株式会社メンタルヘルステクノロジーズのM&A実績
産業医サービスの周辺を買い広げている会社です。地方の産業医事務所(名古屋、福岡)、病院向けの看護補助者派遣、障害福祉制度を使ったリワーク事業所と、「働く人の健康」に関わる事業を年1件前後のペースで取得しています。売り手は創業社長個人、医師が経営する会社、非上場の持株会社とさまざまです。掲載した4件はすべて取得価額が開示されています。
株式会社メンタルヘルステクノロジーズが公表した適時開示4件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月13日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都港区
- 設立
- 2011年3月
- 事業内容
- 産業医・保健師の派遣とクラウド型サービス「ELPIS」を組み合わせた「産業医クラウド」を軸に、看護補助者の人材サービスやリワーク(復職支援)まで手がける会社
- 売上高
- 64億3,500万円(2025年12月期(連結))
- 営業利益
- 5億9,800万円
- 純資産
- 15億6,600万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 嘱託産業医サービス・ストレスチェック/看護補助者・医療事務の人材サービス/リワーク(復職支援)・就労移行支援
- 対象の規模
- 対象の売上 10.9億円〜27.4億円(業績記載のない新設会社2件を除く)。取得価額は1.4億円〜22.9億円
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)。売り手が会社分割で産業医事業だけを新会社に移し、その株式を買う形も使う
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残しています。看護補助者派遣のタスクフォースは「メディカルワークシフト事業」として独立したセグメントになり、明照会労働衛生コンサルタント事務所も2025年12月期の決算短信でグループ会社として名前が出ています。一方、タスクフォースでは取得と同時に社長が創業者から買い手の招いた人物に交代しています。
- 取得価額を毎回開示しています。4件とも金額とアドバイザリー費用の概算が載っており、算定方法も「第三者算定機関によるDCF法」等と書かれています
- 買収資金を銀行借入で調達しています。タスクフォースではみずほ銀行・りそな銀行から22億円、インクルードではみずほ銀行から5.9億円と、取得価額のほぼ全額を借りる計画が開示されています
- 取得価額の一部を役員退職慰労金で払った例があります。タスクフォースの22億9,500万円のうち3億4,500万円は、対象会社からの役員退職慰労金として支払う形でした
- 業績記載のない新設会社でも買っています。明照会とみらい産業医事務所は、いずれも設立から日が浅い会社で、過去の業績は「記載すべき事項はありません」とされています
買収の履歴4件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
インクルード株式会社
就労移行支援・自立訓練(生活訓練)事業所「ニューロリワーク」の運営(7都道府県26拠点)/東京都渋谷区/2013年3月設立
- 取得価額
- 5億9,000万円
- 対象の売上
- 10億9,600万円
- 対象の営業利益
- 7,600万円
- 対象の純資産
- 3億4,000万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:XBRAINホールディングス株式会社(非上場の持株会社)が100%保有/アドバイザリー費用等の概算20百万円を加えた合計は610百万円。取得資金は全額みずほ銀行からの借入で調達予定
買収理由:リワーク(復職支援)事業への参入。約3千社の法人顧客と結びつけ、産業保健から復職までを一体で提供する
売上10億9,600万円・営業利益7,600万円・純資産3億4,000万円に対して5億9,000万円。純資産の約1.7倍、営業利益の約7.8倍です。3期前は営業損失9,500万円・純資産マイナス2,800万円の債務超過で、営業損益は▲9,500万円→▲700万円→7,600万円と黒字に転じた直後の譲渡でした。拠点を広げる先行投資で赤字が続いても、黒字化が見えた段階なら値段がつくことが分かります。買い手は説明資料で、対象のネット広告費の重さを自社の法人顧客からの紹介で下げられる点を挙げており、集客を自力の広告に頼っている会社は、顧客網を持つ買い手と組むと評価されやすいと読めます。現経営陣(代表取締役)の続投も明記されています。
2026年3月31日に株式取得予定と開示されています。取得完了の報告や、その後の商号変更・合併の開示は確認できていません。
株式会社みらい産業医事務所
九州エリアでの嘱託産業医サービス/福岡県福岡市/2024年5月設立
- 取得価額
- 1億4,000万円
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 500万円
決算期:設立時点(2024年5月設立のため業績の記載なし)/譲渡前の株主:個人(氏名・持株比率は先方の意向で非開示)/アドバイザリー費用等の概算1百万円を加えた合計は141百万円。第三者算定機関のDCF法・マルチプル法を勘案して決定
買収理由:九州エリアでの顧客基盤の拡大と、クラウドサービス「ELPIS」の普及
設立7か月、資本金500万円の会社に1億4,000万円がつきました。開示には過去の業績がなく、純資産も設立時の500万円だけです。翌年の決算短信では、買収時の会計処理で「顧客関連資産」6,600万円とのれん8,700万円が計上されています。値段の中身は会社の器ではなく、抱えている顧客企業との契約だったことが読み取れます。買収と同じ日に、地元の医療法人との業務協力も発表されています。
2025年12月期の決算短信で、2024年12月18日付の企業結合として会計処理の確定が報告されています。商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社タスクフォース
大規模急性期病院向けの看護補助者を中心とする人材サービス/大阪府大阪市/2001年2月設立
- 取得価額
- 22億9,500万円
- 対象の売上
- 27億3,600万円
- 対象の営業利益
- 6,900万円
- 対象の純資産
- 1億6,000万円
決算期:2023年1月期/譲渡前の株主:個人1名(淺田 隆史・代表取締役)が100%保有/うち345百万円は対象会社からの役員退職慰労金として支払う。アドバイザリー費用等の概算140百万円を加えた合計は2,435百万円。取得資金はみずほ銀行・りそな銀行から総額2,200百万円を借入
買収理由:医療機関の現場に入り込む人材サービスの獲得。産業医の業務を保健師に移してきたノウハウを、看護師から看護補助者への業務移管に生かす
売上27億3,600万円・営業利益6,900万円・純資産1億6,000万円に対して22億9,500万円。純資産の14倍以上です。表面の営業利益は7,000万円前後でしたが、買い手は「子会社化後に発生しない費用を調整した正常収益力ベースで営業利益率約10%」と分析しており、オーナー企業特有の費用を除いた実力で値付けしたことが分かります。また代金のうち3億4,500万円は、対象会社からの役員退職慰労金として払う形でした。株の代金と退職金に分けて受け取る組み立ての実例です。愛知県の大規模急性期病院で3割超のシェア(買い手推計)という地域での強さも評価されています。
2024年2月29日に取得し、「メディカルワークシフト事業」として独立したセグメントになりました。2025年12月期の同セグメントは売上32億6,900万円・セグメント利益2億6,500万円です。社長は創業者から、買い手が招いた鳴川光平氏に交代しています(2024年2月の増資の開示)。商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社明照会労働衛生コンサルタント事務所(新設分割会社)
東海エリアでの嘱託産業医サービス・ストレスチェック(約400事業場弱)/愛知県名古屋市/2022年12月(分割元は2010年3月設立)設立
- 取得価額
- 2億円
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 1,600万円
決算期:設立時点(2022年12月、2023年2月の経過開示で確定)/譲渡前の株主:分割元の株式会社明照会労働衛生コンサルタント事務所(代表は医師の小倉行雄氏。株主構成は非開示)/アドバイザリー費用等の概算35百万円を加えた合計は235百万円。第三者算定機関のDCF法等を勘案して決定/新設会社のため業績の記載なし。分割元の売上は「未定」とされ開示されていない
買収理由:東海エリアでの顧客基盤拡大と、訪問診療グループを率いる小倉行雄氏とのパートナーシップ
会社ごとではなく、産業医の事業だけを新会社に切り出して売った案件です。分割元(純資産1億3,900万円)は「名古屋メディカルネットワーク」に商号を変え、医療コンサルティングの会社として残りました。新会社の純資産は1,600万円でしたが、値段は2億円。約400事業場との契約が評価された形です。分割元の代表だった小倉氏は譲渡後も買い手と顧問契約を結び、2024年のタスクフォース取得時には同社の新しい経営陣の一人として紹介されています。一部の事業だけを売り、自分は買い手と組んで次の事業に関わるという進め方の実例です。
2022年12月6日に取得完了。2025年12月期の決算短信でも、グループ内の会社として社名が挙がっています。商号変更や合併の開示は確認できていません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された4件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- インクルード株式会社5億9,000万円(売上の0.54倍・営業利益の7.8倍)
- 株式会社みらい産業医事務所1億4,000万円
- 株式会社タスクフォース22億9,500万円(売上の0.84倍・営業利益の33.3倍)
- 株式会社明照会労働衛生コンサルタント事務所(新設分割会社)2億円
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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