株式会社Sun AsteriskのM&A実績
「手元の潤沢な資金を活用したM&A」で非連続的な成長を目指すと公言しているIT企業です。買っているのはシステム受託開発、スマホゲーム、デジタルコンテンツ制作といった、自社の開発・クリエイティブ事業に隣接する会社です。件数は多くありませんが、価格・業績・算定方法を毎回開示しているので、IT・ゲーム会社が何倍で売れたかがはっきり読めます。売り手は創業社長個人のほか、上場ゲーム会社が持っていた子会社もあります。
株式会社Sun Asteriskが公表した適時開示4件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都千代田区
- 設立
- 2013年3月
- 事業内容
- ベトナムなどの開発拠点を持ち、新規事業・プロダクトの企画開発支援(デジタル・クリエイティブスタジオ)とIT人材の育成・紹介を手がける会社。ゲームやイラスト制作などのエンタメ領域も持つ
- 売上高
- 148億3,500万円(2025年12月期(連結))
- 営業利益
- 10億5,200万円
- 純資産
- 106億6,200万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 業務システムの受託開発/スマートフォン向けゲームアプリの企画・開発・運営/ゲーム開発・イラスト・漫画動画などのデジタルコンテンツ制作/日本語テスト・日本語研修(IT人材事業の周辺)
- 対象の規模
- 対象の売上 4.9億円〜19.4億円(日本語研修のバベルメソッドは業績非開示)
- 手法
- 株式譲渡で100%を取得する子会社化が中心。まず40%を買って持分法適用会社にし、その後の第三者割当増資の引受けで88%まで引き上げた例もある
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残すのが基本ですが、同じ領域の子会社どうしはまとめ直します。2026年1月には、2021年に買ったTrysが2025年に買ったグローバルギアを吸収合併し、社名を「グローバルギア」に変えたうえで、イラスト・ウェブコミック等の受託制作を新設の「Trys」に切り出しています。法人は入れ替わっても、両方の屋号は残る形です。
- 取得価額は自社の判断で買った3件すべてで開示されています。5億6,900万円(Trys)、11億円(グローバルギア)、9億円(MIXENSE)。あわせて対象の3期分の業績も出ています
- 算定方法も書かれています。MIXENSEでは「デューデリジェンスを実施のうえ、第三者機関が算出したDCF法、類似会社比較法による評価額を踏まえ、売り主との協議により決定」とあり、売り主との協議で価格を決めたことが明記されています
- 赤字・債務超過の会社も買っています。Trysは直前期に営業損失2億2,100万円、純資産マイナス4,700万円でしたが、不採算事業の撤退や財務リストラクチャリングを進め、黒字化を見込んでいる局面で売れています
- グローバルギアの売り手である上場ゲーム会社KLabとは、取得と同じ2025年6月25日に業務提携契約を結び、2025年12月には同社の第三者割当増資を2億700万円で引き受けて1.25%を持つ資本業務提携に進んでいます。少数出資のため買収案件には入れていません
- このほか2021年のLiver Bankとの資本業務提携、2024年5月のフィリピン開発拠点(Sun Asterisk Software Development)の子会社化があります。前者は資本業務提携、後者は海外の元グループ拠点のため、買収案件には入れていません
買収の履歴4件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
バベルメソッド株式会社
オンライン日本語スピーキングテスト「Japrise」、オンライン日本語会話研修「BABELMETHOD」の開発・運営/東京都品川区/2021年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示(先方の要請)/譲渡前の株主:40%分の売り手は株式会社JELLYFISH(採用・教育コンサルティング等の事業会社)。それ以外の株主構成は非開示/非開示。いずれも「第三者機関の算定を実施し合理的と評価」。40%取得時は「軽微基準に該当」とされている
買収理由:育成・採用支援する海外IT人材に日本語コミュニケーション力を組み合わせ、人材事業(タレントプラットフォーム)を差別化する
2022年10月から取引があり、Sun Asteriskはバベル社の主要顧客かつ販売代理店でした。まず取引先として付き合い、次に40%を持ち、約7か月後に過半数を取る、という段階を踏んだ買い方です。2回目は既存株主から買うのではなく、会社が新株を発行して引き受けてもらう形(第三者割当増資)で、会社に資金が入ります。いきなり全部を売らず、大口顧客に一部を持ってもらうところから始める道もあることを示す例です。業績は非開示です。
2026年7月22日に第三者割当増資の引受けによる子会社化(議決権88.0%、実行は2026年8月1日予定)を開示。当社から従業員1名を役員として派遣しています。公式サイトのグループ会社一覧(2026年10月9日確認)にはまだ載っていません。
株式会社MIXENSE
業務系・制御系システムの受託開発/東京都千代田区/2011年12月設立
- 取得価額
- 9億円
- 対象の売上
- 5億8,500万円
- 対象の営業利益
- 8,900万円
- 対象の純資産
- 2億3,400万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:星野淳一(代表取締役)80%、その他20%(株式取得の相手先は「個人」と開示)/デューデリジェンスのうえ、第三者機関がDCF法・類似会社比較法で算出した評価額を踏まえ、売り主との協議により決定。取得資金は手元資金+金融機関からの借入(予定)
買収理由:業務プロセスのデジタル化(デジタイゼーション)領域の強化、人材・チームの取り込み、顧客基盤の連携
取得価額9億円に対し、売上5億8,500万円・営業利益8,900万円・純資産2億3,400万円。営業利益の約10倍、純資産の約3.8倍です。売上は3億3,700万円→4億1,800万円→5億8,500万円と2期で1.7倍に伸び、営業利益もこの期にほぼ倍増していました。伸びている最中に売ると、直近期の利益をもとに高い倍率がつきます。開発は外部パートナーを活用し、自社は要件定義から上流を担う形で、大手通信キャリアなどとの長期取引が評価されています。社長が80%を持つ資本金1,000万円の会社です。
2026年1月5日に株式譲渡実行予定として開示。公式サイトのグループ会社一覧に「株式会社ミクセンス」が載っており、これがMIXENSEのカタカナ表記と推定されます(同一社であることはページ上に明記されていません)。
株式会社グローバルギア
スマートフォン向けカジュアルゲームアプリの企画・開発・運営(広告収益モデル)/福岡県福岡市/2013年1月設立
- 取得価額
- 11億円
- 対象の売上
- 4億9,000万円
- 対象の営業利益
- 2億4,200万円
- 対象の純資産
- 3億8,900万円
決算期:2024年12月期/譲渡前の株主:KLab株式会社(東証プライム上場)が100%保有/第三者機関の算定を実施し合理的と評価。取得資金は手元資金+金融機関からの借入(予定)
買収理由:カジュアルゲーム事業への参入と、エンターテインメント領域での新たな収益基盤の構築
取得価額11億円に対し、売上4億9,000万円・営業利益2億4,200万円(利益率49.5%)・純資産3億8,900万円。営業利益の約4.5倍です。170本以上のアプリを出し、人気シリーズは累計2,000万ダウンロード超。それでも倍率は5倍を切っています。売上は4億9,300万円→5億8,400万円→4億9,000万円と、ヒットに左右される事業でした。また純資産は8億8,900万円→3億8,900万円と減っており、直前2期に1株あたり800万円・600万円(発行済60株)の配当が出ています。譲渡前に配当で現金が株主に戻っていれば、そのぶん会社に残る純資産は減ります。価格を見るときは、配当で受け取った分と合わせて考える必要があります。売り手は上場ゲーム会社KLabでした。
2026年1月1日付で同じ子会社のTrysに吸収合併され、法人としては消滅する予定と開示されました。ただし存続会社のTrysが商号を「株式会社グローバルギア」に変え、本店も福岡市に移すため、社名と拠点は残ります。代表は合併後もグローバルギア側の佐藤竜史氏です。公式サイトのグループ会社一覧にも「株式会社グローバルギア」が載っています。
株式会社Trys
ゲーム開発・運営、イラストなどデジタルコンテンツ制作、漫画動画/東京都港区/2008年2月設立
- 取得価額
- 5億6,900万円
- 対象の売上
- 19億4,300万円
- 対象の営業利益
- △2億2,100万円
- 対象の純資産
- △4,700万円
決算期:2020年12月期/譲渡前の株主:大株主は個人(先方の要請により氏名・持株比率は非開示)/アドバイザリー費用等(概算)4百万円を加えた合計は約573百万円。取得資金は手元現預金
買収理由:エンターテインメント領域の事業拡大。ブロックチェーン技術とゲーム開発の知見を組み合わせ、NFTなどの領域に展開する
直前期は売上19億4,300万円に対し営業損失2億2,100万円、純資産マイナス4,700万円の債務超過でした。それでも5億6,900万円の値段がついています。3期の営業利益は△2億7,900万円→7,800万円→△2億2,100万円と赤字が続いていました。Exysとトライフォートの2社統合後に不採算事業からの撤退や財務の立て直しに取り組み、今期は黒字化を見込んでいると開示されており、立て直しの途中でも、人材やノウハウに使い道があれば買い手は付きます。
2026年1月1日付でグローバルギアを吸収合併して商号を「株式会社グローバルギア」に変え、本店を福岡市へ移す予定と開示されました。イラスト・ウェブコミック等の受託制作は2026年1月5日付の新設分割で新しい「株式会社Trys」に移されています。公式サイトのグループ会社一覧には両社とも載っています。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社MIXENSE9億円(売上の1.54倍・営業利益の10.1倍)
- 株式会社グローバルギア11億円(売上の2.24倍・営業利益の4.5倍)
- 株式会社Trys5億6,900万円(売上の0.29倍)※営業赤字での譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
関連する記事
本ページは株式会社Sun Asteriskが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日