3608東証プライム

株式会社TSIホールディングスのM&A実績

「ブランドポートフォリオ経営」を掲げ、中期経営計画で「ファッションを軸足とした積極的なM&A」を続けてきた会社です。買っているのは、ひとつのブランドや業態に強い個性を持つ会社です。スカジャンの老舗、傘の専業、アウトドアのデザイナーズブランドなど、自社のブランド群の「空白地帯」を埋める相手を選んでいます。売り手は創業オーナー個人のこともあれば、投資ファンドのこともあります。

株式会社TSIホールディングスが公表した適時開示8件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月18日(新しい開示が出たら追加します)

会社概要

本社
東京都港区
設立
―
事業内容
「アヴィレックス」「ショット」「ナチュラルビューティーベーシック」など50を超えるアパレルブランドを束ねる持株会社。傘、人材サービス、化粧品なども傘下に持つ
売上高
1,670億8,500万円(2026年2月期(連結))
営業利益
43億2,500万円
純資産
993億2,100万円

どんな会社を買っているか

買う業種
アパレルの企画・製造・卸・小売/セレクトショップ/傘・服飾雑貨/化粧品の小売/アパレル業界向けの求人サービス
対象の規模
対象の売上 1.8億円〜393億円
手法
株式譲渡(子会社化)が中心。最初は70〜88%だけ取得する形も使う。小さなブランドは事業譲受で引き取ることもある
赤字でも買うか
黒字の会社のみ
買収後の扱い
デイトナ・インターナショナル、ウォーターフロント、READY TO FASHION、Laline JAPANは社名のまま子会社として残っています(2026年2月期決算短信で確認)。一方で、2018年に買った上野商会は、2020年からの構造改革で国内の事業子会社を統合する方針のもと、2022年に中核子会社のTSIへ吸収合併されました。大型の会社でも、数年後に統合される可能性はあると見ておくべき買い手です。
  • 取得価額が開示されたのは掲載8件のうち2件です。上野商会(150億1,600万円)とデイトナ・インターナショナル(283億円)という大型案件だけで、中小規模の案件はいずれも非開示です
  • 非開示の理由は案件ごとに書かれています。東洋エンタープライズは「取得相手先が個人であること」、ウォーターフロントは「守秘義務契約および先方の競争優位性確保のため」でした
  • 買うだけでなく、ブランドや子会社を他社へ売ることも多い会社です。2016年にヴィヴィアン タム事業をマツオインターナショナルへ、2020年にスピックインターナショナルをシーズメンへ、2024年にROSE BUD事業をビーズインターナショナルへ譲渡しています
  • 投資ファンドが一度買った会社を、次の持ち主として引き取る案件が続いています(デイトナ・インターナショナルはユニゾン・キャピタル、ウォーターフロントはジャフコから)

買収の履歴8件

すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。

2026年7月9日株式譲渡(完全子会社化)。東洋エンタープライズと同時に取得

株式会社レイラニトレーディング

繊維製品の輸入販売(東洋エンタープライズ製品の販売会社)/東京都墨田区/1999年8月設立

取得価額
―
対象の売上
4億3,100万円
対象の営業利益
9,900万円
対象の純資産
2億7,900万円

決算期:2025年7月期/譲渡前の株主:個人1名(小林 亨一)が100%保有/2社合計の取得価額7,909百万円が2026年10月14日に開示されましたが、内訳は非開示。金額は東洋エンタープライズの行に記載しています

買収理由:東洋エンタープライズの製品の販売会社として、あわせて子会社化

売上4億3,100万円・営業利益9,900万円・純資産2億7,900万円。社長が100%持つ販売会社で、本体の東洋エンタープライズの株式も12.3%持っていました。社長個人と関連会社に株が分かれていても、関連会社ごと買うことで100%の取得が成り立っています。

買収後存続2026年10月13日時点

2026年8月3日に株式譲渡を実行予定と開示されています。実行完了、商号変更や合併の開示は確認できていません。

確認元:(開示事項の経過)東洋エンタープライズ株式会社及び株式会社レイラニトレーディングの株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ

出典:(開示事項の経過)東洋エンタープライズ株式会社及び株式会社レイラニトレーディングの株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ

2026年7月9日株式譲渡(子会社化)。2026年4月に基本合意、7月に契約。残り12.3%は同時に取得するレイラニトレーディングが保有

東洋エンタープライズ株式会社(87.7%)

スカジャン・フライトジャケットなどの復刻衣料の企画・製造・卸(「テーラー東洋」「バズリクソンズ」)/東京都墨田区/1965年11月設立

取得価額
79億900万円
対象の売上
44億5,500万円
対象の営業利益
9億4,600万円
対象の純資産
61億8,900万円

決算期:2025年10月期/譲渡前の株主:小林亨一78.4%、レイラニトレーディング12.3%、小林博之9.3%(自己株式を除く)。創業家/2026年10月14日に後から開示されました(7,909百万円)。別にアドバイザリー費用等14百万円、合計7,923百万円。この金額は東洋エンタープライズとレイラニトレーディングの2社合計で、内訳は開示されていません。契約時は「取得相手先が個人のため非開示」とされていました

買収理由:アメカジ市場でのシェア拡大と、復刻の職人技を生かした限定ラインの展開

売上44億5,500万円・営業利益9億4,600万円(利益率21%)・純資産61億8,900万円。売上は3期で28億3,700万円→37億2,500万円→44億5,500万円、営業利益は4億6,400万円→9億4,600万円と2倍に伸びている最中の譲渡です。1940年代の創業から続く老舗で、「本物の復刻」という職人的な強みを持っていました。業績が伸びている時期に、上り調子のまま売る判断をした例です。製品の販売会社レイラニトレーディングもセットで売っており、製造と販売を別会社に分けていても、まとめて引き取ってもらえます。 契約時は非開示だった取得価額が、3か月後に7,909百万円(2社合計)と開示されました。2社合計の営業利益10億4,500万円に対して約7.6倍です。[取得価額が非開示でも金額を読む方法](/guide/price/hikaiji-kingaku-yomu)で書いたとおり、非開示は「永久に分からない」ではありません。決算短信に載せる段階で開示されることがあります。

買収後存続2026年10月13日時点

2026年8月3日に株式譲渡を実行予定と開示されています。実行完了、商号変更や合併の開示は確認できていません。

確認元:(開示事項の経過)東洋エンタープライズ株式会社及び株式会社レイラニトレーディングの株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ

出典:(開示事項の経過)東洋エンタープライズ株式会社及び株式会社レイラニトレーディングの株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ

2025年10月24日株式譲渡(完全子会社化)

株式会社ウォーターフロント

傘の企画・製造・卸売(「Waterfront」ブランド)/東京都渋谷区/2020年4月(前身の旧シューズセレクションは1986年5月設立)設立

取得価額
―
対象の売上
30億800万円
対象の営業利益
2億4,100万円
対象の純資産
15億6,100万円

決算期:2024年12月期/譲渡前の株主:ジャフコSV6投資事業有限責任組合80.0%、ジャフコSV6-S投資事業有限責任組合20.0%(投資ファンド)/非開示(守秘義務契約および先方の競争優位性確保のため)

買収理由:ファッションと親和性の高い「傘」をブランド群に加え、「雨の日」を起点にした顧客接点とレインウェアへの参入を狙う

売上30億800万円・営業利益2億4,100万円・純資産15億6,100万円。3期前は営業損失6,500万円、最終損失8億9,400万円でした。そこから売上を14億4,900万円→30億800万円と2倍にし、黒字に戻したところで売られています。売り手は創業家ではなく投資ファンド(ジャフコ)です。一度ファンドに売った会社が、立て直しの後に事業会社へ渡る流れがここにも出ています。

買収後存続2026年10月13日時点

2025年12月に完全子会社となり、2026年2月期決算短信で連結子会社として社名のまま記載されています。商号変更や合併の開示は確認できていません。

確認元:2026年2月期決算短信〔日本基準〕(連結)

出典:株式会社ウォーターフロントの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

2025年7月14日株式譲渡で70%を取得。同日に対象会社が残り30%を自己株式として取得し、実質100%

株式会社デイトナ・インターナショナル

セレクトショップ「FREAK'S STORE」約60店舗と自社EC「DAYTONA PARK」の運営、ファッション・雑貨・家具の企画販売/東京都渋谷区/2021年3月(前身の旧デイトナ・インターナショナルは1990年4月設立)設立

取得価額
283億円
対象の売上
393億3,900万円
対象の営業利益
5億3,900万円
対象の純資産
66億9,400万円

決算期:2025年2月期(連結)/譲渡前の株主:ユニゾン・キャピタル5号投資事業有限責任組合61.4%、Unison Capital Partners V(J), L.P. 8.6%(投資ファンド)、株式会社K Asset Management 30.0%/「完全子会社化に要する資金の総額」として開示された金額。株主のK Asset Managementが持つ30%分は、対象会社による自己株式取得の形で買い取る

買収理由:ストリート・カジュアル・アウトドア分野の補完と、OMO(店舗とECの一体運営)の基盤の取り込み

売上393億3,900万円・営業利益5億3,900万円・純資産66億9,400万円。取得額283億円は純資産の約4.2倍、営業利益の約52倍です。営業利益は5億9,200万円→営業損失1億5,000万円→5億3,900万円と波があり、最終損益は3期とも赤字でした。それでも高い値段がついたのは、約60店舗と自社ECを結んだ販売の仕組みと、20〜40代の顧客基盤が評価されたためと開示から読み取れます。利益の額だけでなく、顧客と売り場の仕組みそのものが値段になる例です。

買収後存続2026年10月13日時点

2026年2月期決算短信で、全株式を取得した主要な連結子会社として社名のまま記載されています。商号変更や合併の開示は確認できていません。

確認元:2026年2月期決算短信〔日本基準〕(連結)

出典:株式会社デイトナ・インターナショナルの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

2024年1月12日株式譲渡(完全子会社化)。譲渡前に社長が他の株主の持分を買い集めて100%にしてから譲渡

株式会社READY TO FASHION

アパレル特化の求人SNSプラットフォーム・SaaS型求人サービス、ファッション業界のメディア・イベント/東京都目黒区/2016年11月設立

取得価額
―
対象の売上
1億8,010万円
対象の営業利益
4,820万円
対象の純資産
8,010万円

決算期:2023年10月期(11か月累計の暫定値)/譲渡前の株主:高野聡司79.4%、株式会社DINOS CORPORATION 7.9%、パーソルベンチャーパートナーズ合同会社1.6%、その他11.1%。実行日までに高野氏が100%を保有する予定/非開示(株式譲渡契約の守秘義務による)

買収理由:人材支援子会社エス・グルーヴと連携し、HR事業を拡充する

売上1億8,010万円・営業利益4,820万円・純資産8,010万円。この会社の案件で最小の規模です。2年前は営業損失780万円、純資産マイナス80万円の債務超過でしたが、そこから黒字化して売っています。ベンチャーキャピタルや事業会社が少しずつ株を持っていても、社長が先に買い集めて100%にしてから売るという段取りが取られています。アパレル会社が、服ではなく業界向けのサービスを買った例でもあります。

買収後存続2026年10月13日時点

2026年2月期決算短信に、その他事業を担う会社として社名のまま記載されています。商号変更や合併の開示は確認できていません。

確認元:2026年2月期決算短信〔日本基準〕(連結)

出典:株式会社READY TO FASHIONの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

2018年10月5日株式譲渡(子会社化)。発行済株式の79.0%を取得

株式会社上野商会(79.0%)

「AVIREX」「Schott」「B'2nd」「L.H.P.」などメンズ・レディス・キッズウェアの企画・輸入・卸・小売/東京都渋谷区/1957年1月設立

取得価額
150億1,600万円
対象の売上
191億9,000万円
対象の営業利益
13億7,300万円
対象の純資産
107億2,300万円

決算期:2017年8月期(連結)/譲渡前の株主:長谷川文彦82.4%、上野商会社員持株会8.4%、その他9.2%/アドバイザリー費用等(概算)30百万円を加えた合計は15,046百万円

買収理由:自社のブランド群の空白地帯にある個性の強いブランドを取り込み、グローバルでの成長を図る

売上191億9,000万円・営業利益13億7,300万円・純資産107億2,300万円。79%で150億1,600万円、100%に換算すると約190億円で、純資産の約1.8倍です。営業利益は8億5,000万円→11億7,400万円→13億7,300万円と伸びていました。社長が82.4%を持つオーナー企業で、社員持株会も8.4%を持っていました。ただし買収から約3年半後の2022年3月、TSIへ吸収合併されて法人は消えています。ブランドは残っても会社は残らない場合がある、という例です。

買収後吸収合併2026年10月13日時点

TSIホールディングスの100%子会社となった後、2022年3月1日を効力発生日として、同じく100%子会社の株式会社TSIに吸収合併され解散しました。

確認元:完全子会社の吸収合併に関するお知らせ

出典:(株)上野商会の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

2016年5月23日株式譲渡(子会社化)。発行済株式の70%を取得

Laline JAPAN株式会社(70%)

死海のミネラルを使った自然派化粧品の小売(「Laline」20店舗)/福岡県福岡市/2010年7月設立

取得価額
―
対象の売上
10億8,700万円
対象の営業利益
―
対象の純資産
―

決算期:2015年6月期/譲渡前の株主:レヴィ トニー85.7%、浦田さつき14.3%(個人2名)/非開示(開示文に取得価額の記載なし)

買収理由:天候・景気に左右されにくいオーガニック化粧品を加えてポートフォリオを安定させ、店舗開発力で多店舗化を加速する

売上は5億8,400万円→7億9,800万円→10億8,700万円と2年で約1.9倍。アパレルの会社が、異業種の化粧品の会社を買っています。評価されたのは、ディベロッパーからの評価が高いブランド力と、まだ伸ばせる出店余地でした。自社だけでは出店を増やしきれない会社にとって、店舗開発力のある買い手は相性がよいことが読み取れます。利益と純資産は開示されていません。

買収後存続2026年10月13日時点

取得から約10年後の2026年2月期決算短信にも、化粧品等の販売を行う会社として社名のまま記載されています。残り30%の取得や商号変更の開示は確認できていません。

確認元:2026年2月期決算短信〔日本基準〕(連結)

出典:Laline JAPAN株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

2016年2月26日株式譲渡で2社を同時に完全子会社化

アナディス株式会社・有限会社シェ・アナン

セレクトショップ「アンシェヌマン・ミニョン」など直営14店舗の運営、卸・OEM(製造販売はアナディス、企画・バイイングはシェ・アナン)/東京都渋谷区/アナディスは2002年9月、シェ・アナンは2001年3月設立

取得価額
―
対象の売上
29億1,700万円
対象の営業利益
―
対象の純資産
―

決算期:2015年2月期/譲渡前の株主:アナディス:株式会社ビスケー66%、吉永政利34%。シェ・アナン:吉永ゆかり100%/非開示(開示文に取得価額の記載なし)/アナディス2,092百万円とシェ・アナン825百万円の単純合算(いずれも2015年2月期)

買収理由:30〜40代の高感度な女性客に支持されるセレクトショップを加え、ブランド群を強化する

2社合計で売上29億1,700万円。製造販売の会社と企画・バイイングの会社が分かれ、株主もそれぞれ別でした。それを2社まとめて100%買う形で成立しています。役割ごとに会社を分けていても、一体で運営されていれば一括で引き取ってもらえます。利益と純資産は開示されていません。

買収後不明2026年10月13日時点

2社についての商号変更・合併・譲渡の個別の開示は確認できていません。ただし2022年1月の開示に「2021年3月にグループ会社8社を吸収合併した」との記載があり、その中に含まれるかどうかは開示からは分かりません。

確認元:完全子会社の吸収合併に関するお知らせ

出典:アナディス株式会社及び有限会社シェ・アナンの株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ

この会社に売るといくらか

取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。

  • 東洋エンタープライズ株式会社(87.7%)79億900万円(売上の1.78倍・営業利益の8.4倍)
  • 株式会社デイトナ・インターナショナル283億円(売上の0.72倍・営業利益の52.5倍)
  • 株式会社上野商会(79.0%)150億1,600万円(売上の0.78倍・営業利益の10.9倍)

自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。

関連する記事

本ページは株式会社TSIホールディングスが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月18日