ノーリツ鋼機株式会社のM&A実績
写真処理機器(ミニラボ)の会社から、M&Aで事業を入れ替えてきた会社です。国内で買うのは「No.1/Only1」の技術やシェアを持つものづくり企業が中心で、テイボー(ペン先部材で世界シェア50%以上)、AlphaTheta(DJ機器)、センクシア(建材機器)と、いずれも数百億円規模の買い物です。売り手は投資ファンドが多く、個人オーナーから直接買った例は医療・ITの小規模案件(2014〜2016年)に限られます。一方で、買った会社を数年で売ることも多く、医療・シニア・バイオの子会社はその後ほとんど手放しています。
ノーリツ鋼機株式会社が公表した適時開示7件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都港区
- 設立
- 1951年(創業)
- 事業内容
- DJ機器のAlphaThetaや米国のオーディオブランドJLabを持つ「音響関連機器」と、ペン先部材のテイボー、建材機器のセンクシアなどの「部品・材料」を2本柱とする持株会社
- 売上高
- 1,192億2,300万円(2025年12月期(連結))
- 営業利益
- 208億1,500万円
- 純資産
- 2,285億9,000万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 部品・材料(ペン先部材、コスメ用ブラシ、MIM部品)/建材機器(フリーアクセスフロア、柱脚、免制震)/音響機器(DJ機器)/医療IT(調剤薬局向けソフト)/医療機器・遺伝子検査(2014〜2016年。現在は売却済み)
- 対象の規模
- 対象の売上 5.1億円〜354億円(ソリトンは非開示)
- 手法
- 株式譲渡(100%取得)が中心。大型案件は特別目的会社(SPC)やノンリコースローン、ブリッジローンで資金を手当てし、表明保証保険(W&I保険)を付ける。子会社(NKリレーションズ、テイボー)が買い手になる形や、一部だけ先に取得する形も使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- ものづくりの会社は社名のまま残し、事業を足していく形です。テイボーはソリトンを買い、2025年にはMIM事業を浜松メタルワークスとして切り出して、中間持株会社の下に並べています。一方で、事業の方針転換があると売却も早い会社です。エム・エム・ティーは取得から約1年半で投資ファンドへ、GeneTechは約4年でユーロフィン社へ売却されました。
- 取得価額は大型案件ほど開示されます。テイボー314億円、AlphaTheta350億円、センクシア690億円のほか、売上27億円のユニケソフトウェアリサーチでも33億円と開示しています
- 第三者機関によるDCF法の評価レンジまで開示しています。センクシアでは株式価値693億〜847億円、AlphaThetaでは331億〜378億円と、取得価額がレンジのどこにあるかが読めます
- 売り手は投資ファンドが多い会社です。テイボー(WISE PARTNERSが運営するファンド)、AlphaTheta(KKR)、センクシア(アイルランドの投資会社)と、ファンドが育てた会社の次の持ち主になっています
- 海外ではJLab Audio(米国、2021年)やMAVEN SAS(フランス、2026年、AlphaTheta経由)を買っています。ここでは国内の非上場企業の買収だけを載せ、海外案件・子会社売却・グループ内再編、上場子会社ジーンテクノサイエンスによるセルテクノロジーの株式交換(同時に連結子会社から外れた案件)は除いています
買収の履歴7件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
センクシア株式会社
建材機器の製造・販売と関連工事(フリーアクセスフロア、露出型柱脚「ハイベース工法」、免制震製品など)/東京都港区/2022年2月(事業は1960年代から)設立
- 取得価額
- 690億円
- 対象の売上
- 354億1,300万円
- 対象の営業利益
- 51億3,400万円
- 対象の純資産
- 292億5,600万円
決算期:2025年3月期(連結)/譲渡前の株主:投資ファンド(LSF XI Senqcia Designated Activity Company、アイルランド法人)が100%保有/概算、アドバイザリー費用を含む。第三者機関(COHEN PARTNERS)のDCF法による株式価値は693億4,700万円〜847億5,800万円。企業価値は約800億円と算定し、手元資金300億円とブリッジローン500億円で株式取得と既存借入の返済を行う。取得後に表明保証保険へ加入
買収理由:中期経営計画の「新領域」への投資であり、「部品・材料」セグメントの周辺領域の拡張。海外売上比率の高いグループのリスクヘッジ
売上354億1,300万円・営業利益51億3,400万円・純資産292億5,600万円。取得価額690億円は営業利益の約13倍、純資産の約2.4倍です。売上の約80%を市場シェアNo.1の製品が占めると開示されており、「業界唯一」「業界初」の製品群が評価の中心になっています。売り手は2022年に設立された受け皿会社を持つ投資ファンドで、ファンドが数年保有した会社が、事業会社に引き継がれる流れがここにも出ています。
2026年2月2日に株式取得が完了。ノーリツ鋼機の会社概要ページに「部品・材料事業」のグループ会社として掲載されています。
AlphaTheta株式会社(旧Pioneer DJ株式会社)
DJ/CLUB機器、業務用音響機器、音楽制作機器の開発・設計・販売/神奈川県横浜市/2014年8月設立
- 取得価額
- 350億円
- 対象の売上
- 253億3,800万円
- 対象の営業利益
- 33億1,400万円
- 対象の純資産
- 271億7,600万円
決算期:2019年12月期(連結)/譲渡前の株主:KKR PDJ Investment L.P.(投資ファンド)85.05%、パイオニア株式会社14.95%/概算、アドバイザリー費用を含む。第三者機関(SXA)のDCF法による株主資本価値は331億1,900万円〜378億8,500万円(多額の繰越欠損金の活用を考慮)。企業価値は650億円と算定し、出資約350億円とユーロ建てノンリコースローン約300億円で株式取得と既存借入の返済を行った。表明保証保険に加入/IFRSの連結売上収益。2019年12月期は監査前の数値。純資産は連結資本合計
買収理由:基盤事業の収益力を高め、成長分野へ投資する中期経営計画の一環。世界で評価される技術を持つ企業の発展を推進
売上253億3,800万円・営業利益33億1,400万円・資本合計271億7,600万円。取得価額350億円は営業利益の約10.6倍です。2015年にパイオニアから分割独立し、KKRの下で5年ほど育った会社でした。大企業から切り出された事業が、ファンドを経て別の事業会社に渡るという流れの例です。2017年12月期には10億6,200万円の最終赤字を出していますが、評価の妨げにはなっていません。
2020年4月3日に取得完了。ノーリツ鋼機の会社概要ページに「音響関連機器事業」のグループ会社として掲載されており、2026年にはフランスのMAVEN SASを買う側に回っています。
株式会社soliton corporation
PBTブラシ(筆ペン、アイライナー、アイブロー用)の製造販売/京都府京都市(工場は奈良県奈良市)/2010年8月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/非開示。「当連結会計年度への影響は軽微」とのみ記載
買収理由:テイボーの中継芯とソリトンのPBTブラシを組み合わせ、コスメ部材を一体で開発・提案する
資本金5,019万円。奈良の筆の技術を持ち、ブラシを累計2億本以上納めてきた会社です。買い手側は約2年前から、ブラシまで一体で提案することを検討していたと開示しており、自社の製品に欠けていた工程を持つ会社が狙われた例です。業績や売り手は開示されていません。
ノーリツ鋼機の会社概要ページには主要5社しか載っておらず、ソリトンの名前はありません。合併や売却の開示も見当たらず、現状は確認できていません。
株式会社ユニケソフトウェアリサーチ
保険薬局向けレセプト処理システム、電子薬歴システムの開発・販売・保守。医薬品データベースのメディカルデータベースを傘下に持つ/東京都渋谷区/1985年6月設立
- 取得価額
- 33億円
- 対象の売上
- 27億6,000万円
- 対象の営業利益
- 3億3,700万円
- 対象の純資産
- 18億900万円
決算期:2016年2月期(連結)/譲渡前の株主:普通株式は個人6名88.7%、株式会社U&Kホールディングス(代表者は対象会社の社長)11.3%。種類株式は個人1名とU&Kホールディングス/株式取得費用。アドバイザリー等の取得関連費用(概算)17百万円を加えた合計は3,317百万円(予定)
買収理由:医療情報分野の強化。医薬品データベースを個人向けヘルスケアサービスに活かす
売上27億6,000万円・営業利益3億3,700万円・純資産18億900万円。取得価額33億円は営業利益の約9.8倍、純資産の約1.8倍です。現金預金14億2,700万円・有利子負債なしという財務内容でした。レセプトや薬歴のような継続課金型のソフトで、顧客がやめない会社は高く評価されます。買い手は「創業以来の理念を尊重し」「自立成長を期待する」と明記しています。
ノーリツ鋼機の会社概要ページには載っていません。同社は医療情報分野を担っていたJMDCの株式をその後売却していますが、ユニケソフトウェアリサーチがどの時点でどこへ移ったかは、確認できた開示からは追えていません。
GeneTech株式会社
母体血による胎児DNA検査(NIPT)、臨床検査/東京都港区/2010年10月設立
- 取得価額
- 26億7,300万円
- 対象の売上
- 14億7,200万円
- 対象の営業利益
- 3億6,100万円
- 対象の純資産
- 11億2,500万円
決算期:2015年12月期/譲渡前の株主:株式会社遺伝子科学推進機構47.0%、株式会社HT-MAインターナショナル23.8%、サイボー株式会社(上場企業)9.4%、株式会社フィールズパートナーズ0.5%、個人6名19.3%/64.7%分の株式取得費用。アドバイザリー等の取得関連費用(概算)350百万円を加えた合計は3,023百万円(予定)
買収理由:バイオ領域への進出。NIPTの国内パイオニアの遺伝子解析技術を、遺伝子検査サービス全般に広げる
売上14億7,200万円・営業利益3億6,100万円・純資産11億2,500万円。営業利益は9,000万円→2,000万円→3億6,100万円と、直前期に大きく伸びたところでの譲渡です。まず64.7%を買い、残りは個別に交渉するという進め方で、株主が会社や個人に分かれていても、まとまった持分から先に売れることを示しています。
その後ノーリツ鋼機の100%子会社となった後、2020年8月にユーロフィン(Eurofins Clinical Testing Lux Holding Sarl)へ全株式が売却されました。譲渡価格は非公表です。
テイボー株式会社
毛細管を素材とする筆記具向け部材(マーキングペン先)、コスメ部材、医療用部材、MIM部品の製造販売/静岡県浜松市/2010年7月(創業1896年6月)設立
- 取得価額
- 314億円
- 対象の売上
- 84億6,600万円
- 対象の営業利益
- 18億1,100万円
- 対象の純資産
- 96億7,000万円
決算期:2014年9月期(連結)/譲渡前の株主:WWP1号投資事業有限責任組合(業務執行組合員はWISE PARTNERS株式会社)75.1%、株式会社日本政策投資銀行24.6%、個人1名0.3%/必要資金の大半を、テイボー株式と同社資産以外に遡及しないノンリコース・ローンで調達する予定と開示
買収理由:創業110年以上の“ものづくり”の老舗を取り込み、医療分野のネットワークと掛け合わせてカテーテル素材などの医療材料を伸ばす
売上84億6,600万円・営業利益18億1,100万円・純資産96億7,000万円。取得価額314億円は営業利益の約17倍、純資産の約3.2倍です。マーキングペン先で世界シェア50%以上(高品質品では70%以上)という地位が評価されました。営業利益は10億700万円→11億5,700万円→18億1,100万円と伸びている局面での譲渡です。ニッチでも世界シェアを握る部材メーカーは、利益の何倍もの値段で買われます。
社名のまま残り、ノーリツ鋼機の会社概要ページに「部品・材料事業」のグループ会社として掲載されています。2024年9月13日の開示では、MIM事業を新設の浜松メタルワークスに分割し、2社を中間持株会社テイボーホールディングスの下に置く再編(2025年4月1日予定)が公表されています。2023年12月期の連結売上は117億7,500万円でした。
株式会社エム・エム・ティー
人工関節など整形外科インプラント、人工骨の製造・販売、健康用サプリメントの製造・販売/大阪府大阪市/1986年2月(創業1985年10月)設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 5億1,100万円
- 対象の営業利益
- 1,000万円
- 対象の純資産
- △1億3,400万円
決算期:2014年3月期/譲渡前の株主:代表取締役の真崎修氏ほか/非開示。「連結業績への影響は軽微」とのみ記載/取得時の開示には業績の記載がなく、2016年2月12日の売却開示に載った2014年3月期の数値(千円単位を百万円に換算)
買収理由:高齢者医療事業の拡大。整形外科向けの人工関節・人工骨分野への本格参入
取得時の開示に業績はありませんが、後の売却開示によると、直前期は売上5億1,100万円・営業利益1,000万円・純資産マイナス1億3,400万円の債務超過でした。その前の期は営業損失1億5,500万円です。それでも、アカデミアと共同開発した人工骨「ネオボーン」などの製品と、整形外科・歯科への顧客網が評価されて買われました。債務超過でも、技術と顧客基盤があれば買い手は付きます。ただし約1年半後に投資ファンドへ売却されています。
2016年2月、同じ整形外科分野のアイメディックとともに、ポラリス・キャピタル・グループが運営するポラリス第三号投資事業有限責任組合へ全株式(99.75%)が売却されました。譲渡価額は非開示です。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された5件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- センクシア株式会社690億円(売上の1.95倍・営業利益の13.4倍)
- AlphaTheta株式会社(旧Pioneer DJ株式会社)350億円(売上の1.38倍・営業利益の10.6倍)
- 株式会社ユニケソフトウェアリサーチ33億円(売上の1.20倍・営業利益の9.8倍)
- GeneTech株式会社26億7,300万円(売上の1.82倍・営業利益の7.4倍)
- テイボー株式会社314億円(売上の3.71倍・営業利益の17.3倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページはノーリツ鋼機株式会社が公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日