料などを払った後の数字で、対価は単独運営を仮定した数値で算定されています)。売り手はファンドで、欲しい建設派遣事業だけが残るよう、医療福祉事業を先に切り離してから渡しています。同業で規模を追う買い手には、伸びている会社がこの水準で評価されることがある、という参考になります。
2026年3月1日に全株式を取得し、同日付で社名を「株式会社TEホールディングス」に変えています。建設派遣を担う子会社の株式会社トライトエンジニアリングは社名のまま連結子会社になり、TEホールディングスは中間持株会社という位置づけです。
出典:建設派遣事業譲受けを目的とした株式会社トライトの株式取得(完全子会社化)、特定子会社の異動及び資金の借入に関するお知らせ
株式会社ピー・アイ・シーのSES事業
派遣及び準委任契約を伴うSES(システム・エンジニアリング・サービス)/東京都中央区/分割元は2001年3月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 9,200万円
- 対象の営業利益
- 1,500万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2023年4月期(対象事業)/譲渡前の株主:相手先の意向により非公開/相手先の意向により非公開。手元現預金で支払い
買収理由:中期経営計画に織り込んでいない、非連続な成長のためのM&A
売上9,200万円・営業利益1,500万円(利益率16%)の小さな事業です。資産も負債も一切引き継がず、「従業員とお客様」だけを買う形でした。会社は売らずに手元に残し、人と取引先だけを渡す。借入や不要な資産を抱えたままでも、事業を引き継いでもらえるやり方です。
譲受先のコプロテクノロジーは、2026年1月にIT技術者の派遣・準委任のSES事業をジャパニアスへ吸収分割で7億3,000万円で譲渡すると開示しました(効力発生は2026年3月27日予定)。この事業にピー・アイ・シーから引き継いだSES事業が含まれるとみられますが、開示に個別の記載はなく、推定です。2026年3月期決算短信には「連結子会社におけるIT技術者派遣サービスの事業譲渡」による事業譲渡益238百万円が計上されており、譲渡は実行されています。
ヒューコス株式会社の労働者派遣・有料職業紹介事業
労働者派遣、有料職業紹介/東京都千代田区/分割会社は1972年3月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 13億9,800万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2021年3月期(対象事業)/譲渡前の株主:高砂熱学工業株式会社(上場企業)が100%保有/非開示。手許現金で充当
買収理由:高いスキルや資格を持つ技術者を多数受け入れ、建設業界の顧客ニーズにより細かく、早く応える
対象事業の売上13億9,800万円。売り手は空調設備大手・高砂熱学工業の100%子会社で、会社ではなく派遣・紹介の事業だけを渡しています。ヒューコスにはアウトソーシングや保険代理の事業もあり、それらは手元に残した形です。技術者を抱えた派遣事業は、それだけで買い手が付くことを示す例です。
2022年4月1日の効力発生で、事業は子会社コプロ・エンジニアードに入りました。その後の扱いを示す開示は手元で確認できていません。
バリューアークコンサルティング株式会社
SES、フリーランスITエンジニア向け案件サイト「ハッピーエンジニア」の運営/東京都品川区/2004年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 7億5,400万円
- 対象の営業利益
- 5,700万円
- 対象の純資産
- 1億8,600万円
決算期:2021年5月期/譲渡前の株主:個人1名が100%保有(氏名は非公表)/株主が個人で守秘義務契約を結んでいるため非公表。「適切なデューデリジェンスを実施の上、公正な方法で算出した合理的な金額」
買収理由:SESをグループの事業に加え、営業力・採用力でフリーランスITエンジニアの登録数を増やす
売上7億5,400万円・営業利益5,700万円・純資産1億8,600万円。売上は8億8,100万円から7億5,400万円に落ちた年でしたが、営業利益は3,600万円から5,700万円に増えていました。約60社に約90名のフリーランスエンジニアを送り込む仕組みそのものが評価された案件です。売上が減った年でも、利益と純資産を積み上げていれば売れます。
2021年9月30日に株式譲渡を実行する予定と開示されています。その後の状況を示す開示は手元で確認できていません。2026年1月のSES事業売却の開示にも社名は出てきません。
株式会社アトモス
機械設計技術者の派遣、工業用製品の開発設計の請負/愛知県名古屋市/2006年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 8億2,700万円
- 対象の営業利益
- 200万円
- 対象の純資産
- 1億8,600万円
決算期:2020年2月期/譲渡前の株主:個人1名が100%保有(氏名は非公表)/株主が個人で守秘義務契約を結んでいるため非公表。「適切なデューデリジェンスを実施の上、公正な方法で算出した合理的な金額」
買収理由:エンジニア派遣領域へ事業を広げ、グループの営業力・採用力で既存顧客の深耕と新規開拓を進める
売上8億2,700万円・純資産1億8,600万円。営業利益は1,100万円→900万円→200万円と、ほぼゼロまで細っている局面での譲渡でした。それでも大手製造業の設計部門に約100名を派遣し、海外人材の採用実績もあった点が評価されています。利益が薄くなっていても、人材と顧客の基盤があれば買い手は付きます。
後の開示に出てくる子会社「株式会社コプロテクノロジー」が、設立日(2006年6月6日)・資本金(35百万円)・所在地(名古屋市中村区名駅南1-24-20)ともアトモスと一致しており、アトモスが社名を変えたものと推定しています(社名変更そのものの開示は手元にありません)。コプロテクノロジーの売上は2025年3月期に33億1,200万円で、他の事業の取り込み分を含みます。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された1件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社トライト(建設派遣事業。子会社トライトエンジニアリングを含む)292億4,300万円(売上の1.62倍・営業利益の16.1倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社コプロ・ホールディングスが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月12日