株式会社EMシステムズのM&A実績
薬局・クリニック・介護事業者向けのシステム会社を、10年以上にわたって買い続けている会社です。買っているのはほぼ全部が同業のソフト会社か、その販売・サポート会社です。売り手は個人オーナーより、親会社の事業会社が子会社を手放すケースが目立ちます。営業赤字の会社や、売上がほとんど無いスタートアップも買っています。
株式会社EMシステムズが公表した適時開示7件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 大阪府大阪市
- 設立
- 1980年1月
- 事業内容
- 調剤薬局向けレセコン・電子薬歴、クリニック向け電子カルテ、介護/福祉事業者向けシステムの開発・販売・サポート
- 売上高
- 236億5,800万円(2025年12月期(連結))
- 営業利益
- 36億7,600万円
- 純資産
- 204億3,200万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 調剤薬局向けシステム(レセコン・処方箋入力代行)/医科システム(電子カルテ)の販売・サポート/介護/福祉・訪問看護向けシステム
- 対象の規模
- 対象の売上 9億円〜22億円(ほかに、売上4.5億円の会社から事業だけを買った例、売上がほぼ無いスタートアップを買った例あり)
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。事業譲受で事業だけを引き取る形、中間持株会社ごと買う形、67%だけを取得する形も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は数年のうちに本体へ吸収合併することが多い会社です。コスモシステムズは取得から約6年半、エムウィンソフトは約1年7か月で本体に合併されています。直近のプレカル、コンダクトは子会社として残っており、本体から代表取締役を送り込む形を取っています。
- 取得価額の開示は案件によって分かれます。7件のうち3件は金額が出ていますが、2025年以降の2件は「機密保持契約により非開示」です
- 非開示でも、決算短信から規模が読めることがあります。プレカルを取得した2025年12月期は「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」が995百万円、のれんが797百万円増えています
- 取得前から取引がある相手を買う例があります。コンダクトは、EMシステムズが製品開発を委託していた会社でした
- 介護/福祉システム事業の「早期黒字化」を重点施策に掲げており、この分野の買収はその手段と位置づけられています
買収の履歴7件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社コンダクト
介護保険システム、福祉事業ネットワークシステムの開発・販売・サポート/石川県金沢市/1973年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 9億300万円
- 対象の営業利益
- 6,300万円
- 対象の純資産
- 4,700万円
決算期:2025年5月期/譲渡前の株主:日本ソフテック株式会社(富山県砺波市のソフトウェア会社)が100%保有/機密保持契約により非開示
買収理由:訪問看護領域の開発力と地域の顧客基盤を取り込み、介護/福祉システム事業の早期黒字化を図る
創業1973年、売上9億300万円・営業利益6,300万円・純資産4,700万円。売上は6億2,100万円→6億9,900万円→9億300万円、営業利益は200万円→1,400万円→6,300万円と伸びている局面での譲渡です。純資産は4,700万円と薄くても、利益が伸びていれば買い手は付きます。もともとEMシステムズから製品開発を受託していた会社で、取引先がそのまま買い手になった例です。売り手は親会社のソフト会社で、67%だけを渡して33%は手元に残しています。
株式会社プレカル
薬局向けクラウド型レセコン、処方箋の入力・請求事務の代行/東京都渋谷区/2019年7月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- △1億6,900万円
- 対象の純資産
- 1億4,000万円
決算期:2025年6月期/譲渡前の株主:創業者の大須賀善揮が39.13%、ほかの株主は守秘義務により非開示/機密保持契約により非開示。ただし2025年12月期決算短信で、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が995百万円(この期の新規連結はプレカル1社)、のれんが797百万円増加。支出額は取得価額から同社の保有現金を差し引いた額で、同社の総資産は176百万円のため、取得価額はおおむね10億円前後と読める/開示表の売上高は「12百円→19百円→14百円」と単位が誤記とみられるため空欄
買収理由:クラウドネイティブな開発力と処方箋自動入力サービスを取り込み、レセコンをサービス型に進化させる
設立6年のスタートアップで、営業損失は9,000万円→1億2,000万円→1億6,900万円と3期続けて拡大中でした。それでも決算短信の数字からは、純資産1億4,000万円に対して10億円前後の資金が動いたことが読めます。赤字でも、買い手の既存製品に組み込める技術があれば値段が付きます。創業者が4割を持ち、残りを複数の投資家が持つ形でしたが、全株式が一括で取得されています。
株式会社ユニケソフトウェアリサーチ(持株会社の株式会社Launchpad13ごと取得)
薬局向け業務システム「P-CUBE」の開発・販売/東京都港区/1985年6月設立
- 取得価額
- 13億4,300万円
- 対象の売上
- 22億1,500万円
- 対象の営業利益
- 1億2,300万円
- 対象の純資産
- 28億5,500万円
決算期:2023年3月期/譲渡前の株主:株式会社JMDC(医療統計データサービス)が持株会社を通じて100%保有/Launchpad13の全株式の取得価額。Launchpad13自体は売上が無く、純資産64百万円・総資産3,437百万円(2023年3月期)/事業会社であるユニケソフトウェアリサーチ単体の数値
買収理由:同業を迎えて薬局市場での占有率を高め、顧客基盤を固める
売上22億1,500万円・営業利益1億2,300万円・純資産28億5,500万円。取得価額13億4,300万円は、ユニケの純資産の半分以下です。ただし買ったのは間に挟まった持株会社の株式で、その持株会社は総資産34億円に対し純資産6,400万円しかないため、単純には比べられません。売り手のJMDCは2018年にユニケを子会社化していた会社で、一度買われた会社が5年後に同業へ渡った例です。
2023年6月30日に株式譲渡を実行予定として開示。その後の商号変更や合併の開示は手元に無く、2025年12月期決算短信にも社名の記載は見当たりません。
株式会社ポップ・クリエイション
電子カルテシステム・医療情報システムの販売・サポート/福岡県筑紫野市/1999年7月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/非開示(金額の記載なし)
買収理由:北部九州で地域密着のサポート力を持つ販売会社を取り込み、同地区のビジネスを拡大する
資本金300万円の販売・サポート会社です。自社で製品を作る会社ではなく、地域の診療所や薬局を長年支えてきたサポート力が評価されました。全国に拠点を持つ会社でも、地元で信頼を積み上げた小さな販売店を買うことがある、という例です。業績と株主は開示されていません。
2019年7月1日に株式譲渡を実行予定として開示。その後の合併や再売却の開示は手元に無く、追えていません。
エムウィンソフト株式会社
介護支援システム「すこやかサン」の開発・販売(地域包括支援センター向けに強み)/埼玉県さいたま市/2009年1月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/非開示(金額の記載なし)
買収理由:直前のジャニスの事業譲受と合わせ、介護・障害福祉・包括的支援の三分野で介護向けシステム事業を強化する
取得時の業績は開示されていません。ジャニスの事業を買った翌月に続けて買っており、同じ分野を短期間でまとめて買い集めたことが分かります。後の合併の開示によると、取得後の2020年3月期は売上2億4,600万円・営業利益6,500万円で、純資産はマイナス3,300万円の債務超過でした。
2020年10月1日付でEMシステムズ本体に吸収合併され、法人は消滅しました。取得から約1年7か月です。
株式会社ジャニスの介護サービス事業者向けシステム事業
介護保険ソフトウェア「響」シリーズの企画・開発・販売(障害福祉サービス分野に強み)/東京都港区/譲渡会社は1998年7月設立設立
- 取得価額
- 1億3,500万円
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2018年8月期(譲渡会社)/譲受価格135百万円(税込)
買収理由:障害福祉サービス分野のノウハウを取り込み、介護サービス事業者向けシステム事業を強化する
対象は事業の一部で、事業単体の数字は開示されていません。譲渡会社全体では売上4億5,200万円・純資産4,400万円で、その中の介護向けシステム事業が1億3,500万円(税込)で買われました。会社ごと売らずに、一つの事業だけを同業に売ることができる例です。
コスモシステムズ株式会社
医療機関・調剤薬局向けコンピュータシステムの開発・販売・サポート/広島県広島市/1980年3月設立
- 取得価額
- 1億4,500万円
- 対象の売上
- 10億9,400万円
- 対象の営業利益
- △4,900万円
- 対象の純資産
- 5,800万円
決算期:2014年3月期/譲渡前の株主:株式会社データホライゾン(医療関連情報サービス)が100%保有/普通株式145百万円。アドバイザリー費用等(概算)2百万円を加えた合計は概算148百万円
買収理由:全国約2,600件の医療機関・調剤薬局の顧客基盤を取り込み、事業規模を拡大する
売上10億9,400万円に対し、営業損失4,900万円で2期連続の赤字、純資産は3期で1億2,900万円→5,800万円に減っていました。価格は1億4,500万円で、売上の0.13倍・純資産の2.5倍です。赤字で純資産が減っていても、2,600件の顧客という基盤があれば買い手は付きます。ただし価格は売上規模に比べて控えめで、業績が落ちてからの譲渡は値段に響くことも読み取れます。
2021年4月1日付でEMシステムズ本体に吸収合併され、法人は消滅しました。取得から約6年半です。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社ユニケソフトウェアリサーチ(持株会社の株式会社Launchpad13ごと取得)13億4,300万円(売上の0.61倍・営業利益の10.9倍)
- 株式会社ジャニスの介護サービス事業者向けシステム事業1億3,500万円
- コスモシステムズ株式会社1億4,500万円(売上の0.13倍)※営業赤字での譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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