株式会社ブイ・テクノロジーのM&A実績
ディスプレイと半導体の製造装置メーカーで、技術を持つ装置メーカーを、大企業の子会社・地域ファンド・創業者からそれぞれ買ってきた会社です。日本精工やオムロンの子会社から事業を引き取り、広島や沖縄の官民ファンドが支えてきたベンチャーも買っています。近年は中期経営計画で半導体装置を「第二の収益の柱」に育てる方針を掲げ、その一環として埼玉の装置メーカーを買っています。
株式会社ブイ・テクノロジーが公表した適時開示7件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月13日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 神奈川県横浜市
- 設立
- ―
- 事業内容
- フラットパネルディスプレイ(FPD)と半導体・フォトマスクの製造装置・検査装置の開発、製造、販売
- 売上高
- 529億9,200万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 37億6,800万円
- 純資産
- 362億5,000万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- FPD製造装置・検査装置/半導体製造装置・ウェーハ検査装置/電気検査装置(非接触センサー)/有機EL照明パネル/システム開発・ITインフラ
- 対象の規模
- 対象の売上 17.9億円〜117億円(近年の小型案件は売上非開示)
- 手法
- 株式譲渡(子会社化)が中心。大企業の事業部門を事業譲受で引き取る形や、ファンドから過半数(67%)を買い、残りを後から買い増す形も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は子会社として残すのが基本です。日本精工から買ったNSKテクノロジーは、取得と同時に「VNシステムズ」へ社名を変え、本店も買い手の本社に移しています。67%から入ったオー・エイチ・ティーは、約2年半後に残りの株を買い取って完全子会社にしました。
- 2010年代の大型案件は取得価額を開示しています。NSKテクノロジー20億円、オー・エイチ・ティー(67%)18億2,500万円、オムロンレーザーフロントのFPD部門3億7,300万円
- 営業赤字の会社・事業も買っています。NSKテクノロジーは営業損失4億7,900万円、オムロンレーザーフロントのFPD部門は営業損失4億1,300万円の状態での取得でした
- 近年の案件(2019年以降)は金額非開示が続きます。ナノシステムソリューションズでは「相手先の意向等により非開示」「連結純資産額の15%未満」と書かれています
- 2022年のジャパンクリエイト、2024年のクリマ・ソフト(子会社による取得)の開示は原文を確認できていないため、この一覧には載せていません
買収の履歴7件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社コアテクノロジー
半導体製造工程で使う機能水発生装置・半導体製造装置ユニットの開発、製造、保守・メンテナンス/埼玉県戸田市
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/非開示
買収理由:半導体装置事業を第二の収益の柱に育てる中期経営計画の一環。アドバンストパッケージ分野での展開を加速する
資本金3,000万円の装置メーカー。業績も株主も開示されていませんが、開示文では「開発実績は高く評価されており、国内外の大手半導体関連企業へ継続的に納入」と書かれています。大手に継続して納めている実績と、保守まで自社でやれる体制が、規模より先に見られていることが読み取れます。業績への影響は「軽微」とされる小さな案件です。
株式会社アイテック
エンベデッド・オープンシステムの開発、サーバー・ネットワークのインフラ構築、カスタマーサポート/東京都港区
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/非開示
買収理由:海外中心の装置事業とは別に、国内市場を対象とした事業を立ち上げる。装置用ソフトウェアの開発力強化
資本金9,760万円のシステム会社。装置メーカーが、本業と違う業種のIT会社を買った案件です。開示文には、金融・製造・流通の大手顧客への納入実績と「国内に数多くのお客様との接点」が評価点として挙がっています。本業が違っても、顧客基盤と技術者を持っていれば買い手の候補は業界の外にもいることを示す例です。業績は開示されていません。
2022年2月28日に株式取得予定と開示されています。商号変更や合併の開示は確認できていません。
株式会社ナノシステムソリューションズ
半導体ウェーハ外観検査装置、マスクレス露光装置の開発・製造・販売/沖縄県うるま市/2004年12月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 17億9,400万円
- 対象の営業利益
- 1億3,200万円
- 対象の純資産
- 1億7,100万円
決算期:2018年12月期/譲渡前の株主:創業者の芳賀一実22.63%、株式会社ピーエムティー22.63%、沖縄ものづくり振興ファンド21.71%、沖縄振興開発金融公庫14.48%、ほか1社・1名18.55%/相手先の意向等により非開示。「当社グループの連結純資産額の15%未満」
買収理由:半導体関連事業の立ち上げの第3弾。ウェーハ検査とマスクレス露光の技術を取り込む
産総研の支援で2004年に生まれた研究開発型ベンチャー。売上17億9,400万円・営業利益1億3,200万円・純資産1億7,100万円。2017年5月期には4億9,500万円の最終赤字を出し、純資産は2,400万円まで細っていました。そこから売上をほぼ倍にして黒字に戻した局面での譲渡です。株主は創業者、取引先の装置メーカー、県の振興ファンドと政策金融機関に分かれていましたが、全員から買い集めています。開示文は「同社の会社規模から十分といえなかった営業面や研究開発の面」を買い手が支えるとしており、技術はあるが営業と開発の体力が足りない会社が売り先を探した例として読めます。
2019年8月22日に株式取得予定と開示されています。商号変更や合併の開示は確認できていません。
Lumiotec株式会社
有機EL照明パネルの製造・販売/山形県米沢市/2008年5月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:三菱重工業株式会社ほか数社/非開示
買収理由:有機EL照明パネル事業の取り込み(取得完了の続報では理由の記載なし)
資本金1億円。大手の三菱重工業などが持っていた会社を、全株まとめて引き取った案件です。業績は開示されていません。その後、2026年3月期の決算短信で連結の範囲から外れています。買われた会社が、買い手のグループにずっと残るとは限らないことを示す例です。
2018年4月2日に全株式の取得が完了。2026年3月期決算短信で「除外」としてLumiotec株式会社の名前が挙がっていますが、清算か売却かなど除外の理由は確認できていません。
オー・エイチ・ティー株式会社(67%)
FPDやプリント基板向けの非接触センサー等を使った電気検査装置の企画・開発・製造・販売/広島県福山市/1994年6月設立
- 取得価額
- 18億2,500万円
- 対象の売上
- 63億4,100万円
- 対象の営業利益
- 5億9,600万円
- 対象の純資産
- 30億6,500万円
決算期:2015年4月期(連結)/譲渡前の株主:HIF-A投資事業組合(ひろしまイノベーションファンド、主な出資者は広島県)が100%保有/67%(469株)の取得価額。アドバイザリー費用等94百万円を含まない
買収理由:検査装置の協業による新製品・新技術の開発と、両社製品のセット販売による営業強化
売上63億4,100万円・営業利益5億9,600万円・純資産30億6,500万円。67%で18億2,500万円なので、100%に直すと約27億円。純資産を下回る水準です。2013年4月期は営業損失3億3,000万円でしたが、県のファンドの出資を受けて同業を買収し、売上を2年で2.5倍にしていました。赤字から立て直した後、ファンドの出口として事業会社に渡る流れが出ています。売り手のファンドは残る33%を地元企業に渡しており、全株を1社に寄せない売り方も取られています。
2018年12月、田中電機工業(32%)と社長の羽森寛氏(1%)から残りの株式を買い取り、完全子会社になりました(譲渡価額は非開示)。その後の商号変更や合併の開示は確認できていません。
NSKテクノロジー株式会社
FPD製造用露光装置・部品の製造販売/東京都品川区/2011年7月設立
- 取得価額
- 20億円
- 対象の売上
- 117億2,500万円
- 対象の営業利益
- △4億7,900万円
- 対象の純資産
- 14億1,000万円
決算期:2014年3月期/譲渡前の株主:日本精工株式会社(上場企業)が100%保有/第三者機関による財務・法務調査の結果をもとに価額を決定
買収理由:NTK社のFPD製造用露光装置事業と当社の光配向向け露光装置事業を統合し、経営効率化と競争力強化を図る
売上117億2,500万円に対し営業損失4億7,900万円、純資産14億1,000万円。営業赤字のまま、純資産を上回る20億円で買われています。日本精工の露光装置事業が2011年に分社された会社で、営業利益は2億2,100万円→△4,100万円→△4億7,900万円と悪化していました。大企業の本業から外れた事業は、同じ分野の専業メーカーにとっては赤字でも価値があることを示す例です。
2015年6月1日に全株式の取得を完了し、同日付で「株式会社VNシステムズ」に商号を変更、本店を横浜市の買い手本社所在地へ移しました。その後の合併の開示は確認できていません。
オムロンレーザーフロント株式会社のFPD部門
FPD向けリペア装置、FPD・半導体用マスクリペア装置の設計・製造・修理・サポート/神奈川県相模原市/分割元は2004年1月設立設立
- 取得価額
- 3億7,300万円
- 対象の売上
- 18億9,300万円
- 対象の営業利益
- △4億1,300万円
- 対象の純資産
- ―
決算期:2013年3月期(FPD部門)/譲渡前の株主:オムロンレーザーフロント株式会社(大株主はオムロン株式会社)/譲受資産(主に仕掛在庫)419百万円から譲受負債(主に無償保証)46百万円を引いた額と同額
買収理由:既存の検査装置事業との相乗効果。CF工程向けに加え、TFT(アレイ)工程向けに本格参入する
部門の売上18億9,300万円・営業損失4億1,300万円。譲受価格3億7,300万円は、引き継いだ資産から負債を引いた額とちょうど同じです。のれん(上乗せ分)は付かず、赤字部門は「中身の資産の値段」で引き取られた形です。買い手は「大幅なコストダウンを図る予定」と書いています。赤字の事業でも売り先はあるが、値段は資産の額が目安になることが読み取れます。
事業譲受のため法人の移動はなく、2013年10月1日に買い手本体が事業を引き継ぎました。その後の運営状況を示す開示は確認できていません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- オー・エイチ・ティー株式会社(67%)18億2,500万円(売上の0.29倍・営業利益の3.1倍)
- NSKテクノロジー株式会社20億円(売上の0.17倍)※営業赤字での譲渡
- オムロンレーザーフロント株式会社のFPD部門3億7,300万円(売上の0.20倍)※営業赤字での譲渡
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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