フリー株式会社のM&A実績
クラウド会計のfreeeに「つなげられるサービス」を買い集めている会社です。対象は請求書処理、電子契約、連結会計、記帳アプリ、在庫管理、フリーランス向け金融といった会計の周辺で動くソフトウェアで、売上100万円の創業2年目の会社から売上7億円台の会社まで幅があります。売り手は創業者個人のこともあれば、ベンチャーキャピタルや上場企業のこともあります。
フリー株式会社が公表した適時開示9件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都品川区
- 設立
- 2012年7月
- 事業内容
- スモールビジネス向けの統合型クラウドERP(「freee会計」「freee人事労務」など)の開発・提供
- 売上高
- 424億4,100万円(2026年6月期(連結))
- 営業利益
- 10億9,100万円
- 純資産
- 211億8,600万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- クラウド会計・経理業務の周辺ソフト(請求書処理、連結会計、記帳アプリ)/電子契約・契約管理/フリーランス・個人事業主向けサービス/税理士・中小企業向けクラウドサービス/在庫・物流管理のクラウド
- 対象の規模
- 対象の売上 100万円〜7.8億円(取得価額が出た3件は9.4億円〜27.6億円)
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。現金対価の株式交換、自社株を対価にする株式交付、吸収分割で事業だけを本体に引き取る形も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 小さなサービスは本体に吸収合併するのが基本です。合同会社ノンモは約2か月後、YUIは約2か月後に合併されています。一方、規模のある会社は子会社として残し、サイトビジットは社名を変えたうえで約3年後に残りの株式も取得して完全子会社にしています。
- 取得価額が出ているのは9件中3件です。サイトビジット(27億5,600万円)、Mikatus(20億7,500万円)、pasture事業(9億4,000万円)。いずれも開示基準に当たる規模の案件でした
- 小さな案件では「純資産の15%未満」とだけ書かれます。YUIでは当時の連結純資産169億5,200万円の15%=約25億円を下回ると読めます
- 営業赤字や債務超過の会社も買っています。GMOクリエイターズネットワークは純資産マイナス13億8,200万円、Mikatusも純資産マイナスでした。サービスがfreeeの顧客に売れるかどうかが判断の軸になっています
- 創業者を残す形もあります。サイトビジットは創業者に約30%を持たせたまま70%を取得し、3〜5年後に残りを買い取れる権利を契約で決めていました
買収の履歴9件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社ロジクラ
クラウド物流プラットフォーム「ロジクラ」(在庫管理)の企画・開発・運営/東京都千代田区/2016年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1億7,590万円
- 対象の営業利益
- 1,330万円
- 対象の純資産
- △7,770万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:秘密保持の合意により非開示(A種〜C種優先株式があり、外部投資家が入っていた会社)/当事者間の合意により非開示。任意開示のため純資産比の記載もなし
買収理由:在庫管理と会計をつなげ、小売・流通の事業者へクロスセルする
売上1億7,600万円・営業利益1,300万円・純資産マイナス7,800万円。売上は9,500万円(8か月決算)→1億6,300万円→1億7,600万円と伸び、営業赤字7,200万円から2期続けて黒字に戻した段階での譲渡です。純資産はまだマイナスでしたが、黒字化したあとなら債務超過が残っていても買い手はつく、という例です。
GMOクリエイターズネットワーク株式会社
フリーランス・個人事業主向けの即日払い(ファクタリング)と損害賠償保険「FREENANCE」/東京都渋谷区/2002年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 4億5,300万円
- 対象の営業利益
- △1億2,460万円
- 対象の純資産
- △13億8,190万円
決算期:2024年12月期/譲渡前の株主:CN株式会社(GMOペパボの連結子会社)が100%保有/当事者間の合意により非開示
買収理由:個人事業主向けのサービスを増やし、freeeの顧客基盤に展開する
売上4億5,300万円・営業損失1億2,500万円・純資産マイナス13億8,200万円。前々期には営業損失11億7,200万円を出していました。債務超過は、譲渡の前に借入金25億円を親会社側へ移すことで解消済みと開示されています。借金を売り手側に残してから渡すという整理のしかたが、債務超過の会社を売るときの実例になります。
2025年9月1日に株式譲渡実行予定として開示されました。その後の社名・合併を確かめられる開示は手元にありません。
株式会社YUI
クラウド連結会計ソフト「結/YUI」の開発・保守・運用・販売/東京都千代田区/2022年2月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 2,210万円
- 対象の営業利益
- 60万円
- 対象の純資産
- 40万円
決算期:2024年1月期/譲渡前の株主:個人2名(河村 浩靖、藤原 彰仁)が50%ずつ保有/守秘義務契約により非開示。「純資産額の15%未満」と開示。2024年6月期の連結純資産16,952百万円の15%=約2,543百万円を下回る
買収理由:子会社を持つスモールビジネス向けに連結会計サービスを提供する
資本金20万円、売上2,209万円、営業利益61万円、純資産36万円。設立から3年弱、株主は創業者2人だけという小さなソフト会社です。売上は前期の650万円から3倍以上になっていました。数字は小さくても、買い手の製品に足りない機能を持っていれば買われます。
取得と同時に、2025年3月16日を効力発生日としてフリー本体に吸収合併することが決まっていました。取得から約1か月半で法人は消える計画です。
エン・ジャパン株式会社の「pasture」事業
フリーランス管理ツール「pasture」(契約・発注・請求・支払の一元管理)/東京都新宿区/分割会社は2000年1月設立設立
- 取得価額
- 9億4,000万円
- 対象の売上
- 1億5,400万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2023年3月期(事業部門)/譲渡前の株主:エン・ジャパン株式会社(上場企業)/分割の対価として金銭940百万円。事業とともに承継する現預金140百万円に対する対価を含む。承継資産・負債の時価に、事業の業績動向を踏まえた事業価値を加えて算定
買収理由:受発注管理と下請法・フリーランス新法などの法令対応を強化する
売上1億5,400万円の事業部門を9億4,000万円で引き取っています。承継する資産2億6,600万円・負債1億6,100万円(2023年6月末の帳簿価格)で、差し引き約1億500万円。一緒に移る現預金1億4,000万円ぶんを除いても、売上の5倍強の値段です。法改正で需要が伸びる分野のサービスは、規模が小さくても高く評価されることが読み取れます。
法人ではなく事業だけを、2023年12月12日を効力発生日としてフリー本体が直接引き取る形です。
Why株式会社
情報システム部門向けの作業自動化ツール「Bundle」(アカウント管理)/東京都渋谷区/2021年4月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 100万円
- 対象の営業利益
- △2,000万円
- 対象の純資産
- 3,000万円
決算期:2022年3月期/譲渡前の株主:石橋 尚也63.96%、鈴木 康平16.01%、ジャフコV7投資事業有限責任組合13.18%、イーストベンチャーズ4号投資事業有限責任組合6.85%/円での総額は非開示。普通株式1株にフリー株式1.68株(計224,360株)、A種優先株式には1株13,681円(計311百万円)の現金。第三者算定機関のDCF法による算定レンジ(交付比率1.64〜2.66、現金11,858〜14,921円)の範囲内
買収理由:アカウント管理のプロダクトとノウハウを取り込み、従業員データ管理や人事労務領域を強化する。経営株主に買い手の株式を渡し、事業へのコミットを続けてもらう
設立2年、売上100万円・営業損失2,000万円という立ち上げ直後の会社です。創業者たちには現金ではなくfreeeの株式で支払い、ベンチャーキャピタルが持つ優先株式にだけ現金3億1,100万円を払うという分け方をしています。売上がほとんどなくても、事業計画をもとにDCF法で値段がつき、買い手の株を受け取る形で売ることもできる例です。
2023年6月1日に株式交付の効力が発生し、子会社になったことは開示されています。その後の社名・合併を確かめられる開示は手元にありません。
sweeep株式会社
請求書の受取・仕訳・振込・保管の自動化サービス、電子帳簿保存法対応のクラウドキャビネット/東京都渋谷区/2011年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 6,500万円
- 対象の営業利益
- △6,800万円
- 対象の純資産
- 3,100万円
決算期:2022年5月期/譲渡前の株主:村山 毅76.92%(代表取締役)、フリー13.85%、KVPシード・イノベーション2号投資事業有限責任組合9.23%/守秘義務契約及び当事者間の協議により非開示
買収理由:インボイス制度への対応を見据え、グループ内の連携と意思決定を速める
売上6,500万円・営業損失6,800万円・純資産3,100万円。前々期に主力だったBPO事業から撤退し、売上が落ちたあとの譲渡です。先に少額出資を受けて提携し、1年半後に全株を買われるという段階を踏んでいます。社長は譲渡後も代表取締役を続ける予定と開示されています。
2023年1月31日に株式譲渡実行予定として開示されました。その後の社名・合併を確かめられる開示は手元にありません。
Mikatus株式会社
税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS」(全国1,000以上の会計事務所が利用)/東京都中央区/2009年6月設立
- 取得価額
- 20億7,500万円
- 対象の売上
- 7億4,100万円
- 対象の営業利益
- 8,700万円
- 対象の純資産
- △2億700万円
決算期:2022年1月期/譲渡前の株主:Japan Ventures I L.P. 34.71%、Arbor Venture Fund I, L.P. 12.22%、AT-I投資事業有限責任組合10.80%ほか(ベンチャーキャピタル・事業会社)/株式交換対価として普通株式1株22,415円、総額2,075百万円(予定)。別途、新株予約権の取得資金として約450百万円の第三者割当増資を引き受け。買い手側アドバイザーのDCF法で株式価値2,398〜3,008百万円、売り手側算定機関で2,268〜3,080百万円
買収理由:A-SaaSのノウハウと会計事務所の顧客を取り込み、会計事務所でのシェアと顧問先へのfreee浸透を加速する
売上7億4,100万円・営業利益8,700万円・純資産マイナス2億700万円。営業損益は3,700万円の赤字→400万円→8,700万円と黒字化した直後でした。売り手は4社に打診する入札を行い、提示額だけでなく社内承認の速さや取引の確実性も含めてfreeeを選んだと開示されています。純資産がマイナスでも、黒字化していれば営業利益の20倍超の値段がつくことがある、という例です。
2022年6月30日に株式交換の効力発生予定として開示されました。その後の社名・合併を確かめられる開示は手元にありません。
合同会社ノンモ
記帳アプリ「Taxnote」の開発・提供/大阪府富田林市/2017年7月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 3,800万円
- 対象の営業利益
- 1,400万円
- 対象の純資産
- 3,200万円
決算期:2020年6月期/譲渡前の株主:個人1名(梅本 暖)が100%保有/任意開示かつ相手先との合意により非公表。第三者の評価を取得したうえで協議して決定
買収理由:モバイルで完結するスモールビジネス向け会計サービスを充実させる
資本金50万円の合同会社で、代表社員1人がすべての持分を持つ会社です。売上3,800万円・営業利益1,400万円(利益率37%)。アプリ1本の個人開発に近い規模でも、上場企業が任意で開示を出して買っています。株式会社でなくても、持分を譲る形で売れます。
取得と同時に、2021年8月10日を効力発生日としてフリー本体に吸収合併することが決まっていました。
株式会社サイトビジット
電子契約サービス「NINJA SIGN」、オンライン学習サービス「資格スクエア」/東京都千代田区/2013年4月設立
- 取得価額
- 27億5,600万円
- 対象の売上
- 7億8,200万円
- 対象の営業利益
- △1億3,600万円
- 対象の純資産
- △1億9,000万円
決算期:2019年12月期/譲渡前の株主:株式会社RISO(創業者の資産管理会社)34.68%、鬼頭 政人31.51%、その他33.81%(少数株主27名)/約70%分の株式取得価額。アドバイザリー費用等の概算32百万円を加えた合計は2,788百万円。RISOへの対価の一部は、資格スクエア事業の書籍不正利用事案の対応費用を差し引いて支払う留保条件付き
買収理由:電子契約市場に参入し、会計・ワークフロー・人事労務と契約を一体で管理できるようにする
売上7億8,200万円・営業損失1億3,600万円・純資産マイナス1億9,000万円。赤字・債務超過でも、急成長中の電子契約サービスに対して約27億6,000万円(70%分)がついています。創業者は約30%を持ったまま社長を続け、3〜5年後にfreeeが残りを買い取れる権利が株主間契約で決められました。一度に全部売らず、成長の果実を後で受け取る組み立てです。
2021年12月に資格スクエア事業を新設分割で切り出してレアジョブ等へ売却。2024年4月の開示に出る「フリーサイン株式会社」は、設立2013年4月・代表者鬼頭政人・株主構成(フリー70.13%、鬼頭政人29.87%)が一致するため同じ会社の新社名と推定されます(開示に旧社名の記載はありません)。同社は2024年6月30日を効力発生日とする株式交換で完全子会社になる予定と開示されています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- エン・ジャパン株式会社の「pasture」事業9億4,000万円(売上の6.10倍)
- Mikatus株式会社20億7,500万円(売上の2.80倍・営業利益の23.9倍)
- 株式会社サイトビジット27億5,600万円(売上の3.52倍)※営業赤字での譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページはフリー株式会社が公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月12日