株式会社北紡のM&A実績
紡績の本業が縮むなかで、新しい事業を「買って始める」ために中小企業を取得している会社です。ヘルスケア、リサイクル、ハイヤーと、事業ごとに1〜2件ずつ買っています。対象は売上1億円前後〜6億円台の小さな会社で、個人オーナー一族からの株式取得、債務超過の会社からの事業譲受、株式交付による51%取得と、形がそれぞれ違います。
株式会社北紡が公表した適時開示4件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 石川県白山市
- 設立
- 1948年10月
- 事業内容
- アラミド繊維などの紡績を祖業に、テキスタイル、ヘルスケア(マスク・オーラルケア用品・防犯システム)、廃プラスチックのリサイクル、暗号資産の運用、ハイヤー事業へと手を広げている会社。2025年に北日本紡績から社名変更
- 売上高
- 15億600万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- △1億3,700万円
- 純資産
- 16億3,000万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- ヘルスケア商材(歯磨き粉パウダー、健康茶など)の企画販売/廃プラスチックのリサイクル・プラスチックペレット製造/産業廃棄物の収集運搬・中間処理/ハイヤー・タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業)
- 対象の規模
- 対象の売上 0.93億円〜6.45億円
- 手法
- 現金での株式譲渡、事業譲受に加え、自社株を対価にする株式交換・株式交付も使う。資金は第三者割当増資で調達したものを充てると開示している
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残す形です。2026年3月期の決算短信でも、2021年に買った中部薬品工業が「ヘルスケア事業の中核」として名前が挙がっています。
- 4件中2件で取得価額が開示されています。金井産業(株式1億2,300万円)と東樺化成の事業(1億9,100万円)です
- 対価に自社株を使う案件があります。中部薬品工業は株式交換、Ⅴリムジンは株式交付+現金4,950万円でした。売り手は現金ではなく北紡の株を受け取ることになります
- 赤字や債務超過の相手からも買っています。金井産業は営業赤字、東樺化成は純資産マイナス5,100万円でした
- 買い手の北紡自身も、決算短信で「第96期から連続して営業損失」と開示し、継続企業の前提に関する重要事象等を記載しています。株を対価として受け取る場合、売り手はこの点も開示で確かめておく必要があります
買収の履歴4件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社Ⅴリムジン
ハイヤー事業(空港送迎・法人送迎・観光送迎)。子会社NEO TOKYOでタクシー事業/東京都中央区/2021年11月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 6億4,500万円
- 対象の営業利益
- 8,300万円
- 対象の純資産
- 7,800万円
決算期:2025年3月期(連結)/譲渡前の株主:株式会社スカイサルーントラベル(事業会社)が100%保有/総額は非開示。現金部分は4,950万円で、残りは北紡株式(下限1,942,900株)をⅤリムジン1株につき5,681株の比率で交付。第三者算定機関のDCF法による算定はⅤリムジン1株48万1,609円〜84万200円で、発行済800株に掛けると株式価値(100%)は約3.85億円〜6.72億円、その51%は約1.96億円〜3.43億円と読める
買収理由:本業に依存しない新しい収益基盤として、ハイヤー・タクシー事業に参入する
設立4年目、売上6億4,500万円・営業利益8,300万円・純資産7,800万円。3年前は純資産マイナス2,400万円の債務超過でしたが、売上5,900万円→5億600万円→6億4,500万円と伸ばし、黒字化してから売っています。全株ではなく51%だけを渡し、売り手の親会社は対価として北紡株の6.31%を持つ形になりました。会社を全部手放さず、買い手の株主にもなるという組み方の例です。
2026年3月3日付で51%を取得し連結子会社化したと、2026年3月期の決算短信に記載されています。子会社のNEO TOKYOも連結範囲に入り、新たに「モビリティ事業」セグメントが設けられました。
出典:株式会社Vリムジンの株式交付(簡易株式交付)及び株式取得(現金対価)による子会社化並びに新規事業開始に関するお知らせ
金井産業株式会社
合成樹脂の製造販売、産業廃棄物の再生・収集運搬・処理/山口県周南市/1990年6月設立
- 取得価額
- 1億2,300万円
- 対象の売上
- 9,300万円
- 対象の営業利益
- △500万円
- 対象の純資産
- 9,200万円
決算期:2021年5月期/譲渡前の株主:金井載雲34.5%、金井明德34.5%、金井好徳14.5%、金井慶子14.5%、玉村真弓2.0%(個人5名)/株価算定費用等(概算)2百万円を加えた合計は125百万円。これとは別に、対象会社が代表者個人から借りていた工場用地を固定資産税評価額ベースの50百万円で取得
買収理由:リサイクル事業の拡大。産業廃棄物の収集運搬業許可と中間処理設備をグループ内に持つため
売上9,300万円・営業損失500万円・純資産9,200万円。売上は1億800万円→1億200万円→9,300万円と減っていました。それでも純資産をやや上回る1億2,300万円で売れています。買い手が欲しかったのは業績より産業廃棄物の許可と処理設備でした。また、社長個人が会社に貸していた工場用地も、株式とは別に5,000万円で買い取られています。個人名義の不動産を会社が使っている場合、まとめて整理できる例です。
2021年11月4日に株式譲渡実行予定として開示されました。手元の2026年3月期決算短信には社名が出ておらず、その後の存続・合併を確かめられていません。
東樺化成株式会社のプラスチックペレット製造販売事業
廃プラスチックのリサイクル、プラスチックペレットの製造販売/静岡県静岡市/譲渡会社は2008年1月設立設立
- 取得価額
- 1億9,100万円
- 対象の売上
- 1億6,200万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:直近事業年度(譲受事業)/譲渡前の株主:個人1名(張淼)が100%保有/譲受価額191百万円。譲り受ける資産は固定資産148百万円/譲受事業の直近事業年度の売上高。経常利益は3百万円
買収理由:リサイクル事業の加速。廃プラスチックの仕入先と加工施設、技術ノウハウを得る
事業の売上1億6,200万円・経常利益300万円。譲渡した東樺化成は純資産マイナス5,100万円の債務超過でした。それでも事業だけを1億9,100万円で売り、負債は会社側に残す形が取られています。譲り受けた固定資産は1億4,800万円で、資産の額を4,300万円上回る値段がついています。会社ごとでは売りにくくても、事業と設備なら値段がつく例です。
北紡本体が事業を譲り受ける形で、2021年9月10日に譲受予定と開示されました。リサイクル事業は2026年3月期の決算短信でもセグメントとして続いていますが、この事業との対応は開示で確かめられていません。
株式会社中部薬品工業
ヘルスケア商材(歯磨き粉パウダー、健康茶、のど飴、肝油ドロップ等)と化粧品の製造販売/愛知県北名古屋市/2000年9月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1億3,000万円
- 対象の営業利益
- 1円未満
- 対象の純資産
- 1,200万円
決算期:2020年3月期/譲渡前の株主:HDD SINGAPORE PTE.LTD.(事業会社)が100%保有/金額としては非開示。交換比率は中部薬品工業1株に北紡50.77株で、算定に使った北紡の1株価値221円を掛けると約3,300万円相当と読める。抗体検査キット事業の収益は中国の輸出規制を理由に算定から外され、交換比率は妥当レンジ(50.77〜73株)の下限で決まった
買収理由:前年に始めたヘルスケア事業(マスク製造)の成長を速める
売上1億3,000万円・営業利益ほぼゼロ・純資産1,200万円、従業員4名。売上は2億1,000万円→1億4,300万円→1億3,000万円と減っていました。交換比率は妥当レンジの下限で、伸び筋だった抗体検査キット事業は「輸入元の規制が不安定」として評価から外されています。先行きの読めない事業は、売り手が見込んでいても値段に入れてもらえないことが分かる例です。
2026年3月期の決算短信に「連結子会社である中部薬品工業を中核としたオーラルケア用品や健康補助食品の開発強化」と記載されており、社名のまま子会社として残っています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された2件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 金井産業株式会社1億2,300万円(売上の1.32倍)※営業赤字での譲渡
- 東樺化成株式会社のプラスチックペレット製造販売事業1億9,100万円(売上の1.18倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社北紡が公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月12日