株式会社ジーニーのM&A実績
自社のマーケティングSaaSに足りない機能を、小さなソフトウェア会社や1つの事業ごと買い足していく会社です。対象は社員数名〜20名台のSaaS・ネット広告の会社が中心で、売上900万円の事業から6億7,000万円の会社まで幅があります。2024年に上場子会社ソーシャルワイヤーを傘下に入れてからは、同社が買い手になってインフルエンサー・SNS広告の会社を続けて買っています。
株式会社ジーニーが公表した適時開示10件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都新宿区
- 設立
- 2010年4月
- 事業内容
- 広告収益化プラットフォーム「GENIEE SSP」などの広告プラットフォーム事業、SFA/CRMやチャット接客ツールのマーケティングSaaS事業、子会社ソーシャルワイヤーを通じたデジタルPR事業を展開するマーケティングテクノロジー企業
- 売上高
- 133億7,600万円(2026年3月期(連結・IFRS、2026年6月1日の訂正後))
- 営業利益
- 15億3,500万円
- 純資産
- 108億3,700万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- マーケティングSaaS(SFA/CRM、チャットボット、サイト内検索、広告効果測定、LP高速化)/ネット広告(DSP)/AI・画像処理技術/インフルエンサーマーケティング・SNS広告運用(子会社ソーシャルワイヤー経由)
- 対象の規模
- 対象の売上 0.09億円(事業単位)〜6.7億円
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。売り手が事業を新会社に切り出してからその株式を買う形、吸収分割で事業だけを本体に移す形、事業譲受も使う。2025年以降は子会社ソーシャルワイヤーが買い手になる「孫会社化」
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は数年でジーニー本体に吸収合併するのが基本です。REACT(約1年8か月後)、Hypersonic(約1年2か月後)、ビジネスサーチテクノロジ(約3年4か月後)、CATS(約4年7か月後)がいずれも本体に合併され、会社としては残っていません。サービス名も「ちきゅう」が「GENIEE SFA/CRM」になるなど、ジーニーのブランドに揃えられています。一方、ソーシャルワイヤーが買ったiHackとSEIRYOは、2026年10月時点で同社の連結子会社として残っています。
- 取得価額が開示された案件が10件中5件あります。最大はビジネスサーチテクノロジの11億円、最小はKANADE DSP事業の1円です
- 非開示の案件でも「適時開示基準に該当しない軽微基準範囲内(純資産の15%未満)」と毎回書かれており、金額の上限は読めます
- 赤字の会社や事業も買っています。ちきゅうは分割会社が債務超過(純資産マイナス2,900万円)、iHackは前期に営業赤字、KANADE DSPは売上5億円の事業が1円で譲渡されました
- 売り手が先に事業を新会社へ切り出し、その株式を売る形が2件あります(CATS、Hypersonic)。会社全体ではなく1つのサービスだけを売る方法として参考になります
- 上場企業ソーシャルワイヤー(2024年に第三者割当増資の引受で子会社化)、米国Zelto、インドの会社の取得は、読者の参考になりにくいためこの一覧に入れていません
買収の履歴10件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社SEIRYO
TikTokなどショート動画の広告運用支援、成果報酬型SNS広告/東京都千代田区/2020年6月設立
- 取得価額
- 3億4,500万円
- 対象の売上
- 6億7,000万円
- 対象の営業利益
- 2,700万円
- 対象の純資産
- 7,500万円
決算期:2026年3月期(監査なし・未確定数値を含む)/譲渡前の株主:株式会社ミカンが100%保有/取得関連費用(概算)31百万円を加えた合計は376百万円。独立した第三者機関の算定結果を踏まえ、相手先との協議で決定
買収理由:TikTok・ショート動画領域の広告運用と成果報酬型SNS広告の強化、顧客基盤の相互活用
従業員5名、資本金700万円。売上6億7,000万円・営業利益2,700万円・純資産7,500万円に対し、3億4,500万円がついています。純資産の約4.6倍、営業利益の約13倍です。ただし開示には「M&A後に不要となる経費、親会社等との共通費用」を足し戻した調整後営業利益7,800万円も併記されており、こちらで見ると約4.4倍です。親会社の経費を抱えた子会社を売るときは、その経費を外した利益で話をする、という進め方の実例です。最終損益は1,300万円の赤字でした。
株式会社iHack
美容・化粧品領域のインフルエンサーマーケティング支援、インフルエンサー事務所、美容クリエイターアカデミー/東京都千代田区/2019年9月設立
- 取得価額
- 7億6,600万円
- 対象の売上
- 2億9,200万円
- 対象の営業利益
- △2,700万円
- 対象の純資産
- 200万円
決算期:2024年8月期/譲渡前の株主:代表取締役82.5%、株式会社サイバー・バズ7.0%、執行役員5.0%ほか個人株主を含む計7名/取得関連費用(概算)42百万円を加えた合計は808百万円。将来の事業計画をもとに独立した第三者機関の算定結果を踏まえ、相手先との協議で決定/2024年8月期の実績。譲渡時点の2025年8月期見込は売上647百万円・営業利益124百万円・純資産110百万円
買収理由:インフルエンサーPR領域の拡大と、美容領域に強いブランドマーケティング支援の取り込み
直前の確定決算は営業赤字2,700万円、純資産213万円でしたが、7億6,600万円で売れています。売上は8,900万円→1億7,200万円→2億9,200万円と毎年倍近く伸び、譲渡した期の見込は売上6億4,700万円・営業利益1億2,400万円でした。見込の営業利益で見ると約6.2倍です。確定決算が赤字でも、足元の数字と事業計画で値段がつくことを示す例です。株主は社長が82.5%で、上場企業のサイバー・バズや役員を含む7名全員から買い取っています。
2025年9月3日に株式譲渡実行予定として開示され、ソーシャルワイヤーの会社概要に連結子会社として掲載されています。2026年5月のSEIRYO取得の開示でも子会社として言及されています。
HiCustomer株式会社の「Arch by HiCustomer」事業
デジタルセールスルーム(顧客専用ページ作成SaaS)/東京都品川区/譲渡会社は2017年12月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:譲渡会社の筆頭株主は代表者個人(47.5%)/先方の意向により非開示。「金額は僅少」と明記/先方の意向により非開示。「売上及び売上総利益の額は開示基準に該当しておらず僅少」
買収理由:自社のSFA/CRMと組み合わせ、代理店・顧客との情報共有を効率化する
売上がまだ小さいSaaSを、会社ごとではなく1つのプロダクトだけ切り出して譲った案件です。売り手の会社は生成AIの活用支援など別の事業も手がけていました。のれんは発生しない見込みと開示されており、金額は小さかったと読めます。育ちきらなかったプロダクトでも、自社製品と組み合わせたい会社には引き取り手があります。
法人ではなく事業を譲り受けた案件で、ジーニー本体の事業として引き継がれています。その後、この事業を再譲渡した開示は確認できていません。
Navier株式会社のAI関連事業
ディープラーニングを使った画像の高解像度化・鮮明化技術の研究開発・販売/東京都千代田区/譲渡会社は2018年2月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:非開示/相手先の意向により非開示。「譲受け価額は軽微」と明記。決済は現金/相手先の意向により非開示。「売上高・経常利益、資産・負債の項目及び金額は軽微」
買収理由:AI領域のコア人材の確保と、生成AI・LLMの研究開発の推進
売上も資産も「軽微」な事業で、買い手の目的ははっきり人材です。技術がシャープのスマートフォンに採用されていたこと、承継する従業員が自然言語処理や音声系の生成AIに詳しいことが理由に挙げられています。売上が立っていなくても、チームと技術の実績があれば事業譲渡の形で引き取られる例です。
事業を譲り受けたJAPAN AIは、2025年7月時点でジーニーの持分法適用関連会社となっており(連結子会社ではなくなっています)、ジーニーの会社概要のグループ会社一覧には引き続き掲載されています。事業そのものの再譲渡の開示は確認できていません。
デクワス株式会社のネット広告サービス事業「KANADE DSP」
ネット広告(DSP)/東京都港区/譲渡会社は2020年3月設立設立
- 取得価額
- 1円
- 対象の売上
- 5億100万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:直近期(対象事業)/譲渡前の株主:サイジニア株式会社(上場企業)が100%保有する子会社/譲渡価額1円。決済は銀行振込。のれんは発生しない見込み/対象事業の売上高。売上総利益は48百万円。営業利益・経常利益は算出していないと開示
買収理由:Webサイト利用者の興味・関心に合わせた広告のパーソナライズを可能にする
売上5億100万円の事業が、1円で譲渡されています。ただし売上総利益は4,800万円(粗利率約10%)で、営業利益は算出されていません。売上の大きさではなく、手元に残る利益が値段を決めることがはっきり出ている例です。売り手は上場企業サイジニアの子会社です。
法人ではなく事業を譲り受けた案件で、ジーニー本体の事業として引き継がれています。その後、この事業を再譲渡した開示は確認できていません。
Hypersonic株式会社
ランディングページ表示高速化のSaaS/埼玉県川口市/2022年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:新設会社のため確定した決算なし/譲渡前の株主:代表取締役70%、その他30%/取得相手先の要望により非開示。「適時開示基準に該当しない軽微基準範囲内(連結・単体純資産15%未満)」
買収理由:EC(D2C)顧客向けに、広告・チャット接客・効果計測と組み合わせてシームレスに提供する
ネット広告代理店が持っていたSaaSを、設立1か月の新会社に移してから売った案件です。広告代理の本業は手元に残し、プロダクトだけを渡す形でした。なお買収後の2023年3月期は売上1,391万円・営業損失1,703万円・純資産マイナス1,608万円で、ジーニーは5,500万円の貸付金を債権放棄して債務超過を解消したうえで合併しています(2023年6月27日開示の『連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』)。
2023年6月27日開示の『連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』で、2023年9月1日を効力発生日としてジーニー本体に吸収合併されると開示されました。ジーニーの会社概要のグループ会社一覧にも社名はありません。取得から約1年2か月での合併です。
CATS株式会社
広告効果測定ツール「CATS」、広告レポート集計ツール「ADRAS」などマーケティングDX支援ツール/東京都豊島区/2022年2月(分割会社の株式会社マルジュは1999年11月設立)設立
- 取得価額
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- 対象の売上
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- 対象の営業利益
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- 対象の純資産
- ―
決算期:新設会社のため確定した決算なし/譲渡前の株主:株式会社マルジュが100%保有(マルジュは個人株主が100%保有)/取得相手先の要望により非開示。「適時開示基準に該当しない軽微基準範囲内」
買収理由:広告効果計測と分析レポートを、広告配信・チャット接客と一体で提供する
創業20年超のソフトウェア会社が、400社超が使う広告計測ツールの事業だけを新会社に移して売った案件です。Web面接や電子契約など他のサービスは売り手の手元に残りました。買収から3年後の2025年3月期には、CATSは売上5億8,155万円・営業利益2億2,023万円・純資産2億8,486万円になっています(2026年6月2日開示の『連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』)。事業を切り出して売っても、その事業は買い手のもとで伸び続けることがある例です。
2026年6月2日開示の『連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』で、2026年10月1日を効力発生日としてジーニー本体に吸収合併すると開示されました(ジーニーの種類株主総会の承認が条件)。効力発生日は過ぎており、ジーニーの会社概要のグループ会社一覧にも社名はありません。完了の開示そのものは確認していません。
株式会社REACT
LINE/Facebookのチャットボット制作SaaS「Engagebot」/東京都渋谷区/2014年5月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:創業社長(加藤 僚浩)66.9%、ほか個人9名・VC2社で33.1%/取得相手先の要望により非開示。「適時開示基準に該当しない軽微基準範囲内」/取得相手先の要望により非開示。「いずれも適時開示基準に該当しない軽微基準範囲内」
買収理由:チャット接客ツール「Chamo」の機能拡張
VCから出資を受けていたスタートアップを、創業社長・個人9名・VC2社の全員から買い取っています。業績は非開示でしたが、買収後の2022年3月期は売上4,287万円・営業損失3,386万円・純資産マイナス3,670万円の債務超過で、翌期に債務超過を解消してから合併されています(2023年1月26日開示の『連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』)。小規模で赤字のSaaSでも、自社製品に組み込みたい買い手には売れる例です。
2023年1月26日開示の『連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』で、2023年4月1日を効力発生日としてジーニー本体に吸収合併されると開示されました。ジーニーの会社概要のグループ会社一覧にも社名はありません。取得から約1年8か月での合併です。
ビジネスサーチテクノロジ株式会社
検索エンジン「WiSE」、サイト内検索SaaS「probo」の開発・提供/東京都渋谷区/2004年2月設立
- 取得価額
- 11億円
- 対象の売上
- 4億5,000万円
- 対象の営業利益
- 1億1,800万円
- 対象の純資産
- 2億5,700万円
決算期:2020年3月期/譲渡前の株主:SBI FinTech Solutions株式会社が100%保有(同社の親会社はSBIホールディングス)/アドバイザリー費用等(概算)13百万円を加えた合計は1,113百万円(2020年11月6日の訂正後。訂正前は費用28百万円・合計1,128百万円)
買収理由:広告プラットフォームの顧客であるメディアへの価値提供と、チャット接客ツール・CRMとの連携
売上4億5,000万円・営業利益1億1,800万円(利益率26%)・純資産2億5,700万円。11億円は営業利益の約9.3倍、純資産の約4.3倍です。売上は3億8,500万円→4億1,300万円→4億5,000万円、営業利益も9,000万円→1億200万円→1億1,800万円と3期続けて伸びていました。800社以上に導入された黒字のSaaSで、伸び続けている会社にはこの水準の値段がつくことを示しています。売り手は大手金融グループの子会社でした。
2023年12月27日開示の『連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』で、2024年4月1日を効力発生日としてジーニー本体に吸収合併されると開示されました。ジーニーの会社概要のグループ会社一覧にも社名はありません。取得から約3年4か月での合併で、サービスは「GENIEE SEARCH」として提供されています。
ちきゅう株式会社のCRM/SFA「ちきゅう」事業
中小企業向けクラウド型顧客管理(CRM)・営業管理(SFA)システム/東京都港区/分割会社は2014年1月設立設立
- 取得価額
- 2億3,800万円
- 対象の売上
- 900万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2017年12月期(対象事業)/譲渡前の株主:分割会社の株主は代表者個人70.30%、グローバル・ブレイン5号投資事業有限責任組合13.90%ほか/分割対価として金銭238百万円を交付。第三者算定機関(AZX総合会計事務所)のDCF法による想定レンジは217〜266百万円。のれんは1.6億円程度の見込み/承継する事業の2017年12月期の売上高。分割会社全体でも売上高は9百万円
買収理由:マーケティングオートメーション「MAJIN」とCRM/SFAを連携させ、顧客データを一元管理できるようにする
売上900万円、従業員3名の会社の事業に2億3,800万円がついています。分割会社は営業損失5,000万円・純資産マイナス2,900万円の債務超過で、承継した資産は帳簿上ほぼゼロでした。それでも約290社が使っていたプロダクトと、自社製品とつなげたときの将来の見通しがDCF法で評価されています。赤字・債務超過でも、買い手の製品と組み合わせて伸びる事業なら値段がつく例です。
法人ではなく事業をジーニー本体が承継した案件です。サービスはその後「GENIEE SFA/CRM」の名前に変わり、2024年9月のArch事業譲受の開示でも同社のSaaSとして記載されています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された5件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社SEIRYO3億4,500万円(売上の0.51倍・営業利益の12.8倍)
- 株式会社iHack7億6,600万円(売上の2.62倍)※営業赤字での譲渡
- デクワス株式会社のネット広告サービス事業「KANADE DSP」1円(売上の0.00倍)
- ビジネスサーチテクノロジ株式会社11億円(売上の2.44倍・営業利益の9.3倍)
- ちきゅう株式会社のCRM/SFA「ちきゅう」事業2億3,800万円(売上の26.44倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社ジーニーが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日