株式会社バルコスのM&A実績
鳥取県倉吉市のバッグ・財布の会社が、自社の「販促力・販売力」に乗せられる商品を持つ会社を買っています。中期経営計画(2026/12期〜2028/12期)でM&Aを成長戦略の中核に置き、2025年秋からペースが上がりました。売り手は4件とも個人オーナー(創業者・社長・親族)です。決算短信では「弱点を持った企業や事業を取り込み、その弱点を補完する」と書いており、BtoBの卸で粗利率が低い会社を、自社の通販・ECでBtoCに広げる狙いを明言しています。
株式会社バルコスが公表した適時開示4件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 鳥取県倉吉市
- 設立
- 1991年5月
- 事業内容
- レディスバッグ・財布などのファッションアイテムを、インフォマーシャル・新聞・EC・顧客DMで販売。M&Aで迎えたEC・アパレル・靴下・靴の会社を束ねる
- 売上高
- 55億400万円(2025年12月期(連結))
- 営業利益
- 1億500万円
- 純資産
- 7億7,800万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- アパレル・服飾雑貨のEC販売/フェムテック商品(吸水ショーツ)のSNS・インフルエンサー販売/靴下など繊維製品の製造卸/靴の卸売
- 対象の規模
- 対象の売上 5.4億円〜12.5億円
- 手法
- 株式譲渡(100%子会社化)が中心。親族の資産管理会社が株式の一部を持っている場合は、資産管理会社ごと買う形も使う。ブランド単位の事業譲受もある
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残しています(グループ会社一覧に藤本コーポレーション、immunity、東豊物産などが並んでいます)。合併の開示は出ていません。一方で、自社で設立したメディア子会社は2026年に社長側の会社へ譲渡しており、「MBO等のグループアウトにも柔軟に対応する」と開示しています。
- 取得時の開示では価格を「秘密保持義務により非公開」とすることが多いですが、後の決算短信で取得原価が出ています。藤本コーポレーションは5億4,000万円、東豊物産(資産管理会社と合わせて)は6億3,000万円でした
- 算定方法は毎回同じ書き方で、「外部機関の財務・税務デューデリジェンスにおける収益力を基に、類似会社比準法等の評価を踏まえ双方協議」と開示しています
- 取得関連費用(アドバイザー費用等)も決算短信に出ています。藤本コーポレーションで2,970万円(取得原価の約5.5%)、東豊物産で概算7,940万円(同約12.6%)でした
- 2025年2月には、株式会社INSTYLE APPARELからアパレルブランド「LA MARINE FRANÇAISE」の事業を4,518万円で譲り受けています(2025年12月期決算短信の企業結合注記)。受け入れた資産を下回る価格で、負ののれん4,711万円を計上しました
- 2025年12月、会社更生手続を申し立てたマツオインターナショナル(婦人服、売上124億5,000万円)と松尾産業のスポンサー支援について法的拘束力のない基本合意を結びましたが、2026年3月19日に「支援案についての合意形成が困難」としてスポンサーを辞退し、合意を解約しています
買収の履歴4件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
東豊物産株式会社(資産管理会社の株式会社ティ・エイチ・マネージメントを含む)
靴の卸売(自社で商品開発も行う)/兵庫県神戸市/1976年2月設立
- 取得価額
- 6億3,000万円
- 対象の売上
- 11億4,600万円
- 対象の営業利益
- 760万円
- 対象の純資産
- 7億4,500万円
決算期:2025年7月期(東豊物産単体)/譲渡前の株主:高川慎一郎25.0%、高川裕治25.0%、ティ・エイチ・マネージメント(両氏が50%ずつ保有する資産管理会社)25.0%、その他(非公開)22.0%、自己株式3.0%/取得時の開示では「秘密保持義務により非公開」。2025年12月期決算短信の後発事象注記で、取得原価630百万円(現金、東豊物産とティ・エイチ・マネージメントの合計)と判明。アドバイザリー費用等(概算)79.4百万円は別。東豊物産単体の純資産745百万円を下回る金額
買収理由:大手取引先とのコネクションと自社開発力を持つ靴卸を迎え、グループのマーケティング力を使って事業機会を広げる。中期経営計画のM&A戦略の一環
売上11億4,600万円・営業利益760万円・純資産7億4,500万円。営業損益は△3,299万円→1,015万円→760万円、経常損益は2期続けて赤字の後に黒字化した局面での譲渡でした。価格6億3,000万円は、東豊物産の純資産を下回っています。利益が薄い会社では、純資産がそのまま値段にならないことがある例です。また、オーナー兄弟の資産管理会社が株式の4分の1を持っていたため、資産管理会社ごと売る形が取られています。持株を資産管理会社に移している社長には参考になる組み方です。
2026年1月30日に株式を取得済み(2025年12月期決算短信の後発事象注記)。バルコスのグループ会社一覧に東豊物産、ティ・エイチ・マネージメント、キャリーアウト、World Creationが社名のまま載っています。
株式会社藤本コーポレーション
靴下など繊維商品の卸売・製造卸(自社内の一貫生産体制)/福岡県北九州市/1967年6月設立
- 取得価額
- 5億4,000万円
- 対象の売上
- 6億3,800万円
- 対象の営業利益
- 1億3,600万円
- 対象の純資産
- 2億9,600万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:藤本壮一(代表取締役)77.0%、その他株主23.0%(相手方の意向で非公開)/取得時の開示では「秘密保持義務により非公開」。2025年12月期決算短信の企業結合注記で、取得原価540百万円(現金)と判明。アドバイザー費用等29.7百万円は別。のれん94.4百万円(暫定)を10年で償却
買収理由:国内製造で競争力のある商品がグループに少ないため、自社一貫生産の靴下メーカーで補完する
売上6億3,800万円・営業利益1億3,600万円・純資産2億9,600万円。価格5億4,000万円は営業利益の約4.0倍、帳簿上の純資産の約1.8倍です。決算短信では受け入れた資産8億1,200万円・負債3億6,600万円とされ、時価で見た純資産は約4億4,600万円。のれんは9,400万円にとどまり、値段の大半は資産の時価で説明されています。売上は3億7,700万円→6億3,800万円、営業利益は3,300万円→1億3,600万円と、直前1年で大きく伸びた局面での譲渡でした。買い手はBtoBの卸で粗利率が低いことを「弱点」と書いた上で、自社の通販でBtoCに広げる計画を示しています。
2025年10月31日に株式を取得し、結合後の企業名は変更なし(2025年12月期決算短信)。バルコスのグループ会社一覧に社名のまま載っています。
株式会社immunity
女性用吸水ショーツの企画・通信販売(SNS・インフルエンサーマーケティング)/東京都中央区/2021年4月設立
- 取得価額
- 1億円
- 対象の売上
- 5億3,600万円
- 対象の営業利益
- 4,100万円
- 対象の純資産
- 2,400万円
決算期:2023年3月期/譲渡前の株主:笠原聡介80%、若月舞子(代表取締役)12%、山村藍琳8%(個人3名)/取得価額100,000千円。うちのれん約50百万円と開示。資金は自己資金
買収理由:グループにないインフルエンサーを活用した販売ノウハウを取り込む
設立から2期目、創業3年弱での譲渡です。1期目は売上800万円・純資産△500万円の債務超過、2期目に売上5億3,600万円・営業利益4,100万円まで伸ばしたところで売っています。価格1億円は営業利益の約2.4倍、純資産の約4倍。社歴が浅くても、売る仕組み(インフルエンサー販売のノウハウ)が評価されて値段がつきます。2025年12月期の決算短信では、同社の顧客数を約15万人としています。
バルコスのグループ会社一覧に社名のまま載っており、2025年12月期決算短信でもフェムテック商品の販売会社として事業が続いています。
株式会社BFLAT Holdings
ECモールを通じた婦人服・雑貨の販売(ドレス等のオケージョンファッション)/大阪府大阪市/2019年2月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 12億4,600万円
- 対象の営業利益
- 1億9,000万円
- 対象の純資産
- 1億9,200万円
決算期:2022年3月期(連結)/譲渡前の株主:個人1名(岩元 貴優、代表取締役)が100%保有/相手方との秘密保持義務により非公開。外部機関の財務・税務DDの収益力を基に類似会社比準法等で算定。ただし「取得価額には、のれんの額900百万円が含まれる」と開示されており、のれんだけで直前期の営業利益の約4.7倍。資金は金融機関からの借入
買収理由:ECモールでの高効率な販売ノウハウを取り込み、グループの販売力を広げるハブにする
売上12億4,600万円・営業利益1億9,000万円・純資産1億9,200万円。設立4年目、資本金100万円の会社で、営業利益は5,100万円→1億2,500万円→1億9,000万円と伸び続けていました。価格は非公開でも、のれん9億円と開示されたことで、純資産を大きく上回る値段だったことが分かります。在庫や設備ではなく、ECモールで高い効率で売る運営力が評価された案件です。買い手は2025年12月期の決算短信で、売上が取得当時の約1.6倍になったと書いています。
グループ会社一覧には「株式会社BFLAT」が載っており、事業は続いています。ただし取得したのは連結決算の持株会社「BFLAT Holdings」で、商号変更なのか、傘下の事業会社が残ったのかを示す開示は確認できていません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 東豊物産株式会社(資産管理会社の株式会社ティ・エイチ・マネージメントを含む)6億3,000万円(売上の0.55倍・営業利益の82.9倍)
- 株式会社藤本コーポレーション5億4,000万円(売上の0.85倍・営業利益の4.0倍)
- 株式会社immunity1億円(売上の0.19倍・営業利益の2.4倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社バルコスが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月9日