ヤマイチエステート株式会社のM&A実績
不動産会社を、個人オーナーからほぼ毎年1件のペースで買っている会社です。売り手は7件すべてが個人株主で、売上5,300万円のマンション管理会社から29億円の店舗開発会社まで幅があります。狙いはエリアの拡大(埼玉・千葉・京都南部)と、マンション管理や戸建建築といった機能の追加です。取得価額を開示する案件があり、ホームズと安住コーポレーションは純資産の約3割、大成住宅は営業赤字の年に純資産の約6割の価格でした。
ヤマイチエステート株式会社が公表した適時開示7件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 和歌山県和歌山市(大阪本社:大阪府大阪市中央区)
- 設立
- 1989年6月
- 事業内容
- 和歌山・大阪を地盤に、分譲マンション、戸建住宅、不動産買取・仲介、賃貸、管理、シニア、レジャーまで手がける不動産会社(旧商号 ヤマイチ・ユニハイムエステート)
- 売上高
- 176億3,800万円(2026年3月期(連結・訂正後))
- 営業利益
- 19億2,900万円
- 純資産
- 141億1,500万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 戸建分譲・宅地開発/戸建住宅の建築/不動産売買・仲介・賃貸/店舗用地の開発(テナント開発)/分譲マンションの管理/産業用地開発の許認可を持つ会社
- 対象の規模
- 対象の売上 5,300万円〜29.2億円(許認可取得のための会社は売上0円)
- 手法
- 株式譲渡で100%取得が基本。資本業務提携で19%を先に持ち、半年後に残りを買って子会社化した例や、同じオーナーの2社をまとめて買った例がある
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 事業会社は社名のまま子会社として残すのが基本です(エルアンドビー、ニューライフサービス、大成住宅はグループ会社一覧に掲載)。一方、賃貸不動産を持つだけになっていた富士物産は約7か月後に吸収合併されました。野上電鉄も、許認可を取ったあとに吸収合併する予定と開示されています。
- 取得価額を開示する案件があります。7件中3社分(大成住宅、ホームズ、安住コーポレーション)で株式対価とアドバイザリー費用が出ています
- 価格は純資産を下回っています。ホームズは純資産4億5,500万円に対し株式対価1億4,200万円、安住コーポレーションは純資産1億3,700万円に対し4,200万円と、いずれも純資産の約0.3倍でした
- アドバイザリー費用の比率が高めです。大成住宅は株式対価1億4,900万円に対し6,700万円、ホームズ・安住コーポレーションは株式対価の2割に当たる額を計上しています
- 非開示の案件でも「直前事業年度の純資産の15%未満」「連結純資産の30%未満」「軽微であり適時開示基準に該当しない」と水準が書かれます
- 2025年5月26日開示の『商号の変更及び定款一部変更に関するお知らせ』で、ヤマイチ・ユニハイムエステートからヤマイチエステートへの商号変更を公表しています。それより前の開示は旧商号で出ています
- インドネシアの現地法人への出資(第三者割当増資の引受、2026年9月)は、国内中小企業の買収とは性質が違うため一覧に入れていません
買収の履歴7件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社安住コーポレーション
戸建住宅の建築/京都府宇治市/2006年4月設立
- 取得価額
- 4,200万円
- 対象の売上
- 10億4,900万円
- 対象の営業利益
- 465万円
- 対象の純資産
- 1億3,700万円
決算期:2025年12月期/譲渡前の株主:個人1名(前原 敏行)が100%保有。代表取締役は別の人物(松浦 一也)/株式対価42,001千円。アドバイザリー費用等(概算)8,445千円を含めた合計は約50,446千円
買収理由:ホームズと一体で取得し、関西エリアの住宅供給力を高める
売上10億4,900万円・営業利益465万円・純資産1億3,700万円。株式対価は4,200万円で、こちらも純資産の約0.3倍です。売上は9億200万円→10億1,600万円→10億4,900万円と伸びていましたが、営業利益は3期とも700万円前後以下でした。利益が薄い会社は、売上が10億円あっても価格は純資産を下回ることがある例です。社長とオーナーが別人の会社で、オーナーが持っていた2社をセットで渡しています。
株式譲渡の実行予定日は2026年10月1日で、その後の商号変更や合併の開示はありません。グループ会社一覧にはまだ載っておらず、実行済みであることは開示の予定日からの推定です。
株式会社ホームズ
戸建用地の開発・造成(戸建分譲のディベロッパー)/京都府宇治市/1998年2月設立
- 取得価額
- 1億4,200万円
- 対象の売上
- 20億3,200万円
- 対象の営業利益
- 6,400万円
- 対象の純資産
- 4億5,500万円
決算期:2025年9月期/譲渡前の株主:個人1名(前原 敏行)が100%保有/株式対価141,998千円。アドバイザリー費用等(概算)28,555千円を含めた合計は約170,553千円
買収理由:京都南部で戸建分譲を続けてきた事業基盤・人材・取引先を承継し、関西での開発用地の取得力と住宅供給力を高める
売上20億3,200万円・営業利益6,400万円・純資産4億5,500万円。株式対価は1億4,200万円で、純資産の約0.3倍です。総資産28億4,800万円に対し純資産は4億5,500万円で、差の約24億円は負債です。営業利益は出ていても経常利益は300万円、当期純利益は250万円にとどまっていました。借入で用地を抱える分譲業は、純資産があっても株価がその額を下回ることがあると読める例です。オーナーは戸建建築の安住コーポレーションも100%持っており、2社をまとめて1人の買い手に渡しています。
株式譲渡の実行予定日は2026年10月1日で、その後の商号変更や合併の開示はありません。グループ会社一覧にはまだ載っておらず、実行済みであることは開示の予定日からの推定です。
野上電鉄株式会社
産業用地の開発に関する許認可手続き・地元協議(不動産の賃貸借・売買、土木建築工事の請負等)。鉄道事業は行っていない/和歌山県和歌山市/2017年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1円未満
- 対象の営業利益
- △6万円
- 対象の純資産
- △2,500万円
決算期:2025年9月期/譲渡前の株主:個人1名(古市 啓悟)が100%保有/相手先との守秘義務により非開示。「取得価額は軽微であり、適時開示基準には該当しない」
買収理由:産業用地の開発で、対象会社が持つ事業主体としての立場と許認可関係、地元との協議体制をそのまま引き継ぐ
売上0円、純資産マイナス2,500万円の債務超過の会社です。それでも買われたのは、産業用地の開発許可の手続きと地元関係者との協議をこの会社が進めてきたからです。開示は債務超過について「開発準備に係る費用の先行計上によるもので、事業価値の毀損を示すものではない」と説明しています。売上がなくても、許認可や地元との関係そのものが売り物になる例です。
2026年3月31日に株式譲渡実行予定と開示され、「許認可取得後、当社への吸収合併を予定」とされています。合併の開示はまだ無いため存続と推定していますが、グループ会社一覧には載っていません。
株式会社大成住宅
新築戸建住宅の販売を主力とする不動産売買・仲介・賃貸/埼玉県鶴ヶ島市/1996年4月設立
- 取得価額
- 1億4,940万円
- 対象の売上
- 23億2,300万円
- 対象の営業利益
- △1億8,400万円
- 対象の純資産
- 3億1,200万円
決算期:2024年6月期/譲渡前の株主:鈴木 孝72.81%、鈴木姓の個人3名が各2.73%、ヤマイチ・ユニハイムエステート19.00%/残り81%(3,564株)の株式対価149,395千円。アドバイザリー費用等(概算)66,942千円を含めた合計は約216,337千円。先に取得した19%分の価額は含まない
買収理由:首都圏へのエリア拡大
営業損失1億8,400万円を出した期の直後の譲渡です。売上は37億2,400万円から23億2,300万円に減り、純資産も4億6,800万円から3億1,200万円に減っていました。81%分の株式対価は1億4,900万円で、純資産の81%相当(約2億5,300万円)の約0.6倍です。半年前に19%を持ってもらう資本業務提携から入り、赤字の期を経て残りを譲ったという2段階の流れが開示から読めます。
富士物産株式会社
居住用不動産の賃貸・不動産売買/千葉県市川市/1975年12月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1億6,000万円
- 対象の営業利益
- △700万円
- 対象の純資産
- 9億1,700万円
決算期:2023年3月期/譲渡前の株主:田中 直希33.4%、佐野 敏恵33.3%、田中 伸幸33.3%(個人3名)/当事者間の守秘義務により非開示。「直前事業年度連結純資産の30%未満の額」
買収理由:保有する賃貸不動産を安定収益源や将来の再開発用地として活用する
売上1億6,000万円・営業損失700万円・純資産9億1,700万円。売上は5億3,100万円→2億9,000万円→1億6,000万円と縮小していました。開示には「創業者の役員退任を機に事業を縮小し、保有する居住用不動産の賃貸を中心とする安定経営」とあります。事業を縮めても、持っている不動産に価値があれば買い手はつきます。ただし買い手が欲しかったのは不動産で、会社は約7か月後に吸収合併されました。
2024年10月1日を効力発生日として、買い手本体に吸収合併され法人は消滅しました(簡易合併・略式合併)。
株式会社エルアンドビー
商業店舗の開発(テナント開発・店舗建設の工事請負)、不動産の売買・賃貸(土地の転貸借)/埼玉県熊谷市/1991年9月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 29億2,200万円
- 対象の営業利益
- 4,600万円
- 対象の純資産
- 4億5,300万円
決算期:2022年8月期/譲渡前の株主:個人1名(江原 義明)が100%保有/相手先との守秘義務により非開示。「当社の直前事業年度純資産の15%未満の額」
買収理由:郊外ロードサイドの店舗開発・賃貸事業のエリア拡大と、新たな店舗開発情報のネットワーク獲得
売上29億2,200万円・営業利益4,600万円・純資産4億5,300万円。売上は16億2,000万円→22億2,000万円→29億2,200万円と伸びていました。評価されたのは、地元で長年かけて築いた「土地オーナーへの活用提案で店舗用地を取る力」です。買い手は近畿が地盤で、埼玉への足がかりとして買っています。地域に根ざした情報網は、よその地域の会社にとって買う理由になります。
ニューライフサービス株式会社
分譲マンションの管理、不動産の賃貸・代理業/大阪府大阪市/1979年3月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 5,300万円
- 対象の営業利益
- 600万円
- 対象の純資産
- 300万円
決算期:2021年12月期/譲渡前の株主:個人1名(渡部 正教)が100%保有。代表取締役は別の人物(渡部 教子)/相手先との守秘義務により非開示。「当社の直前事業年度純資産の15%未満の額」
買収理由:自社で企画・販売した分譲マンションの管理を任せ、住み替えやリフォームの需要につなげる
この会社の案件で最小の、売上5,300万円の会社です。営業利益は3期とも500万円前後出ていましたが、純資産は△1,060万円→△410万円→310万円と、直前期にようやく債務超過を抜けたところでした。買い手が持っていなかった「マンション管理」という機能が評価されています。小さくても、買い手に欠けている機能を持っていれば買われます。
社名のまま買い手のグループ会社一覧に掲載されています。所在地は買い手の大阪本社と同じビル(大阪市中央区)に移っています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社安住コーポレーション4,200万円(売上の0.04倍・営業利益の9.0倍)
- 株式会社ホームズ1億4,200万円(売上の0.07倍・営業利益の2.2倍)
- 株式会社大成住宅1億4,940万円(売上の0.06倍)※営業赤字での譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
関連する記事
本ページはヤマイチエステート株式会社が公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日