株式会社クスリのアオキホールディングスのM&A実績
ドラッグストアに生鮮食品を組み合わせる「フード&ドラッグ」を進めるため、地方の食品スーパーを買い続けている会社です。売り手はほぼすべて創業家や個人株主で、石川・新潟・福島・茨城・京都北部など、自社のドラッグストアがすでに出ている地域の店を引き取っています。1店舗だけの有限会社から、売上90億円規模のスーパーまで幅があります。開示の「理由」はどの案件もほぼ同じ文面で、「鮮度の高い生鮮の売場」と「その地域の店舗網」が買う理由の中心です。
株式会社クスリのアオキホールディングスが公表した適時開示8件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月13日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 石川県白山市
- 設立
- ―
- 事業内容
- ドラッグストア(調剤薬局併設を含む)とスーパーマーケットの運営。北信越から四国までの26府県に1,144店舗(2026年5月期末)
- 売上高
- 5,668億6,500万円(2026年5月期(連結))
- 営業利益
- 270億9,600万円
- 純資産
- 1,410億3,800万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 食品スーパーマーケット/鮮魚・生鮮食品の小売/生活雑貨小売・企業研修(スーパーと一体で取得)
- 対象の規模
- 対象の売上 13.5億円〜48.8億円(事業譲受で会社全体の数字しか出ていない案件を含めると2.9億円〜91.3億円)
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)と事業譲受が半々。事業譲受は子会社のクスリのアオキが店舗とスーパー事業を引き取る形。会社分割(吸収分割)で子会社に事業を承継させた例や、株式取得と同時に吸収合併を決めた例もある
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 株式で買った会社は、社名のまま子会社として残す例と、取得と同じ日に吸収合併して法人を消す例(一二三屋)の両方があります。事業譲受の案件は、法人は売り手側に残り、店舗だけがクスリのアオキに移ります。買収した会社の本店を買い手の所在地に移し、代表を交代させた例(ナルックス)もあります。
- 取得価額は全件で非開示です。株式取得は「契約により非開示。第三者による株式価値の算定結果を勘案して決定」、事業譲受は「当事者間の守秘義務に基づき非公開」という決まった書き方です。純資産の何%といった水準の記述もありません
- 赤字・債務超過の会社からも店を買っています。三崎ストアー(純資産マイナス2億700万円)、サンエー(同マイナス2億2,200万円)、中尾(同マイナス3,200万円)は、いずれも会社ごとではなくスーパー事業だけを譲り受ける形でした
買収の履歴8件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社キューピットのスーパーマーケット事業
食品スーパー12店舗の運営(譲渡会社は生鮮食品のプロセスセンターも運営)/新潟県新潟市/譲渡会社は1973年7月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2025年7月期(譲渡会社)/当事者間の守秘義務に基づき非公開。譲り受ける資産・負債の金額も非公開
買収理由:新潟県での店舗数拡大。キューピットの店舗とノウハウを使い、北陸地区のドミナントを強める
開示されている数字は譲渡会社全体の売上91億2,800万円だけで、譲り受けた事業そのものの売上や利益は出ていません。この会社の案件でいちばん規模の大きい相手です。売上90億円を超えるスーパーでも、会社ごとではなく事業だけを渡す形が選ばれています。プロセスセンターを持つ会社でしたが、譲受の対象は「スーパーマーケット事業及びその他付随する資産」と書かれています。
法人ではなく事業を譲り受けた取引で、2026年5月期の決算短信に2026年2月24日付でクスリのアオキが事業譲受したと書かれています。その後この事業を譲渡した開示は確認できていません。
株式会社スポット、株式会社魚栄商店、株式会社魚齋藤、株式会社ティックス、有限会社学友舎(5社一括)
食品スーパー「ピアレマート」「ウオエイ」など計20店舗の運営、企業教育研修、生活雑貨店「THE PUEBLO SHOP」3店舗/新潟県長岡市ほか/1961年7月(魚栄商店)〜1991年11月(学友舎)設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:親会社ティックスの株主は個人(安全保護上の観点と秘密保持の合意により非開示)。スポットはティックスが82.8%、学友舎はティックスが90%を保有/売主との合意により非開示。第三者による株式価値の算定結果を勘案して決定
買収理由:高鮮度の生鮮食品と、教育体制に支えられた従業員の水準を取り込み、新潟でフード&ドラッグの店舗づくりを進める
5社とも代表は朝日幸勝氏で、持株会社のティックスを頂点に、スーパー3社と雑貨・研修の会社がぶら下がる形でした。スーパーと関係の薄い研修事業や雑貨店の会社まで含めて、グループを丸ごと100%引き取っています。買い手は研修のティックスと学友舎を非連結子会社として持ち、スーパー3社だけを連結しています。開示文は社長の経営姿勢や従業員教育を名指しで評価しており、数字に出ない「人の質」が買う理由として書かれた珍しい例です。業績は開示されていません。
2026年5月期の決算短信に、2026年2月24日付で5社の全株式を取得し、スポット・魚栄商店・魚齋藤は連結子会社、ティックスと学友舎は非連結子会社にしたと書かれています。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
出典:株式会社ティックス、株式会社スポット、株式会社魚栄商店、株式会社魚齋藤及び有限会社学友舎の株式取得に関するお知らせ
有限会社中尾のスーパーマーケット1店舗(大浜町店)
食品スーパー1店舗の運営/石川県能美市/譲渡会社は1979年8月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2022年8月期(譲渡会社)/譲渡前の株主:個人1名(中尾 篤史)が100%保有/当事者間の守秘義務に基づき非公開
買収理由:石川地区でのドミナント強化
資本金500万円の有限会社が、2店舗のうち1店舗だけを売った案件です。開示されているのは会社全体の数字で、売上2億8,500万円・経常損失1,200万円・純資産マイナス3,200万円の債務超過でした(店舗別の財務諸表がないため会社全体の数字を記載、と開示に注記あり)。会社を丸ごとではなく、店を1つだけ手放すという売り方も成り立つことを示しています。
法人ではなく店舗を譲り受けた取引で、2023年11月1日に譲渡予定と開示されています。譲渡の完了や、その後の再譲渡の開示は確認できていません。
株式会社サンエーのスーパーマーケット事業
食品スーパー2店舗の運営/新潟県糸魚川市/譲渡会社は1975年5月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 13億4,900万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2022年5月期(譲受事業)/譲渡前の株主:村井憲治47.1%、村井弘子47.1%、吉田敬子5.8%(個人3名)/当事者間の守秘義務に基づき非公開
買収理由:新潟地区でのドミナント強化
譲り受けた事業の売上13億4,900万円・経常損失2,700万円。譲渡会社全体では純資産マイナス2億2,200万円の債務超過でした(総資産3億6,200万円)。譲渡会社はスーパーのほか、介護施設の運営や不動産賃貸なども手がけており、スーパー事業だけを切り離して渡しています。赤字・債務超過でも、店舗の立地と売場に価値があれば買い手は付きます。
法人ではなく事業を譲り受けた取引で、2023年3月1日に譲渡予定と開示されています。譲渡の完了や、その後の再譲渡の開示は確認できていません。
株式会社三崎ストアーのスーパーマーケット事業
食品スーパー3店舗の運営/石川県金沢市/譲渡会社は1967年8月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 16億5,000万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2022年7月期(譲受事業)/譲渡前の株主:三﨑哲也53.5%、三﨑貫人32.5%、三﨑千鶴10%、三﨑俊雄4%(親族4名)/当事者間の守秘義務に基づき非公開
買収理由:北陸地区でのドミナント強化
譲り受けた事業の売上16億5,000万円・経常損失4,500万円。譲渡会社全体では純資産マイナス2億700万円の債務超過でした。三崎ストアーは以前からクスリのアオキの一部店舗にテナントとして入っており、取引のある相手に事業を渡した形です。普段から付き合いのある大手が、そのまま引き受け手になることがあります。
法人ではなく事業を譲り受けた取引で、2022年12月1日に譲渡予定と開示されています。譲渡の完了や、その後の再譲渡の開示は確認できていません。
株式会社一二三屋
食品スーパー4店舗の運営/福島県いわき市/1990年7月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 24億7,000万円
- 対象の営業利益
- △200万円
- 対象の純資産
- 3億8,700万円
決算期:2021年2月期/譲渡前の株主:阿部江美34.5%、阿部沙江34.5%、阿部恵子31.0%(個人3名)/契約により非開示。第三者による株式価値の算定結果を勘案して決定
買収理由:東北地区(いわき地方)でのドミナント強化
売上24億7,000万円・営業損失200万円・純資産3億8,700万円。経常利益は200万円、当期純利益はほぼゼロで、営業赤字すれすれの状態での譲渡でした。株主は阿部家の3名。株を買い取った日にそのまま吸収合併される段取りで、法人としては残らない前提の取引です。社名を残したいかどうかは、買い手によって答えが違うことが分かる例です。
取得と同じ開示で、2022年3月1日を効力発生日としてクスリのアオキが一二三屋を吸収合併し、一二三屋は解散すると決議されています。合併の中止や変更の開示は確認できていません。
株式会社スーパーマルモのスーパーマーケット事業等
食品スーパー7店舗、飲食店2店舗、総菜加工センター・精肉センターの運営/茨城県土浦市/分割会社は1980年11月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2020年2月期(分割会社)/譲渡前の株主:羽成光弘66.66%、羽成忠俊32.50%、羽成茂0.84%(親族3名)/開示に対価の記載なし。連結業績への影響は「軽微」
買収理由:茨城県でのドミナント強化
開示されているのは分割会社全体の売上55億1,200万円で、承継した事業だけの数字は出ていません。受け皿は、その10か月前に買ったばかりのナルックスでした。先に買った会社が、次の案件の受け皿になるという使い方です。利益や純資産は開示されていません。
法人ではなく事業を承継した取引で、2021年6月1日に効力発生予定と開示されています。承継先ナルックスのその後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社ナルックス
食品スーパー5店舗の運営(近海魚の刺身が中心)/石川県金沢市/1964年7月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 48億7,700万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:2019年5月期/譲渡前の株主:中西茂宏48.02%、中西茂和18.95%、従業員持株会10.16%ほか/契約により非開示。第三者による株式価値の算定結果を勘案して決定
買収理由:食品スーパーの鮮度の高い品揃えとドラッグストアの品揃えを組み合わせ、北陸のドミナントを強化
売上は57億4,500万円→52億9,500万円→48億7,700万円と3期続けて減っている局面での譲渡でした。取得したのは89.84%で、従業員持株会の10.16%は残りました。約10か月後の開示では、本店が買い手と同じ石川県白山市に移り、代表も交代、店舗数は2店舗、事業内容に「ドラッグストア」が加わっています。社名は残っても、店の数や中身は買い手の方針で大きく変わることが読み取れます。
2021年4月の開示でスーパーマルモの事業の承継先として登場しており、その時点で本店は石川県白山市、代表取締役は野口剛氏、株主は当社89.84%・ナルックス従業員持株会10.16%でした。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
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