株式会社ウィルグループのM&A実績
人材派遣の大手グループです。国内では、地方の製造業派遣、建設技術者の派遣、医療・福祉の人材紹介といった「人材サービスの隣」を買っています。売り手は創業社長などの個人オーナーが中心で、ソフトバンクグループの子会社を引き取った例もあります。2015〜2016年には広告代理店、映像制作、ITコンサルなど人材以外にも手を広げましたが、その一部は後に売却しています。
株式会社ウィルグループが公表した適時開示6件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都中野区
- 設立
- 2006年4月
- 事業内容
- 人材派遣・業務請負・人材紹介を国内外で展開する「WILLOF(ウィルオブ)」ブランドの人材サービスグループの持株会社
- 売上高
- 1,468億5,600万円(2026年3月期(連結・IFRS))
- 営業利益
- 32億7,900万円
- 純資産
- 201億6,800万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 製造業向けの人材派遣・業務請負/建設技術者(施工管理技士)の派遣・紹介/医療・福祉の人材紹介/広告代理店/映像制作/ITコンサルティング
- 対象の規模
- 対象の売上 13.6億円〜35億円(業績が開示された3件)。設立7か月の会社への出資もある
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。子会社を買い手にする「孫会社化」、51%〜62%だけを取得する一部取得、第三者割当増資の引受けによる子会社化も使う
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- クリエイティブバンクやHR CAREERは社名のまま子会社として残っています。一方で、建設技術者派遣のC4は「ウィルオブ・コンストラクション」としてグループのブランド名に変わったとみられます。子会社化した会社を数年後に売却した例もあります(ハイブリィド、ボーダーリンク)。
- 国内の買収では、6件中4件で取得価額が開示されています。C4は約34億円、クリエイティブバンクは7億9,300万円、リトルシーズサービスは5億4,500万円でした
- C4の取得では、34億円を三菱UFJ銀行・みずほ銀行から無担保で借り入れて代金に充てています。売上35億円規模の会社でも、上場企業は借入をしてまで買いに来ます
- 2018年のC4以降、国内の買収は2025年のHR CAREERまで7年間ありません。その間はシンガポールやオーストラリアなど海外の人材会社の買収が中心で、それらはこの名鑑には載せていません
- 2025年のHR CAREERは「ニュースリリース」形式の簡単な開示で、取得価額・業績・株主構成はいずれも出ていません
買収の履歴6件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社HR CAREER
医療・福祉業界に特化した人材紹介(看護師・介護士・栄養士・保育士が中心)/東京都渋谷区/2020年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:開示なし/非開示。「連結業績への影響は軽微」とのみ記載
買収理由:派遣が中心の国内事業で、まだ小さい人材紹介事業を強化する。医療・介護などのエッセンシャル領域への参入
設立5年の会社です。取引先900社ほどの基盤と、エリア・職種ごとに専門のコンサルタントを置いた「高い成約率を実現するオペレーション力」が評価されています。買い手は自社の国内売上の大部分が派遣で、紹介事業が小さいことを買収理由として明記しています。買い手側の弱いところを埋められる会社は、創業から日が浅くても買われます。
C4株式会社
建設技術者(施工管理技士)の派遣・紹介/神奈川県横浜市/2011年5月設立
- 取得価額
- 33億9,988万円
- 対象の売上
- 34億9,482万円
- 対象の営業利益
- 3億610万円
- 対象の純資産
- 9億1,871万円
決算期:2018年3月期(株主総会承認前の数値)/譲渡前の株主:上村 隆雅85.70%、木村 健太郎13.04%、新開 康博1.26%(個人3名)/デュー・デリジェンス費用等(概算)10百万円を加えた合計は約3,409百万円。取得資金として三菱UFJ銀行・みずほ銀行から計3,400百万円を無担保で借入
買収理由:人材派遣以外の新たな注力事業の創出。成長する建設業界の人材サービスのノウハウ取得と、C4側はグループの全国拠点網で新エリアを開拓
売上34億9,500万円・営業利益3億600万円・純資産9億1,900万円。取得価額は約34億円で、営業利益の約11倍、純資産の約3.7倍です。東日本大震災の復興支援を目的に2011年に始めた会社で、東北の施工管理技士派遣で2割程度のシェアを持っていました。技術者が全員正社員であることや、施工管理技士専門の求人サイトを自社で持ち、経験者を採用できる仕組みが評価されています。設立7年でも、人を集める仕組みと地域シェアがあれば、30億円を超える値段がつきます。売上は32億8,000万円→34億9,400万円→34億9,500万円と横ばい、営業利益は3億3,500万円→3億2,400万円→3億600万円とやや下がっている局面での譲渡でした。
2024年1月の開示に出てくる子会社「ウィルオブ・コンストラクション」(建設技術者の派遣・紹介)は、資本金98,380千円・設立2011年5月10日がC4と一致しており、C4が商号変更した会社と推定されます(商号変更そのものの開示は確認できていません)。同開示では、2022年3月期・2023年3月期に営業損失(約6億円)が続き、親会社が貸付金851百万円を株式に振り替えて財務を立て直すと説明されています。グループ会社一覧にも掲載されています。
株式会社リトルシーズサービス
製造業向けを中心とした人材派遣・業務請負/福島県郡山市/1999年7月設立
- 取得価額
- 5億4,500万円
- 対象の売上
- 13億5,729万円
- 対象の営業利益
- 8,093万円
- 対象の純資産
- 2億1,290万円
決算期:2016年9月期/譲渡前の株主:個人1名(平 良一)が100%保有/デュー・デリジェンス費用等(概算)32百万円を加えた合計は約577百万円
買収理由:製造業派遣で業界1位を目指す子会社エフエージェイの東北進出。両社の事業を効率的に運営して収益力を高める
売上13億5,700万円・営業利益8,100万円・純資産2億1,300万円。取得価額5億4,500万円は、営業利益の約6.7倍、純資産の約2.6倍です。営業利益は900万円→6,700万円→8,100万円と、ほぼ利益が出ていなかった年から2期で立て直した直後の譲渡でした。福島県内でトップクラスの取引企業数と登録者数を持つ地域密着の派遣会社です。地方の派遣会社でも、地域で一番手の顧客基盤があれば、全国展開の大手が買いに来ます。
現在のグループ会社一覧(国内7社)に社名がなく、合併・売却を示す開示も確認できていません。なお、取得主体のエフエージェイと所在地・代表者・設立年月が一致する「ウィルオブ・ファクトリー」は、2021年7月にウィルオブ・ワークへ吸収合併されています(2021年2月1日開示『連結子会社間の合併に関するお知らせ』)。
株式会社サムシングファン
映像制作(企業向けの動画広告制作、映像制作の内製化支援)/大阪府箕面市/2003年3月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:開示なし/取得先との合意により非公表。第三者機関による株式価値の算定結果を基に、双方協議の上で決定
買収理由:自社の企業向け動画共有サービス「VideoSpace」と映像制作力を組み合わせ、動画市場で事業を伸ばす
資本金1,000万円の映像制作会社です。買われたのは51%だけで、残り49%は既存株主の手元に残りました。買い手は前年に始めた自社の動画サービスに「コンテンツ制作力」を足す目的で、人材とは別の分野の会社を買っています。買い手の新規事業に足りない機能を持っている会社は、本業が違っても候補になります。業績は開示されていません。
ハイブリィド株式会社
情報システムコンサルティング(中堅・中小企業の情報システム部門の支援)/東京都港区/2015年3月設立
- 取得価額
- 1,454万円
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示(設立7か月)/譲渡前の株主:開示なし(取得前の資本金は100万円)/既存株主から株を買い取った金額ではなく、新株の払込金額
買収理由:人材サービスのノウハウとITコンサルティングのノウハウを組み合わせ、事業拡大と事業機会の発掘を効率化する
設立7か月、資本金100万円の会社に1,453万5,000円を払い込んで51.2%を握った案件です。オーナーが株を売ったのではなく、会社に新しくお金を入れてもらう形でした。買い手とはもともと取引関係がありました。その後、2022年3月期には売上13億7,400万円・営業利益1億3,600万円まで伸びています(2023年3月の売却開示による)。創業直後に上場企業の資本を受け入れて事業を伸ばし、数年後に上場企業側が株を手放す、という道筋もあります。
2023年3月、保有153株のうち97株をハイブリィドと同じ所在地の特別目的会社HIBパートナーズへ257百万円で譲渡し、連結子会社から外れました。残る56株も2023年6月末に同社へ譲渡しています。開示は買い手(ウィルグループ)側の説明です。
株式会社クリエイティブバンク
広告代理店(IT分野を中心とした集客・販売戦略の広告宣伝の企画・実施)/東京都千代田区/1986年12月設立
- 取得価額
- 7億9,300万円
- 対象の売上
- 27億8,649万円
- 対象の営業利益
- 2億4,312万円
- 対象の純資産
- 7億2,591万円
決算期:2015年3月期/譲渡前の株主:ソフトバンクグループ株式会社(上場企業)62.58%、内藤 正二31.96%ほか/デュー・デリジェンス費用等(概算)9.7百万円を加えた合計は約802.7百万円
買収理由:家電量販店などでの販売支援(セールスアウトソーシング)に広告宣伝を加え、人材ソリューションと組み合わせた連鎖型の収益モデルをつくる
売上27億8,600万円・営業利益2億4,300万円・純資産7億2,600万円。62.58%で7億9,300万円なので、100%換算では約12.7億円。営業利益の約5.2倍、純資産の約1.7倍にあたります。売り手は親会社のソフトバンクグループで、社長は31.96%を持ったまま残りました。買い手の子会社とはもともと取引があり、取引先として実績のある相手が、そのまま買い手になった例です。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された4件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- C4株式会社33億9,988万円(売上の0.97倍・営業利益の11.1倍)
- 株式会社リトルシーズサービス5億4,500万円(売上の0.40倍・営業利益の6.7倍)
- ハイブリィド株式会社1,454万円
- 株式会社クリエイティブバンク7億9,300万円(売上の0.28倍・営業利益の3.3倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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