フィードフォースグループ株式会社のM&A実績
ネット広告とEC支援(とくにShopify)の周辺で、創業者が株の大半を持つ小さなIT・Web会社を買っている会社です。買い方に型があり、まず50.1%〜84.8%を現金で買い、残りは1〜3年後に株式交換で自社の株と交換して100%にします。2019年の上場直後から2026年まで、国内の非上場会社を4社この形で取り込みました。
フィードフォースグループ株式会社が公表した適時開示4件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都港区
- 設立
- 2006年3月
- 事業内容
- データフィード広告・ネット広告の運用代行、ソーシャルログインなどのSaaS、Shopifyを中心としたEC支援を、子会社ごとに手がける持株会社
- 売上高
- 49億1,200万円(2026年5月期(連結))
- 営業利益
- 19億8,100万円
- 純資産
- 37億8,400万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- インターネット広告の運用代行(リスティング広告)/EC事業者向けのクラウドサービス(出荷業務の自動化、顧客分析ツール)/Shopifyを使ったECサイト構築・ブランディング支援
- 対象の規模
- 対象の売上 0.2億円〜45.2億円(45.2億円は広告費込みの総額。手数料だけの純額では8.4億円)
- 手法
- 株式譲渡で過半数を取得して子会社化し、残りの株式は後日、株式交換(自社株を渡す)または追加の株式譲渡で取得して完全子会社化する二段階方式。第三者割当増資の引受を組み合わせた例もある
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残すのが基本です。そのうえでグループ内の事業を移し替えることがあり、アナグラムには親会社側の広告運用事業を吸収分割で移しています(2022年6月)。シッピーノは子会社化の半年後に、新サービス「TēPs」の事業を新設分割で別会社(テープス株式会社)に切り出しました。
- 取得価額は4件すべてで開示されています。算定方法も毎回「DCF法」「類似会社比較法」などと明記されます
- ただし金額は最初に買った持分(50.1%〜84.8%)の分だけです。会社全体の値段を見るには持分で割り戻す必要があります(アナグラムは約25億円、フラクタは約12億円に相当)
- 2回目の値段は1回目と同じとは限りません。シッピーノでは残り49.41%を1,300万円で買っており、1株あたりでは1回目の約3.6%でした。フラクタでも2回目の算定(DCF法)は1株あたり1回目の4〜7割の水準でした
- 残りを株式交換で取得するため、創業者は売却後に買い手の株主になります。アナグラム創業者の阿部圭司氏は、2022年11月時点で親会社の8.25%を持つ第3位の株主になっていました
買収の履歴4件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社ECPower
Shopify特化の顧客分析ツール「ECPower」の開発・提供、EC構築・グロース支援/東京都港区/2020年7月設立
- 取得価額
- 1億700万円
- 対象の売上
- 2,200万円
- 対象の営業利益
- △200万円
- 対象の純資産
- 2,400万円
決算期:2025年6月期/譲渡前の株主:増田大夢75.95%ほか個人5名/84.8%分の株式取得価額。アドバイザリー費用等は0百万円。DCF法で算定。100%に割り戻すと約126百万円。残り15.2%の株式交換分は交付株式数のみの開示で、金額は出ていない
買収理由:Shopify領域の開発力と専門知見をグループに取り込み、DX事業の成長を加速する
売上2,200万円・営業損失200万円・純資産2,400万円。従業員はおらず、代表取締役1名と外部委託だけで運営されていた設立6年目の会社です。それでも84.8%に1億700万円がつき、純資産の4倍超の水準でした。売上が小さく赤字でも、買い手の事業にそのまま組み込めるプロダクトがあれば値段がつく例です。買収前から子会社リワイアがShopifyサイト構築の一部業務を委託しており、取引先が買い手になった形でもあります。
2026年5月1日に株式交換が完了し完全子会社になりました。2026年5月期決算短信でも新規の連結子会社として社名が挙がっています。
株式会社フラクタ
ブランド戦略設計、ECサイト構築支援・クリエイティブ制作、Shopifyコンサルティング(Shopify Plus Partner)/東京都渋谷区/2013年11月設立
- 取得価額
- 6億1,500万円
- 対象の売上
- 4億8,600万円
- 対象の営業利益
- 700万円
- 対象の純資産
- 1億900万円
決算期:2021年5月期/譲渡前の株主:河野貴伸62.5%、株式会社ハリズリー28.1%、株式会社マクアケ9.4%/51.25%(82株)分の株式譲渡価額。アドバイザリー等費用4百万円を加えた合計は619百万円。DCF法で算定。100%に割り戻すと約1,200百万円。2023年の株式交換時のDCF算定は1株322万〜495万円で、1回目(1株約750万円)を下回る
買収理由:Shopifyでのブランディング・構築の実績を取り込み、EC事業者向けDX支援をワンストップで提供する
売上4億8,600万円・営業利益700万円・純資産1億900万円。営業利益700万円の会社の51.25%に6億1,500万円がついています。利益ではなく、Shopifyの上位パートナー認定と構築実績が評価された形です。3社の株主がそれぞれ一部ずつ売り、創業社長は33.75%を持って残りました。残りは1年半後に株式交換で親会社株に替えましたが、そのときの算定は1株あたり1回目の4〜7割でした(直前期は最終赤字900万円)。2回に分けて売るときは、2回目の値段が1回目より下がることがある例です。
2023年6月30日に株式交換で完全子会社化が完了しています。ただし2026年5月期決算短信のセグメント別のサービス・会社一覧にはフラクタの名前がなく、その後の合併・売却・商号変更の開示も手元で確認できないため、現状は追えていません。
シッピーノ株式会社
EC事業者向け出荷業務自動化クラウド「シッピーノ」、ECノーコードツール「TēPs」/神奈川県茅ヶ崎市/2010年12月設立
- 取得価額
- 3億7,300万円
- 対象の売上
- 2億1,900万円
- 対象の営業利益
- 400万円
- 対象の純資産
- 9,700万円
決算期:2020年9月期/譲渡前の株主:田渕健悟61.4%、Hamee株式会社36.7%、株式会社ICK1.9%/50.59%分の取得価額。内訳は既存株主からの株式譲渡価額321百万円と、会社に払い込む新株引受価額52百万円。アドバイザリー等費用4百万円を加えた合計は377百万円。DCF法・類似会社比較法で算定。残り49.41%(84株)は2022年12月に13百万円で取得
買収理由:EC事業者のバックヤード業務を自動化するサービスを取り込み、DX事業の顧客にワンストップで提供する
売上2億1,900万円・営業利益400万円・純資産9,700万円。1回目は50.59%に3億7,300万円(うち5,200万円は増資で会社に入るお金)でした。ところがその後、営業損失5,700万円→8,000万円と赤字が続き、2022年9月期には純資産マイナス6,700万円の債務超過に。残り49.41%は1年2か月後にわずか1,300万円で買い取られ、1株あたりでは1回目の約3.6%でした。一部を残して売る場合、残した株の値段はその後の業績しだいで大きく変わる、という実例です。なお子会社化の半年後、新サービスTēPsの事業は新設分割で別会社に切り出され、その株式は既存株主に配られています。
2022年12月に完全子会社化。2026年5月期決算短信のセグメント区分に「Shippino」シッピーノ㈱としてDX事業の会社に挙がっています。代表者は創業者から交代済みです(2022年12月時点で親会社グループの従業員が代表を兼任)。
アナグラム株式会社
インターネット広告(リスティング広告)の運用代行、マーケティング支援/東京都渋谷区/2010年4月設立
- 取得価額
- 12億5,200万円
- 対象の売上
- 45億2,400万円
- 対象の営業利益
- 2億8,500万円
- 対象の純資産
- 6億2,800万円
決算期:2019年3月期/譲渡前の株主:阿部圭司95%、岡田吉弘5%(売り手は阿部圭司氏のみ)/50.1%(501株)分の株式購入代価。アドバイザリー費用7百万円を加えた合計は1,259百万円。DCF法・類似会社比較法で算定。100%に割り戻すと約2,500百万円。買収資金にはみずほ銀行からの借入1,850百万円を充て、アナグラム株式を担保に入れている/媒体への広告費を含めた総額。買い手と同じ純額(運用手数料のみ)に直すと836百万円
買収理由:データフィード広告とリスティング広告を合わせ、広告運用代行をワンストップで提供する
営業利益2億8,500万円・純資産6億2,800万円、営業利益は9,300万円→2億800万円→2億8,500万円と伸びていました。話はアナグラム側から「経営統合」を打診して始まっています。50.1%に12億5,200万円で、100%換算では営業利益の約9倍です。残り49.9%は8か月後に株式交換で親会社株に替わり、創業社長は買い手の第3位株主(2022年11月時点で8.25%)になりました。現金と上場株の両方で受け取り、買い手の成長の分け前も得る形です。アナグラムはその後グループの広告運用事業の中核となり、親会社側の事業を引き受ける側に回っています。
2020年9月に株式交換で完全子会社化。2022年6月には親会社側のFeedmatic事業を吸収分割で引き受けました。2026年5月期決算短信でもプロフェッショナルサービス事業の会社として社名が挙がっています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された4件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社ECPower1億700万円(売上の4.86倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社フラクタ6億1,500万円(売上の1.27倍・営業利益の87.9倍)
- シッピーノ株式会社3億7,300万円(売上の1.70倍・営業利益の93.3倍)
- アナグラム株式会社12億5,200万円(売上の0.28倍・営業利益の4.4倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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