株式会社ゼネテックのM&A実績
製造業向けのソフトウェア会社を買い続けている会社です。対象は売上1億円台の小さな開発会社から、売上20億円台の老舗ITソリューション会社まで。5件中4件で取得価額を開示しており、何倍で買ったかが読める珍しい買い手です。中期経営計画(2027年3月期〜2029年3月期)でも「積極的に新規M&Aを進め」るとしており、売上160億円の目標にM&A分を含めています。
株式会社ゼネテックが公表した適時開示5件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都新宿区
- 設立
- 1985年7月
- 事業内容
- 車載・家電・産業機器向けの組込みソフトウェア開発を祖業に、3次元CAD/CAM「Mastercam」やシミュレーションソフト「FlexSim」、PLM関連ソフトの販売・導入支援、位置情報アプリ「ココダヨ」を手がける製造業向けIT企業
- 売上高
- 109億8,300万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 8億2,000万円
- 純資産
- 27億2,600万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 組込み・業務系ソフトウェア開発/PLM(製品ライフサイクル管理)ソフトの導入コンサルティング/SAP導入コンサルティング/生産管理・部品表(BOM)パッケージソフト
- 対象の規模
- 対象の売上 1.28億円〜25.2億円
- 手法
- 株式譲渡で全株式を取得(完全子会社化)。5件とも100%取得
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は1〜3年で本体に吸収合併するのが基本です。TOPWELLは取得から約1年、バートは約3年、フラッシュシステムズは約1年8か月で合併しています。合併はいずれも1月1日付で、毎年10月末に開示が出ています。社名を残したい売り手は、この点を交渉の前提に置く必要があります。
- 取得価額を開示する方針がはっきりしています。TOPWELL、フラッシュシステムズ、モアソンジャパン、クラステクノロジーの4件で株式の取得価格とアドバイザリー費用を分けて公表しています。非開示はバートの1件だけで、理由は「株式取得先が個人であること」でした
- 算定はいずれも第三者算定機関による株式価値算定がもとです。TOPWELLでは「算定結果のレンジの範囲内で取得価額を決定」と書かれています
- 倍率の幅が非常に広い買い手です。営業利益900万円のTOPWELLに5億4,700万円(約61倍)を払った一方、純資産8億9,800万円のモアソンジャパンは8億円(純資産を下回る)で買っています。利益よりも、PLMなど自社が伸ばしたい分野の技術と人材を重く見ている傾向が数字に出ています
- アドバイザリー費用は取得価格の約5〜8%(2,900万円〜8,500万円)が別に上乗せされています
買収の履歴5件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社クラステクノロジー
部品表(BOM)を基盤とした生産管理パッケージ「ECObjects」、クラウドBOM「Celb」の開発・販売とコンサルティング/東京都渋谷区/創業1996年9月(現法人の設立は2020年1月)設立
- 取得価額
- 18億3,000万円
- 対象の売上
- 22億4,800万円
- 対象の営業利益
- △2億7,800万円
- 対象の純資産
- 8億4,700万円
決算期:2026年3月期/譲渡前の株主:ニュー・パラダイム・ファンド1号投資事業有限責任組合(投資ファンド)が100%保有/アドバイザリー費用等(概算)85百万円を加えた合計は1,915百万円。2026年3月期の純資産847百万円の約2.2倍。営業赤字のため営業利益倍率は算出できない
買収理由:人月モデルに依存しないパッケージビジネスの強化とストック型収益の拡大。製造業DXを戦略領域とし、顧客基盤の統合でクロスセルを狙う
直前期は営業損失2億7,800万円の赤字でした。営業利益は2億3,900万円→900万円→△2億7,800万円と2期続けて落ち、純資産も11億2,200万円→8億4,700万円に減っています。それでも純資産の約2.2倍、18億3,000万円で買われています。評価されたのは30年続く自社パッケージと、月額制クラウドという「ストック型の売上」です。直近の業績が悪くても、繰り返し入る売上の仕組みを持っていれば値段はつくことを示す例です。売り手は中小企業の事業承継を投資対象とするファンドでした。
2026年8月21日に株式譲渡を実行予定と開示されていますが、実行の完了や、その後の商号変更・合併を確認できる後続開示は手元にありません。
株式会社モアソンジャパン
音響・画像・通信機器の組込みソフト開発、生産管理・品質管理システム開発、放送局向け開発、PLM/PDMソリューション/静岡県浜松市/1982年6月設立
- 取得価額
- 8億円
- 対象の売上
- 25億1,900万円
- 対象の営業利益
- 3,400万円
- 対象の純資産
- 8億9,800万円
決算期:2024年3月期/譲渡前の株主:森川 恭徳ほか個人17名で100%保有/アドバイザリー費用等56百万円を加えた合計は856百万円。第三者算定機関による株式価値算定をもとに協議して決定。純資産898百万円を下回る価格(約0.89倍)で、営業利益34百万円の約23.5倍
買収理由:東海エリアでの事業拡大と、東京・名古屋・大阪の拠点連携によるソフトウェア開発・PLM/PDMソリューションの拡大。グループ社員1,000名体制に向けた規模拡大
売上25億1,900万円・営業利益3,400万円・純資産8億9,800万円。創業40年を超える浜松の会社で、株主は社長を含む個人18名に分かれていました。それでも全株式の取得が成立しています。価格は8億円で、純資産を下回りました。売上は25億円ありながら営業利益率は1%台で、利益の薄さが価格に表れた形です。買い手は「社員数1,000名体制」を目標に掲げており、技術者の頭数そのものが買う理由になっています。
2026年3月期の決算短信で、2025年4月から連結に加わった子会社として社名が挙がり、のれんの会計処理が確定したと記載されています。商号変更や合併の開示は手元にありません。
株式会社フラッシュシステムズ
製造業向け生産管理・制御システムのソフトウェア開発。PLMソフト「Windchill」の知見/愛知県弥富市/2008年5月設立
- 取得価額
- 3億5,500万円
- 対象の売上
- 1億4,700万円
- 対象の営業利益
- 2,100万円
- 対象の純資産
- 1億8,400万円
決算期:2023年4月期/譲渡前の株主:大野 典之ほか個人2名で100%保有/アドバイザリー費用等29百万円を加えた合計は384百万円。第三者算定機関による株式価値算定をもとに協議して決定。営業利益21百万円の約16.9倍、純資産184百万円の約1.9倍
買収理由:PLM事業を成長の柱にするため、Windchillの知見と技術を持つ開発会社を取り込む
売上1億4,700万円・営業利益2,100万円・純資産1億8,400万円。資本金1,000万円、売上1億円台の開発会社に3億5,500万円がついています。売上は1億4,100万円〜1億4,800万円でほぼ横ばいでしたが、営業利益率14%前後を保ち、純資産を毎年積み上げていました。買い手が力を入れている製品(Windchill)の技術者がいることが、規模の小ささを上回って評価された例です。
2026年1月1日付でゼネテック本体に吸収合併されました(取得から約1年8か月)。2026年3月期の決算短信でも連結範囲から除外された会社として記載されています。
株式会社TOPWELL
PLM製品の販売・導入コンサルティング、製造業エンジニアリング領域のDX支援/大阪府大阪市/2009年4月設立
- 取得価額
- 5億4,700万円
- 対象の売上
- 1億8,600万円
- 対象の営業利益
- 900万円
- 対象の純資産
- 3,400万円
決算期:2022年3月期/譲渡前の株主:個人1名(井上 康秀)が100%保有/アドバイザリー費用等31百万円を加えた合計は578百万円。第三者算定機関(G&Sソリューションズ)の株式価値算定結果のレンジ内で決定。営業利益9百万円の約61倍、純資産34百万円の約16倍
買収理由:製造業のエンジニアリングチェーンへの対応力強化。Windchillを基盤とするPLMコンサルティング力の取り込み
売上1億8,600万円・営業利益900万円・純資産3,400万円。この会社の案件で倍率がいちばん高い買い物です。営業利益の約61倍、純資産の約16倍にあたる5億4,700万円。3期の営業利益は0円→300万円→900万円で、利益ではなく、買い手が新しく始めたPLM事業に必要なコンサル力に値段がついています。買い手がその分野に参入した直後(PTCジャパンとの契約は同年11月)というタイミングでした。自社の技術が、相手の「これからやりたいこと」に直結するときは、利益水準を大きく超える価格になりえます。
2024年1月1日付でゼネテック本体に吸収合併されました(取得から約1年)。合併直前の2023年3月期は売上2億4,200万円・営業利益2,600万円まで伸びており、代表取締役会長にはゼネテック社長が就いていました。
株式会社バート
SAP(ERP)の導入コンサルティング、アプリケーション・システム事業/埼玉県さいたま市/1999年10月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1億2,800万円
- 対象の営業利益
- 900万円
- 対象の純資産
- 4,200万円
決算期:2021年9月期/譲渡前の株主:代表(藤田 陽俊)ほか1名で100%保有/非開示(株式取得先が個人であるため)。「直前連結会計年度末の連結純資産の15%未満」で、第三者算定機関の算定結果を勘案して決定。手元の開示に当時の連結純資産額が無いため、上限額は計算できない
買収理由:デジタルファクトリー化の推進に向け、ERP(SAP)導入のノウハウと人材育成の仕組みを取り込む
売上1億2,800万円・営業利益900万円・純資産4,200万円。売上は5,300万円→1億2,200万円→1億2,800万円で、3期前は営業赤字(△0百万円)でした。売上1億円規模でも、大手企業から継続受注しているSAPの導入ノウハウがあれば買い手はつきます。この会社の案件で唯一、価格が非開示です。
2025年1月1日付でゼネテック本体に吸収合併されました(取得から約3年)。合併前には本店がゼネテック本社と同じ住所に移り、代表取締役も譲渡前の藤田陽俊氏から上野大輔氏に替わっていました。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された4件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社クラステクノロジー18億3,000万円(売上の0.81倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社モアソンジャパン8億円(売上の0.32倍・営業利益の23.5倍)
- 株式会社フラッシュシステムズ3億5,500万円(売上の2.41倍・営業利益の16.9倍)
- 株式会社TOPWELL5億4,700万円(売上の2.94倍・営業利益の60.8倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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