株式会社スカラのM&A実績
SaaSの会社として始まり、自治体向けシステム、人材、ペット保険、トレカ店と、業種をまたいで買ってきた会社です。「中期経営計画2026-2028」では既存事業とのシナジーが期待できるM&Aを重要な成長戦略のひとつとし、2026年には2か月で2社を買っています。取得価額をほぼ毎回、金額で開示しているのがこの会社の特徴です。売り手は創業社長や個人オーナーが中心ですが、一般社団法人が持っていた会社も買っています。
株式会社スカラが公表した適時開示7件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月13日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都渋谷区
- 設立
- 1987年2月
- 事業内容
- FAQ・サイト内検索などのSaaSを軸にしたDX事業、採用支援の人材事業、トレーディングカードの買取販売(TCG事業)、官民共創の新規事業支援を手がける会社
- 売上高
- 85億3,300万円(2026年6月期(連結・IFRS))
- 営業利益
- 5億2,200万円
- 純資産
- 47億9,800万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 自治体向けシステム・ソフトウェア開発/店舗運営支援システム(POS等)/トレーディングカードの店舗販売/人材紹介・就職支援/ペット保険(少額短期保険)/ウェブシステム構築・経営コンサルティング
- 対象の規模
- 対象の売上 0.66億円〜20億円
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。子会社が買い手になる孫会社化、80%だけ先に買い残りを業績連動で買うオプション、株式交換(自社株を対価にする)も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残すのが基本です。一方で、合わないと判断した会社は売却しています。ジェイ・フェニックス・リサーチは買収から約4年で元の社長へ、日本ペット少額短期保険は約3年でベイシアグループ総研へ譲渡されました。「買われたら最後まで面倒を見てもらえる」とは限らない会社です。
- 取得価額をほぼ毎回、百万円単位で開示しています。掲載7件のうち6件で金額が出ています。アドバイザリー費用(1,500万円〜7,800万円)まで別に書かれているので、仲介・FA費用の水準も読めます
- 営業利益の5〜6倍が目安になっています。テラは100%換算で約10億5,000万円・営業利益1億8,000万円の約5.8倍、エッグは9億2,800万円・営業利益1億7,000万円の約5.5倍でした
- 営業赤字の会社も買っています。トライアックス(営業損失2,000万円)、ジェイ・フェニックス・リサーチ(営業損失200万円)がその例です
- 買った後に手放すことがあります。2023年以降、ジェイ・フェニックス・リサーチ、日本ペット少額短期保険、グリット傘下のRetoolを相次いで譲渡しています
買収の履歴7件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社テラ(80%)
通信キャリアショップ向けPOSシステム「TelephoneMaster」、店舗マネジメントツール等の企画・開発・運用(約2,500店舗に導入)/神奈川県鎌倉市/1989年6月設立
- 取得価額
- 8億4,000万円
- 対象の売上
- 9億5,900万円
- 対象の営業利益
- 1億8,000万円
- 対象の純資産
- 2,200万円
決算期:2025年12月期(分割後の試算)/譲渡前の株主:佐藤渉(社長)52.20%、株式会社ベルメール16.50%、横田聡6.50%、増田善久6.50%ほか。社長が譲渡日までに他の少数株主の株を買い集める予定と開示/80%分の対価。アドバイザリー費用等18百万円を加えた合計は858百万円(概算)。過去の実績、財政状態、経営計画と外部機関の財務税務・法務デューデリジェンスに基づき交渉で決定/会社分割後の試算ベースの数値
買収理由:通信キャリアショップの店舗オペレーションの知見・顧客基盤と、AI SaaS・AI BPOの技術を組み合わせる
売上9億5,900万円・営業利益1億8,000万円・純資産2,200万円(いずれも分割後の試算)。80%で8億4,000万円、100%換算なら約10億5,000万円で、営業利益の約5.8倍です。純資産はわずか2,200万円なので、値段のほとんどは稼ぐ力と顧客基盤に対してついています。残り20%は業績次第で価格が変わる契約で、社長は一部を持ったまま経営に関わる形です。譲渡前にシステム事業以外を別会社へ切り出し、散らばっていた少数株主の株を社長が先に集めてから売る段取りも開示されています。
2026年8月14日に会社分割、9月1日に株式譲渡が完了し、連結子会社になったと開示されています。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社HATO
トレーディングカードショップ「トレカサンライズ」の店舗運営(大阪・東京・福岡・兵庫・広島・長野など)、イベントの企画・運営/大阪府大阪市/2021年12月設立
- 取得価額
- 1億8,500万円
- 対象の売上
- 6億2,500万円
- 対象の営業利益
- 200万円
- 対象の純資産
- 2,200万円
決算期:2025年6月期/譲渡前の株主:個人1名(上井 雄司)が100%保有/アドバイザリー費用等23百万円を加えた合計は208百万円(概算)。過去の実績、財政状態、経営計画と外部機関の財務税務・法務デューデリジェンスに基づき交渉で決定
買収理由:トレカのECサイト「遊々亭」を運営する子会社が、実店舗を加えてECと店舗を融合させる
創業5期目、売上6億2,500万円・営業利益200万円・純資産2,200万円。売上は5億8,400万円→8億4,200万円→6億2,500万円と上下し、営業利益は前期に赤字(100万円の損失)でした。利益がほとんど出ていなくても1億8,500万円、純資産の8倍以上の値段がついています。評価されたのは利益よりも、複数地域の店舗網と「プレイヤー目線」の接客文化だと開示に書かれています。ネット専業の買い手にとって、自分で作るのが難しい実店舗の現場力は買う理由になります。
2026年7月1日に株式取得が完了し、孫会社になりました。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
日本ペット少額短期保険株式会社
ペット保険「いぬとねこの保険」の運営(少額短期保険業)/東京都港区/2012年2月設立
- 取得価額
- 4億2,900万円
- 対象の売上
- 17億7,300万円
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- 9,300万円
決算期:2021年3月期/譲渡前の株主:密山根成87.0%、ドリームキャピタル株式会社(密山氏が100%保有)6.5%、川本芳夫4.2%ほか/当初400百万円で合意したが、対象会社がソルベンシーマージン比率を満たすため増資したことから、その分を上乗せして429百万円に変更。アドバイザリー費用等24百万円を加えた合計は454百万円(概算)/保険会社のため売上高ではなく経常収益
買収理由:グループの大企業・自治体等の顧客基盤を生かした保険事業への展開
経常収益17億7,300万円・経常利益4,600万円・純資産9,300万円。経常損益は6,500万円の損失→2,700万円の損失→4,600万円の利益と、2期続いた赤字から黒字に転じた直後の譲渡でした。保険会社は監督官庁の承認が要るため、契約から実行まで2か月半かかっています。契約後に増資が必要になった分は、そのまま取得価額に上乗せされています。なお、この会社は約3年後に別の会社へ再び売られました(下記)。
2025年6月30日、株式会社ベイシアグループ総研へ全株式を譲渡しました。譲渡前に増資が行われ、資本金は9億3,100万円になっていました。スカラは個別決算で1億900万円の特別損失を計上しています。
株式会社エッグ
ふるさと納税の自治体向け基幹システム(約680自治体に導入)、システム開発・保守、BPO/鳥取県米子市/1949年2月設立
- 取得価額
- 9億2,800万円
- 対象の売上
- 17億1,500万円
- 対象の営業利益
- 1億7,000万円
- 対象の純資産
- 2億2,200万円
決算期:2021年9月期/譲渡前の株主:一般社団法人EGGが100%保有/アドバイザリー費用等78百万円を加えた合計は1,006百万円(概算)。過去の実績、財政状態、経営計画とデューデリジェンスに基づき交渉で決定/エッグ単体の数値。傘下に入れたコロンブス(売上53百万円)、Bizサポート(同113百万円)、エッグ総研(同30百万円)は含まない
買収理由:全国の自治体との取引基盤を取り込み、自治体向けDX支援を広げる
売上17億1,500万円・営業利益1億7,000万円・純資産2億2,200万円。9億2,800万円は営業利益の約5.5倍、純資産の約4倍です。創業1949年、鳥取県米子市の会社で、ふるさと納税の自治体側システムを全国で初めて作り、全国の約3分の1の自治体に入っていました。地方の会社でも、全国で使われている仕組みがあれば上場企業が10億円規模で買います。株主は個人ではなく一般社団法人で、譲渡前にグループ3社をエッグの下にまとめ、1回の取引で4社を渡しています。
2026年6月期の決算短信で、DX事業の中で「㈱エッグ」の事業状況が説明されており、グループに残っています。商号変更や合併の開示は確認できていません。
グリットグループホールディングス株式会社
体育会学生の就職支援などの人材事業、スポーツ×幼児教育、地方創生事業(傘下5社の持株会社)/東京都新宿区/2017年6月設立
- 取得価額
- 5億円
- 対象の売上
- 19億9,900万円
- 対象の営業利益
- 3,100万円
- 対象の純資産
- 4,100万円
決算期:2019年5月期(簡易連結)/譲渡前の株主:個人1名(山崎 秀人)が100%保有/アドバイザリー費用等15百万円を加えた合計は515百万円(概算)。過去の実績、財政状態、経営計画とデューデリジェンスに基づき交渉で決定/傘下各社の直近決算を単純合算し相互取引を消去した簡易的な連結数値。買収に伴うリストラで一部事業の譲渡も実施しており、参考値と開示
買収理由:約600自治体との取引実績、国内477大学とのリレーションによる人材獲得、ミャンマー事業での協業
売上19億9,900万円・営業利益3,100万円・純資産4,100万円(簡易連結の参考値)。営業利益の約16倍、純資産の約12倍という値段です。利益より、体育会就職支援で築いた大学・自治体とのつながりが評価されました。ただし買収時に「リストラに伴う一部事業譲渡」も行われており、全部をそのまま引き継いだわけではありません。傘下のRetoolはその後、別の上場会社へ売られています(下記)。
持株会社自体の商号変更や合併の開示は確認できていません。ただし傘下だった株式会社Retoolは、2024年12月にテクミラホールディングスへ2億8,000万円(スカラ保有の66.6%分)で譲渡されました。
ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社
上場企業の中期経営計画策定・統合報告書作成など価値創造経営コンサルティング、ファンド事業/東京都中央区/2003年5月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 6,600万円
- 対象の営業利益
- △200万円
- 対象の純資産
- 4,100万円
決算期:2018年12月期/譲渡前の株主:個人1名(宮下 修・代表者)が100%保有/現金ではなく、スカラの普通株式245,000株を交付(JPR株1株にスカラ株298.4165652株)。JPRの株主価値は第三者算定機関がDCF法で算定
買収理由:企業価値創造支援の分野で、経営コンサルティングの実績と取引先ネットワークを活用する
売上6,600万円・営業損失200万円・純資産4,100万円の、代表者1人が全株を持つコンサルティング会社でした。対価は現金ではなく上場会社の株式です。売り手は株主として買い手の成長に乗る形になります。ただし買収後は計画どおりに顧客が増えず、2022年6月期には売上4,800万円・純資産マイナス1,400万円の債務超過になっていました。約4年後、元の社長に株が売り戻されています(下記)。
2023年6月29日、全株式を代表取締役社長の宮下修氏へ譲渡すると決議しました(実行は2023年8月予定、譲渡価額は非公開)。本業のコンサルティングで当初計画したクライアント獲得に至らなかったことが理由です。
トライアックス株式会社
セミオーダー型ウェブシステム構築プラットフォーム「LaCoon」の提供、ウェブサイトの企画・制作・開発・保守/東京都渋谷区/2003年5月設立
- 取得価額
- 1億4,000万円
- 対象の売上
- 1億9,100万円
- 対象の営業利益
- △2,000万円
- 対象の純資産
- 1,900万円
決算期:2014年12月期/譲渡前の株主:個人1名(植山 浩介・代表者)が100%保有/概算額
買収理由:エンジニアを抱える開発チームと顧客基盤を取り込み、開発力を強化する
売上1億9,100万円・営業損失2,000万円・純資産1,900万円。営業利益は550万円→140万円→2,000万円の損失と下がり続け、純資産も4,390万円から1,910万円に減っていました。それでも売上の7割を超える1億4,000万円がついています。東京大学などへの導入実績と、エンジニアのいる開発チームが評価されました。業績が下り坂でも、人材と顧客がそろっていれば買い手はつきます。
2015年11月に取引実行予定として開示されました。その後の商号変更や合併、譲渡の開示は確認できていません(現在もグループに残っているかは未確認です)。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された6件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社テラ(80%)8億4,000万円(売上の0.88倍・営業利益の4.7倍)
- 株式会社HATO1億8,500万円(売上の0.30倍・営業利益の92.5倍)
- 日本ペット少額短期保険株式会社4億2,900万円(売上の0.24倍)
- 株式会社エッグ9億2,800万円(売上の0.54倍・営業利益の5.5倍)
- グリットグループホールディングス株式会社5億円(売上の0.25倍・営業利益の16.1倍)
- トライアックス株式会社1億4,000万円(売上の0.73倍)※営業赤字での譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社スカラが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月13日