株式会社くすりの窓口のM&A実績
調剤薬局と医療機関向けのITを広げるために、売上1億円前後の小さな会社から買っている会社です。売り手は創業社長の個人オーナーが中心で、債務超過の会社を総額60円で引き取った例もあります。2025年以降は電子カルテの導入支援や診療予約など、医療機関向けの会社を続けて買っています。
株式会社くすりの窓口が公表した適時開示6件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都豊島区
- 設立
- 2004年9月
- 事業内容
- 薬局ポータル「EPARKくすりの窓口」の運営を軸に、調剤薬局・医療機関・介護施設向けのシステムやサービスを提供する会社
- 売上高
- 123億3,000万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 26億8,200万円
- 純資産
- 114億6,400万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 調剤薬局向けシステム(調剤監査、電子薬歴)/医療機関向けIT(診療予約サイト、電子カルテ・レセコンの導入支援、自動精算機)/介護保険外の生活サポートのマッチング/薬剤師向けの人材マッチング
- 対象の規模
- 対象の売上 0.23億円〜9.65億円
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。過半数だけを買う形、第三者割当増資を引き受けて子会社にする形、自社株を対価にする株式交換も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社を短期間で本体に吸収合併することがあります。キューブイメージングは取得から7か月後、2023年12月にEPARKから買ったホスピタルヘルスケアは11か月後に合併され、法人はなくなりました。一方、メディ・ウェブ、テクノネットワークなど2025年以降に買った会社は、現時点で子会社として残っています。
- 取得価額を出すことが多い会社です。6件のうち4件で金額が開示されています(60円、499万円、2億8,704万円、5円)
- 赤字や債務超過の会社も買っています。キューブイメージングは純資産マイナス4,500万円、blankpadは2期連続の営業赤字でした。いずれも価格は1円単位の名目的な金額です
- 買った後に売り戻した例があります。ヘルパーリンクは子会社化から10か月で、前社長に取得時と同じ金額で全株を戻しています。理由は前社長が出した「表明及び保証」が疑わしくなる状況が複数回生じたこととされています
- 大株主のEPARKや、会長が100%持つ会社など、関係の深い相手から買う案件もあります。2023年12月には、EPARKからホスピタルヘルスケアとEPARK人間ドックの2社を取得しています(2023年12月1日開示)
買収の履歴6件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社blankpad
パーソナリティ診断とAI分析を使った人材マッチングプラットフォーム/東京都千代田区/2023年8月設立
- 取得価額
- 5円
- 対象の売上
- 2,300万円
- 対象の営業利益
- △4,600万円
- 対象の純資産
- 3,500万円
決算期:2025年7月期/譲渡前の株主:株式会社NBSE 96.77%(買い手の会長が100%保有する会社)、個人2名 3.22%/取得価額は総額5円(普通株式3円、A種優先株式1円、B種優先株式1円)。第三者機関(みらいコンサルティング)の財務デューディリジェンスに基づく「実質純資産価格をベースに協議のうえ決定」。同社への報酬は固定の100万円
買収理由:子会社の薬剤師求人転職株式会社と組み合わせ、調剤薬局と薬剤師の相性に基づくマッチングを提供する
設立3年、売上2,300万円・営業損失4,600万円。帳簿上の純資産は3,500万円ありましたが、価格は総額5円でした。デューディリジェンスで出した「実質純資産」をもとに決めたと書かれており、帳簿の純資産がそのまま値段になるわけではないことが分かります。買い手は開示文で「業歴が浅く赤字が続いていますが」と書いたうえで、技術と大手薬局への導入実績を評価しています。売り手は買い手の会長が持つ会社で、関連当事者間の取引です。
2026年7月31日に株式譲渡の予定として開示され、その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社テクノネットワーク
日医標準レセプトソフト「ORCA」と電子カルテの販売・導入支援。子会社ケイング(医療情報システムの構築・保守)を持つ/福岡県福岡市/1996年3月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 7億2,000万円
- 対象の営業利益
- 8,900万円
- 対象の純資産
- 4億4,000万円
決算期:2025年9月期/譲渡前の株主:木原義博53.3%、松下香織(代表取締役)40.0%、伊藤由香里6.7%(個人3名)/先方の意向により非開示。「直前連結会計年度の末日における連結純資産の15%未満」/テクノネットワーク単体の数値。子会社ケイングとの単純合算では売上758百万円・営業利益96百万円・純資産461百万円
買収理由:九州で1,200超の医療機関に「ORCA」を導入してきた顧客網とノウハウを取り込み、電子カルテの導入から保守まで一貫して提供する
売上7億2,000万円・営業利益8,900万円・純資産4億4,000万円。売上は11億2,800万円→6億4,200万円→7億2,000万円と、一度大きく落ちてから戻している局面での譲渡です。それでも、九州で1,200を超える医療機関に導入・保守してきた顧客網が評価されています。もともと買い手の商品の取次や代理店をしていた会社で、取引先がそのまま買い手になった例です。
2026年5月1日に株式譲渡の予定として開示され、その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社メディ・ウェブ
医療機関ポータル「EPARKクリニック・病院」の運営、診療予約システム。子会社イーディライト(九州の医療機関向け自動精算機の販売等)を持つ/東京都港区/2007年3月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 9億6,500万円
- 対象の営業利益
- 9,700万円
- 対象の純資産
- 1億3,100万円
決算期:2025年3月期(単体)/譲渡前の株主:株式会社EPARKが100%保有(買い手の議決権の37.95%を持つ大株主)/株式交換のため現金の取得価額はなし。メディ・ウェブ株1株に買い手株21.546株を割り当て、計240,604株(自己株式106,122株+新株134,482株)を交付。第三者算定機関(辻・本郷FAS)のDCF法による株式価値は1株67,121〜76,564円で、発行済11,167株に掛けると約7.5億〜8.5億円(編集部計算)。現金での株式譲受も検討したが「キャッシュアウトを抑えられる株式交換」を選んだと開示
買収理由:医療機関ポータルを取り込み、薬局向け中心から医療機関向け市場へ本格参入する
売上9億6,500万円・営業利益9,700万円・純資産1億3,100万円。売上は3億6,000万円→4億6,000万円→9億6,500万円と2年で2.7倍に伸びていました。子会社のイーディライトは3期連続の営業赤字でしたが、親会社と一緒に引き取られています。対価は現金ではなく買い手の株式で、売り手は売却後も買い手の株主として成長の恩恵を受ける形です。売り手が買い手の大株主という関係の深い取引で、交換比率は独立した算定機関の評価をもとに決められています。
2026年1月1日に株式交換の効力発生予定として開示され、その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。2026年4月のテクノネットワーク取得の開示でも、医療機関向け参入の起点として言及されています。
株式会社ヘルパーリンク
シニア向け生活サポート・介護代行サービスのマッチングサイト運営/千葉県千葉市/2019年4月設立
- 取得価額
- 499万円
- 対象の売上
- 2,700万円
- 対象の営業利益
- △1,300万円
- 対象の純資産
- △100万円
決算期:2023年2月期/譲渡前の株主:樋谷祐希(代表取締役)85.59%、その他13名14.41%/1株10,000円×499株=総額499万円。新株の引受なので、代金は既存株主ではなく会社に入る
買収理由:介護保険外の生活サポート事業に参入する
売上2,700万円・営業損失1,300万円・純資産マイナス82万円の、2019年設立の会社です。債務超過でも、増資を引き受ける形なら上場企業の傘下に入れます。ただしこの案件は10か月後に解消されました(下記)。譲渡契約の「表明保証」は形式ではなく、後から問題になれば取引そのものが巻き戻ることがある、という実例です。
2024年12月18日、保有する全株を前代表取締役に取得価額と同額の499万円で譲渡し、連結子会社から外しました。理由は、前代表取締役が出した「発行会社の表明及び保証」が疑わしくなる状況が複数回生じたことと、選択と集中とされています。
ハイブリッジ株式会社
調剤薬局向け電子薬歴システム「Hi-story」の開発・販売・保守/東京都世田谷区/1990年7月設立
- 取得価額
- 2億8,704万円
- 対象の売上
- 7億5,700万円
- 対象の営業利益
- 7,200万円
- 対象の純資産
- 1億2,000万円
決算期:2023年6月期/譲渡前の株主:末次淳夫(代表取締役)73.73%、くすりの窓口10.00%、廣川裕之8.70%、末次洋子5.44%、その他5名2.13%/41%分の取得価額。1株82,841円×3,465株=総額287,044,065円。同じ1株単価を発行済8,450株に掛けると会社全体で約7.0億円(編集部計算)で、純資産の約5.9倍、営業利益の約9.7倍にあたる
買収理由:国内初の電子薬歴システムを取り込み、「EPARKお薬手帳」やレセコンと連携させる
売上7億5,700万円・営業利益7,200万円・純資産1億2,000万円。営業損益はマイナス3,800万円→マイナス1,200万円→プラス7,200万円と、赤字から立て直した直後の譲渡です。全国2,400超の薬局に入っているシステムという顧客基盤が評価されました。もともと10%出資を受け、データ連携もしていた相手で、資本提携から始まって子会社化に進んだ例です。社長は全株ではなく一部(41%分)を売っています。
2024年1月15日に株式譲渡の予定として開示され、その後の商号変更や合併、残りの株式の取得に関する開示は確認できていません。
キューブイメージング株式会社
調剤監査システム「Cube.i」の製造・販売/埼玉県ふじみ野市/2000年2月設立
- 取得価額
- 60円
- 対象の売上
- 7,900万円
- 対象の営業利益
- △1,700万円
- 対象の純資産
- △4,500万円
決算期:2023年9月期/譲渡前の株主:個人1名(八津川義博、代表取締役)が100%保有/取得価額は1株1円×60株=総額60円
買収理由:薬局の調剤過誤を防ぐ監査システムを取り込み、グループのサービスと組み合わせる
売上7,900万円・営業損失1,700万円・純資産マイナス4,500万円。債務超過の会社が総額60円で売れた例です。営業利益は前々期677万円、前期1,417万円と黒字でしたが、直前期に赤字に転じていました。大手ドラッグストアに導入実績のある製品があったことが、値段がつかなくても引き取り手が現れた理由です。ただし買い手は7か月後にこの会社を本体へ吸収合併しており、社名は残りませんでした。
2024年8月1日付で買い手本体が吸収合併し、法人は解散しました。合併に先立ち、買い手が第三者割当増資を全額引き受けて債務超過を解消しています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された4件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社blankpad5円(売上の0.00倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社ヘルパーリンク499万円(売上の0.18倍)※営業赤字での譲渡
- ハイブリッジ株式会社2億8,704万円(売上の0.38倍・営業利益の4.0倍)
- キューブイメージング株式会社60円(売上の0.00倍)※営業赤字での譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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